久遠の絆 第30章 プレゼント 「かすみ・・・オレ・・・。かすみのこと・・・好きだ」 ついに一夜が告白した・・・。 だがかすみは無言。 「ごめんなさい・・・。私・・・年上の男性がすきなの」 「え・・・」 かすみの横に月森の姿が現れた。 「悪いが・・・。大人の恋愛をしているんだ。 お子様は眠ってなさい」 「じゃあね。一夜」 (あ・・・。かすみまってくれかすみ・・・!) 手をつないだ月森とかすみが霧の中消えていく・・・。 (まってくれぇえ!!) 「はッ!!」 チュンチュン・・・。 手を伸ばしてお目覚めの一夜・・・。 「・・・。夢か・・・」 一夜の恋。 相手は年上で自分のことを弟思っている。 (・・・くそ・・・。今は己を鍛えるって決めたのに・・・) ”あ、月森先輩?” 月森からの電話に声のトーンが変わっただけで嫉妬してしまった 自分の幼稚さが情けない。 一夜はペチっと自分の頬を叩いて気合を入れる。 「今のオレの目標は一人前になること・・・!」 一夜は布団をたたんで、顔を洗い、 仕事着に着替える。 「よし!今日もぶんばるか!!」 今日一日を懸命に生きる。 かすみから教わったことだ。 「犬っころ!大皿出して来い!」 「はい!」 一人前の料理人になるために修行の毎日を 懸命にこなすことだ。 一日一日を・・・充実に 「犬っころ。ほれ今月分だ」 「ありがとうございます」 茶封筒に入った数万円。 一夜は銀行へ行って速攻貯金。 通帳に記帳して・・・ (よし・・・。結構たまったな。これで・・・買えるぞ) 一夜は前から考えていた。 お金が給ったら・・・。 まず買うのは・・・。 「まぁ!犬君!これを私達に・・・?」 「お、おう・・・///」 春分の日。 おじさんと菊枝おばちゃんの実は結婚記念日なのだ。 一夜はちょっと高価な瀬戸物の夫婦茶碗をプレゼント。 「一夜。あんた・・・センスいいじゃないの!すごい、見直しちゃった」 「///」 「か、かすみにもあるんだぜ・・・」 「え?」 白い紙袋から一夜は 白いワンピースが・・・ 「これを・・・。私に・・・?」 「お、オレが着るわけねぇだろッ//」 駅前のブティックのショーウィンドウ。 真っ白なワンピースを見つけた。 (あの白百合に・・・似てる) かすみのためにあつらえたワンピースだとさえ思った。 (・・・高けぇ) だがワンピースの値段が一夜の購買意欲を打ち消してしまったのだ・・・。 「・・・それでずっと・・・。お金をためてたの?」 「・・・お、おう」 (・・・かすみの奴・・・。オレの感謝してやがるな・・・//) と、一夜、少しご満悦。 だがかすみの顔は少し曇っている。 「・・・一夜。キモチは嬉しいけど・・・。 一夜のお給料なのよ・・・?自分のために使わなきゃ・・・」 「な、なんだよ!!気にいらねぇってのか!」 「そ、そういうわけじゃ・・・」 「けっ。なんでいなんでいッ!!」 一夜はそっぽをむいてあぐらをかいてしまった。 (あらら・・・ご機嫌損ねちゃったみたい) 一夜が自分の力で稼いだお金。 それは一夜自身のために使ってほしいと思って言ったのだが・・・。 「・・・ねぇえ。一夜。どうかな」 「なんでい、謝ってもゆるしてなんかやら・・・」 白いワンピースに着替えたかすみ・・・ くるっとまわったらスカートがひらっとひらめいて。 「・・・」 一夜、見惚れて言葉がないようです(笑) 「どう・・・?」 「はっ(覚醒)べ、別に・・・、に、似合ってんじゃねぇかッ?///」 「ね?コレ着てデートしようか?」 (え!??でえと!?) 一夜、かすみから”お誘い”にドキドキ。 「へへ〜。せっかく一夜がくれたプレゼント。 一緒に公園までデートしましょ」 (こ・・・公園・・・か(汗)) 何故か残念がっている一夜。 