第21章 アルバムから生まれた疑惑 かすみは久しぶりに月森の屋敷に立ち寄っていた。 「これ・・・」 「ああ。全部彼だ」 とあるスケッチブック。 それには一夜の母が描いた一夜の似顔絵が・・・。 ページを捲っていくごとに 10歳、12歳と大きく成長していく一夜が描かれて・・・。 「警察が押収した品物の中から出てきてんだが・・・。 きっとアイツの力になるだろうと思ってな」 「ええ・・・!きっと喜びます!お母さんとの思い出が少ない 一夜ですもの。月森教授、ありがとうございます!」 スケッチブックをぎゅっと嬉しそうに握り締めるかすみ・・・。 かすみの笑顔に月森の心中がざわつく。 「・・・かすみ・・・。嬉しそうだな・・・」 「そりゃ嬉しいですよ!一夜の心の糧になるものが 見つかったんですもの!」 「・・・。それ・・・。だけか?」 「え?」 かすみとじっと見つめる月森・・・。 「いや、なんでもない」 「教授。ありがとうございました!」 バタン! かすみは一目散に山を降りていった。 過ぎ去るかすみの車を 窓から見下ろす月森・・・。 (・・・好きな男を喜ばせたい・・・女の子の顔に見えたんだがな・・・) そして自分の心が微かに苛ついて・・・。 「・・・。さてと・・・。残ってる報告書しあげますか・・・」 苛つきの原因をずっと胸の底に押し込める月森だった・・・。 「ねぇー!これ!一夜見てみて!!」 家に戻ったかすみはスケッチブックを一夜に見せた。 「・・・これ・・・。俺か・・・?」 「そうよ!一夜のお母さんが・・・成長していく一夜を 描いていたの・・・」 一夜はそのスケッチをじっと眺めている・・・。 (無反応・・・?嬉しくないのかな・・・) かすみはちょっと不安になる。 「・・・けっ。お袋のヤツめ。いつのまにこんなモン描いてやがったんだ」 「う、嬉しくない・・・?」 「・・・。別になんとも・・・」 「そっか・・・」 しゅん・・・とするかすみだが・・・。 「・・・これ、貰っていいか?」 「え、う、うん・・・」 かすみは静かに部屋を出た。 ドアの隙間からすこーし覗いて・・・ すると・・・ スケッチブックをじっと・・・ 懐かしそうな目で眺める一夜・・・ (・・・ふふ。やっぱり嬉しいんだ・・・) あのスケッチブックは・・・。 母が一夜を愛していたという証拠・・・。 一夜が唯一信じていた愛。 (一夜・・・。貴方は一人じゃないから・・・) 「おう。覗き見してんじゃねぇぞ」 「えっ。ばれてた・・・?」 「けっ・・・」 いつもと同じ。 しかめっ面の一夜・・・。 でも最近は・・・。 「へんっ。オレがお袋のスケッチぐれーで 泣いて喜ぶとでも思ったか!」 (素直じゃないところは変わってないけど・・・。ちゃんと 私の目を見てくれる) 「なっ・・・。なんだよ。じっと見て・・・」 「ううん。なんでもない。ふふ。じゃおやすみ・・・!」 (・・・。か、勘違いしそうになるだろ・・・///) かすみに一喜一憂する自分。 そんな自分も最近はいやじゃない・・・。 もっと知りたくなる。 それが恋の症状。 (・・・そういや・・・。かすみのガキの頃の写真って 見たことねぇな) 翌日。 かすみが大学へ行っている昼間・・・。 ガチャリ。 かすみの部屋に怪しい男、ひとり。 (かすみは・・・いねぇな) 以前にもこっそり。かすみの部屋に忍び込んだが。 (・・・あんときはあんときだ) わけの分からない理由をつける一夜。 (・・・はっ。こ、これは・・・ッ!!) 足元に落ちていたのは・・・。 17歳初恋君には少々刺激が強い代物。 ・・・黄色のブラ・・・。 (///。お、落ちてただけだ。それだけだ) といいつつちゃっかりサイズを確認する17歳です(笑) ちょっぴりラッキーな出会いはさておき・・・。 別の目的が。 (アルバムアルバム・・・っと) 本棚の白いアルバムを一夜は引っ張り出した。 ぺらぺら捲ってみる。 高校生のかすみ、中学生のかすみ、小学校のかすみ・・・ 小さくて可愛いかすみがいっぱい。 かすみの成長記録だ。 (///) 恋する少年は何でも知りたがり。 かすみのことなら何でも・・・。 (ん?変だな。小学校以前の写真がねぇ) 小学校二年生からの写真はあるのにそれ以前の写真が一枚もない。 (・・・なんでた。中途半端だな) ぺらぺらアルバムを捲っていく。 最後のページに何か文章が・・・。 『あの子はどうしてるだろう。お母さんの生まれ変わり のあの子は・・・』 「・・・?どういう意味だぁ?」 一夜が首をかしげていると (はっ!!足音が!) 一夜、階段を上がってくる足音に焦る。 (ど、どどどどうすんだ!!) 犬君、とっさに隠れた場所は・・・。 かすみのベットの下。 (せ、狭い・・・(汗)) 体を九の字に曲げて手足を縮める。 (・・・くそ・・・俺って・・・) キィ・・・。 かすみが入ってきた。 ストッキングをはいたかすみの足が見える。 (///) ちょっとスリル。 ちょっとドキドキの犬君です。 さらに。 「はー・・・。疲れたっと」 (・・・ドキ) スルっとストッキングをつま先から引っ張って脱ぐかすみ・・・ その仕草が何だか・・・ (・・・色っぽい) さらにドキドキ17歳の鼓動です☆ 「はーあ」 そしてするっとスカートが落ちて・・・ ってことは・・・? かすみは今・・・ (・・・vv(妄想)) 犬君、少しだけお鼻がひくひく・・・してますよ? 「おじちゃんたちの手伝いしてこよーっと」 エプロンをつけてかすみは下に下りていった・・・。 (・・・行ったか) 潜伏犯、一夜、こそっとベットの下から出てきた。 (はー。びびった。見つかったら半殺しだ・・・) と思いつつ。 (・・・///) 脱ぎたてのかすみのスカートにちょっとドキドキvv かすみのお部屋探索は今日はここでおしまいのようですが・・・ (あの変な文章、なんだったんだろうな) 妙に心に引っかかる一夜・・・。 この小さな疑惑が 大きな傷になることを 一夜はまだ知らない・・・。 RIRIRIRIRI! 電話が鳴った。 「はーいもしもし!」 かすみが出た。 (ん?) 受話器を持つかすみ。 だが・・・。 (何であんな暗い顔・・・) 深刻なかすみの表情に一夜の胸は 騒ぐのだった・・・