久遠の絆 第41章 ”愛してる”より強いもの 『かすみへ。○月○日の朝、9時に店まで来てくれ 犬』 「来て見たけれど・・・」 一夜の姿は無い。 『花だんを見てくれ』 ダンボールのきれっぱしに太字の黒マジックで 荒々しい字。 (・・・一夜の字よね。どこからみても(汗)) 何か待っているのか 店の裏にゆっくりまわった。 「・・・新しい悪戯・・・?そうじゃなくて 私は謝りに来・・・」 (あ・・・) 駐車場の前の花壇。 「・・・これ・・・は」 赤色に近い茶色・・・。 レンガ縦2メートル幅3メートルほどか・・・。 かすみが大好きなパンジーの花。 中でも白のパンジーで 『kagome kagome』 と文字になぞるようにパンジーが植えてある。 「・・・これ・・・。一夜・・・。一人で・・・?」 (そ、そうでい) 駐車場のトラックの陰から こっそりかすみの様子を伺っている一夜・・・。 「あ・・・。お手紙があるわ」 花壇の真ん中に 封筒がそっと置かれていた。 『・・・オレのキモチ・・・のつづき』 と書かれて・・・。 「これ・・・読んでってことなの?この前の手紙の 続き・・・?」 (///そ、そうでい。書ききれなかったから・・・) かすみへのキモチ。 カサ・・・ スーパーのチラシの裏(笑)に あらっぽい字で いっぱい書かれている。 『タイトル。かすみについてその2』 ”かすみの笑顔は太陽よりあったかい” (・・・。な、なんかここまで書かれると・・・。 照れくさいというか・・・///) ”かすみは偉い。料理が上手だ” 「・・・貴方だって上手よ」 母親について 子供が書く作文のよう だが めいっぱいキモチを 言葉にした様子がうかがえる・・・。 ”かすみは誰よりも優しい” ”かすみの笑顔は世界一” ”かすみの全部が綺麗だ” 「・・・ほ、誉めすぎだってば・・・(汗)」 (うるせえ。仕方ないだろ。全部ホントのキモチ なんだから・・・) だが 最後の行で かすみの心が揺れた ”オレ・・・。『弟』でいい。一生 弟でいい” 「・・・弟って・・・」 ”『トモダチ』でもいい・・・。オレは 『恋』じゃなくていい いらない。オレが望むことは・・・” そして最後・・・。 かすみへの想いの総まとめ・・・。 ”かすみが・・・ずっと笑っていられますように・・・” 愛してるじゃない 大好き、じゃない ストレートじゃないけど とても強い 尊いキモチ。 ・・・穏やかな気持ち・・・。 一夜の不器用でちょっとしつこくて(笑) でも優しさいっぱいの手紙に かすみの心が 温まった ほわっと 照れくさいほどに・・・。 手紙に 2、3的水滴がしみ込んだ・・・。 (あ、あれ?か、かすみ、な、なんか俯いたまま うごかねぇぞ?や、やべぇこと書いちまったか!??) 手紙をもったまま・・・ 俯いて 固まっている・・・。 (・・・ど、どうすんだ、どうすんだッ。お、オレ、どうすりゃいいんだッ) かすみの様子に 一夜はオタオタ。 ”触らないで” そう言われているから かすみに駆け寄ることが出来ないし・・・。 (・・・。さ、触らなきゃいいんだろ。よし!) 「一夜・・・」 (・・・!!) 覚悟を決めて出て行こうとした矢先に声をかけられて びびる一夜。 「・・・あの・・・。そこにいるん・・・でしょ?」 「お、おう・・・」 軽トラの荷台のタイヤの後ろから スニーカーが丸見えでした(笑) 「・・・。あ、えっと・・・。へ、へんな手紙書いて悪かったな・・・。 た、ただその・・・お、お前に元気出して欲しくてそのあの・・・」 「うん・・・」 「・・・き、気ぃ悪くしたなら・・・。ごめん。オレ・・・。 やっぱり・・・。上手くなんか言えなくて・・・」 「・・・上手よ」 「え・・・?」 かすみはスッと顔上げて こちらに近づいてきた・・・。 (な、泣いてたんじゃねぇのか・・・?) 「・・・。私のほうこそ・・・。ごめんね。この前・・・。 ひどいこといって・・・」 「・・・え、ああ、気にしてねぇ・・・。だ、誰だってなんつーか・・・。 シンドイ記憶つーかその・・・。か、かすみにだって・・・」 (オレが下手に・・・触れねぇ”痛み”だから) 一夜の言語中枢は かすみになんて言葉をかけていいか必死に探す。 照れくさい手紙とかすみの心を傷つけちゃいけない とぐるんぐるん頭の中の国語辞典の中で探す。 「・・・。ありがとう・・・。私・・・。ずっと奥にしまっていたの・・・。 昔の恐怖を・・・。だから・・・。一夜の気持ちに・・・ 気付かないフリしてて・・・」 「いい。俺の気持ちなんぞ、っていうか・・・。 か、かすみさえ・・・元気ならそれで・・・///」 照れくささ 励ましたいキモチ でもあんまり踏み込めないし 一夜もかすみも お互いの”距離”を探す・・・。 「・・・。お、オレのことはよ・・・。その・・・。 で、出来の悪い弟とでも思っててくれていいから。そのあの・・・」 「『弟』なんかじゃないわ」 「え・・・」 「・・・。一夜は立派な・・・。”男の人”よ」 (かすみ・・・) 一夜にここまでさせて ここまで言ってもらって 一夜の気持ちに向き合わないなんて 出来ない 「・・・。ただ・・・。”ゆっくり”行ってくれる・・?」 「ゆっくり・・・?」 「・・・うん・・・。ゆっくり・・・。ゆっくり・・・。 時間をかけて・・・」 かすみは ゆったりと一夜を見つめた。 「・・・?なんか・・・。ピンとこねぇけど・・・。 オレはかすみが元気ならそれでいい。・・・オレは 包丁研ぎがまだ時間がかかるがな・・・」 くすっとかすみが笑った。 (よっしゃ!なんかしらねぇが笑ったぞ!) 一夜も嬉しくなってテンションが上がった。 「・・・ふふ(笑)時間をかけることはいいことよ・・・。 道具も人の関係も・・・」 「そうか。なら時間かけよう。カップラーメンは3分以上まてねぇがな。 伸びちまう」 「ふふふ。一夜ったら」 (よっしゃ!またかすみが笑ったぞ!ラーメンの話をすればいいのかな?) 花壇の前。 久しぶりにおしゃべり・・・ 一夜はかすみが笑う度に 嬉しくて嬉しくて いっぱい話す そんな一夜の気持ちが伝わって・・・ 伝わりすぎて かすみの心の奥の”ヌメリ”が 少し薄まっていく・・・。 「・・・一夜」 「ん?」 「・・・。本当に本当に・・・。ありがとう・・・。 ありがとうね・・・」 「・・・か、かすみ・・・」 ポロっと かすみの瞳から落ちた涙。 「・・・。一夜がいてくれて・・・。よかった・・・」 「か、かすみ・・・」 かすみの涙。 ・・・なんて愛しいのだろう なんて慈しいのだろう 雨上がりの虹を見つけたときのように ・・・宝物のように綺麗に見える・・・。 「な・・・泣いてていいぜ・・・。お、オレ・・・みてねぇから」 「・・・うん。ありがとう・・・」 一夜のTシャツで涙を拭く。 (・・・。新しいシャツに着替えて着てよかった(汗)) 白いTシャツは 少し太陽の匂いがした。 (・・・。オレは・・・守る・・・。かすみの笑顔を・・・。 絶対守る・・・。絶対に・・・。枯らせねぇから・・・) かすみの涙に 一夜は誓った 「一夜・・・。本当にありがとうね・・・」 「・・・おう・・・。オレの方こそ・・・」 (・・・色んな気持ちを教えてくれて・・・。ありがとう) 恋、愛、涙。 かすみと知り合えたから分かった感情。 (・・・恋愛じゃなくったって・・・いい。 もっと強いものが・・・あるさ) かすみと出会えて 笑顔がこれからも 見られる幸せ それに勝るものはない (ゆっくり・・・ゆっくり行けばいいんだ・・・。 オレとかすみ・・・。二人の時間を・・・) パンジーが優しく揺れていた・・・