裸足の女神
ACT28 子守唄
かごめのお腹が少しが大分目立ってきた。 「だぁかぁらぁ。どーしてすぐそう動きたがる かなぁ。かごめは」 エプロン姿の歩が洗濯物を干そうとしているかごめを部屋の中に 戻る。 「少しくらい体を動かしたほうがいいのに」 「駄目だ。何かあったら大変だ」 最近の歩ときたら心配性で・・・。 「俺が干す」 がタイのでかい男のエプロン姿。せっせと洗濯物を洗濯バサミにはさんでいく。 (なんか・・・。かわいい) 「ふふ・・・ふふふ・・・」 「ん?何笑ってんだ?」 「ううん。何でもないなんでも・・・。ん・・・っ!??」 かごめがお腹を押えて顔をしかめている・・・ (はッ!!陣痛か!) さすが歩。妊娠・出産本を30冊読破しただけのことはある・・・? 「かごめ!待ってろ!今すぐ病院行くからな!」 歩は常時いつでも持ち出せるように、診察券と保険証ともろもろ入っている袋を 取り出す。 「かごめ、大丈夫か?ゆっくり・・・ゆっくり・・・」 歩はかごめに肩を貸し、マンションの階段を降り、車に乗せた。 「よし!今すぐ病院行くからな!もう少しだぞ!!」 (うおおおおーーー!!) 歩はアクセルを力いっぱい踏んで、病院まで車をかっとばす! つくと、すぐにかごめは診察され、そして分娩室へ。 「あ。旦那さん、立ち会われますか?」 淡々と看護士がたずねる。 「俺も立ち会います!!立ち会うった立ち会うんです!!」 看護士の手を握って力説。 「あ、はいはい。んじゃどうぞ」 (うお・・・) 初めてはいる分娩室。 かごめが大股開きで横たわっていた。 (・・・な、なんだかリアルな・・・。はっ!いかん! 俺は女房と娘を支えに今、ここにいるんだ!) 「かごめ・・・!」 「あ・・・あゆ・・・む・・・」 歩はかごめの手を握りしめた。 「さー!ひと頑張りするよ!!お父さんお母さん!」 看護士さんの掛け声とともに、かごめの出産が始まった。 「うぎーーーー!!くぅーーーー!!」 聞いたこともないようなかごめの力み声。 「うおおおおーーー!!かごめーーーー!!」 歩も一緒になって力んで大声を上げる。 「旦那さん、やっかましい!!静かに応援しなさい!」 「・・・あ、す、すません(汗)」 (俺もしっかりせねば!) 気合を入れる歩だが、出産がピークに達してきて・・・ バッタン!! 「おーい!!旦那さんが力みすぎて失神した!誰か外だして 介抱してやって!!」 大の字になって白目の歩の体を看護士さんが二人かかりでひっぱりだされる。 「ったく・・・。体のデカイのに肝は小さい旦那だこと・・・」 看護士さんにあきれられそしてしばし気絶。歩、気絶したままソファに寝かせられ そして・・・ 「ンギャアアア!」 「!?」 分娩室から聞こえてきた元気のいい産声で歩は覚醒。 「かごめ!」 歩があわてて入っていくと・・・ 「あ・・・。パパだ・・・」 ぐったりしているが笑顔のかごめとそして その腕には・・・二人の命の結晶が・・・。 (あ・・・) しわくちゃの顔・・・ だけど不思議と・・・この小さな命が自分の命の欠片だと 頭の芯で感じる・・・ 「お・・・オレの・・・子供・・・か?」 「そうよ。はい。パパ・・・。女の子でーす・・・」 白いタオルに包まれた・・・我が子を抱く歩・・・ (あ・・・あったけぇ・・・) ちょっとでも力を入れると壊れそうな小さな体・・・ 歩の中でなにか感慨深いものが込み上げる・・・ 「・・・かごめ・・・。ご苦労様・・・。それから・・・。ありがとう・・・」 歩はかごめのおでこをそっとなでる・・・ 「うん・・・」 手を握り合って・・・ 「本当にありがとう・・・ありがとう・・・」 家族が増えたことを喜び合ったのだった・・・ そして一週間後。かごめは退院し、 「アブアババハ〜」 歩ときたら・・・ 長女・さくらにベタぼれのようで、赤ちゃん用のお風呂にお湯を入れて 体を洗っている。 「きれいきれいしまちょうね〜」 「ふふ・・・。歩ったら完全に赤ちゃんことばになってるわよ」 「だって。さくらがあんまり可愛いんでちゅから仕方ないでちゅよね〜」 歩の大きな手に小さな体はベットに身を任せるように乗っかって・・・ 「・・・さぁ。綺麗になった。さくら。服きましょうね〜」 ピンクのベビー服を歩は手馴れた手つきで着せていく。 「歩・・・あの、そろそろお乳の時間なんだけど・・・」 「お、おう。そうか。んじゃかごめママにバトンタッチ」 そっとかごめにさくらを抱かせる歩。 かごめは上着をボタンをはずし、肩をだす・・・ (ドキ) 歩、頬を染めております。新米パパ。 「・・・あの・・・。恥ずかしいんだけど」 「えっ、ああ、すまねぇ・・・」 歩はくるっと背を向ける。 「さー。沢山飲んでね・・・」 (の、飲んでねって・・・) ちょっとリアルな光景に歩はドキドキ・・・ ちらっと後ろからかごめの様子を伺う・・・ (///) かごめの二つの膨らみが上から見下ろして・・・ (ーーーって!俺は父親になったんだぞ!やらしい思考は消えろ!) ぽかぽかと頭を叩いて煩悩を拭い去る新米パパ。 「あら・・・。寝ちゃった。歩。さくらねたみたい」 「ん・・・?そうか」 二人はさくらをベビーベットにそっと寝かせた・・・ すやすやと・・・眠る娘の寝顔に かごめも歩も自然に微笑む・・・ 「・・・なんか・・・。いいよな・・・。俺とかごめの・・・ 命・・・」 「うん・・・」 つぶらな瞳も・・・ 楓のような手も・・・ 二人の命を引き継いでつくられたたったひとつの命・・・ 「・・・大事に・・・。守っていかねぇとな・・・」 「そうね・・・」 「俺が・・・かごめとさくらを守るから・・・。ずっとそばにいてくれよな・・・」 「うん・・・」 かごめの肩を引き寄せる・・・ 一人じゃないというぬくもり。 どんな困難も乗り越えられそうな気さえする・・・ 「俺たちも・・・すこし昼寝するか」 「そうね・・・」 ベビーベットの横に布団を敷き、二人は横になる・・・ 「・・・子守唄・・・歌ってよ。歩」 「え?ん・・・。そうだな。んじゃなにがいいかな」 「”ゆりかごの唄”私この唄、すごく好きなの」 「わかった・・・」 歩は小さな声で 口ずさみ始める・・・ かごめの髪をなでながら・・・ 「・・・。かごめ・・・寝ちまったか・・・」 (さくらは・・・かごめ似だな・・・) かごめの頬をなでながら 愛しい妻の寝顔に幸せを感じる・・・ 「・・・お前もさくらも・・・。俺が守る・・・絶対に・・・」 かごめのおでこにキスをして・・・ 歩も目を閉じる・・・。 幸せな匂いに包まれて・・・ (かごめ・・・。さくら・・・愛してるからな・・・) 春の暖かい風が吹く・・・ カーテンが 柔らかくゆれていた・・・