裸足の女神
最終話 素足の女神達
「んぎゃあああ!!」 歩のマンションから赤ちゃんの泣き声が元気に響く。 「元気だな。さくらー。父ちゃんは寝不足だ・・・」 ちょっとまだ目が赤い新米パパ、歩。 産後のかごめはまだ少し体調が悪いせいか眠っていて・・・。 目を擦りながら愛娘・さくらのおむつ交換です。 「おー。今日も見事な茶色だな。うう(汗)」 ちょっと鼻をつまんで愛娘の体調をちゃんと確認(笑) そして次はお着替え。 「今日はキキララのお洋服でいいよな〜」 さくらの洋服選びに歩の鼻歌が奏でられる。 まるで着せ替え人形を楽しむ少女のようだ。 そんな溺愛っぷりに目を覚ましたかごめが見ていて・・・ 「ふふ。ふふふ・・・」 「な、なんだだぁ?さくら、かごめママがお目覚めだぞ〜」 お着替えが終わったさくらを抱っこしてベットまで連れて行く歩。 「・・・歩。今からそんな溺愛してたらお嫁に出すとき大変じゃない?」 「嫁・・・?さくらが嫁に・・・?はぁ・・・そうかいつかはさくらは他の男の物に・・・」 じっとさくらと見詰め合う歩。 「だぁあ。さくら・・・。パパは寂しいー・・・。ぐすん」 「あぶぶ」 朝から親ばかぶりを発揮する歩・・・。 そんな稲葉家の朝。 きっとこんな風にこれからも毎日が続くのだろう。 特別じゃない でも一日一日が二人にとってはかけがえのない一日に・・・。 「なぁ。かごめの体調が戻ったら 川原に弁当持ってハイキングにでもいかないか?」 (・・・かごめに・・・贈り物があるんだ) 自分にいろいろなものをくれたかごめに・・・。 「歩・・・?どうかした?」 「いやぁなんでも・・・。かごめ、ありがとうな」 「え?」 歩はかごめの髪をそっとなでた。 「・・・?」 優しい気持ちをくれてありがとう。 歩はそんな気持ちを込めてかごめの背中を撫でる・・・。 歩がかごめに用意しているプレゼント・・・。 それは・・・。 一週間後。 かごめの体力も大分戻り、3人は約束どおり 川原に弁当を持って遊びに来た。 ・・・かごめと歩の思い出の場所・・・。 「橋の上から楽譜が落っこちてきたのよね」 「ああ・・・。あの朝は眠かった・・・」 「んもう。もう少しロマンチックな言い方できないの。 二人の思い出なのに」 かごめは少し口を尖らせた。 「ごめんごめん。でもあの時オレ・・・」 ”一目ぼれだったかもしれない” 照れくささが邪魔して言えない。 「あの時オレ・・・の先はなに?」 「え、あ、いや、な、なんでもない」 「気になるわよ。ちゃんと言ってよー」 「そ、そのうち言ってやるよッ」 キラキラ光る川面より かごめが輝いて見えたなんて・・・。 (・・・今も輝いてるけどな・・・) 「さくら・・・綺麗ねー・・・」 さくらを膝の上に抱いて川面を見つめるかごめの横顔・・・。 (・・・かごめの笑顔が一番・・・。輝いてる・・・) 人の心を優しくする笑顔が 一番・・・。 「・・・ん?何?」 「い、いや・・・。何でも・・・。あ、そうだ。かごめ。お前に贈り物があるんだ」 「なあに?」 歩は紙袋から白い箱を取り出した。 「開けてみてくれ」 「?」 首をかしげながら箱を開くと・・・。 「あ・・・」 中から出てきたのは純白の・・・ドレス。 「これ・・・」 「・・・3人で写真撮りたいんだ。ちなみにほら。 さくら用のドレスもあるぞ」 歩は小さなピンクの洋服もかごめに披露。 「かわいい!!