シャイン 〜みんな、輝いてる〜 第53話  光のバースディ 「・・・。5時だ。朝食の支度を・・・」 カレンダーを見る。 今日は日曜だ 「・・・そうだった。慌てることは無いな」 再び床に戻る。 「・・・」 だが何か大事なことを忘れている気がする。 「・・・。なんだろう。確か昨日は晃と会って・・・。 えーっと・・・」 (・・・。お、思い出せん・・・!とてつもなく 大事でとてつもなく柄じゃないことをした気がするのだが・・・!) 記憶。 モノクロだかカラーだかも分からないくらいに。。 「だぁあ!仕方ない。もう一度眠れば想い出せるかもしれん!」 と 再び目を閉じてみるが。。 ぼんやりと晃の顔が浮かぶ。 (ん?・・・ん?な、なんでそんな思いつめた顔してるんだ。 っていうかうっとりしてるぞ!??) だが・・・。 そこまでしか見えなくて・・・。 「・・・。何を言ったんだ。何をしたんだ・・・。自分・・・!!」 錯乱する光。 ”オレのせいだ。だから・・・” めくるめく光の想像。 (晃の”オレのせいだワールド”が再発したか!?) 「あ、晃に謝らねばッ!」 着替え、とりあえず洗濯と朝食をこしらえて。 『一恵へ。ちょいと、一生の誤解を解きに行って来ます。 サラダが冷蔵庫に入ってるから。頼むぞ。 光』 とチラシの裏に書置きし。 (何を言ったか分からんが・・・。安心させねばッ) 「わぁ!」 片方のスニーカーの紐が。自転車の車輪に絡まって倒れる。 「イタタタ・・・。痛がってる場合じゃない!」 よくわからないが兎に角急がないといけない気がする。 (何言ったんだ。何したんだ、私!) 全く覚えてないが ”非常に柄じゃなくけど一生分の勇気をつかった” そんな妙な達成感だけがあって。 ピンポーン! インターホンを押してみたが・・・。 シーン・・・。 (いないのか・・・) 光は外が薄暗いことに気付いて・・・。 (まだこんな朝早くに来て・・・。何やってるんだ。私。 電話で聞けばすむことだったのに。帰ろうかえ・・・) 「あ。」 「・・・あ」 コンビニの袋を持った晃と遭遇。 「・・・」 「・・・」 (・・・。な、なんだ・・・!?このなんか・・・ なにか満ち足りた空気・・・というか・・・) 「・・・。あ、朝早くすまん!」 「いや・・・。少しでも早く光に会えて嬉しい」 マンションの廊下 朝陽が射して晃の頬を照らす。 (・・・。な、なんでそんなうっとりした顔してるんだ? こ、怖いくらいに・・・乙女というか(汗)) 「・・・(汗)あの・・・。まぁいいや。えっと・・・。 ああ、また来るよ。じゃあ」 「待ってくれ」 「・・・え。しかし・・・」 「折角来たんだから・・・。だ、駄目か?」 (うっ・・・。な、なんなんだ。その麗しい瞳は・・・) なんだか晃の雰囲気に流されるまま 「すまん。早朝に」 「いいよ。もしよかったら朝食一緒に食べないか。 隣の人から野菜貰ったんだ」 「いやっ。あ、いや、家で作って来たから・・。 ま、またの機会にご馳走になるよ(汗)」 「そうか・・・。残念・・・。 光と幸せな朝食食べられると思ったのに・・・」 寂しそうに・・・ 赤いトマトを冷蔵庫に入れ直す・・・。 (し、幸せな・・・??(混乱)あ、晃の言語中枢は今スイッチ 入りっぱなしなのか(汗)) 「あ、晃あの・・・」 「何・・・?何でも話してくれ。たくさん話がしたい」 晃のうっとりとした顔・・・。 なんか歌手のカメラ目線のような。。 (あ、朝陽のせいだっ。うんそうだ(滝汗)) とにかく本題に入らないといけないと、光は背筋を伸ばして正座した。 「こ、コホン。あの。晃。昨日のことなんだか・・・」 「・・・夢みたいだ」 「・・・?ゆ、夢?あ、いや昨日は私夢は見てないんだ」 「そうか・・・。でもオレは世界で一番幸せな夢を見た・・・」 晃、うっとりと頬杖をついて・・・。 「・・・(汗)そうか。それはよかった。晃、単刀直入に白状する」 「ああ何でも話して欲しい。全部聞くから・・・」 「そうか。では・・・自供します」 「ああ・・・」 「昨日・・・。私・・・。晃に何を言った??」 「・・・。え。」 晃、ようやく覚醒。 夢の中から帰ってきた王子様といったところか。 「な、なんか知らんがっ、一生分の緊張に耐え切れなかったのか 昨日の記憶がすっ飛んだみたいなんだ・・・(汗)」 「・・・」 「す、すまん。