久遠の絆 第41章 好きな人のために 「純情少年。その後の経過を報告せよ」 月森から、かすみとの経緯を聞かせろとメールをもらい。 「・・・。なんでオレは気障男の助手席にいるんだろうか」 「アハハ。お褒めありがとう。チェリー君」 シルバーの車が 海岸線を走っている。 すれ違いさまのアベックが乗る車を複雑な気持ちで 見つめる純情少年・一夜。 「てめぇに報告するこたもうねぇよ。オレはフラレたんだから」 「・・・は?」 月森、思わずブレーキを踏んで コンビニの駐車場に車を止めた。 「オイオイ。お前という奴は今、なんと?」 「だから。オレは一生かすみの『弟』でいることにした。 つまりは振られたってことだ」 「・・・。日本語が妙だぞ。弟になると決めたのはお前なのに 何故振られたと?」 「・・・。こ、小難しいことはしらねぇ!とにかくオレは かすみに・・・。こ、こここ、///。恋・・・はし、しねぇ(照)」 月森はフーッとタバコの煙を 一夜の顔にふきかけた。 「な、なにすんだ!」 「アホなお前にタバコはいらん。お前はかすみ君に振られてなどいないんだぞ?」 「・・・あぁ?ど、どういうことでい」 (こいつは・・・。深読みできねぇか。めんどくせぇな) やっぱりまだまだ”チェリー”君だと思う月森。 だが”チェリー”君だからこそ、かすみに必要なのかもしれない。 「説明してもお前には分かりにくいだろうから、 分かりやすい言葉でいってやる」 「・・・?」 「耳かしな」 タバコくさい 月森はボソッと 「かすみ君はお前のこと、嫌いじゃないぞ?」 「ええッ!??」 (カゴメガオレノコトスキ、カゴメガオレノコトスキ、カゴメガオレノコト・・・) 以下エンドレスで一夜の脳内でリピート中。 「・・・なっ(覚醒)なんでそんなこといえるんだ」 「”ゆっくりいこう”ということは、お前とちゃんと向き合う 姿勢で居るということだ。嫌いじゃないってことだろう?」 「・・・。ゆ、ゆっくり行こうって・・・ そういう意味だったのか。オレはてっきり一緒に”おさんぽ”に 行ってくれるくらいの仲ならオッケーみたいな・・・」 「・・・(汗)あ、あながち、間違ってはいないがな」 天然ちゃんなのか それとも”仮面天然ちゃん”なのか。 ただ一途な想いだけが、純情少年を突き動かしているのは 間違いない。 (オレには・・・エネルギーが出ない) 愛のためなら・・・ というフレーズを真剣に噛み締めるほどのエネルギーが・・・。 「・・・。オレ・・・。かすみが笑っててくれたらそれでいいんだ。 笑うのが嫌だったら俺が笑うし」 「いい台詞だ。最近の少女漫画にはないがな」 「・・・。お前、そんなモン読むのか」 「・・・昔な(笑)」 タバコを吸う。 4本目。 仕草が大人っぽいというより男臭い。 かっこいいと思うよりやっぱり気障ったらしくみえる。 (変な野郎だ。でも多分コイツも・・・) 分かる。奥にある”想い” 好きな相手のために何が出来るか それを第一に考えていることを・・・。 「まぁいい台詞だったが・・・。だかもうお前は”恋”をしてしまっている」 「は、はっきり言うなッ///」 男と女である以上、 恋という関係も避けては通れない。 「・・・。お、オレとかすみのこッ、恋・・・だ。 二人でつくってくんだ」 「ほうほう。名台詞。名台詞」 「ちゃッ茶化すなッ///」 (・・・(照)お、オレってこんなセンチな 台詞言う奴だったけ・・・?) 「辛く・・・切ない初恋だなぁ。まぁ だが醍醐味があっていいじゃないか」 「うるせぇ!!」 「ヨシヨシ。おにーちゃんはちゃんと見てるぞ? 大事な”妹”をなかせたりしたら承知しないぞ?」 (・・・(汗)) ライターを一夜の目の前でぼっと火をつける。 「・・・燃え上がる恋愛より・・・。こじんまりでいい。 ゆっくり灯る恋愛をしなさい。byかすみのオニイチャンより」 「・・・。