裸足の女神
ACT 今の自分が好きになれる恋愛
チュン。チュン。 歩に助けられた雀。 結局、歩になついてしまい毎朝、米を相伴にしベランダに飛んで くるようになった。 チュンチュンチュンッ! ”ごはんちょうだい!”とばかりに雀の”かごめ”は小さじの 軽量スプーンに向かって激しくなく。 「・・・わかったよ。ちょっと待てって。今 食わしてやっから」 小さじを”かごめ”のくちばしに持っていくTシャツの歩。 「お前、結局群れから離れちまったのか・・・」 一度、外へ出てしまった者は二度と戻れない・・・。 「・・・オレも似たようなもんだ。でも・・・。人は一人じゃないんだぜ?」 ”?” といわんばかりに首を傾げる。 「守りたい者ができると・・・。なんつーかその、力がわいてくるつーか・・・。 あ、べ、別にオレは告白してるわけじゃねーぞ。オレは・・・」 (はっ・・・) 朝からベランダで小鳥と語らう若い男 隣の部屋の住人が物珍しそうに注目・・・。 (だーーーーッ!!) 歩はとっさに部屋に避難・・・。 「・・・。何だか・・・。段々オレ、キャラクター 変わってきてる気がする・・・」 チュンチュン ”どうしたの?”と言う様に首を左右にまわす。 「・・・ま。いいか・・・。はは・・・」 まぁ自分としては無口でストイックな男・・・を イメージしておりますが 小鳥と語らうまだ23歳、若い純情青年の歩君での朝でございました。 ”守りたい者ができると力が沸いてくる” 守りたいもの・・・。 歩の携帯の待ち受け画面・・・ 愛しいかごめちゃんの笑顔です。 (・・・(照)) 「うおーし!今日も一日がんばりますかー!」 朝食を済まし、張り切ってガソリンスタンドに通勤する歩。 かごめが今日も元気に生きていると思うと不思議と力が沸いてくる。 音楽を作っているときも満たされたけれど・・・。 自分の他の誰かを想う気持ち はもっと・・・。 「こらー!稲葉仕事中ににたついてんじゃねー!」 不気味に笑いながら車を洗っている店長につっこまれるが しあわせな笑顔は絶えることなく・・・。 ・・・実に幸せな気持ち 心地いい気持ちだとはじめて知った歩だった・・・。 夜。 昼は若いガソリンスタンドのイケメン店員。 夜はBARのバーテンとライブのボーカルやってる歩君。 カウンターの中でグラスをきゅっきゅと 磨きながらも かごめからのメールを待つ歩・・・。 「おい・・・。歩。お前、なんかヘンなもん食ったのか?」 「どうしてですか。マツさん」 「いや・・・。お前、口が緩みっぱなしだぞ」 (え・・・) グラスに写る自分の顔。 ”クールで無表情”が一応うりだったのに にたあっと笑みがあふれて。 「クク・・・。お前、見た目と中身、ギャップありすぎ。 少女漫画の主人公張りの純情少年だな」 松本が水割りをゴクゴク飲みながら言った。 「そ、そんなんじゃねぇっすよ・・・」 「そうか。女できたか。ヨシヨシ、恋愛は音楽性育てるからな。 で?」 「・・・で?って・・・何だよ」 松本は歩の耳の側耳打ちした。 「もう・・・”モノ”にはしたのか」 「・・・!!!!!!!(混乱!)」 バキッ。 磨いたグラスにヒビが入った。 「なッ・・・・!!!」 「・・・おい・・・。嘘だろ。まだなのか」 「ばっ・・・。な、何かんがえてんだよッ」 歩君、まっかか。 「ウブイねぇ。クックック・・・」 「・・・(赤面)」 歩、松本のからかいに黙ってしまい、きゅっきゅとひたすらに グラスを磨きます。 「ま、いいか。金で女子高生買う男共がうじゃうじゃいる世の中でお前みたいな 男は貴重だからな。