シャイン
〜みんな輝いてる〜
第11話 向日葵色の帽子
「・・・」 夜・・・。洗面台のシャワーで登代子の髪を洗う光。 太くて硬かった登代子の髪が細くなり 光の手にくっついて・・・。 (・・・また・・・) 「なんだい。光。後ろの方・・・、痒いんだがね」 「あ、うん。ごめん」 薬の副作用のせいか・・・。 地肌が目立つ母の頭皮が光には切なく・・・。 登代子は口には出さないが 光は知っている。 (枕の下には鏡が・・・) 髪は女の命というが 命より 心の命も一緒に抜けていくようで・・・。 「でさ・・・。晃ならなんかいいシャンプーとか知らないかなって 思って・・・」 「そうか・・・」 美容院には 色々なヘアデザインの本がある。 年齢別、季節別・・・。 色々あるが 皆、艶やかしい髪ばかり。 「私も一時・・・。抜けた時期があって」 朝、起きたて髪を梳いたら やたら大きな束の髪がくっついていて ぎょっとした。 「・・・あ、言っとくけど、また自分のせいって思うなよ? すぐまた戻ったんだから」 「分かってる・・・」 だがやっぱり少し思ってしまう。 「絶対にいいものある。調べてみる。任せてくれ」 「ありがとう・・・」 光の頼みなら 何だってする。 「はぁ・・・。だけど・・・。母さんもまだまだ女の人だ。 50過ぎてたって綺麗になりたいって気持ちはあるよな。 私・・・なんとかしたい。なんとか・・・」 「光・・・」 鏡を見ることが怖いと言っていた光が 鏡ををみるのことが怖い母を心配している。 ”私はあの子の糧に・・・そういう生き方をしたい” (・・・) 登代子の言葉が過ぎった。 「カツラとか・・・。色々あるんだって調べた。 でも母さんに聞いてみたけど”いいんだよ!”って 突っぱねるし・・・。そんで考えたんだ」 光はごそごそとバックの中から取り出してきたのは・・・。 沢山の帽子と髪飾り。 「・・・今までの私のコレクション・・・。なんちゃって」 「すごいな。全部光のお手製?」 「ああ。母さんも昔は色々作ってたんだ。私ために・・・。 で、今度は私が創ろうと思って・・・。でもデザインは母さんが!」 さらに光はノートパソコンをどんと出した。 「へへ。これなら母さんでも使える」 マウスを動かす光。 「パソコンでデザインして・・・。そんで私が作る。 母さん家にいるとき、テレビが日課になってきてるから他に 何か出来ないかなって」 「凄いな・・・」 「な、何だよさっきから・・・。そんな凄いことなんて」 「・・・凄いよ」 (・・・な、なんか・・・神様を拝むような真剣な眼差しで・・・///) 去年よりずっと力強くなっている光に 晃は感動していた 翌日。 ”パソコン、晃の方が詳しいだろ。母さんに教えてくれないか” ということで晃が来ていた。 「あら。まぁ・・・!真柴さん!」 「お休みのところすみません」 「やだよ!光!真柴さん来るんだったら、身だしなみ しとくんだったよ!」 ベットの登代子はパジャマのボタンをかけなおして起き上がった。 「母さん」 「頼み?」 「ああ。あのさ・・・。これで・・・。母さんの帽子を作ろうと思う」 ベットの上にノートパソコンを置く。 「なんだい。これはこんな機械で何しようってんだい」 「これで・・・。帽子のデザインをしてほしいんだ。それを 元に帽子は私が作る」 「・・・。お前がかい?」 「手芸や裁縫は母さん譲りなんでだろ?ふふ」 光はいくつか見繕った布を見せた。 「へん。馬鹿いうんじゃないよ。アタシの帽子だよ? 簡単なもんじゃすまないよ」 「ふふ。光、大変だな」 「うおー!針がなんでも来いといっているぞー!」 意気込む光にくすっと顔を見合って笑い会う登代子と晃。 「じゃあ真柴さん、パソコン教えてくれますか」 「はい」 晃に指導されながら登代子はマウスを動かして 早速デザイン開始。 「そうそう。お母さんお上手じゃないですか」 「便利だねぇ〜。機械モノは苦手だったけど すごいねぇ」 動く左手でマウスを動かしながら デザインの帽子の絵に色付けしていく。 「光。出来たよ」 「・・・へぇ・・・。可愛いよ!母さんには似つかわしくない」 「うるさいね。あんた、この絵通りにつくりなよ!! ここにミシン持ってきてつくりな」 「へーい・・・」 (本当に仲のいい・・・親子なんだな・・・) 荒い言葉遣いでも 二人は互いを思いやり合っている・・・ こんな温かな家族と一緒にいるなんて・・・。 (・・・夢みたいだ) ずっと憧れていた。 好きな人が出来てその家族と一緒に過ごす・・・。 (・・・段々・・・。オレは欲張りになりそうだ・・・。 