申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない」 光、まるで三行半をつきつけられ、妻に平謝りする旦那のようで。。 フローリングにこすりつける。 「晃に気に触る言動をしたのなら申し訳ないッ。 マイナス思考を晃に伝染させてのなら尚更申し訳ないッ・・・」 「・・・」 「・・・。す、すまないあの・・・あの・・・」 「・・・。ぷ。」 「・・・!?」 「アハハハ・・・!光らしい・・・。ふふふふ・・・」 「な、なんで笑うんだ?あ、あの本当に昨日は私何を・・・」 (妙に笑うほどにショックを与えてしまったのか・・・!?) ちょっと冷や汗が流れる。 「ちょっと残念だけど・・・。おあずけでいいよ。ふふ。いい夢だったから・・・」 「ゆ、夢・・・?な、なんか話の結論がイマイチつかめないが 晃の機嫌が治ったのならよかった・・・」 「全く・・・。光には叶わないな。ゴールがない旅をしている気分だ」 「・・・??」 「いや・・・。スタートもゴールもない。光が光らしく 活きててくれたら・・・。それでいいんだ」 「・・・?晃・・・あのすまん。誉められていると とっていいのだろうか(汗)」 「ああ。勿論。オレはまた”夢”みることができる。ふふ・・・」 「そうか・・・。よく分からんがよかった・・・。がんばって思い出すから」 「焦ることないからな」 「ああ。でもぜったいに思い出す!私の一番大事な 部分のような気がするから・・・」 (ふ・・・昨日の告白より・・・嬉しいな) 真っ白なカーテン。 晃の笑顔が・・・ (うーん・・・。本当に何をいったのか・・・。がんばって 思い出さないと・・・。でも今日は・・・) チュンチュン。 「太陽が・・・綺麗だ」 茶色の羽の命が 二羽 嬉しそうに 楽しそうに ベランダで羽根をつくろって 青い空のプールに飛んでいった・・・。 いつかまた 口にしよう 照れくさくて どうしようもない想い ・・・言葉にする勇気 五月晴れ。 その日は太陽がいつもより優しく輝いている。 「・・・じゃあそういうことで。真柴さんも俊也さんも いいですね?」 「ああ。任せとけ。光ちゃんの喜ぶ顔をみるためならオレ、 脱いでもいいですよ」 バキ! 晃の一発が俊也の顔面を直撃。 「・・・ヤラシイ事考えるんじゃねぇ」 「ったく冗談がつうじねぇなぁお前は」 なにやら騒々しい横山家。 光一人おらず、皆集合しています。 実は光に内緒で皆でとある計画をたてた。 「考えてみたら・・・。お姉ちゃんって 誕生日、此処何年も祝ったことってなかった」 「そうだね・・・。私はこんな状況になっちまったし」 光は今年いくつになったかな 「・・・立ち直り始めた光に・・・贈り物をしたい」 もうすぐ光のバースディ。 光には内緒で祝おうと皆が集まったのだ。 「で。みんなは光へのプレゼント、買ったのかい?」 「もっちろん!私はふふおねーちゃんに似合いそうな スカート買っちゃったぁ。嫌がるかもしれないけど絶対にはかせる」 「えーオレはー。そーだなぁオレ自身をプレゼントしちゃおっかな」 バキ! 晃のパンチがはいった。 「・・・イテテ(汗)晃。そーゆーお前は何を用意したんだ?」 「・・・てめぇにゃ関係ねぇよ」 (・・・光へのプレゼントは・・・) 晃が用意したもの それは・・・。 (・・・。光・・・) 光の誕生日。 何を贈ろうか迷ったが・・・。 (・・・”ガンバレ”の意味を込めて・・・) 「おう。何一人、自分の世界にはいった顔してんだ?ヒステリー野郎。 ”オレの愛をあげる”とかアホな台詞考えてんじゃねぇのかよ?」 「・・・。その柄じゃない封筒を手にしたホスト野郎に言われたかねぇ」 淡い黄色の封筒に光へと宛名が・・・ 「おう。これか。アナグロな愛。オレの愛を綴った封筒さ」 と軽く封筒に口付け。 「・・・!そんな封筒光に渡せるか!捨てろ!」 男二人 封筒の取り合い。 ひょいっとそれを奪ったのは・・・ 「わかってないわねぇ」 「一恵ちゃん。返して。僕の愛」 俊也の手紙をひょいっと卓袱台の上に置く一恵。 「お姉ちゃんにそんじょそこらの”愛”なんて通じないわよ? なんてったって・・・」 カタン。 玄関から光が自転車を泊めた音がする。 光の足音に 全員耳を済ませる・・・ 「なんてったって・・・。お姉ちゃん自身さえ解いてない最大の宿題なんだから・・・」 光の誕生日・・・ さてさて どんなプレゼントが待っていることやら・・・