シャイン 〜みんな輝いてる〜 第46話 光月草の約束 光が育てていた光月草。 「あ・・・。つぼみが・・・!」 花壇の光月草に小さなつぼみがついていた。 「・・・つぼみが・・・ついた・・・」 小さな・・・薄っすらと黄色い蕾・・・。 (嬉しい・・・) 小さな蕾・・・二つ。 だが光にとっては希望の蕾。 勇気のしるし。 「・・・あと一週間・・・」 (・・・。よ、よし・・・。決めた!) 光はカレンダーに赤のマジックで一週間後の日曜日に丸で囲んだ。 『決行日』と書いて。 (・・・。じ、人生でたった一度の告白・・・多分(汗)) どう言おうか。 どんな顔で言おうか。 光は考える。 (・・・シンプルに・・・好きだよ・・・がいいだろうか) 押入れの中の少女漫画を読みあさって研究し。 (・・・ベタな台詞より・・・。晃の胸に思い切って 飛び込んじゃう・・・とか?・・・いや。駄目だ。デカイ私に晃が 押しつぶされるだろう(汗)) 某純愛映画を見てはシュミレーションしたり。 光は考えに考えあぐねたが。 「でぇええい!!でたことショーブだ!!なるようになれいッ!!!」 と。最後にはやけっぱちなノリで開き直って。 (・・・。そうだ・・・。勇気を出せばきっと・・・) 伝えたい その気持ちだけがあれば・・・。 「絶対咲いておくれよ・・・。私頑張るから・・・」 静かに水をやりながら蕾に呟く光だった・・・。 (・・・と、とりえずは・・・。や、約束を取り付けねば!!) その夜。光は晃の携帯に電話しようと 電話の子機を手にしている・・・。だが手が震えて・・・。 (くそう!い、今からきんちょうしてどーする!) ごくっと唾を飲み込んで光の震える人差し指は 晃の携帯の番号を押した。 (・・・。も、もう引き返せないぞ・・・。か、覚悟を決めろ!!) 光は自分に言い聞かせつつも子機を持つ光の電話手はまだ震えている。 そして4秒ほどして・・・。 「はい!!もしもし光!?」 「うッあ、ああ、あの・・・こ、こちら 横山家ですがッ」 (な、なんでそんな明るい声で出てくるんだ(汗)) 晃の妙にハイテンションな声に緊張度もマックスに。 (落ち着け落ち着け) 「あ、晃か・・・?夜分遅くにす、すまん」 「いや・・・。光からだった何時でも出るよ」 「・・・(汗)」 (・・・晃・・・。今日に限ってなんか晃節なんだッ(汗)) 光はちょっと子機を耳から離して 落ち着ける。 「あ、あの・・・。あのさ、に、日曜日・・・あ、開いてるか?」 「え・・・あ、ごめん。仕事入ってる」 「あ、ならいいんだ。また後日・・・」 「待ってくれ。光。夕方じゃ駄目か?なんとか 間に合わせる」 「無理しなくていいよ」 「・・・。無理したいんだ・・・。光から誘われて断りたくない・・・。 どうしてだか・・・。大事なことが待ってる気がして」 (晃、勘が鋭いな(汗)) だがこれも後回しにしたらいけない。 (日曜日に決めたんだ。逃げちゃ駄目だ) 「じゃ、じゃあさ・・・あの・・・。○○公園の・・・ 入り口で待っててくれないか。午後6時ぐらいで」 「わかった。絶対にいく。死んでもいく」 「・・・し、死んだら来られないだろ(汗)」 「あ、そ、そうか。ごめん。なんか嬉しくて・・・。 光からの誘いだから・・・」 あんまりにうっとりした声が受話器越しに聴こえてくる・・・。 (///い、今からこんな調子じゃ・・・。 こ、告白した後、ど、どうなるんだろうか(汗)) 「絶対に行くから・・・。待っててくれ。光」 「あ、ああ・・・じゃあ、日曜日に・・・」 P。 ツー・・・。 「・・・。約束・・・してしまった」 自分で道は作った。 ”気持ちを伝える”というゴールまでの道。 どうしよう。 どうなるだろう・・・。 めまぐるしく (・・・。ああ駄目だ・・・。胃が痛くなってきた) 光は胃腸薬を飲みながら 日曜日を待っていたのだった・・・。 