シャイン
〜みんな輝いてる〜
第20話 小さなお客様
商店街の路地裏の美容院の
赤いポスト。
看板にはそういかいておあります。
『いつでもどこでも髪を整えに参ります』
だれかがポストに小さな手紙をいれました。
コトン。
「ん・・・?」
光の美容室のポストに一通の手紙が入れられた。
封筒には可愛らしいキティのイラストが・・・。
便箋を開くとこれまたかわいいキティのイラスト入りで・・・
『美容院のおねえさん。私のおうちに私の髪をきれいに
しにきてください。おねがいします。みさきより』
「なんだぁ?これは。ラブレターじゃないのは確かだな」
かわいいピンクのくれよんで書かれた手紙。
近所の子供のいたずらかなと思ったが・・・
”何か”を感じる手紙・・・。
光は早速書かれていた住所まで言ってみた。
「・・・新しい。可愛いおうちだな・・・」
日本瓦などどこにもない。
レンガ造りの赤い三角屋根の新築の家。
「ふむふむ。三人家族なのか」
『内山雄介 幸子 みさき』
光が表札を見ていると
ワンワンッ。
「おわっ」
子犬がひょこっとで敵吠える。
ワンワンッ♪
光のジーンズの裾をくいくいと噛む。
「これこれ。ポン太(犬の名前)お客様に悪戯しちゃ駄目よ」
門の奥から若い母親が出てきた。
「あ、あの・・・。こ、こんにちは」
光は母親が自分の顔を見て驚かないことに驚く。
「・・・『ひかり』の方ですね?」
「え、ああ、そうですが・・・」
「お待ちしてました!さ、どうぞ」
母親は優しく笑って光を家に手招く。
(・・・一体私にどんな用なんだろう・・・)
とりあえず、母親の招きに連れられ家に入っていく。
新しい家。木のいい匂いが鼻をくすぐる。
リビングに案内されるとそこに・・・。
「みさき、美容師のおねえさんが来てくれたわよ」
白いソファにちょこんと座っている少女。
年のころは6歳ぐらいだろうか。
温かそうな毛糸の帽子かぶっている。
「あ、こ、こんにちは・・・」
「・・・こんにちは」
少し恥ずかしそうに会釈する。
「横山さん・・・。でしたよね。さ、お座りになってください」
レモンティの香り・・・。白のティーカップを差し出された。
「あ、はい。すみません。いだだきます」
コク・・・。
「・・・。おいしい!!すんごいこれ、ハーブはいってますよね!?」
「え、ええ・・・」
「うちでもハーブ作ってるんですがこんなに香りのいいの
なかなかできなくて・・・。本当にすごく美味しいです」
ゴクゴクと一気に飲み干す。
母親は少し驚いて・・・。
「あ・・・。すみません。なんかあんまり美味しいので感激してしまって・・・(汗)」
「ふふ。ふふふ・・・。楽しい方なんですね」
「あ・・・。いや・・・。す、すいません・・・」
初めて訪ねた家の初対面の人の前で思わず”素”のリアクションをしてしまった
光。ちょっと小さな自己嫌悪。
「・・・ふふ。このレモンティ、みさきが淹れてくれたんですよ」
「あ、そうなんですか。ありがとう。みさきさん」
「・・・」
ぺこりと頭を下げる光に少女は不思議そうな顔。
(なんでこのおねえさんは”さん”つけるのかなぁ)
自分より大人なのに・・・。
「あのう。それで・・・。あの手紙を書いたのはみさきさんですか?」
少女はこくんと頷く。
「髪を切りに来て下さいと書いあったので切りにきましたが・・・」
少女は少しもじもじと体を捩じらせた。
「みさき。ちゃんと自分でお願いしなさい。
もう赤ちゃんじゃないのよ?」
母親は厳しい声で言う。
(・・・しっかりしたお母さんなんだな)
母親の強さを感じる光。
「・・・」
少女は帽子を静かに脱いで見せた。
するとさらっと黒い綺麗な髪が肩まで流れてきて・・・。
だが・・・
前髪から後頭部にかけて髪が薄く地肌がみえていた・・・
地肌には縫ったあとが・・・
「・・・。わたしのかみのけを、きれいにしてください。
おねがいします。」
ぺこりと光にお辞儀してお願いする少女。
「・・・。娘は脳の手術をしたんです・・・。
その時に頭を剃って・・・。2ヶ月たったんですが髪がなかなか生えてこない
部分がでてきてしまったんです・・・」
母親の顔は穏やかに微笑んではいたが
瞳の奥に切に娘を心配する母親の想いを光は感じた。
「行きつけの美容院があったんですが・・・。そこへ行くと
他の子に会うから行けなくて・・・」
光も思い出す。
同じような経験が・・・。
近所の美容院だと同じ学校の生徒がいるかもしれないと
不安になって・・・
髪は登代子に切ってもらっていたっけ・・・。
どうでもないことが
怖くて不便になって・・・。
「あ、あの・・・。おねえさん。わたしのかみ・・・。
きれいになりますか?」
不安そうな声の少女・・・。
光はひょいっと少女をだっこして膝に乗せた。
「はい。きれいにいたします。おひめさま」
小さな手をそっと握って微笑む・・・
「・・・お、おひめさま・・・。へへ。おひめさまだって。照れくさいなぁ。
また、”ぷりきゅあ”みたいな髪型になるかなぁ」
「ぷりきゅあ?」
(マニュキュアのことか?)
