森という名の力
神楽
辺りはしぃんと静かだ。
犬夜叉も・・かごめも・・魔獣木も・・朱李も・・・・
皆相手の出方を伺っていた。
どちらが動くわけでもなく・・・ただ視線だけの戦いが広げられていた。
しかしその静けさはすぐに消えた。
魔獣木は先ほどから出している大蛇のような根を犬夜叉達に撃ちつけようとする。
しかし犬夜叉はこれを難なく回避する。
「っけ・・!!俺を倒すのにその程度じゃとうていムリだな・・・!!!」
犬夜叉が魔獣木に向かって憎まれ口をたたく。しかし目は真剣だ。
琥珀色の目が相手の動きを読んでいく。
「半妖・・!!私もいるってことを忘れんじゃないよ・・!!!!」
さらに朱李が葉をすばやく投げつけてくる。
犬夜叉はこれもすばやく反応して鉄砕牙で葉を弾いた。
その間にまた魔獣木の根が襲ってくる・・・!!
「・・・っち・・!!きりがねぇ・・・!!!」
犬夜叉は危うくながらも2つの攻撃をかわしていく。
「犬夜叉・・・。魔獣木の根元に・・・・・」
「あぁ!?!?」
かごめが小さい声で何かを言っている。まだ闇の力のせいで体力が完全に戻っていないのだ。
犬夜叉はあまりの連続攻撃によく聞こえない。しかしかごめは精一杯言う。
「魔獣木の根元に・・・黒い塊を・・・邪気を感じるの・・。
もしかしたら今まで集めた人間の闇があそこに取り込まれてるのかも・・・・」
流石はかごめ。どんなに体力がなくてもとてつもない邪気を感じ取った。
かごめの目に映る邪気はとてつもなく大きく・・・悲しいものを感じる邪気・・・・。
(これじゃ・・・魔獣木も人のこと疑うはずよ・・・・)
かごめは心のそこで悲しむ。
もし魔獣木がただの木であれば人というもののいいところをもっと知ったかもしれない・・。
逆に悪いところも見るかもしれない・・。しかし世の中の人間に悪い奴ばかりではない。
人の心に闇があり光があるように・・・・・。
「じゃあ・・・そこを狙えばなんとかなるかもしれねぇな・・・!!」
犬夜叉がにやっと笑い葉や根を避け一気に魔獣木の根元にジャンプした。
「・・・・!?!??!?まさかお前ら・・・!!」
朱李はそれを逸早く察し、すぐに犬夜叉達に葉を投げつける。
しかしこれも簡単に犬夜叉達は避けた。
その犬夜叉が避けた葉はそのまま真っ直ぐ魔獣木の根元より少し上に当たった。
『ぐおぉ・・・。朱李・・・・おのれぇ・・我がやると言うたものを・・・・・』
魔獣木はそううなる。
あまりに苦しいのか魔獣木の枝はざわざわと揺れる。
そしてそれっきり魔獣木は動かなくなった。
根もばたんと倒れる。
枝のざわめきも止む。
一気にあたりが静かになった・・・・。
「魔獣木・・・死んだの・・・・・?」
かごめがおそるおそる聞く。
誰に聞いてるのか自分にも分からない。
「死んでないさ・・・。私がまだ動いてるんだから・・・・・」
朱李が先ほどとは違う落ち着いた声で言った。
先ほどの勢いはどこへいったのか?犬夜叉はその冷静さを気にも留めない。
「へっ・・。そうかよ・・だったら今のうちに止めをさすぞ・・・!!!!!」
犬夜叉がかごめに危ないから離れていろと言ってかごめをすぐそばに待機させた。
自分は両手でぐっと鉄砕牙を握り締めた。
そして今にも振りかざさんとした時・・・・。
「それはさせない・・・・・・」
「?!!???!?!」
一瞬の出来事だった。
朱李が今までにないほどすばやく動き、かごめを捕まえ元いた位置に戻った。
そして朱李はかごめの首元にあの鋭い葉を置いていた。
何かあったらいつでも殺せるように・・・。
「朱李・・・!てめぇ・・・・・・」
犬夜叉が魔獣木に向かうのをやめ、朱李に怒りを向けた。
「動くなよ・・・。魔獣木をやったらかごめも殺す・・・・」
今までになく冷静にしゃべる朱李・・・。
瞳は赤く燃えていながらもさきほどのようなものではない。
その朱李の冷静さが犬夜叉に鳥肌を感じさせる。
今の朱李だったらかごめを殺しかねない・・・・。
「朱李・・てめぇはさっきからなんで邪魔しやがる・・・!!!!!!
