シャイン
〜個人授業〜
光が美容学校に通いだして早くも1ヶ月が過ぎた。 「・・・のように衛生管理を徹底させて・・・」 只管、要綱をノートに書き写し、何冊もの参考図書 を読んでは纏めて・・・ 実技の 学校の方は其れなりに光なりに一生懸命だった。 週末。 「・・・。光!」 机の上。参考図書の上でうとうとする光は晃の声で目が覚めた。 「あ・・・。ご、ごめん。来週分の予定表、今作るから・・・」 光は頬をぺちぺとと叩いてパソコンに再び向かう。 昼間は学校。朝の新聞配達はまだ続けていて、そして唯一の休み週末も 晃の元へ通って雑用などもろもろまでこなして・・・ (疲れがたまるの、当たり前だ・・・) 「光。いいよ。オレがやるから・・・」 「ううん。これは私の仕事・・・。やれる分だけはやっておきたいんだ。 只でさえ晃の手伝い、できないのだから・・・」 (光・・・) 晃は頑張る光の姿が嬉しかった反面、張り切りすぎる光が心配でならない。 (オレの都合に合わせてまで・・・) 光は中途半端ができない性格だ。無理をしないで休めといってもきかない。 (オレに出来ることといったら・・・。そうだ) 晃は何かを思いついて、二階の押入れから何か持ってきた。 「光。ちょっと手を休めてこっちこいよ」 「え・・・?」 晃はテーブルの上に青いシートを敷いて、そこに置いたのは。 マネキンの首、何体か。 「何するのんだ・・?ソレ・・・」 「ん?光はまだ実技やってないのか?」 「あ、いや、やってるけど・・・。もしかして・・教えてくれる・・・とか?」 「・・・教えてあげる・・・なんて偉そうなことは出来ないけど・・・」 晃は道具を取り出して少し照れくさそうに話す。 「ううん。そんなことない・・・。っていうか助かる・・・。ほら 私さ・・・。やっぱりまだなんとなくクラスで浮いてるっていうか・・・」 「・・・光・・・」 「ってやだな。別に深刻な事態はないって。晃の個人指導が あったら私、百人力だなって・・・」 「ならいいんだけど・・・。じゃ・・・。ちょっとカットしてみるか?」 晃は光にハサミを手渡した・・・ ハサミはとても冷たくて・・・ 綺麗に光っている・・・ 「ど、どうしたんだ?光」 「いや・・・。何だか手にズシリと・・・。晃の栄光の重みが・・・」 「フフアハハ!光、大袈裟だな。はい、じゃあ、じゃあ右耳、横から やってみようか」 「は、はいっ。先生っ」 光は晃に敬礼して早速、模範演技に注目。 「いいか?ジャギーいれるときは・・・」 シャキシャキ・・・ 滑らかな手つきでハサミが髪を切っていく・・・ いや・・・”切っていく”というよりは 魔法みたいに髪が途切れていくと言った方がいい・・・ 「・・・で前髪を残す分をトップで纏めて・・・。って光・・・。近すぎなんだけど(汗)」 「・・・え」 光、晃の手元を食い入るように見つめる。 「あ、ははは。こりゃ失敬」 「ふふ。じゃあ、光。次反対側、やってみて」 「は、はい。師匠!」 光はすっかり弟子気分。 晃はそんな光の態度が可愛くて仕方ない。 「えっと・・・。この位、掬って・・・」 シャキシャキ・・・ 毛先を真剣な眼差しで揃えていく光・・・ 「上手い上手いなかなか綺麗にできてる・・・。 けど。光。そ、そんなに力まなくても(汗)」 光、眉間にしわを寄せて真剣な表情! 「い、いや、なんかきんちょーしちゃって・・・」 「オレだって未だに人様の髪をカットするのは緊張するよ。 その人の要望どおりになっているか・・・ドキドキしながらね」 「でも晃はすごいよ。いつも誰かを笑顔にして」 技術の上手下手ではなく・・・ カットしている間もお客様との会話がとても自然で・・・ 気がつけばお客様に笑顔が宿っている。 「魔法の手・・・だなって思った。すごいって・・・」 「・・・あんまり褒めないでくれよ。オレ・・・。光からそういう風に 言われると・・・。マジで嬉しいっていうか・・・」 「あ、晃・・・」 照れくささが二人を包む・・・ 「それじゃ、光。今度は後ろ髪に行こうか」 「う、うん・・・」 「後ろ髪は・・・まず、残す部分を・・・」 何だかこころがくすぐったい・・・ くすぐったさを感じながら 光は晃の指導を受ける。 