さくらにぴったり」 かごめは嬉しそうにさくらにワンピースを当ててみる。 この顔が見たかった。 かごめの喜ぶ顔は何より・・・ 元気をくれるから・・・。 「歩・・・。ありがとう。本当に嬉しい」 「いや・・・。オレの方こそ・・・。ただ・・・。 かごめの喜ぶ顔が見たかっただけだから・・・」 「歩・・・」 互いを想いやる気持ちが 伝わりあう・・・ 二人は目を閉じて顔を近づけて・・・。 「あぶぶぶばぁあ」 「いて・・・!」 さくらがばたばた暴れて歩の顔にHIT。 「ま、さくら・・・。お前、元気あるのはいいが、パパとママの ラブシーン邪魔するとは・・・」 「ふふふ。やきもちやきなのかしらね。パパに似て・・・」 「えー。オレ、そんなにやきもち焼きか?」 「うん。相当ね」 くすっと笑いあう・・・。 他愛も無いことで 声を出して笑って・・・ こんな空気がずっと続いて欲しい。 「よーし。みんなで川に入ってみるか!暑苦しい靴なんか脱いで 素足になって」 「そうね」 「きもちいいぞー??さくら。3人でばしゃばしゃしよう」 川原の小石の上に 3人の靴が順番に並ぶ。 真ん中にさくらの小さな赤い靴。 両端に歩とかごめのスニーカー。 パシャパシャ・・・。 さくらを抱いて歩は川の中に足を浸す。 「うおー。つめてぇー・・・」 「でも気持ちいいねー」 かごめの白い素足。 川面に映る笑顔が一層・・・綺麗に見える。 「さくら。ほら・・・。これが・・・川の水だぞ」 小さなあんよ。 ぴちゃっと親指が水につかってびっくりするが 感触が気持ち良いのかにこにこ笑顔に変わって・・・。 「やっぱり親子だなぁ。かごめも水でばしゃばしゃ やるの、好きだモんな」 「えー?それって私が子供っぽいってこと?」 「いやいや・・・。元気で笑顔が可愛いってことさ」 「ふふふ。パパは誉めるのが旨いねー。うふふ・・・」 かごめは腰を下ろして川の中の小石を探し始める。 「あ・・・。ほら。見て。この緑の石。綺麗ねー・・・」 娘に小石を見せる 母の愛情が溢れていて・・・。 (・・・ずっと綺麗になったな・・・。かごめ) 素足の女神 初めて出会ったときより 一層・・・ きらめいて・・・。 「・・・かごめ」 「ん?」 「・・・愛してるよ・・・」 「・・・えっ(照)な、何急に・・・」 「ありがとうな。オレと一緒にいてくれて・・・」 素直な気持ち。 言葉にする大切さもかごめは教えてくれた。 「・・・ん、んもう。あ、あんまり照れさせないで。 恥ずかしいって。えいっ」 バシャッ。 照れ隠しに水をかける。 「やったな。かごめ。よしさくら。負けてられないぞ」 「きゃあ。ちょ、ちょっとたんまー。あははは・・・」 バシャッ バシャッ 川原に3人の笑い声が響く。 歩の女神は今は二人。 かごめという名の愛しい女神と 小さなやんちゃな女神と・・・。 (ずっと・・・。守って生きたい。ずっと・・・) 大声で笑い合える誰かにめぐり合えた。 二人の女神に出会えたことに感謝したい。 飾らない笑顔を注いでくれる 女神に 歩は呟く。 「かごめ、さくら。愛してるよ・・・」 3人がはしゃぐいで水に戯れる川面は いつまでもきらきら きらきら 光って3人を照らしていたのだった・・・。
fin

なんか最後の方はささっと終わってしまった感じになってしまいました(汗) でもまぁ”かごめ”という女神とで会えて幸せになった・・・ということで ラスト感じて頂けたらと思います。有り難う御座いました。