いったいどこへいくのかと思ったのでしょうか(笑) 「おじさんおばさん。ちょっと出かけてきます」 「ああいっといで。二人でデエとしておいで」 おじさんとおばさんに後押しされ、一夜とかすみは 公園までお散歩デート相成りました。 (か、かすみとでぇと・・・v) 「ふふ。デートだし腕ぐらい組もうか」 (・・・ドキ) 一夜の腕にかすみの細い手がからまる。 一緒に並んで歩くのは久しぶり・・・。 かすみは気がついた。 「・・・。一夜・・・。背、伸びたね」 「え?そ、そうか」 「そうよ」 かすみの肩が一夜の二の腕あたりにくるほどに 背丈が伸びた。 「・・・心も体も成長してるのね・・・。ふふ」 (こ、心も・・・体も・・・///) かすみの言葉、一夜の脳内ではちょっと違ったニュアンスに 変換されたよう。 公園に着いた。 肌寒い公園。 人は居なく静かだ。 二人は木製のベンチに並んで座った。 「・・・はー・・・。寒いけどなんかいいね」 寒いけれど だからこそ分かる太陽の陽の温かさ。 (冬の昼の太陽か・・・。まるでかすみみてぇだ) 生暖かくなく 心地いい 温かさ 「・・・ねぇ」 「なんでい」 「・・・一夜・・・。私なんだか強引に貴方を料理に道に進めたっていうか・・・。 そういう気がしていたんだけどどうかな」 「・・・別に。切っ掛けはどうであれオレ自身で決めたことだ・・・」 「そう・・・?ならいいんだけど・・・」 「オレは自分の決めた道を突き進む・・・。かすみ、おまえがきっかけをくれたんだ・・・」 噴水をぼんやり見つめる一夜・・・。 その横顔は 暗い部屋で震えていたあの一夜はもういない・・・。 「・・・。一夜・・・。本当に強く・・・なったんだね・・・」 「・・・強くなんかねぇ・・・。本当は時々、すげぇ・・・。 怖くなる・・・。でも・・・」 ”かすみに認められたい” ”かすみに頼られる男になりたい” かすみの笑顔を見るたびに溢れそうな強い想いが 一夜を駆り立てる。 「・・・一夜・・・」 「・・・。オレは・・・。かすみのお陰で・・・。自分を 見つけられた。見失わずに・・・。だから・・・かすみを安心させたい」 「充分安心してるわ・・・。今の一夜の顔を見たら・・・」 「・・・。安心させたい。それから・・・」 「それから・・・?」 かすみをじっと見つめる・・・ (かすみ・・・かすみ・・・) 目の前に居るかすみを 抱きしめたい・・・ 力いっぱい・・・ 抱きしめたい・・・ 「・・・?どうかした・・・?」 「・・・。オレは・・・。オレは・・・」 ”弟みたい” (・・・) 抑えこむ・・・。抱きしめたいという衝動・・・。 「・・・。かすみ。俺・・・。絶対、何が何でも 一人前の料理人になる」 「うん」 「そしたら・・・。おじさんたちの店を・・・手伝って・・・ 支えたい・・・」 「うん・・・。信じてる」 「・・・。大人の男になったら・・・。かすみ・・・。俺は・・・ お前に・・・」 (・・・犬・・・夜叉・・・?) かすみの肩にそっと・・・ 手を添える・・・ 「・・・お、お前に・・・。う、う、まいもん・・・ 作ってやるから・・・」 一夜のその言葉に・・・ かすみはにこっと微笑む・・・。 「うん。待ってるね・・・」 「・・・///」 (この笑顔にオレは・・・弱いんだな) 「あ・・・。一夜。見て、白い鳩・・・!」 一羽の白い鳩 かすみの腕に静かに舞い降りた。 「うふふ。ねぇ可愛いね。まだ子供かな」 「・・・」 「きっと巣立ちの練習なのね・・・。飛ぶ練習・・・。 一生懸命に・・・」 まるで・・・ 一夜のように 羽根が傷ついている 飛ぶ練習をしているのだろう 「・・・さぁ・・・。がんばって・・・?