もしかごめに手を出したら承知しねぇぞ・・・・・!!!!!!!!」
犬夜叉は先ほどの朱李のようにかっかと怒りを燃え上がらせる。
立場は戻ってしまった・・・。またかごめが敵の手の中に・・・・。
犬夜叉は自分の不甲斐なさに吐き気がした。
「うるさい・・・。私の命にかかってるんだ・・・・・・。
あんたみたいに動けるやつはいいよね・・。縛られずにいれるんだから・・・」
「縛られず・・・?それってどういうこと・・・・?」
かごめが捕まりながらもしゃべるかける。かごめは恐怖しながらも朱李になんらかの感情を感じる。
(なんて悲しい瞳なの・・・・・?)
かごめはさっきから感じていた・・。冷静だったり怒りに狂うときだったり・・・
どんな時でも・・・・朱李の目からは悲しさが漂っていた。
この森には哀しみしかないのだろうか・・・・?
魔獣木も・・・朱李も・・・・・
そして魔獣木に取り付かれる者も・・・・・・
自分がそうだったようにここでは哀しみしかない。
どうしてこうも哀しみしかないのだろうか・・・・?
そしてどうして哀しみをつくろうとするのだろうか・・・?
人間は哀しみを生む・・・そして哀しみを癒す・・・。
どうしてそうしないのだろうか・・・・・・?
どうして・・・・負の方向ばかりに行ってしまうのか・・・?
朱李はきっとかごめを睨みつける。
「あんた達人間に何が分かるさ・・!いつもいつも・・・・!!!!!
自分の好きなところへ自由にいけてさ・・・・!!!!!!
私はありえないんだよ・・・・!!!!絶対に・・・・!!!!!」
かあっとなって言葉をばっと言う朱李の声がやはり切なく聞こえる・・・。
「なんで・・・?どうして・・・?今だってこうやって私を捕まえて・・・」
「私は人間でも・・・妖怪でもないからさ・・・!!!!」
かごめの言葉をさえぎって朱李は怒鳴る。
その言葉に犬夜叉は少し反応した。
人間でも・・・妖怪でもない・・・。朱李の正体とは・・・・一体・・・。
朱李はそんな犬夜叉をみてふふんと笑う。
「だからと言って・・・私は半妖でもないよ・・・。まだ分からない?犬夜叉・・・・。
なんで私のことを匂いで判断できなかったのか・・・・・・・・。」
「・・・・!?お前・・・・まさか・・・・・・・」
犬夜叉が驚きの声を張り上げる。
朱李はそれをみて寂しそうに・・しかし怒りを込めてニヤリと笑う。
犬夜叉にはやっと分かった。
最初に朱李に会ったとき確かに朱李からは何の匂いもなかった。
いや・・匂いは確かにあった。しかし犬夜叉自身がそれに気がついていないだけだったのだ。
犬夜叉がありえないと考えた・・いや考えさえもなかった匂い。
あの場にあった匂い・・・。人間でも妖怪でも半妖ですらない・・。この少女の正体は・・・・。
「そお・・・・。私はただの植物だよ・・!!!!自由がほしくてたまらない植物さ!!!」
そう・・・・。朱李は人間でも妖怪でも半妖でもない・・・・・。
本来なら動けるはずもない・・・・・植物だったのだ。
だから犬夜叉は朱李の正体を匂いで感じとれなかったのだ。
周りは草木ばかり・・朱李の植物の匂いなど簡単に隠される。
「植・・・・・物・・・・・?え・・・?でも貴方ちゃんと動いて・・・・・」
かごめにはよく理解できていないようだ。
しかし犬夜叉にはよく分かっている。
その証拠に犬夜叉の顔が険しい・・・・。
先ほどから魔獣木を始末しようとするたびに邪魔する朱李・・・・。
そして魔獣木が気を失ってからこんな事を仕出かした・・・・。
結論は唯一つ・・・・。
「あぁ・・。私が動いてるのは魔獣木の力・・・・。あいつは私の願いを知ってたのさ・・・・!
私だって人間のように自由に動きたい・・!妖怪のようにたくましくなりたい・・・!!!
だけど・・植物の私にそれは許されない・・・。だけど魔獣木は私の願いを聞き入れ、
私に妖力を送り込んだ・・・。そして今の私があるのさ・・・!魔獣木が死んだら私はもうこの体でいれなくなる・・!!!