チュンチュン。 「あ・・・」 日曜日。快晴。 横山家の庭の花壇。 「咲いてる・・・!」 小さな蕾達が 太陽の光を吸い込みたいよ・・・というように いっせいに花びらを開かせている・・・。 「綺麗・・・。咲いたんだ・・・。咲いてくれたんだ・・・」 薄い黄色・・・ その名のとおり月の光の色のよう・・・ 「ありがとうね・・・。がんばって咲いてくれて・・・ありがとう・・・」 芽を出し、蕾を持たせ、 花を咲かせることが難しいといわれた光月草 (・・・光月草が教えてくれた・・・。遅くてもいい・・・ ヘタでもいい・・・。気持ちを込めたら・・・きっと成果はでる・・・) 挑戦してみることの大切さを 教えてくれた。 「・・・う、よ、おおおおし!!人生一台の大勝負じゃなくて 大舞台・・・よおおし・・・!!」 朝刊の新聞片手に光は 自分に気合を入れる。 (ありがとうね・・・) 光月草に何度も呟きながら 光は太陽を見上げたのだった・・。 (・・・だぁああ。1時間も早く来てしまった) 午後5時。 待ち合わせ場所の公園。 入り口の柵の前で光はキョロキョロして 立っている。 裏道なため人通りはまばらでだがそれでも駅へ行く道 なので、少し挙動不審な光をチラ見して通り過ぎていく。 (・・・これじゃあ・・・。ロマンチックもへったくれもない(汗)) 「・・・ゴホン。」 光は姿勢を正して帽子をかぶりなおした。 その光の前を・・・。 初々しい高校生ぐらいのカップルが通り過ぎていく。 女の子の方は、ピンクや赤の女の子らしい色の服を着て 彼氏に笑顔を振りまいている・・・。 (あれが・・・”普通”の女の子・・・) 向こう側の塀に立っているミラー。 普段と変わらない、地味めな色の服で・・・。 (・・・もう少し・・・。可愛い格好してくればよかったかな・・・) 格好なんて関係ないのかもしれないけど・・・ でもやっぱり・・・ (・・・。難しいな・・・) 漫画のような甘い雰囲気を醸し出そうなんて おこがましいかな 可愛い女の子の特権かな・・・ 「・・・。駄目だ。また考えすぎの世界に入りそうだ・・・。 と、とにかく・・・頑張ろう・・・」 せっかく光月草が咲いたのだから・・・ 光月草が咲いたことを早く晃に伝えたい・・・。 それから・・・ それから・・・。 光は晃から預かった晃の部屋の合鍵を 握り締めて・・・晃を待つ・・・。 (・・・会いたい・・・晃・・・) 今日ほど晃に会いたいと思ったことはない・・・ (・・・会いたいよ・・・。晃・・・) 早く伝えたい想い・・・。 オレンジ色の優しい夕日が・・・ 今日はもっと優しく見える・・・ (・・・って・・・。なんか私、浸りすぎか・・・(汗)) 鼻の頭をぽりぽりかいて 光は晃を待った。 ・・・日が大分暮れてきて・・・ 腕時計。午後6時半 (遅いな・・・どうしたんだろう) 外も冷えてきて・・・。 手を擦る光。 (やっぱり・・・仕事忙しかったのかな・・・) ”絶対に行くから・・・。待っててくれ” 「・・・待つよ・・・。待つから・・・」 晃は来てくれる きっと来る・・・。 「くしゅんっ・・・」 冷えてきて・・・ (・・・あ・・・。雨か・・・) ちらりちらり 冷たい雨が降る・・・ 大切な誰かを 待つ時間も・・・なんだか心地いい 信じて待つ時間も・・・。 (・・・晃・・・。ごめんごめんって謝りながら来るかな・・・。うん ありそうだ。ふふ) ”光・・・ごめん!本当にごめん!!” 心底申し訳なさそうに 逆にこっちが申し訳ない気持ちになる。 (ふふ・・・。晃の顔が浮かぶな・・・。ふふ) 晃の顔ばかり浮かぶ。 どんな服を着てくるのか 告白したら・・・どうなっちゃうのか (・・・そ、それは・・・考えると頭がスパークしそうなので やめよう) 早く来ないかな・・・ 早く・・・ 「・・・オイ」 「あき・・・」 光は振り返る (え・・・?) ガッ!!! 