少女はアニメの絵本を光に見せたて説明。
「そうか。ぷりきゅあか。かわいいね」
「うん。わたし、大好き」
絵本を嬉しそうにめくって光にキャラクターの説明をする少女。
この少女の笑顔がもっとキラキラするようになったら・・・。
人の目も気にせずに行けるようになったら。
そのお手伝いができたら・・・。
「私・・・また。ぷりきゅあみたいな頭になるかな?」
「大丈夫。また、”ぷりきゅあ”みたいな髪型できるようになるよ。
きっとなる。きっと」
「うん」
少女は光の手をぎゅっと握る。
(あったかいなぁ・・・。小さい子の・・・手・・・)
希望や好奇心に満ちていて・・・。
その心が大人の都合で傷つけられたり
少し手助けすれば治る傷なのに放って置かれたり
してはならないのに・・・。
(・・・笑顔を・・・消えさせちゃいけない)
光は少女のおさげを外す。
「・・・ハゲちゃってるの。かっぱみたいって言われた」
しゅん・・・と少女は悲しそうに言った。
「そうか・・・。大丈夫。かわいい河童を私、”ぷりきゅあ”に
するからね」
「・・・うん!」
光の言葉に笑顔がぱっと戻った。
(・・・笑うと天使みたいにふわふわした子だな)
少女の笑顔に光も和む。
「でね。ぷりきゅあは2人の女の子でぱーって変身するんだよ」
「うんうん。変身かぁ」
”ぷりきゅあ”の話に花を咲かせながら光は少女の髪を整える。
手術の傷の部分が目立たないように
髪の流れを崩さずにカットしていく。
「・・・はい。カットはおしまい」
光は少女に手鏡を見せる。
「わー・・・!見えなくなってる!!肌色のとこ」
「ふふ。よかった。あとね、地肌にいいクリーム
ぬっておいたからきっと手術の痕の部分、綺麗になるからね」
「ありがとうー!おねーさん!」
少女の明るい声・・・。
(”ありがとう”か・・・。やっぱりいいな・・・いい言葉・・・)
やんわりと胸があたたくなる。
「あ・・・」
光はふと・・・リビングの戸棚の上のビーズ細工に目が留まった。
「わぁ・・・。可愛い。これ・・・お母様が作られらのですか?」
「ええ。最近始めたんですけど・・・。ふふまだ下手で・・・」
「・・・。あの。お母さん。ビーズ・・・。少しお借りできますか?」
「え?あ、はい・・・」
母親は裁縫セットの中から色んな形の色のビーズを持って来てくれた。
「・・・ぷりきゅあ・・・か。ふむふむ」
少女の絵本を見ながら光は何かを作り始める。
少女はじいーっと光の手を見ている。
(何ができるかな、何ができるかな)
ワクワクした顔。
光の指先をじーぃっとじーぃっと集中して・・・。
「・・・と。こんな感じかな?みさきさん」
「わぁあ。わあああ・・・ぱりきゅあだ!」
ビーズの髪飾り。
アニメ絵本の中のキャラクターの髪飾りに似せて作ってみた。
「どうかな?これであってる?」
「うん!」
「つけてみる?」
「うん!」
そっと少女の右耳の上に作ったビーズを留めた。
「・・・すごい!ママ!ぷりきゅあみたい!!
かわいい!!」
少女は手鏡を見て興奮。
「おねーさん、すごい!ぷりきゅあみたい!