思う存分”プラトニックラブ”してくれや。ハッハッハ ま。今の自分が・・・好きになれる”恋愛”しろよ。なーんてオレらしくねぇか」 「・・・(照)」 豪快に笑う松本・・・。 (結局・・・マツさんの酒のつまみにされてやがるのか・・・) やっぱり松本にはかなわない・・・と思う歩だった・・・。 夜中の休憩時間。 歩は外で一服、たばこをふかしていた。 〜♪ かごめからの着信音。 歩はすぐさまでた。 「もしもし?かごめか?」 「・・・歩・・・ケホ・・・」 かごめの声がおかしい。 かすれている。 「かごめ、お前、具合わるいのか・・・?」 「うんちょっと・・・ケホケホっ」 「無理スンナ。電話なんかいいから・・・」 「うん・・・。でも今度の休みのデートいけそうにないから いっておいたほうがいいと思って・・・ケホ」 携帯越しに聞こえるかごめの咳。 「ごめんね・・・」 「いいって。とにかくゆっくり休め?いいな?あったかいモン 食って」 「ウン・・・。じゃあ・・・」 携帯を切ったが・・・かごめの弱弱しい声に歩は不安になる。 ピーポーピーポー・・・。 「!!」 道路の方から聞こえる救急車のサイレンにビクッとする歩。 (・・・。相当・・・辛そうだったよな・・・。肺炎とか起こしてたりしねぇか・・・) 一度植えつけられた不安は想いと比例して大きくなる一方。 「マツさん、すんません!はや引きさしてくださいッ!」 一声、事務所に残し、一路かごめのマンションへ・・・。 そんな歩の後姿に松本が一言つぶやいた・・・。 「化石ものの純情路線か・・・。ふっ」 ピンポーン。 夜にかごめの部屋に突然伺うなどはたからみれば はっきり言って下心ありありという感じ。 (い、いや、俺はあくまでかごめが心配で) ピンポーン。 何度も押してみるが出てこない。 (ま、まさか、気を失って倒れるとか!?) 焦って歩がドアノブに手を描けあけようとしたら。 ガチャッ! かごめの方が先に出てきて 歩くん、ドアに鼻の頭をうってしまった。 「あ・・・歩?ど、どうしたの?」 鼻の頭を抑える 「べ、ベつに・・・。お、お前こそ大丈夫なのか?」 「うん。大分体は楽になった。・・・もしかして、心配して きてくれたの?」 「・・・ま、まぁな(照)」 赤い鼻の頭をぽりぽりかきながら歩は言った。 「ふふ。ありがと。とにかく入って」 「いいのか?」 「うん。ちょうどお茶いれたところだから」 歩は少し神妙に部屋に入った。 (・・・これで二回目だな) だけど緊張する。 まして惚れている相手となると・・・。 なにやら悶々と妄想する歩君。 ちょっとご説明するのはおはずかしい。 「はい。お茶」 ビクッとする歩 「?どうかした?」 「い・・・いや・・・(汗)そ、それよりお前、本当に 大丈夫なのか?顔、まだ赤いぞ?」 「・・・うんだいじょ・・・」 「かごめ!」 フラッとかごめは倒れにかかった。 歩は右腕てかごめを抱きとめる。 (・・・まだすげぇ熱いじゃねぇか・・・) 「ごめん。歩・・・せっかくきてくれたのに・・・」 「しゃべらなくていい。ともかくやすまねぇと」 歩はひょいっとかごめを抱き上げ(お姫様だっこ)ベットへつれていたった。 (歩・・・) 歩の大きな腕・・・。 かごめの体はなおさら火照った。 歩の腕の大きさに・・・。 静かにかごめを寝かせ、布団をかけた。 水で絞ったタオルでおでこを冷やす・・・。 「・・・。どうだ?」 「うん・・・。気持ちいい」 「・・・」 うかない顔の歩。 「・・・どうかした・・・?」 「いや・・・。オレってやっぱ馬鹿だなぁってな・・・」 「ど、どうして」 「だってよ・・・。