固い石が光の額を直撃・・・ 「・・・っ・・・」 ポタッ・・・光の額から・・・血が滴り落ちて 倒れる・・・ 「・・・。久しぶりだな・・・」 倒れた光の目の中に・・・ 黒い・・・革靴が・・・入った・・・ 「・・・ウグッ・・・」 「いつ見ても・・・。ひでぇ顔だなぁあ??」 光のあごに・・・爪先をあて・・・ 唾をはきつける・・・ それは・・・ (さ・・・沢田・・・部長・・・) 一恵にセクハラをし、逆恨みして一恵を襲い、 捕まったはずの・・沢田。 「・・・てめぇと妹には・・・世話になったな・・・。 返しにてやったぜ・・・!!」 ドカ!! 「・・・グッゥ!!!」 沢田は光の腹部に思い切り蹴りを入れた・・・。 「・・・ケケケ・・・。ムシャクシャするから殴らせろ」 沢田は光のジャケットの襟をつかみ、 死角になる公園の裏のマンションのごみ置き場まで にずるずるとひきづっていった・・・ そして始まった・・・ 暴力・・・。 「・・・全部お前のせいだ・・・ッ!!!」 ドカ!! 「てめぇらのせいでオレは・・・オレの人生は ズタズタなんだよッ!!」 ドスッ!! 「くそ!!クソッ!!!オレの人生返しやがれッ!!!」 バキッ!!! 沢田の足は光の背中を蹴りあげて・・・ 「グガッ・・・」 光の口が切れ、血が飛び散って・・・ 「この程度じゃ・・・この程度じゃ・・・ 気がすまねぇ・・・ッ!!クソ野郎!!」 「ウガッ!!!」 蹴られながら・・・ 沢田の剥き出しの憎しみを 感じる・・・ 人の・・・ 生々しい憎悪・・・ 「簡単にくたばってんじゃねぇえよッ!!!!」 ドカッ!!! 殴られて 蹴られて 憎悪が・・・ 人が・・・人でなくしていく様を・・・ 「・・・ウゥ・・・」 光の体中・・・ 沢田の靴跡と・・・砂だらけだ・・・ 頭の傷口から・・・血が止まらなく・・・ ほとんど意識が朦朧とする光の耳に聞こえるのは・・・ 沢田の不適な笑みだけ・・・ 「・・・オレの人生返せよ・・・。オレの・・・」 怒りの中に 悲しみの声をかすかに感じた・・・ 「おい・・・。なぁ・・・。ひでぇ顔・・・」 「うっ・・・」 光の髪を鷲掴みして・・・ たばこの煙を・・・光の顔にふきかける・・・ 「てめぇ・・・そんなひでぇ面でよく生きてこられたよな・・・。 ・・・何もかも・・・嫌にならねぇか・・・?」 (・・・) 酷いことをされているのに どこか・・・ 沢田の言葉に 反応する自分が居る・・・。 「・・・オレは・・・オレは・・・。 俺なりにやってきたんだ・・・。なのに・・・なのに・・・ 。このザマは・・・。何なんだ・・・」 (・・・。私・・・。何してるんだろう・・・) 大切に 握り締めてきた 光月草の意味を忘れた・・・ 虚しさが 込み上げてくる 体中、蹴り上げられているのに 痛みの中にある虚しさは・・・。 「・・・。何だ・・・。その目は・・・」 じっと 沢田の瞳を奥を覗いた・・・。 「・・・。貴方は・・・。もう・・・。疲れきってるんですね・・・」 「・・・」 「・・・。私なんか殴っても・・・。なにかの・・・”足し”に なるん・・・ですか・・・ゲホッ」 咳き込む光・・・。 「てめぇなんかに哀れまれたくねぇッ!!!」 「・・・」 頬が内出血して青くなって・・・。 なんの抵抗もしない 大の男をぶん投げるほどの力があるこの娘が ぬけがらのように 沢田の怒りを受け止めている・・・。 「・・・。お前なんか殴っても・・・。 オレの人生・・・元にもどりやしねぇ・・・」 「・・・。でも・・・。また・・・。はじめられ・・・る・・・。ゲホッ」 口の中が痛い。 切れて・・・ 血を吐き出した。 「・・・。オレは・・・。もう・・・駄目だ・・・」 ドンッ 沢田は光をマンションのゴミ置き場まで 引きづり・・・突き飛ばして捨てた。 