久遠の絆 第40章 君が笑顔になる花を植えよう、手紙を送ろう @ かすみの悲しみ 苦しみ どうしたら近づける 寄り添える 男である自分には想像できない どうしたら・・・ 「おい!てめぇ!」 「・・・!」 包丁を研ぎつつ、一夜の心はかすみでいっぱい。 「女のこと考えるなら仕事の後にしやがれ!」 「・・・は、はい」 (・・・オレにはもう一つ仕事がある、いや恩返しだ) 『かすみを元気にする』 という役目。 いや、運命。 「・・・でも・・・。何ができるのか。何が言えるのか」 言語中枢ひっかきまわして 考えても 浮かばない。 誰かを 誰かの 心を支えたい、元気付けたい なんて難しいことなんだろう。 (・・・。かすみは・・・凄いんだな。凄い心なんだな) 荒れていた自分の心を穏やかな海にしてくれた かすみという名の太陽の大きさを改めた感じる・・・。 ”花壇が血に染まった” (・・・花か・・・) 仕事帰り。 花屋の前で足が止まった。 可愛いぴんくや黄色の花たち。 花や植物はどうしてただ、咲いているだけなのにこんなに 人の心を和ますのだろう。 花や植物、言葉無き生き物達は 人間を励ますために咲いて、生きているわけではないのに・・・。 (・・・オレにもそんな力があったら・・・) しゃがんで、そっと手に触れてみる。 ・・・可愛い花びら。 ”血に染まった花壇” かすみの記憶の中の花壇は 今も生臭い色をしているのだろうか 消えていないのだろうか・・・ (・・・) 「すいません!外にある鉢植え全部ください!!」 ありったけ鉢植えと スコップ、軍手と肥料を買い揃え。 「料理長!店の前の花壇、貸してください!」 一夜が働く店の前の花壇を借りて。 (・・・。想いつくことはこんなことぐらい だけど・・・) 何もしないより 何かしたい。 一方的なことかもしれないけれど。 小さな花たちの不思議な力を借りて 大切な人の心に寄り添いたい。 「お前、随分地味な趣味あったんだな」 「いえ、オレのための花じゃないんです。 オレのための花じゃ・・・」 頬に土をつけて。 『ガーデニング初級編』 本を見ながらせっせと植えていく。 かすみの好きな色合いを考えて。 でっかい男が 腰をかがめてちっちゃい花を植えていく。 (かすみが元気になりますように・・・ かすみの心にも笑顔の花が咲きますように) 柄にもないことを 素直に考えている自分がどこか奇妙だ。 けれど、らしくないことを 素直な気持ちでできる自分も ・・・嫌いじゃない。 「おう〜。なかなかいいじゃねぇか。 おめぇ、センスあるんだな」 料理長のお褒めのお言葉が。 「へへ・・・」 と鼻の下を指でこすれば、土がついて。 (・・・。これでかすみがどれだけ 元気になるかわかんねぇけど・・・) 花の不思議な力が届きますように 花の優しい香りが香りますように 花の優しい色が瞳に映りますように ・・・かすみの心が一ミリでいいから癒されますように 誰かの何かを祈る気持ち ・・・初めて知った。 誰かのために何かしたい気持ち。 したいけど、難しくて出来ないもどかしさ。 (色んな気持ち・・・。教えてもらった) 沢山のきもち。 (・・・直接言葉はかけられねぇけど・・・。そうだ。 字にしてみよう) かすみの顔を直接見たら 多分、何を言っていいか分からないだろう。 手紙にしてみよう。 「便箋と封筒どこ行ったー!!」 カラーボックスの中身をショベルカーのように 掻きだして便箋セットを探す。 「無い・・・」 だけどある物を見つけた。 (・・・(汗)) A4の作文用紙。 「こ、これでいいか(汗)うおーし!気合いれて書くぞ!」 最初の一行目。 タイトルが 『かすみについて』 ○月○日 一夜より。 「・・・。が、ガキの夏休みの感想文みてぇだな。