大きな空へ・・・飛んで行って・・・!」 バサバサッ・・・! かすみの腕に止まった鳩・・・ 勢いよく飛び立った・・・ 大きな 大きな空へと・・・。 「・・・かすみ・・・」 かすみの頬に一筋の涙が・・・ 「一夜が成長していくことが・・・。嬉しいような・・・。 どこか寂しいような・・・。でもやっぱり嬉しい・・・嬉しいの・・・」 母が救った命。 強く生きていこうという姿が 母の魂が生きているようで嬉しい 「かすみ・・・」 「一夜・・・。あなたにはたくさんの可能性が ある・・・。あの鳩のように・・・大きく羽ばたいてね・・・?」 「かすみ・・・」 かすみの涙・・・ 肌で感じる かすみの深い深い・・・愛情 それが例え恋じゃなくても (オレはずっと・・・。かすみに見守られていたんだな・・・) かすみの想いに包まれていた・・・ 「かすみ・・・」 「ごめん・・・。泣いちゃって・・・へへ。今、泣き止むから・・・」 ハンカチを取り出して目を拭くかすみ 「かすみ・・・!」 (え・・・?) 気がついたら・・・ 一夜の両腕はかすみを抱きしめていた・・・。 「・・・。俺・・・。本当に頑張るから・・・。 おまえのために・・・。おまえの・・・オフクロさんのために・・・」 「・・・うん・・・うん・・・」 「・・・かすみ・・・ッ」 抑えられない想い たとえそれを”恋”だとかすみに伝わらなくても 抱きしめられずに入られなかった こんなにこんなに・・・ (俺は・・・かすみに大切に想われている・・・) たとえそれが恋じゃなくても 男として見られていなくても 「一夜・・・」 「・・・ありがとうな・・・かすみ・・・。オレを・・・立ち直らせてくれて・・・」 「・・・一夜・・・」 「ありがとう・・・な・・・ありがとう・・・」 感謝の気持ち せめてそれだけは伝えたくて・・・。 「ううん・・・。私こそ・・・私こそ・・・」 一夜の力・・・ 前はただ、乱暴なだけだったけれど・・・ かすみを労わるように 力加減を意識した抱擁で・・・ (・・・。一夜・・・) 一夜と抱き合ったことはあるけれど 明らかに違う・・・ 腕の力強さも ぬくもりも それは確かに”男性”の力強さで・・・ 「・・・。ひ、人が見てる。はは。姉と弟が 抱擁なんて・・・」 ぱっと一夜から離れるかすみ。 「・・・かすみ・・・?」 「一夜・・・。今日の言葉。私一生忘れない・・・」 「あ、ああ・・・」 「じゃあそろそろ帰ろうか。ね」 かすみは一夜の手を繋ぐ。 ・・・腕じゃなくて。 「はー・・・。本当に今日はいい天気ね・・・」 「そうだな・・・」 (・・・。やっぱりオレは・・・かすみにとってはまだまだ ”弟”なんだな・・・。それでいい。今は・・・) もっといい男になって 強い男になって・・・ かすみと同等に肩を並べられる男になる・・・ 繋いだ手をぎゅっとリートできるように・・・。 一方かすみは・・・ その夜。 試験勉強。机に向かうかすみ。 (・・・。そうよね・・・。一夜は・・・。男の子だったんだ・・・) 明らかに変わった一夜に かすみの心は戸惑いが・・・ (・・・。そのうち・・・素敵な恋をしても可笑しくはない・・・。 そう・・・。私・・・なんか勘違いしてたのかもしれない) 母親のように 姉のように 見守っていたつもりだけれど 一夜はいつまでも子供じゃない 弟じゃない (・・・。私も成長しなくちゃ・・・。一夜に負けていられない) かすみは自分の腕をじっと見つめた。 (・・・) 一夜に抱きしめられたときの・・・ 一瞬感じた・・・ ときめき あれは・・・ 「・・・。しゃきっとしなくちゃ!よし!」 自分の頬を叩いて 打ち消す・・・ 一夜とかすみ この先待っているものは・・・