携帯のお前の咳聞いただけで勝手に心配しちまって 押しかけて・・・。なんかうまいもん買ってくるとか薬かってくるとか 気がまわらねぇっつっかなんつーか・・・」 かごめは苦しんでないか、 倒れてないか自分勝手に想像して焦って・・・。 かごめの容態を考えていなかった。 「そんなこと・・・私嬉しい。だって来てくれるっておもわなかったもの」 「だけど・・・」 大きな足。 あぐらをかいて座る歩がなんだかもじもじしている。 「・・・ふふふ。うふふふ」 「なっ。なんで笑うんだよ」 「だって・・・。おっかしいんだもの」 「何が」 じっと歩を見詰めるかごめ。 おっきなくまがすねている。 「うふふははは・・・」 「笑うなって(汗)」 どうしてかごめが笑うのかまったく分からない歩だが。 かごめの笑い声に、歩は少し安心する。 「でもね。あたしはね、いま、こうして私のそばにいてくれる 歩がすきなの。だから元気出して。ね?」 (・・・かごめ・・・) 何でもしたい。 この女のためなら・・・。 「じ・・・じゃあなんかオレでできることあるか?小難しいことは できねぇが・・・」 「うーん・・・。じゃあ手、にぎってて」 「手・・・?」 「うん・・・さっきね・・・。ちょっと怖い夢みたの」 とても怖い・・・。 夢。 「だから・・・私が眠るまでそばにいて・・・。ね、いいでしょ・・・?」 (ドキッ・・・) 熱のせいで息がすこしあらいせいか・・・ 妙に色っぽく見えて・・・。 「そ、そんだけでいいのか」 「うん・・・私が眠るまで・・・そばにいて・・・」 「お、おう」 もそっと布団から細い手がでてきた。 (ちいせぇ手だな・・・) 歩は両手で包むようにかごめの手を握った。 「こ・・・これでいいのか?」 「・・・うん。ありがと・・・」 歩の大きな手のぬくもりに安心したのかかごめはすぐ目を閉じ・・・ 眠った・・・。 コチコチコチ・・・ 時計の秒針の音がひびく・・・。 スースー・・・。 穏やかな寝息・・・。 (思い切り熟睡しやがって・・・。オレだって一応男だぞ) ちょっと複雑な気持ち。 (けど・・・いいか) かごめの寝顔。 今は自分だけが見ていられる・・・。 (なんか・・・すごく贅沢だな・・・) 恋人の特権。 一体・・・どんな夢、見ているのか・・・。 (・・・どんな夢・・・みてやがるんだろうな・・・) 穏やかな寝顔・・・。 今まで生きてきて23年・・・。 自分以外の人間にこれほどまでにこだわって だれかのためになにかしたい・・・ 夢中になったのは初めてだった。 自分だけの音楽、自分だけの世界観の中で生きてきた。 自分だけの価値観で・・・。 かごめに出会って。 ”誰かのための歌” もあることに気がついて・・・。 「う・・・ん・・・」 寝返りを打つかごめ。 「・・・今の自分が好きになれるような”恋愛”か・・・」 男のプライドも、人の目も、 妙な意地も遠く忘れて だれかのために力になりたい・・・。 そんな自分を 少しだけ、好きかもしれない・・・。 そう思えたのは・・・。 「お前の・・・おかげだな」 かごめの前髪をそっと触れ・・・。 歩はつぶやいた。 翌朝。 かごめが目覚めると歩の姿はなかった。 だが代わりに・・・。 台所の小鍋につくられたおかゆ。 『腹が減ったら食え。悪いけど勝手に台所つかった栄養つけねぇとな。またメールする                            歩』 テーブルの上にメモが。 「歩ったら・・・。ありがとう・・・」 でも歩がつくったおかゆはちょっぴり・・・ 「しょっぱいわ」 塩加減がいまいちだった(笑)