久遠の絆
第17章 恋のチカラ ”オレ・・・。かすみが好きだ・・・” 自覚した恋心。 その相手は目が覚めるとすぐに目の前に居る。 「おはよ!」 「!!」 パジャマ姿で歯磨きしゃかしゃか かすみさん。 「ん〜??朝から顔、赤いよ」 「な、何でもねぇ!!」 まともに顔が見られない。 「あー。何か変な夢でも見たんでしょ??」 背の高い一夜を背伸びして覗き込むかすみ。 (!!) ボタン一つあいたパジャマの隙間。 ちらっと胸の谷間も見えて・・・。 「あ、あ、あっち行け!!」 一夜は背を向けた 「もう!!何よ〜!!朝から機嫌悪いんだから」 (どんな態度とったらいいかわかんねぇ・・・) 自分じゃコントロールできない感情。 まるで心の中にもう一人の自分が居るみたいだ。 「・・・いっただきまーす!」 朝食。 かすみは元気に白米をほおばる。 一夜はそんなかすみをよそに 静かに玉子焼きに箸を伸ばした。 (あ!) かすみと箸先がぶつかって。 (・・・な、なんでこれしきのことで・・・) ささいなことに動揺して。 「あ、一夜。お味噌汁残してる。もったいないよ」 (あ・・・!俺が口にして奴・・・) 一夜のおわんを奪って全部平らげるかすみ。 (・・・なんか・・・。俺が食われてるみてぇな・・・) 体がくすぐったくて。 「一夜ー。私、大学行ってくるけどちゃーんと 今日もお店の仕事頑張るのよー!」 「う、うるさい。早く行け!!」 店先でかすみを見送る。 (!!) かすみがウィンクを送って・・・。 「ば、馬鹿や郎!!早くいけ!!」 「行ってきます♪」 かすみの後姿・・・ 見えなくなるまで見つめ続けてしまう。 (・・・畜生・・・。自分の気持ちが・・・変になっちまってる・・・) 自分が自分でなくなっていく・・・。 「犬君。おめぇさん。完全に惚れちまったなぁ」 「!!」 利三おじさんが(かすみの養父)パジャマ姿で立っていた。 新聞を取りに来たらしい。 「まぁな。かすみちゃんに惚れない男はいねよなぁ。 あんな可愛い子にそばにいられちゃ」 「う、うううううるせぇじじいが」 一夜、ろれつが早くも回ってません。 「でもな犬君。男は惚れただけじゃ駄目だぞ」 「あん?」 「男は惚れられて何ぼじゃわい!!両想いになりたいなら・・・」 利三おじさんはずずいっと、一夜に脂ぎった顔面を近づけて・・・。 「・・・(汗)何だよ」 「いい仕事をする男になるべし!!」 「いい仕事・・・?」 「そうじゃわい。かすみちゃんを幸せにしてやれるほどの 器の男になるんじゃ」 (・・・かすみを幸せにできる男・・・) なぜか月森の顔が浮かんだ。 (なっ。アイツは関係ねぇ!!けっ。金持ちボンボンのインテリなんざに 負けてたまるか!!) ジェラシーに火がついたよう。 その日から一夜は今までの態度を180度改め、 昼間は店を手伝い、夜はかすみが紹介した学習塾(12話辺り参照)へ行って 一気に高校生レベルまでの内容をマスターした。 「うおーし!!」 店の厨房にも教科書をもちこみ、 鍋の裏に英単語を書いて暗記。 「これ!犬君。皿に数字ケチャップで書いてどーすんだ!」 時々勉強しすぎちゃったりもしておりますが(笑) 1ヶ月後の大検に向けてエンジン全開の犬君です。 そんな一夜の様子をかすみも嬉しそうに見守っている。 (一夜・・・。やる気になってくれて嬉しい。ふふ) お風呂の中で微笑むかすみ。 (ん?) くもった硝子にまで指で一夜が書いたと見られる数式が。 (ふふ。うふふ・・・一夜ったら) 一夜が元気になることが何より嬉しいかすみ。 「偉い偉い一夜。がんばって♪鏡にごほうびあげる」 CHU! 鏡の数式にごほうびのキスをしました。 (か、鏡に何やってんだよ///) お風呂場の外で赤面する一夜。 ・・・君こそお風呂場の外で何をしていたんでしょうね(笑) そしていよいよ明日です。 大検の試験の前日の夜。 かすみは一夜の部屋を訪ねてあるものを手渡していた。 「お守り?」 「うん。ご利益あるんだから。私が大学受験のときに持っていったものなの」 「・・・けっ。いらねぇよ。オレの努力をもってすれば」 突っ返す一夜だが・・・。 「いーから持って行きなさい!私だと思って・・・ね☆」 (かすみだと思って・・・?) これを持っていけば・・・ かすみがそばにいてくれる気がする・・・。 「わかったよ。しかたねぇな」 「それから。合格したらね。デートしよう」 (!??) 一夜、かすみの突然の申し出にベットからガバッと起き上がった。 「で、でぇと!??」 「そ!合格お祝いも兼ねてだけど・・・。デートするからには その日だけ、彼氏と彼女ってことで☆」 (お、俺が彼氏で・・・。かすみが彼女・・・?) ちょっといい響き。 カレシとカノジョ。 ”一夜。お待たせ♪” 雑踏の中、腕を組んでかすみと歩く映像が一夜の脳裏に浮かぶ。 ”一夜・・・。今日だけ彼女にして・・・。一夜のものに・・・” とブラウスのボタンをはずしているかすみちゃんまで想像しちゃってます。犬君☆ 「か、かすみ!いくらなんでもまだ早い・・・」 「??あんた、何一人自分の世界にはいっちゃってるのよ」 「!!!」 いやぁ。犬君、ウフフな想像全開です☆ 「いい?だからぜんりょくで頑張るのよ!一夜の努力は絶対に 実るから!」 「わ、わかったよ・・・。早く寝テェから出てけ」 「はいはい。じゃあゆっくり眠って明日ね!」 パタン・・・。 (か、かすみとでぇと・・・。一日だけカレシとカノジョで・・・) 一夜、何だか試験より緊張してきて 部屋をぐるぐる回ってます。 (かすみとデート・・・カレシとカノジョで・・・(萌)) ”男は惚れられてなんぼだぞ!” 「・・・。よし!!」 一夜、かすみが置いていったお守りをぎゅっと握り締め 気合を入れる。 (絶対ぇ合格するぞ!そんで・・・そんで・・・) ”かすみとでぇと。そんで初チュー!!” 「ち、違ッ(動揺)誰もそんなこと想像してねぇだろッ(してた)」 どこからか聞こえてきた神の声(?)に一人問答する一夜。 一夜17歳。 初めての恋からもらったチカラが 彼を前向きにする。 試験は明日。 さて初デートと相成りますか・・・