最後まで気障な野郎だ・・・」 「フフ・・・」 潮の香りと・・・ コロンの香りが混じって 車の中は 少し複雑な けどどこか、心地いい匂いが 一夜の心にしみ込んだ・・・。 その夜。 『ゆっくりと灯る火のような恋愛について』 カレンダーの裏にキュッキュとマジックで何やら書いています。 月森に書いてもらったメモを清書しているようです(笑) 「・・・。その一、不用意なスキンシップは控える・・・? 難しいな。まぁ要するに・・・」 (・・・。くっ口付けとかは駄目ってことだろ。 そ。それぐれぇわかる(汗)) ちょっとドキドキ。 (けど、この”ドキドキ”はかすみに あんまりつたわらねぇようにしないとな) 男の子の”ドキドキ”は忍ばせる。 ”女の子”としてだけじゃなく、同じ人間として 見つめてあげよう。 「その2、相手を楽しませること、自分も楽しむことを 見つける・・・。ほうほう」 (要するにかすみが笑うことをいっぱいすりゃいいんだな) 一緒におさんぽ。 一緒にご飯。 一緒に・・・空を見上げる。 難しいことじゃなく、 いつも何気なくしていることでいい。 「その3、『ありがとう』と『あいさつ』を忘れない? ありがとうはわかるけど、あいさつってなんだ?」 あいさつ。 親しい仲でも、あいさつや、相手を敬う気持ちを忘れないこと。 親しい仲だからこそ、壊れると元に戻しにくい。 「・・・あとは個人個人でってか?なんか、料理長にいつも 言われてることと似てるな」 ”食べてくださるお客様の身になって考えろ” ”師弟だろうが挨拶と、けじめだけはつけること” ”辛い修行の中でも、自分の小さな楽しみを見つけろ” 「・・・。修行だろうと色恋であろうと大事なのは・・・」 ・・・相手の立場になること。 なろうとする気持ち。 「・・・。オレは男だから・・・。難しいけど・・・。 オレ・・・。頑張る。オレ・・・かすみを支えられる奴になるために・・・」 初恋。 焦がれる気持ちより 相手の笑顔を強く願う気持ち。 (オレの生きる活力が・・・。かすみだから) かすみ無しの世界じゃきっと 活きていけない。 体は”生きて”いても 心が”活きて”いけない。 (オレが”活きて”いくために ”恋”は当分おあずけだ) 恋じゃなかろうがなんだろうが 好きな人が生きて、笑顔で”活きて” いること。 それだけで明日の空が見たくなる。 ・・・今日の空を伝えたくなる・・・。 「おーし!明日も行くぜ!」 と。 気合を入れて。 (・・・) 何故かうさ子をじーっと見つめる一夜。 うさ子は一夜に大人の女性にしてもらいましたが まだまだかわいいお年頃(笑) (・・・///) 人間のかすみとはあんまり”ラブラブ”できないので うさ子に・・・。 ・・・チュッv 「んぺッ!!うさ子、おめぇ、ちっと、ほこりくせぇぞ!(笑)」 次の日の朝。うさ子は洗濯機でぐるぐるまわされ、 お天道様に干されましたとさ(笑) 一方。 かすみは・・・。 「・・・うん。それで・・・?」 かすみの知り合いが相談してきた。 ちょっと深刻な内容。 ”彼氏が浮気したの。悪かったって何度も謝るから 許そうと思ったんだけど・・・” ”彼氏の悪いところばかりに目が行って、 一緒にいると頭が痛くなってくる” よくある恋愛相談というより 自体は根が深いようだ。 「・・・。もう無理なのかな・・・。 頭でわかっても・・・。心が駄目っていってるみたい・・・」 「・・・」 「・・・今日・・・。朝・・・。また彼と喧嘩して・・・。 捨てちゃった・・・」 彼氏からもらったもの全部。 使ったもの全部。 コップとかスリッパも・・・ 一緒に撮った写真 彼の顔に鋏の刃をつきたてて 切り刻んで踏みつけた 「ヒステリー起こしちゃった・・・。やだな・・・。重症っぽい・・・?」 「・・・」 かすみはただ只管に・・・ 友人の声に耳を澄ませる・・・。 「・・・。彼が嫌になったんじゃないの・・・。 