シャイン
おねえちゃんへ



あたしには姉がいる。






背が高くてハンサムな姉。






口数は少ない。




不器用だけど優しい・・・





でも人より数倍。





本当の『痛み』を知ってる。






そんなお姉ちゃん。




いつも・・・




私の手を握って歩いてくれたね・・・






私の




お姉ちゃん・・・





ショッピングセンター。 ティーンエイジャーのファッションエリアに光と一恵の姿があった。 ミニスカートのコーナーで 太股より短いジーンズ生地のミニスカートを一恵は更衣室で着替え、出てきた。 「・・・わ〜。可愛いーーvvねぇみてみて。お姉ちゃん」 「な・・・そんなんの履いて街を歩くのか!?今の女子高生は!?」 光はあまりの短さにバックで一恵の太股を隠す。 「やだなー。この位、どうってことないよ。っていうか! 今は”見せる”のよ」 チラッとスカートをめくってみせる一恵。 「やめんか!はしたないッ」 「お堅い父親みたいな台詞いわないでよ。たく。ハイ。次はお姉ちゃんこれ着なさい!」 「え?あ、あのっ」 無理やり更衣室に服を持たせて光を突っ込む一恵。 「こっ。こんな露出度の高いもの・・・」 「いーから!今日はあたしがおねえちゃんの服選ぶって約束でしょ!いいから着なさい!」 「・・・わかったよ」 (ふふっ) 姉のお洒落に対する無頓着さにあきれ果てていた一恵。 (まぁ・・・。無理もないけど・・・) やけどの痕のことで蔑まされてきた光に『お洒落しろ』なんて月並みな一般論 をぶつけても意味はないとわかっているがやはり、同じ女としてなにより 妹としては可愛くなってほしいと思う・・・ シャ・・・ 「スースーして。落ち着つかん」 恥ずかしそうに出てきた光・・・ 鎖骨が全部みえるほど胸元は空いて、そしてすらっとしたストレートのロングスカート・・・ 「いいじゃんいいじゃん!!うん。お姉ちゃん背、高いから ロングスカートのわんぴ、絶対映えるって思ったんだ・・・!」 「・・・。スカートは動きずらいから・・・あんまり好きじゃないんだが・・・」 「ううん。すっごく似合ってる!自信もってよ・・・!」 「そういうの一枚ぐらい持ってたほうがいいよ!冠婚葬祭とか何かのとき 入用じゃない」 「・・・そんなもんか?」 「・・・そんなもん!そんなもんよー♪」 一恵はにこにこしながら勧めるが・・・ 光は辺りをちらちら何か気にしている。 (・・・?) 一恵が振り向くと他の買い物客が光を物珍しそうに見ていた・・・ (・・・な、何よ・・・!!) 一恵はにらみ返すが・・・ 「・・・。一恵。やっぱりいい・・・」 「え・・・?」 「値段も張るし・・・。次の機会にするよ」 「だ、だってお姉ちゃん。せっかく着たのに・・・」 「いいんだ。一恵のさっきの言葉。嬉しかったよ」 「あ・・・」 光はワンピースを脱ぎ、着替えた・・・ (・・・お姉ちゃん・・・) 「・・・一恵。なにむくれてるんだ」 「・・・別に」 ファッションエリアを抜け、光と一恵はファーストフードの店に入って昼食。 むすっとする一恵の顔を覗き込む光・・・ 「・・・ごめん。一恵がせっかく選んでくれた服・・・」 「・・・。謝ることない。だけど・・・。お姉ちゃんもういい加減、 自分に自信もってよ・・・。周囲の目気にするの、卒業したんじゃなかったの?」 「・・・そうだけど・・・さ。あたしはいいけど・・・。一恵まで 変な目でみられていると思ったら・・・」 幼い頃のことを思い出す・・・。 一緒に買い物に来たとき、レジの店員が光を見る同じような好奇な 視線でみていたことを・・・ ズズっとシェイクをすする一恵。 「・・・。おねえちゃんのそういう優しいとこ・・・。あたし好きだよ。 でも・・・。