シャイン
〜みんな輝いてる〜
第17話 my make up 『総合エステサロン・ビューティが提唱する新しい makeの在り方とはー・・・』 そんなうたい文句が流れ、会社の広告塔的存在の愛美が 会社の営業方針を話すCM・・・。 「すごいよねぇ。この若さで営業部長なんてさー・・・」 居間。 卓袱台で朝食を取る光と一恵。 「けどさー。いかにも”広告塔”ってカンジしない? 美人っての武器にしてるっていうかー・・・」 (・・・それはお前も同じだろ(汗)) ふーふーと薄い色のマニュキュアを塗る一恵。 「ご飯中に爪、塗るな。ったく・・・」 マニュキュアの道具を取り上げる光。 「礼儀作法もままならん娘がだな、どれだけ めかしこんでもかわらんだろ」 「お姉ちゃん口調、親父過ぎ。もう。お姉ちゃんも少しは・・・んぐッ」 一恵の口に大根の漬物をつっこむ光。 「お前はさっさと食べて会社に行きなさいって」 最近ますますお洒落に磨きを掛けている一恵。 社会人になれば多少の化粧は当然だろうが 一恵の場合・・・。 (・・・好きな男でも出来たかな) 色気づいてきたバロメーター。 「おーい。ちょっと光ー!味噌汁こぼれたんだ。 ふきんもってきておくれ」 「あ、はーい」 ベットで食事を取る登代子に呼ばれて飛んでいく光・・・。 (・・・お姉ちゃんこそ・・・もっと自分に自信もってよ。いい加減・・・) 母のパジャマをふく光の後姿・・・。 病と闘う母に誠心誠意尽くす姿は美しいものだが・・・。 (・・・おねえちゃんの人生だってあるのよ・・・) 登代子もきっとそう思っているに違いないと思う一恵。 (・・・優しすぎる、真面目すぎるのよ。お姉ちゃんは・・・) だがそんな姉が一恵は大好きなのだ。 (・・・いい子になんかならないでいいの。お姉ちゃんは 我侭になっていいの・・・。その位の痛みを受けてきたんだから・・・) 何事にも謙虚さを前面に出してしまう。 それは決して計算高いという意味ではなく 人の痛みも自分の痛みにも敏感すぎる光の感覚が そうさせている・・・。 (・・・。お姉ちゃん・・・) 「私も手伝うわ」 姉の力になりたい。光らしく生きていけるように・・・。 一恵はそう思ったのだった・・・。 「え?私が・・・」 その日、光は晃からある申し出をされた。 「・・・こんな話、断ってくれ」 晃が持ってきた話とは 愛美が手掛けている新化粧品の開発プロジェクトに 光の体験談を参考にさせて欲しいとのことだった。 ”お客さまの肌にあった化粧品を模索したい・・・” そんなうたい文句で化粧水のCM。 光の昔のさまざまな体験談をCMに生かしたいという・・・。 「生かしたいって・・・。どういう風に?」 「・・・愛美にはオレから断っておくから・・・。ごめんな 妙なことに巻き込んで・・・」 「・・・。いい。私・・・一度愛美さんの話、聞いてみるよ」 「え!?」 「何事も経験だし!」 「で、でも・・・。愛美の言うことなんか聞くこと・・・」 光は背筋を伸ばす。 「・・・逃げたくないよ」 「え・・・?」 「自分の知らない世界だからって・・・。逃げたくないよ・・・。 逃げたくないんだ」 (・・・光・・・) きっと、愛美の話を聞いたのは その先に”何か”が在るから。 嫌な目に、傷つくような目にあったとしても 光に必要な何かが、そこに在るから・・・。 「少なくとも”最初”からは・・・逃げたくはない・・・」 「光・・・」 「どうしてもしんどかったらさ。 ・・・最初だけ顔出して・・・逃げちゃえばいいんだしなっていい加減な 私です。へへ・・・」 照れくさそうに鼻の頭をかく光・・・。 そんな仕草が愛らしく・・・。 健気に・・・。 光は愛美に会うと決めた。 週末。 光と晃はHANAOKA本社ビルの前にいた。 (す、すげ・・・) 10階建ての大理石のような艶やかなビルの壁面。 (ホテルのようだ・・・) ガーッと入り口のドアが開いて・・・。 