「そうそう・・・。光、やっぱり飲み込み早いよ」 「そ、そう・・・?」 「でももう少し、髪の束を掴む分が多いな・・・。この位でいいんだ」 (・・・えっ) 人形の髪を掬う光の手に晃は静かに手を添えて触れた・・・ 「この位つかんだら・・・刃先を斜めにして・・・」 (・・・!) 光を両手ですっぽり包んで ハサミを持つ右手にも手を添えた・・・ (・・・な・・・っ。な、にドキドキしてんだ・・・) 光の心は毛先じゃなくて・・・ 首にかかる晃の息・・・。 「あ、あの・・・っ。晃、ちょっと・・・」 光は晃の方に振り向く・・・ (え・・・) (・・・あ) 光の瞳と・・・ 晃の瞳が・・・ 至近距離で・・・繋がった・・・ (・・・あ、晃・・・) (光・・・) 光は体が動かず・・・ ただ・・・ドキドキが止まらない・・・ こそばゆい気持ちが 空気が・・・流れて・・・ 「・・・あ、あ、あの・・・っ。晃・・・。指導してくれてありがと・・・」 「あ、お、おう・・・」 二人は静かに離れて・・・ 「・・・光、結構筋いいよ・・・。自信持っていい」 「あ、ありがと・・・」 二人きり・・・ 時計の秒針の音が・・・ やけに耳にはっきり聞こえてくる・・・ 「光・・・。髪、伸びたな・・・。もしよかったら・・・。 襟足、カットしようか・・・?」 「え、う、うん。お願いしようかな」 くすぐったい空気は 二人の心を素直にさせてくれる。 「じゃあ、座って。お客様」 「はい。では宜しくお願いします」 晃は光にシートをつけて、軽く櫛で通す。 晃に髪をカットしてもらうのは久しぶり・・・ 「光の髪は・・・真直ぐでサラサラしてて・・・綺麗だよな・・・」 「え?そう・・・?でもよく枝毛とかになりやすいし・・・」 「艶があって真直ぐで・・・綺麗だよ・・・。まるで・・・。光みたいだ・・・」 (晃・・・) 晃の言葉がハサミに宿ったように・・・ 優しい手の温もりが光に伝わる・・・ 「・・・私ね・・・。抱き合ったり・・・そういうのはあまり好きじゃないけど・・・ 髪に触れられてもらうのはすごく好きなんだ・・・」 「え・・・?」 「・・・優しく・・・撫でてもらってるみたいで・・・。特に晃の手は・・・ 優しくて・・・あったかくて・・・心地いい・・・」 目を閉じて・・・ 穏やかに微笑む光・・・ (光・・・) 光の言葉一つで 晃の封印した想いは すぐに顔を出す・・・ 自分に髪を委ねてくれる光・・・ 受けれいれてくれているみたいで・・・ 光が・・・ (・・・愛しい・・・) 「光・・・?」 「スー・・・」 コクリコクリ・・・ 光は再び・・・睡魔が襲ってきて眠ってしまい・・・ 「・・・ふふ。どこでもよく寝るなぁ・・・」 穏やかなあどけない寝顔までみせてくれほどに・・・ 心を許してくれていると・・・ (勘違いしそうになるよ・・・。光・・・) 晃は光を抱き上げて ソファに寝かせた。 毛布をかける。 「疲れてるんだな・・・。よく眠って・・・」 「・・・スー・・・」 ”抱きしめられるのは好きじゃないけど・・・。髪を撫でてもらうのは 好きなんだ。特に晃の手は・・・とっても心地いい・・・” 光が発した一字一句に 心が反応する。 (光・・・) 本当は今にでも抱きしめてしまいたい衝動・・・。 それを必死で押さえ込む・・・ (・・・髪だけ・・・。髪にだけ少し・・・触れても・・・いいかな・・・) 光の前髪をそっとすくって・・・ 静かに キスをした・・・ (・・・光・・・。君に・・・前より少しだけ・・・近づいてるって 自惚れてもいいかな・・・) 「・・・んにゃ・・・」 (なぁ・・・。光・・・) 光の髪から晃の手が離れない・・・ (光・・・) 溢れ出る想いを・・・ 髪から伝えるように・・・ (・・・ずっと・・・。光を見守っていくから・・・。光・・・) あどけない寝顔・・・ 晃はただ 優しい眼差しで 光が目覚めるまで 見つめていた・・・
・・・美容師さんの専門的な内容や詳細は分からないので 表現上、少々変な部分もあるかもしれませんがそこはスルーしてください(汗) 色々ネット検索はしてはみましたが、 イマイチ詳細が分からず、ピンとこなくて(滝汗) 表現力がなくてすみません・・・(汗)