巡る恋歌 
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夜風が闇の中を吹く。 一行は数時間前から眠りに入っていたが、かごめはなかなか眠れていなかった。 眠れないな・・・。まあ、今日はいろいろあったし・・・。 ふと起き上がり外に行こうとする。 「・・・かごめ。」 後ろから突然声がしたと同時に黒い影がゆっくりと近づいてくる。 「ごめん、起こしちゃった。」 「眠れねぇみてぇだな。明日は朝早く立つから寝ておいた方がいいぞ。」 「立つって・・・行く場所もないのに。」 「なんとかならぁ・・・。」 しばらく二人の間に沈黙が流れる。 話す言葉もなく、ただ月を見つめて・・・ 「・・・ねぇ、春姫さんてなんか、かわいそうな人だよね・・・。」 「いっいきなりなんだよ!」 「だって・・・自分の好きな人が遠くに行っちゃって、しかもその人は違う女の人と 結ばれて、死んでいって・・・。それで自分はなにも知らず眠ってる事しか出来な くて・・・。」 「・・・けっ。んなもん仕方ねぇだろ。」 犬夜叉の言葉に少し俯【うつむ】き、顔を歪ませた。 そして静かに瞳をとじて口を開いた。 「犬夜叉。あたしね、今まで雅道さんと、美依さんと、春姫さん。この三人の真実が 知りたくてここまでやってきた・・・。だけどね、それより、自分でつきとめた真実を 春姫さんに伝えたいって思うようになったの・・・。」 「今はまだ眠ってるけど、いつか夢からさめた時、自分の真実をきちんと・・・教え てあげたいの。それで、みんなの恋を・・・終わらせてあげたいの。」 「かごめ・・・・・・。」 「・・・それに、誤解してたり、何も知らなかったりしたまま皆死ぬのはいやよ。 まるで・・・信じあっていたのに引き裂かれて終わりになるなんて・・・いやよ。」 えっ・・・? ふと犬夜叉に、過去の記憶が甦った。 信じあって 想いあって そして引き裂かれた過去 忘れようとしても忘れられない過去が・・・ 「犬夜叉?」 「ん・・・すまねぇ、ちょっと・・・。」 「大丈夫?じゃあ、明日どうする?」 「どうって、お前の好きなようにすればいい。」 そう言うとその場から逃げ出すように去っていった。 その姿を哀しそうに見つめるかごめ。 犬夜叉・・・ 今の顔・・・ 桔梗のこと 考えてた・・・ あたしを・・・ 不安にさせないで・・・