可愛らしい受付の若い社員が晃をみつけて 会釈。 (・・・すごい(汗)幹部クラスの待遇なのか。晃) 肩を並べて歩く自分がなんだか申し訳ないような・・・。 光は少し晃より一歩下がって歩く。 「・・・。光。言っておくけれどオレはもう こことは関係のない人間だから・・・」 (う・・・) 見透かされていたようで・・・。 だがやはり光は無意識に晃と距離をとってしまう。 (・・・) エレベーターに乗る。 同乗する社員達のチラッと目配りを感じる光・・・ 「・・・光。今日帰り、なんか上手いものでも 食って帰ろうな」 そういって光の腕をぐいっと引っ張る晃。 同乗していた社員は戸惑い・・・そそくさと エレベーターを降りていった。 「ったく・・・。この会社の社員はちいせぇやつばっかりだ」 (あ、晃。い、意地になってるよって怖い(汗)) コンコン。 「本当に大丈夫か?」 「うん。話を聞くだけだよ。内容が嫌ならはっきりと 自分で断るから・・・」 「・・・」 会議室にはいると・・・ (う、うお) なんだか役員らしい重鎮の人間がズラリと並んでいる。 会議室の一番奥。 テレビモニターの画面の前に愛美が立っていてこちらへ来た。 「光さんようこそ。待っていました」 「・・・あ、は、はい・・・」 光と晃はど真ん中に座らされる。 (こ、こんな席じゃなくても・・・(汗)) モニターの前に座らせられる光・・・。 「では今回の我が社製品使用者によるモニターを・・・」 促されるまま会議が始まった。 「では、”カウンセリング化粧品”についてのご説明から 入りたいと思います。お手元にある資料をご覧ください」 パソコンを使いながら、愛美が解説していく。 (すごいなぁ・・・) ドラマの中に出てくるキャリアウーマンそのものだと思った。 「・・・であるように、他社商品との差別化と同時に 利用者により近いニーズに応えていくという姿勢が求められます 敏感肌による肌荒れ、アレルギー体質による皮膚炎・・・。化粧品自体が その原因にもなりうる・・・。現代病が蔓延する今こそ」 (・・・。なんか小難しい話してるんだな。なんか話の要点がつかめん) 会社のビップ相手に堂々と話す愛美が神々しく見える。 (きっと・・・。自分の仕事に自信があるんだろうな・・・。なんだかまぶしい) 内側からあふれ出すオーラみたいなものを感じる。 「・・・利用者の体質に合わせた、利用者の感想による商品開発が 重要で・・・」 話す内容も、決して媚びていない。 使うものの側にたって仕事がしたい、そういう意気込みガ伝わってくる。 (でも・・・。言ってることは”正しく”けどなにか・・・足りない気がする) 一方的な意気込み。 相手に余裕を与えないような・・・。 「店員には極力”カウンセリング力”の向上を強く根付かせております。 商品に対しての不安、意見に耳をかたむける、来店者への対応に力を入れています」 (・・・。耳を傾けるって・・・) 化粧品店の入り口。商品のポスターにはモデルの綺麗な笑顔で 出迎えられ、清潔感或る店の中。 カウンターには上手にメイクを施した店員。 申し分ないが・・・。 ”あのお客さんにどう説明しろっていうのよ。 話の仕様がないわ” ”適当に話あわせて置けばいいのよ。同情するようなかんじで・・・” 綺麗な肌の人に 綺麗にメイクできる人に ・・・どこまで理解できるというのだろう。 ”同情”はできても”知識や技術”はあっても ”痛み”はわかるだろうか・・・? 「・・・ならば、現実、どんな悩みがあるかを知らなくてはならない。 より”リアル”な意見が欲しい。・・・といわけで今日来ていただいた 彼女に」 愛美は光の名前と簡単な自己紹介をして・・・。 (・・・という訳で・・・?私にここで意見を言えって・・・? そんな唐突な・・・) 重役全員の視線が光に集中する。 光は一瞬、体を硬直させる。 (・・・光・・・) 光の様子を察した晃。 「・・・あの、すいません。申し訳有りませんが失礼します」 「え、あのちょっと・・・!」 光の手を引いて出て行こうとする晃。 だが・・・。 (え?光?) 晃の手を振り切る光。 「光・・・?」 ずっと俯いていた光。 少しだけ顔を上げた。 「・・・あの・・・その・・・。私は・・・」 じっと何十人の人間の視線が集中する。 「・・・。私には・・・会社のことや・・・この計画のことは良くわかりません。 ただ・・・。ただ・・・。体のことや肌の悩みは十人十色で・・・。たった一度、 話を聞いてもらったぐらいじゃ相手のことはわからないと思います」 光の呟きに 重役達はすこしざわめいた。 「”綺麗が一番”ってけしかけて・・・化粧品一つ5千円。一ヶ月に何万円って費やして・・・。 必要以上にお金をかけさせている気がします・・・。売ることばかり 考えてる会社に・・・」 「・・。会社が悪者とでもいいたいのかね?」 「そうじゃないです。でも・・・。でも・・・。子供専用の化粧品まででて、 肌がまだ弱い子供のうちから”綺麗が一番得する”みたいな先入観植え付ける気がします。 どれだけ商品に”敏感肌の方はご注意ください”って書いてあっても意味がない。 難しい名前の化学薬品使ったものを子供のうちからつけさせられるなんて やっぱり間違ってると思います」 (え、偉そうに語ってしまっている・・・(汗)) 自分の言葉に自分で驚いている光だが 脳裏に浮かぶのはテレビでやっていたニュース。 12歳の子供が 顔形で悩んで死を選ぶ。 『ぶすはこの世にいらないといわれたので死にます』 遺書を書いた12歳。 そんな価値観を持たされるような世の中はどうなんだろう。 どうなんだろう。 ファッション雑誌のような顔になりたい、 体になりたい。 そればかりが優遇される価値観ってなんだろう。 「・・・美人な店員さんにどんなにいい商品を勧められても 上手に話をされても結局、この人は”商品が売りたいんだ”って 思ってしまう・・・」 「ふふ。じゃあ店員が”美人”じゃない方がいいといいたいのですか?」 重役の一人が鼻で笑った。 晃はカッと血が上り、拳に力が込められるが 光が止める。 「・・・。私がいいたかった事は・・・。人の心と”話す” ことは簡単じゃないってことです。・・・。あまりお役に立てる 意見が言えなくてすみません」 「いやいや・・・。実にいい”リアル”な話を聞けて参考になりましたよ。 ハハハ。貴方ような”リアル”な方から聞けると実にねぇ。ハハハ」 重役達はせせらわらい、拍手。 ・・・嫌味な拍手に送られて二人は会議室を後にした・・・。 「・・・。”あれ”が君の用意したサンプルなのかね?」 「サンプルだなんて・・・。妙な言い方はよしてください」 「いいじゃないか。ワシはいいと思ったね。実にいい”キャラ”になるし あれほどに説得力の或る素材はない。どんな女性でも”励ませる” あれだけ酷い素材は。ふふ」 一人の重役がお茶を一口含んでニヤリと笑う。 「・・・支部長・・・。私はそんないい加減な気持ちでこの 計画を進めてきたわけでは・・・」 「とにかくだ。このプランは結果を出せばいいんだ。うちの会社のイメージが上がり、 認知度があがればそれで。わかったかね?」 「・・・」 ”売ることばかり考えていることを・・・。ちゃんと 見抜くと思います。使う側は・・・” 光の言葉に納得してしまうそうだ。 どれだけ使う側に寄った商品を作ったとしても 作る側の企みが薄暗いものならばそれは絶対に商品に 何らかの形で出る。 現に、”天然成分配合”をうたった商品で、肌が荒れたという クレームが数件合った。 ”数件だろう?その程度のクレームは適当に処理” それが会社の対応だった。 (・・・。こんな対応してる会社じゃ・・・。 ”カウンセリング・メイク”なんて絵に描いた餅ね・・・) 徹夜で作り上げた企画書を ゴミ箱に捨てた・・・。 (・・・光さんごめんなさい・・・。貴方の心の傷を引きずり出すようなことをして しまって・・・) 無知な大人たちに曝け出され、鼻で笑われるような 場面をつくってしまった。 (・・・ごめん・・・。晃・・・) ゴミ箱の中の企画書が 虚しく風に靡いていた・・・。 晃の車。 駐車場に止められいるが晃はエンジンをかけられない。 「・・・光。ごめん・・・。本当に・・・」 「・・・なんで謝るのさ・・・」 「あんな・・・あんな目に・・・」 ボコ! 光は晃の頭を一発ゲンコツをお見舞い。 「な・・・」 「マイナス思考モード、ONにすんな!晃! 晃までそんなシリアスな顔しちゃったら、私、立場がないだろ?」 「光・・・」 「それにさ、あんな人前で意見いうなんて結構・・・いい 経験になった。・・・ちょっと疲れたけど・・・。 そうだ!こういうときこそ・・・」 光はバックのポケットからごそごそと何かを取り出した。 「はい、晃、ちょい口あけて」 「え?」 「ほい!」 晃の口に何かを放り込んだ・・・。 (・・・甘い・・・) それはいちご味がした。 「・・・それ食べて・・・。切り換えよう! 元気だそう・・・。な?」 (光・・・) いつのまにか 知らない間に 強くなった・・・? 「さ、どっかドライブして帰ろう!な、晃・・・」 (いや・・・強くなったというよりは・・・) 強くなろうとしている。 ・・・胸の奥に痛みを溜め込んで・・・。 「・・・じゃあ・・・カラオケでも行くか」 「うん。いいねぇ!」 晃はアクセルを強く踏む。 (・・・光・・・) 車の中はいちごの甘い香り。 光の微笑みの裏の痛みに想いを馳せる・・・。 その痛みが 光を強くしているのだろうか。 光を糧になるのだろうか・・・。 ”痛みを糧に変えて” 痛みが人を強くするというなら 沢山の痛みが在った方がいいのだろう。 ・・・痛みが人を綺麗にするなら・・・。 痛みというメイクが人から消えることはないのだろう。 きっと・・・。
・・・説教臭いお話の回になってしまってごめんなさい(汗) これを書いているとき、エステだか化粧品屋だかわかんない セールスの電話に腹がたっていたのでなんだか感情こめちゃいました・・・(汗) しかしどっから人の名前とか仕入れてくるんでしょうね。 名簿屋とかいるって聞いたことあるけど・・・。 夕食時に何度もかかってきて。 新商品でたから試してみてくれの一点張りで電話切らせてくれないんです。 ・・・電話代返せ!!(落ち着け) ともかく化粧とかそういうのは個人的なものですから、 子供のうちから『綺麗は得』みたいな価値観植えつけるようなことは いかがなものかとオモイマス。 女の子はお洒落が好きなのは当然で、可愛い服着たいと思うことは 当たり前。 けど大人並みの化粧品使わせたり、ブランド物だのなんだのって 身にまとったりっていうのはちょっと・・・。 ”お金で買えるお洒落”より、”自分で作って楽しむお洒落”を覚えてほしいですね。 そういう意味では毛糸で『指編み』というのが小学生の間で流行っているとかいないとか? 自分で可愛いアクセサリーを作ったりして楽しむっていう・・・。 私なんぞは、服は兄のお下がりは当たり前でした。普通、成人式などに お化粧の仕方とかを教えられたりっていうイベントありますよね。 ・・・。成人式か。私は成人式も着物は着ませんでした。 というか着れなかった。肌が蒸れて(笑&汗) 私のモットーは『小奇麗』でよし、であります。 小奇麗というのは案外難しいものです。 小奇麗というのは見かけだけではなくて、例えば家に入るとき靴をちゃんと 揃えることや挨拶ができるかということ。 立ち振る舞いも入ると思います。ものぐさ太郎な私はちと・・・難しい(汗) とりあえず、自分自身に意識して注意したいとオモイマス・・・。