久遠の絆 第35章 サクラ、フタツ、サク。 ”ふたりで・・・がんばろう” (二人・・・。オレとかすみ・・・。二人で一つ・・・。 ひとつ・・・///) かすみに貰ったお守りをにやにやしながら 見つめて、一夜、妄想の旅。 ”私・・・。一夜と一つになりたいの・・・” (・・・///い、いつかそんな日が・・・) ”ひとつに・・・” 「ひとつにせんかい!!」 「えッ!?」 料理長の一声で、妄想終了。 「そっちの野菜、和えろっていっただろうが!」 「あ・・・」 菜箸でボールの中の野菜を混ぜていた最中。 「・・・犬っころ。てめぇの色恋に口出すほど節介野郎じゃねぇが 厨房で助平な根性は捨てるんだな」 「は・・・はい・・・(汗)」 一夜の心も料理長に根こそぎ裁かれております(笑) (しっかりしろ自分!明後日は試験だぞ!) かすみと同じ日に・・・ 同じ試練が・・・ 「うおおお!!やるぜ!!!」 一夜は菜箸を握り締めてガーっと和える。 「犬っころ!てめぇ、混ぜすぎだろうが!!」 ・・・料理長の喝が一夜のエネルギーを盛り立てていく。 その一夜のエネルギーは見えない力となって かすみに伝わっているのだろうか。 (さー!追い込み行くわよーーっ!!) 休み返上で大学の図書室で参考書や専門書を 読み漁るかすみ。 (・・・一夜も・・・前に進んでるんだから・・・。 私も負けてられない・・・) 自分の道を見つけて 歩き出している。 お守り・・・。 母の墓がある寺に祈願してもらった。 (・・・お母さんが守った命・・・。懸命に生きているんだから 私も・・・) 『かすみ・・・人の痛みに・・・痛みに寄り添える人間になりなさい・・・。 理解することは難しくても・・・。寄り添うことは出来る・・・』 幼かったかすみ。 母が言っていた意味がわからなかったけど・・・ 今なら分かる。 (・・・。人の心を分かりたいなんて思ってない・・・。 少しだけ・・・触れられたら・・・それでいいの) 専門書には、難しい専門用語がぎっしりとつまっている。 医学用語やら政治的な制度についてまで・・・。 (・・・知識も大切だけど何より・・・。自分の心の余裕) 自分に余裕がなければ 自分の心に”空席”をつくっていなければ共倒れだ 「・・・理屈も大切。でもとりあえず・・・。試験勉強!」 理念を形にするには 現実的な課題もこなさなければならない。 (試験も・・・。私の心鍛錬よ。ね、お母さん) "何事も心の鍛錬よ。かすみ" 母の教え。 大人になって、何かを志して初めてわかった・・・。 「よし。明日は・・・。全力を尽くす!」 机の上のランプにお守りをぶら下げる。 「・・・。一夜と一緒に・・・ね」 頑張っているのは一人じゃない。 (私と一夜・・・。一緒に頑張るから・・・) ”本当は彼の気持ちわかってるくせに!” 「・・・!」 前に・・・ 料理長の娘、由香に言われた言葉が急に浮かんだ。 (・・・) 一夜の想い・・・ 自分に向けられている想いが 単純な”慕い”ではないことは感じている そして一夜の想いを受け入れてもいいと 思う自分がどこかにいるということも・・・。 (・・・。駄目・・・。それだけは駄目・・・。今の関係が一番なの・・・。 私にとっても。一夜にとっても・・・) 『越えられない壁』がある・・・ ・・・消えない記憶がある・・・。 「”親友”として・・・頑張ろうね・・・。一夜・・・」 夜空。 明日は晴れになってね・・・と少し切なく呟くかすみだった・・・。
「一夜。朝食、ちゃんととってきた?」 「おう」 「ちゃんと受験票持ってきた?」 「お、おう!!」 一夜の額には、セロハンテープで受験票を貼り付けてきた。 「あんた・・・。キョンシーじゃないんだから」 「きょんしー?なんだそれ、うまいもんか?」 「・・・(汗)そうね。アンタは知らないわよね。ああもう 試験はじまるわ!じゃ、お互い頑張ろうね!」 バチン! 手を叩きあって 「じゃ!」 隣り合う試験会場へそれぞれ入っていく。 (がんばれよ・・・かすみ) (落ち着いてね・・・一夜) それぞれ互いに心の中で励ましを送りつつ 試験に挑んだ・・・。 そして合否発表の日。 一夜はかすみの番号を。 かすみは一夜の番号を確かめに行って・・・。 各会場で受験番号を書いたメモを二人同時に見上げる・・・。 (・・・。あった・・・!) (あったわ!!) 「一夜ー!!あったわよーーー!」 「かすみ、あったぞ!!」 互いに合格発表会場を大声で 呼んで飛び出してきた。 「かすみ!おめでとう!」 「あんたもよ!おめでと!」 歩道でぴょんぴょん手を取って 喜び合う。 「きゃー☆☆二人で桜、一足早くさかせちゃってね」 「おう!!咲いたな!!」 ぴょんぴょんぴょん。 五回は回ってます。 (はっ///) かすみと手と手を取り合っちゃってる状況に気付き、ぱっと 手を離す純情一夜。 「?どうしたの?」 「え、あ、いやぁー・・・」 (・・・お、落ち着け。今は兎に角、合格を 祝うことだよな) ”合格したら・・・。” かすみに告白しようと思っていた。 (お、男のしょーねんばだ!) 「か、かすみ、あのよ・・・」 「え・・・?」 「・・・。こ、こ、今度の休み・・・暇か?」 もじもじ・・・ 一夜、ちょっと俯き加減。 「え?うん」 「な、ならよ・・・。い、一緒に合格祝いしーぜ・・・。 そ、その・・・」 「いいわよ!ふふ。どこいこう??」 「え、あ、あの・・・。ど、どこでもいい。 お前が決めてくれ。じゃ、じゃあなッ!!」 「あ・・・」 顔を真っ赤に 走り去っていく。 (一夜・・・) また背が伸びた・・・ 大きくなった背中。 広くなった背中。 (おめでとう・・・。本当によかったね・・・) 街路樹の椿の花にそっと呟く。 一足早い春。 ふたつの夢のサクラガサイタ。 ・・・さてさて恋の春はどうなることでしょう・・。 二人の恋の花は・・・。
・・・各専門的な試験については全く知らずに書いておりますので(駄目だろ) 変な描写があってもスルーしてください(汗)