光・・・) 光と登代子とこうして一緒にいる時間が・・・ 晃には宝物に思えた・・・。 ガガガガ。 登代子のベットの横でミシンをかける光・・・。 「もっと糸伸ばして!」 登代子の指導の下2時間ほどして・・・。 「完成ーーーー!」 橙色で麦藁帽子風。 帽子のつばの部分に椿のコサージュをつけてみました。 「どう??母さん!」 かぶってみる登代子。 「んーまぁデザインがいいから出来もいいのは当たり前。 合格としよう」 「・・・はいはいお褒めありがとう。ったく・・・」 口ではああいっても 本当は登代子は心底喜んでいる。 晃にはそう感じられた・・・。 「・・・あ、そうだ。私、ちょっと電話してくる。 明日、八百屋んとこのおばしゃんの予約はってたんだ」 光は電話まで走った。 「真柴さん。あの子・・・ちゃんとやれてますか? ここいらの近所のおばちゃんらは結構毒舌だから」 「はは。光もかなりの毒舌で返してますよ。 楽しそうに・・・」 「そうですか・・・」 (本当に・・・。光はお母さんに愛されてるんだな・・・) 光の心の根っこを作ったのは この母なのだと 晃は強く感じた・・・。 「晃・・・。聞いてくれ。八百屋んとこのおばあちゃんも 帽子ほしいっていうんだ・・・。この間、私が作ったの 見せてあげたから・・・。どうしよう」 「どうしようって・・・。作るしかないだろう?」 「で、でもさ・・・。私なんかのでいいのかな気に入ってもらえるか・・・」 「・・・大丈夫。お母さんの帽子あんな素敵な帽子つくったんじゃないか。 自信を持って・・・!」 「・・・うん。そうだな。ありがとう・・・。私頑張るよ」 晃の言葉に光は励まされ 帽子製作のOKの電話をかけに行く光。 (・・・光。あんた・・・) 晃と光のやりとりを登代子は見ていて分かる。 (・・・あんた・・・真柴さん大切にしなよ・・・。 生涯一度きりの・・・恋かもしれないんだからね・・・) 「真柴さん。この前も言いましたが・・・。 光のことよろしくお願いします」 「はい」 「あの子は貴方のことを・・・」 (えっ) ドキっと晃の心は高鳴った。 「とても信頼しているようですから・・・」 「あ、はい。勿論です。僕も信じています」 「ありがとうございます・・・」 (信頼・・・か・・・。オレはいつだって信じてる。これからもずっと・・・) 光が創る帽子は 近所のおばあちゃんやおじいさんにうわさが広まり とても評判がよかった。 「これぞオレが目指した”シャイン”美容室だな」 「え?」 「その人その人が望む”お洒落”や”綺麗”を一緒に探してあげること それがモットーだから」 光は照れくさそうに鼻のあたまをかく。 いつもの癖です。 「・・・そ、そうですか。それはよかったです(照)」 「でも俺も光に似合う帽子、買ってきたんだ」 パサ・・・。 晃が光にかぶせたのは ・・・麦藁帽子。 向日葵がらのリボンがついた・・・。 「・・・ちょ、ちょっとキャラが違うような」 「似合ってる・・・。きらきら光太陽だから。俺にとって光は・・・」 「///あ、あんまり照れくさい言葉ばっかり言うな・・・もう・・・」 帽子で照れ顔を隠す光・・・。 そんな光の仕草が愛らしくて仕方ない・・・。 (いつか・・・。伝えてもいいよな・・・?) ずっと抱えてきた想いを・・・。 「これ、ありがとうな」 「ああ」 「・・・人の居ないところで・・・かぶるよ。 照れくさいから」 「ふふ・・・」 ひまわりの麦藁帽子をかぶる光。 笑顔は まぶしくて 晃はずっと見ていたいと思う・・・。 麦わら帽子ひまわり色の 微笑みを・・・
薬の副作用って怖いです。 人によって違うのだろうけど、誰かがいっていた『副作用のない薬はない』 髪が抜けることじゃなくて 体中に茶色いシミが出たり湿疹が出たり・・・。 私の場合は薬のせいでも副作用でもないんですが、前にどこかで書いたかもしれませんが 子供の頃に頭に負った傷口の辺りが変な生え方をして 地肌が見えるような髪の流れになっております。 いまでこそ後ろで束ねてある程度隠せるようになったけど やっぱり髪のことっていうのは女の人にとっては幾つになっても 男の人以上に神経質になるし・・・ 髪はできるだけ自然で・・・ 傷めないように ギャグでハゲネタってしょっちゅう使われるけれど 実際に髪のことで悪口言われたりしたらハゲネタって笑えないです。 (でもバライティでやってたら私も笑うことあったりして・・・滝汗) けど、ふっと『女のハゲ』とか言われたことが過ぎります。 ・・・外見的なギャグは諸刃の剣ですね・・・(汗)