カンシャクを起こして、暴れた子供のように 八つ当たりしたものを捨てていく。 立ち去っていった・・・。 (・・・熱い・・・痛・・・い・・・) 虚しさと 蹴り上げられた体が ただ・・・。 痛い・・・ 全身の痛みと・・・頬の熱さと・・・ 痛みと熱さで・・・ 生ゴミの臭さとで・・・ 朦朧とする意識・・・ (そうだ・・・。晃が・・・来る・・・) 晃が来る 晃が来る (誰・・・か・・・。誰か・・・) 誰か・・・人影を探す (晃に・・・電話・・・電話・・・) 伝えなくちゃ 晃に・・・ 無意識に・・・ 手を伸ばす・・・ 誰か・・・ 誰か・・・ コツコツコツ・・・ 足音が聴こえる・・・。 倒れこむ光に近づく人影・・・ 物音に気づいたマンションの人間か・・・ 蹲る光を恐る恐る覗き込む・・・。 サラリーマンの男・・・ 「・・・お、オイ・・・アンタ・・・」 (・・・。き、気付いて・・・くれ・・・) 光は無意識に・・・サラリーマン風の男にてを伸ばした・・・ サラリーマン風の男は光の顔を見た途端・・・ 「・・・ヒィッ!!!!」 パン! 光の手を払い・・・ あとづさり・・・ サラリーマン風の男は・・・ 汚いものを 汚物をみるような・・・ 凄まじい嫌悪感滲ませて立ち去った・・・ (え・・・) うっすらと・・・ 街灯に映った自分の姿を (・・・いや・・・) ドウシテ・・・ ドウシテ・・・? ”ギャッ!!!” 奇声をあげて 逃げられてしまった・・・ ドウシテ・・・?ドウシテ・・・ どうして逃げていく・・・? 異物を見る目で見下ろして・・・ どうして逃げていく・・・? 素通りしていく・・・? 手足の痛みより 見捨てられたこと衝撃が 負けてはいけないと戦ってきた、 被害者意識を復活させていく。 (・・・) ”私みたいな人間は 誰かを好きになってはいけない” ”ひっそりと目立たぬように努力するべし” ”高望みせず、己にあった場所で生きていくべき” ”身分をわきまえろ” それに違反したから ”世間”という名の神様から 罰が下ったんだ・・・。 雨が降る・・・ 光の体にが濡らしていく。 額から流れる血が染まる・・・ 気絶するならすればいいのに 意識はちゃんと在る。 (・・・神様・・・。気を失わせてください。一時でいいから・・・ 一時でいいから・・・) 何もかもから逃れたい。 (・・・。感情を・・・消したい) 被害者意識の頂点 一番嫌いな頂 前向きさも後ろ向きさも 人間としての感情全て ・・・アンテナを張り続けることに疲れた もう折れた・・・。 水溜りに映る自分。 頬から流れる血は涙のよう 結局、自分に・・・弱い負けた 哀しくて情けなくて (・・・。晃・・・。ごめんね・・・) 一生分の勇気を持って想いを告げようと したその日は・・・ (晃・・・ごめんね・・・) 光の中の希望が砕け散った日になったのだった・・・。
前向きなっていた・・・主人公をどん底へと落としてしまいました(汗) す、すいません。ごめんなさい(汗) 女性が痛めつけられるシーンは あんまり書きたくなかったんですが ていうか・・・書いちゃいけない気がしていたんですが ・・・逆に絶対にどんな理由があってもしちゃいけません。 ってなに言っているんだろう。 ・・・ヒロイン主義っていってて矛盾してるかもしれませんが(汗) ・・・(悩) と、とりえず(焦) ”最大の敵は自分” ていうことや 色々書きたいものがなんか煮詰まって色々ありまして ありまして・・・(悶々) でもあのちゃんとラストまで盛り返します。 自問自答して盛り返えすところをじっくり かいてみたいので・・・(汗汗) ラスト、もう一度自分自身と向き合う主人公と私のヘタレ文に もう暫しお付き合いください・・・ ”笑顔”というゴールにたどり着くまで・・・(汗)