彼のこと・・・こんなに拒絶しちゃう自分が嫌なの・・・」 大好きだったものを自分で消してしまうほど 嫌な自分がさらけだされたようで・・・。 「・・・。ごめんね・・・。夜中までつき合わせて・・・。 メールなんかしちゃって・・・。でもなんか・・・。 一人でいたら・・・。なんか・・・壊れそうだった・・・」 「うん・・・うん・・・」 『・・・なんか・・・。色々ムリっぽい・・・。 息するのも・・・キツイ・・・』 現代っ子な文面。 だが切羽詰った状態がすぐに伝わった。 (行かなくちゃ・・・!) かすみは寝床につこうとしていたが、パジャマから着替え すぐ友人のマンションへ車を走らせた。 「・・・。携帯もいいけど・・・。やっぱ・・・。 誰かにそばにいてもらうのって・・・いいね・・・。一人じゃないって 分かって・・・安心した・・・」 「・・・居る・・・。曜子(友人の名前)が ラクになるまでずっといる・・・」 「・・・。へへ・・・。アリガト・・・。 じゃあちょっとだけ泣かせてね・・・」 「うん・・・」 友人は”ちょっとだけ”ないた。 ・・・かすみのブラウスに跡が残るほどに・・・。 ずっとかすみは背中をさすって 友人のそばにいたのだった・・・。 に、三日後、友人の気持ちも落ち着いて かすみは自宅に戻った。 「おじちゃんおばちゃん。心配かけてごめんなさい」 「いいんじゃよ。それよりはい。犬君から 何か届いていたよ」 「・・・え・・・?」 ピンク色の箱。 (・・・。前に一夜と行ったダイ○ー(百均)で見かけたことある箱ね(笑)) カサ・・・。 中を開けると・・・。 「まぁ・・・!」 『うさ子。(4歳)四月生まれ』 なんと、一夜が愛用していたうさぎのうさ子ちゃん。 洗濯されて綺麗になった。 ・・・耳に洗濯バサミのあとがついてます(笑) 「うふふ。可愛い・・・。うさ子ちゃん。いらっしゃい」 『オレの”ダチ”のうさ子だ。寂しくなったら 耳をひっぱるなりかじるなりしてくれ。だ・・・だっこでもいいぞ///』 「そんな・・・耳ひっぱるなんてことしないわ。 痛そうよ。ふふ」 ”そうなのよ。犬っころの奴アタシのこと 洗濯機に放り込んだのよ” なんていいたそうなお顔(笑) 可愛いうさ子。 一夜の精一杯のピュアを 運んできてくれたみたいだ・・・ ”一人じゃないって分かっから・・・。安心した・・・” 「ありがとう・・・。私・・・。一人じゃないのね・・・」 友人の言葉が・・・ 今なら身に沁みて分かる気がする・・・。 (本当にありがとうね・・・) うさ子を抱きしめて・・・ その日かすみは久しぶりにぐっすり眠った・・・。 同じ頃。 ジリリリリリ! 「・・・!!」 一夜・・・。目覚ましのベルで起きる。 だがなんだか残念そうな顔。 (・・・い、いいトコロだったのに・・・///) かすみにだっこされている夢を見た・・・。 ふわふわであったかかったかすみの腕の中・・・。 (・・・。だぁああ!オレはなんて夢を・・・!) だが完全に『恋心』を抑えることも出来ず。。 (かすみ。ごめんな。夢の中だけ・・・。ちょっとだけ だっこされてしまった。なるべく見ないようにするから(汗)) 「・・・」 一夜枕元の白いうさぎのぬいぐるみをだっこする。 黒の蝶ネクタイをつけています。 名前は・・・。 「おう。うさ吉。しばらくお前に”世話”に なるからヨロシクな」 ・・・うさ子がかすみの元にお嫁に行ったので新しいお相手を ゲームセンターへ行ってもらってきました。 というわけでうさ吉。 一夜の”恋のお相手”をする運命を授かりましたv 男の子のようですが、うさ子とオンナジ顔なのでご容赦を(笑) 「・・・うさ吉・・・。あと5分寝ようぜ。ふあ・・・」 と、うさ吉を思い切りハグして再び夢の中・・・。 (うさ吉・・・。後でやっぱ洗濯しとこ。毛玉がすげぇ・笑) かすみへの想いを夢の中で 温めていく。 好きな人のために 好きな人の心にあわせて 育てていこう・・・。 一夜とかすみの心探しは始まったばかりだ・・・。