でも・・・」 (・・・あ・・・) 後ろの席に見覚えるある顔が・・・ (先輩たちだ・・・) 学校の先輩を見つけ一恵の言葉が止まる。 さらに先輩がこちらへ来る・・・ 一恵の視線の先を光も追う。 「・・・」 目の動きで近づいてくる男子高校生が一恵の知り合いなのだと察した光は・・・ 「光。あたし御手洗い行ってくるよ」 「え、あ・・・」 光が席を立ち、トイレに向かう・・・ (・・・お姉ちゃん・・・。ごめん・・・) 光が気を利かせたことを感じる一恵・・・ 自己嫌悪がじわっと湧く・・・ (あたし、お姉ちゃんに”自信もて”とか偉そうに言っておきながら・・・) 「あー!一恵ちゃんじゃない!??」 一恵の先輩が声をかけてきた。 「あ・・・。先輩、こんにちは」 「買い物ー?相変わらずかわいーよねぇー・・・」 「え・・・。えぇまあ・・・」 一恵の先輩は、一恵を挟んでどすっと座る。 「ねぇ。ところでさちょっと部活のことで話あるんだ」 「・・・あ、あの・・・。あたし・・・」 「大事な話なんだよなー。すぐ済むからさ」 「・・・は、はい・・・」 先輩にそこまでいわれては一恵もしぶしぶ首をたてにふる。 先輩は一瞬不適ににやっと笑って・・・ 「あ、あれ・・・?一恵・・・?」 光がトイレから戻ってくると一恵の姿はなく・・・ その一恵は人気のない地下駐車場に連れてこられた・・・ 「・・・。あ、あの。先輩。話って・・・。というかなんでこんなところではなしするんですか?」 「・・・。いや、ちょっとながーい話になりそうなんで・・・」 先輩はにやっと怪しくわらった。 (・・・。これって・・・。ちょっとヤバイ状況?) 少し危機を感じた一恵。 「先輩。お話なら明日学校で聞きます。じゃあ・・・」 「待ってよ」 ガシっと手を掴まれる一恵・・・ 「・・・。オレね・・・。前から結構気になってたの・・・」 やらしく舌をぺろっと舐めぞっと一恵は悪寒が走る。・・・ 「わ・・・。私は気になってません・・・。だから離して・・・」 「離さなーい・・・。優しくするから・・・」 「・・・。それのどこが優しくするってんだ」 パシッ・・・ 誰かが先輩の手を一恵から払った・・・ 「お姉ちゃん!!」 光はさっと一恵の手をひいてを自分の後ろにやった 「なんだよ。お前・・・っ」 「それはこっちの台詞。あんた、うちの妹に何しようってんだ。え?」 光は先輩を堂々見下ろした。 「・・・ひょろひょろの体の癖に・・・。ヤラシイことだけは一著前ってか。 ったく・・・。最近の男は・・・」 「な・・・。なんだよ。てめぇ・・・。てめぇみてぇな 気味悪い女に言われたかねぇよッ。へッ。化け物がッ」 先輩はペッと唾を吐いた。 バッチン!! 同時に一恵の手が先輩の頬を討った。 「お姉ちゃんのこと馬鹿にしたら 絶対に許さないからッ!!!この変態男がッ!!」 一恵の啖呵が駐車場に響く・・・ 「この・・・。お、お前・・・。先輩に対してそんな口聞いて良いのか・・・? 今度の地区大会の選手候補から引き摺り下ろすぞ・・・?」 「妹をあんまりなめるな・・・!あたしの妹はそんなことに負けない!」 (お姉ちゃん・・・) 「この・・・っ」 先輩が拳を握った瞬間・・・ 「痛・・・っ」 光は先輩の腕を掴み背中で捻じ曲げた。 「痛タタタ・・・」 「・・・動くとなおのこといたいよ?」 「そーそ・・・。先輩。私の姉はね・・・。合気道2段なんだvそれに、今、先輩が言ったことやしたこと。 私、ほうこくしちゃいますよ?」 「な・・・。そ、そんなの証拠になるか」 パシャッ。 一恵は携帯カメラで先輩の情けない姿をばっちり撮った。 「ほうら。お姉ちゃん、綺麗に撮れたよー」 「最近の携帯は便利だなー」 わざとらしく携帯を覗き込む光と一恵。 「ば・・・っ馬鹿な真似はやめろッ」 「じゃあ。