ま、 いいや(汗)」 (大事なのは形じゃねぇ。気持ちだ) そう思って書いて見るが・・・。 だが・・・ (・・・。や、やべぇ。やっぱ言葉がでねぇ) 差しさわりのない それでいて穏やかな言葉。 適した言葉が浮かばず。。 ・・・2時間。 「・・・。かすみをイメージして思いつく言葉を 連ねてみよう」 まっさきに思いついたのが 『かわいい、笑顔』 (///) 照れている場合じゃない(笑) でも思いつく言葉書いて見る。 『優しい匂い、やわらかい髪』 (・・・///) やっぱり照れている(笑) でも思いついちゃうのだから仕方ないので やっぱり書いていく。 『白い肌。綺麗な鎖骨、・・・胸』 (・・・。どこ書いてんだ。焦) 流石に↑の部分は削除(笑) イメージする言葉が尽きたようなので、 お題をつくってみました ”かすみの似合う色は?” 「・・・。ピンク。白」 ”かすみの似合う花は?” 「・・・たんぽぽとチューリップとそれから・・・」 思いつく花の名前結局全部かいちゃいました(愛) ”かすみが似合う食べ物” 「・・・。わたがし」 白くて甘くて幸せになれる。 なんだか・・・おいしそう★ 「・・・。”おいしそう”はやめとくか(汗)」 まだまだイメージしてみる。 ”かすみの一番素敵なところ” 「・・・。全部///」 ・・・全部な様です(笑) ”かすみに似合う漢字、または言葉” 「・・・。笑、愛、桃、恵、健康、・・・おいしそうって それは違うーーーっ!!(自爆)」 ・・・おいしそうはやっぱり削除です(笑) まだまだ いっぱいいっぱい書いて見る。 もっともっと いっぱいいっぱい 浮かべる。 「・・・。原稿用紙埋まっちまった」 一枚目埋まってしまいました。 なので二枚目に行って見ます。 (かすみのいいところ。かすみの かわいいところ・・・) かすみの事。 かすみとの思い出。 かすみと一緒に見た景色。 いっぱいいっぱい書いて見る。 かすみという存在が 確かに 確かに 此処にあるよ、 在って欲しいと 願って・・・。 「やべえ。二枚目も埋まった(汗)」 なので三枚目に突入。 (・・・まだまだかける) かすみについて。 感じること全部・・・。 「・・・。お、終わったぞ」 とりあえず、書き終えて・・・。 気がつけば夜も明けて (朝だ(汗)) 一晩で何回、かすみ、と書いただろう。 何文字書いても飽きはしない。 むしろ幸せで。 「でも・・・。オレが幸せじゃ意味が・・・ねぇんだよな。 かすみが幸せじゃないと・・・」 人間が持たない、言葉と花の力が かすみの”活きる”糧になりますよう 「よーし!後はこれをかすみに届けるだけだ!」 ぺったん! 切手に張って、赤い郵便ポストに入れました。 (神様・・・。どうか・・・。少しでもかすみに 元気が戻りますよう・・・) 神様なんていないかもしれないけど ・・・信じたい。 信じて叶うなら・・・。 「・・・まぶしい・・・。アッタカイ・・・」 見上げた太陽は 初夏の太陽。 新緑を鮮やかに照らして活き活きとさせる。 (・・・かすみみてぇだな) 新緑の青さを感じながら またいつもと同じ日常の始まりだ。 (・・・。めそめそしてられないわ。痛みを 抱えてたって時が流れる・・・) かすみの日常もまた 始まって・・・。 コトン。 かすみが出かけていった後で ポストに届けられた一枚の葉書。 ・・・ちょっと不器用で けれど純粋な愛への切符。 『かすみへ。○月○日。朝9時にオレの 店まで来てくれ。犬』 純粋な愛が待っている。 (・・・。何だろう・・・。やっぱり・・・。 怒ってるのかな・・・) ”触るな!” 酷いことを言ってしまった (謝らなくちゃ・・・。ちゃんと・・・) かすみが葉書を読んだのはその夜のことだった・・・。