サクラソウ 〜卒業・君に気持ちをつたえたくて ルカ編 @〜 卒業式が終わって・・・。 彼女の姿が見えない。 ・・・伝えたいことが沢山あるのに・・・。 けど彼女の居場所は多分・・・。 ・・・あそこだ。 伝えたい。伝えなければ。 導かれるように、オレは教会へ向かう。 子供の頃、彼女と出会って、この教会の伝説なんて知らなかった。、 ただ、教会の側に咲いていた花と彼女の笑顔だけは心に残ってた。 あの頃のオレもコウも小さな花のように笑う彼女の笑顔に 応えたいとか、誰かのために何かをしたいっていう純粋な気持ちで溢れてた。 それなのにオレもコウも高校に入学して彼女と再会したってのに・・・。 ”オレなんてどうなってなってもいい” 現実から逃げて 拗ねてケンカや危ないことばかりして、彼女に悲しさばかり与えてた。 オレがバイクで事故ったとき・・・。 気がつくと彼女が目の前にいた。 (また・・・。悲しませてしまった。泣くかな・・・) やけっぱちになってた俺は・・・。 オレは浅はかにも、彼女の涙を予想した・・・。 ひねくれまくってた。 ・・・ベットからけど見上げた彼女の顔は・・・ 酷くこわばってて・・・。 オレを睨んで一言・・・目に涙をためてこう言った・・・。 ”ルカ君・・・。私の心を死なせるつもり・・・?” ・・・馬鹿だ。 彼女は顔を伏せたまま・・・オレの手をずっと握り締めててくれた・・・。 それはあたたかく 生きていると・・・ 体中に温もりが染みわたった。 「ごめん。ごめん・・・」 何度謝っても・・・。彼女は首をたてにはふってくれなかった。 けど・・・オレが眠るまでずっとそばにいてくれた・・・。 あの時の彼女の哀しみと怒りと・・・ 温かかった手は・・・ 一生忘れられないだろう。 オレは。 彼女の前では・・・ 強がって、いいトコ見せて、彼女を守りたいって格好つけてた。 ・・・嫌な現実から逃げながら。 彼女の前でなら、オレはヒーローでいられたから。 デートで、彼女が男にからまれてたとき。 ”ヒーロー参上” なんて言って。男をちょっと乱暴に蹴散らした。 ”ルカ君。あんまり危ないことしないで” 心配そうな彼女の気持ちも知らないでオレは。 ・・・守られていたのは俺だったのにね・・・。 嗚呼。 伝えたい気持ちが沢山ある。 溢れてくる。 アリガトウ? 出会えてよかっ? 嗚呼。それから何だろう・・・? ”サクラソウはね、願い事をかなえてくれるんだよ” 今のオレの願いは。 教会に・・・彼女がいて・・・。 そして・・・。 オレの気持ちが伝えられること。 嗚呼。 彼女は教会にいるだろうか? そしてオレを・・・。 受け入れてくれるだろうか? 静かに教会の扉を開く。 ・・・小さな影がひとつ・・・。 かすかな風になびく髪・・・。 「ルカ君・・・?」 オレは駆け寄った。 すぐにでも彼女を抱きしめたい! けど・・・。 その前に・・・ オレは・・・。 「オレの気持ちを・・・聞いて欲しい」 そう。 あふれ出る気持ちを言葉にして 彼女に伝えなければ・・・。 彼女目を見て 心の奥に届くように・・・。 「あのさ・・・オレ・・・」 一つ一つ・・・ 彼女への想いを ささやかに咲くサクラソウの花のように ・・・オレの中に咲いた言の葉を・・・。 「・・・ずっと・・・一緒にいてほしい・・・」 オレの願い・・・。 彼女は少し照れくさそうに頷いた。 オレはそっと彼女を抱きしめた。 教会の外に咲くサクラソウが優しくなびく。 これから。 オレと彼女と二人で新しいサクラソウを育てていく。 二人で・・・。 そして俺達の恋は始まった・・・。