姉に言ったこと、謝ってください!そうしたら今撮ったの削除しますから・・・!」 「・・・。わ、悪かったよ・・・。わ、悪乗りしすぎた!これでいいのかよッ!!」 だが、顔は全く憮然としている・・・ 光は先輩の襟をそっと放した。 「先輩・・・。あんまり女のこと、甘くみないでください」 「そうだ・・・。女は男の欲望のために居るわけじゃないんだ・・・っ!!」 光は先輩の襟をぐっと掴んでそして放した・・・ 先輩はすたこら・・・ ひょろりとした足で退散した・・・ 「・・・。一恵・・・。簡単についてっちゃ駄目じゃないか」 光、一恵にポコ!っと軽くゲンコツ。 「・・・ごめん」 ぺろっと舌をだす一恵。 「あたしはナンパなんかされることもないだろうけどあんたは可愛いから 気をつけないと」 「そんなこと・・・。でもやっぱこんなミニはいてたら危ないかもね。 女の方も自己防衛しないと・・・」 「それは違うと思うな」 「え?」 光は一恵のバックを拾って手渡しながら話す。 「女性がどんな格好しようとその人の『自由』。やらしいことしようとする男が 間違ってるんだ。犯罪なんだから。 女性が悪いわけじゃない・・・。問題を履き違えちゃ駄目だ・・・ ってちょっと説教臭いかな?」 「ううん。お姉ちゃん間違ってない。馬鹿なこと考える方が悪いのよ。 だってさ。女の方に問題あるって言ったら、海で水着来てる女の人、みんな 悪くなる・・・。なんかおかしいよね?」 「そ!海で水着着るの当たり前の話だ。女性は悪くない・・・!」 二人は顔を見合ってくすっと笑った・・・ 「・・・。やっぱりお姉ちゃんカッコいいよ」 「え?」 「ううん・・・。なんでもない。さ、ショッピングの続きしよ!」 光と腕を組む一恵。 「・・・。カップルに間違えられそうな(汗)」 「えー?いいじゃん。あたしたちってつよーい姉妹愛で結ばれてるんだからーv 男は暫くいらなーい!」 「わー。あんまりひっつくなって・・・」 一恵は思い出す・・・ 学校の帰り道。 ”おまえのねーちゃん、変な顔だよなー” 同級生にからかわれて泣いていた。 そんな一恵を光は・・・ 『ごめんね。あたしのせいで・・・。一恵は可愛いから。世界一 可愛い女の子だから・・・』 そういってずっと抱きしめてくれた・・・ 温かくて切ない声だった・・・ 「お姉ちゃん」 「ん?」 「あたし、お姉ちゃんの妹でよかった」 「・・・何さ。急に・・・。あ、いっとくけど小遣い借りたいってんなら 駄目だよ」 「あ、ばれたか。ふふふ・・・」 世の中で一番分かり合える女友達。 それが姉妹なのかもしれない。 一緒に育って。一緒に生きてきて・・・ 光はちょっとおませな妹を愛しく可愛く 思ったのだった・・・ そして夜。 一恵の部屋を訪ねた光。 一恵がドアをあけると・・・ 「あ・・・。お姉ちゃん、それ・・・」 昼間、一恵がすすめたあのワンピースを着ている光・・・ 「・・・。恥ずかしいんだけど・・・。でも・・・他所行きの服一枚くらいあっても いいかなって・・・(照)」 「うん・・・!そうだよ!似合ってる!!ね、どうせなら髪もセットしてみよ!」 一恵は嬉しかった。 自分が進めたものを買っていてくれたなんて・・・ 「ね。お姉ちゃん、髪、伸ばせばいいよ。サラサラしててきっと綺麗になるよ」 「そうかなぁ・・・。でもシャンプー台とかかかりそうじゃない?」 「ケチくさいこといってないで。もー!ま、ショートでもしっとり こうまとめたら大人っぽく見えるけど・・・」 鏡の前で姉妹二人で 笑い合う・・・ 同じ女同士。 一番仲良し。 一緒に泣いて 笑って 一緒に育った・・・ ドアの影から光と一恵の様子を母の登美子が優しげに見守る・・・ (あんたら二人・・・。いい女になるんだよ・・・) 娘二人の成長を祈りながら 眠ったのだった・・・