魔法つかえるの!?」
「いや・・・。魔法じゃないけどちょっと
ビーズが好きなんだ。みさきさんが喜んでくれたから
私も嬉しいです」
少女を膝に乗っけて頭を撫でた・・・。
「へへ。へへへ。おねーさん。変なひとだね」
「そう?」
「うん。ていねいな話し方だしそれにいろんなことができる。
変なひとで、とってもすてきなお手手の人だよ」
少女は光の手を頬にすりあててにこにこ笑う・・・。
(・・・あったかいなぁ・・・。これが・・・。人の温もり・・・。
これが・・・。一番大切なもの・・・)
無垢な心。
無邪気な笑顔。
澄んだ瞳と可愛らしい声からの”ありがとう”は
いくらお金を積まれても代えられない。
もらえない。
少女は光が帰るときも姿が見えなくなるまで
ずっと手を振り続けてくれた。
光にはその手が・・・
もみじの葉のように可愛らしく見えたのだった・・・。
出来事を光は晃にいち早く話した。
美容室の二階の和室で午後の休みを取る二人。
こたつにはいって話していた。
「・・・そうか・・・。よかったな」
「ああ・・・。あの子の手のぬくもりが・・・とっても心地よかった・・・」
自分の両手をじっと見つめる光・・・。
小さな手のぬくもりがまだ残っている・・・。
(・・・いい瞳・・・。してるな・・・)
何か満たされている光の瞳・・・。
光の成長を感じる晃もまた・・・
穏やかな気持ちになる・・・。
「・・・光は本当に”魔法使い”だよ」
「え!?///」
「人の心も・・・綺麗にする魔法使い・・・ってね」
「・・・(照)あ、晃の表現は・・・詩人過ぎるよ///」
光は珈琲カップをぐいっと飲み干す。
「嬉しいよ」
「え?」
「・・・その話を聞いて・・・。光がオレの夢を引き継いでくれてる
気がして・・・さ」
「・・・晃・・・」
ふわふわと・・・
ふたつのマグカップから湯気が天上に舞い上がる・・・。
(・・・。な、なんか・・・こ、このふんわりした空気は・・・)
心地いい
綿の中にいるみたいな
ふわふわして・・・
「あ、ああああああのッ。こ、珈琲おかわりいるか!??」
緊張のあまり声が上ずって・・・。
「いいよ。俺が行く」
「い、いいや私が行くよ」
ガタンッ
立ち上がった拍子にコタツの上に珈琲がこぼれる。
「あ・・・。て、てぃぃティッシュどこだ!?えっと・・・」
慌ててティッシュ箱を探す。
「あ・・・」
光と晃の手が箱の上で重なって・・・
(・・・(汗))
晃は・・・
真っ直ぐなに光を見つめる・・・。
ただ・・・
只管に・・・
(・・・っだ、駄目だ・・・。た、耐え切れんッ)
「あ、晃・・・。ご、ごめんッ。
晃とのアイコンタクトはまだ・・・クリアできませぬッ」
動揺しっぱなしの光。
思わずクッキーの箱で顔を隠して晃に謝る・・・。
「な、なんというかその・・・。か、体中がくすぐったくなり
混乱が止まらぬというかそのあの・・・」
透明なクッキーの箱なんだかこれは・・・。
「・・・ぷ。クククク・・・ハハハハハ」
「・・・?な、なんだその爆笑は??」
「だって・・・。なんか光、モザイクかかった画面の人
みたいでさ・・・ははは」
「な、なぬ!?」
確かにワイドショーのインタビューされている人みたいです。
「・・・。わ、わ笑うなって。もう・・・」
「ごめんごめん。ふふ。でもそういうところが
可愛いんだ。なんかくすぐられるな・・・」
「・・・ばッ///。か、からかいすぎだぞッ。晃・・・」
光はまたクッキーの箱で顔を隠す。
「ぷはははは・・・!」
「笑うなってー・・・!」
光とこんな風に笑い合える時間。
晃がずっと夢見てきた
あこがれていた時間・・・。
それが現実に流れている・・・。
(やっぱり光は・・・。魔法使いだよ。オレにとって・・・
可愛くて優しい・・・)
体を張って
自分を守ってくれた
幼いあのときから・・・
あの時から”光”という名の恋が
始まった。
晃の心の中の灯火は・・・
(・・・光・・・。ずっとそばに・・・いてほしい・・・)
一層・・・。光の心の中の蝋燭に火を灯したいと
願うのだった・・・
なんか各話、話に一貫性がなくて自分でも書いていて
話がアンバランスだなって不安なのですが、い、いかがでしょう(汗)
あ、でもラストは光と晃のことがメインになってくるので
もうしばらく一貫性がない雰囲気でよろしくおねがいします(汗)
さて・・・またもや髪の毛話ばかりですいません(汗)
一時、すごく抜けた時期がありまして、日記などにも書いていますが
髪の毛の話題に関しては人一倍敏感です。
男の人の髪の毛ネタはよくギャグにされるけど女性だって抜ける。
男の人も深刻だけど、女性の髪の毛がなくなるということは
男性以上にナーバスな出来事です。
世の中的にも認知されてない。外見上のことは男性以上に女性への
偏見もあざわらいも強く・・・
ギャグでハゲネタが笑えないときがある。それも男性バージョンが多い。
さらに、
子供のときに外見上のコンプレックスを強くもってしまって
何事も内向的になるなんて哀しすぎますよね。
大人が世の中の価値観を植えつけちゃいけません(汗)
子供のときは手足、どろんこになって、絵の具だらけでいいんです。
服なんて着なおせばいいし、お風呂に入れば綺麗になるんです。
コドモにブランドものなんて身につけさせちゃいけません。
逆に、服はぼろぼろになるまで、寧ろ、自分で手直ししてでも、着続けるよって
いうココロを知ってほしい。昔は、お下がりが当たり前でしたよ。
・・・私なんてこの年になっても母親の”お下がりの半纏”着てますから!涙の・・・節約!!
(by波○陽区)
ココロに”過剰な”化粧をさせることは覚えてほしくない。
厚化粧は大人の女性でも、あまり、見られたものでは有りません
あったかいココロだけ、育ってほしい・・・(教育番組を見つつ。精神的幼稚化進行中)
と、いつもの如く説教節で終わる管理人のあとがきでした・・・(汗)