そんなの私は絶対に・・・!!!絶対にいやだ・・・・!!!!!!!!」
かごめの頬に何かがホロリと落ちた。
かごめは目線だけ朱李の方を見た。
朱李の赤い瞳からは涙が滝のように流れていた・・・・。
「朱李・・さん・・・・。」
かごめは朱李の涙をみてやっと分かった。
かごめが感じていた朱李の哀しみは・・・・自由がないこと。
やっと自由に動ける体を手に入れたとしても・・・朱李は結局魔獣木の元で働かされてる。
ただ・・ただ普通の人間のように歩き回ったり・・・。妖怪のように強く・・たくましくなりたい。
そう思っただけなのに・・・・・・。
儚い願い・・・。それでも思い続けたい願い・・・・・・・。
「だから分からないでしょぉ・・・!!私の辛い気持ちが・・・!!!!!
いつまで・・どんなに待ったってこんな森には誰も来ない・・・!!!
誰とも会わない・・・。誰ともしゃべらない・・・・。
せっかく手に入れた体もこれじゃ意味がない・・・・!!!けど・・・
ないよりはましなんだよ・・・・!!!!!!!!!!」
「そんなのおかしい・・・・!!!!!!!!」
かごめが怒鳴った。自分の立場を分かっているのだろうか・・・?
朱李に命を握られながらも・・・叫んで・・・・。
自分の気持ちをはっきりと通す。
自分の気持ちにもやもやをかけたままなんていやだから・・・・・。
朱李はそんなかごめをまじまじと見た。
そして壊れたようにくすくすと笑い出す。しかし目からはまだ涙は流れ落ちる。
「何ががおかしいっての・・・?ぇえ・・っ・・?
言ったでしょぉが・・あんたみたいな人間に分かるはずない・・・・。
この気持ちは私しか知らないんだから・・・あんたに何が分かるのさ?」
「分かるはずないじゃない・・・。人の気持ちはその人一人のものよ・・・・・。
だけど・・やっぱりおかしいじゃない・・・!なんで貴方はそんな風にして自分の存在を否定するの!?」
かごめが自分の首元にある葉など気にせずに言う。
「かごめ・・・!お前口出しすんじゃねぇ・・・!」
犬夜叉がかごめの身を案じてかごめをとどめようと声をかける。
しかし犬夜叉のことなど気にも留めずにかごめと朱李の言い合いは続く。
「否定だって・・!?否定なんてしてない・・・!!!!」
「してるじゃない・・!!!!貴方は植物・・・どうしてそれをしっかりと受け止めないの?!?!
自分の事をちゃんと分かってあげないの?!???!?!
貴方は自分が『植物』であることを・・・・自分が自分であることを否定してるのよ・・!!」
「そ・・そんなことはない・・・!!!!!私は受け止めたからこそこうやって考えてこの姿に・・・・!!!!」
「そんなの受け止めたことになんてならない・・!!!!!今の自分の姿で・・自分にある力でどれだけいけるか・・。
それを考えてから前に進めるの・・!!!貴方みたいに自分の姿だけでだめだと決めつけちゃ前には進めない・・・!!」
かごめの瞳からもポロポロと涙が零れ落ちていく。
だってそれは・・自分がよく痛感している。
犬夜叉と桔梗のおかげでそれがよくわかった・・・・。
最初は・・・桔梗と私を重ねて・・犬夜叉は見ていると思った・・・・。
だけど・・・それでも≪んなわけねぇ≫で済ます犬夜叉が・・・・・いやだった。
まるで自分にないものを桔梗が持っていて・・それが足りないのかと悩んだ。
そして考えたのが・・自分の姿・・・。
私は桔梗とは全然違った。
どんなに鏡で自分の顔を見ても・・決して桔梗にはならない。
笑い方も・・・泣き方も・・・怒り方も・・・全部が違った。
そして自分で考え出した結論は・・・・・・・・。
今・・・『かごめ』として・・・・自分のできる精一杯の力でみんなと一緒にいる。
そう思ったからこそここまで犬夜叉や・・みんなについてこれた・・・。
自分にできることを・・・今の私にしかできないことをしたい。
辺りがまた静かになった・・・・・。
かごめと朱李の瞳からは止めどなく涙が零れ落ちる。
犬夜叉はそんな状況をただただ見守る。
「・・・・・自分だけの力で・・・・・どこまでいけるか・・・・・・・」
朱李がふとかごめの言った事を繰り返す。
そして暗い空を見上げてつぶやく。
「私は・・・・この道を間違えなかったら・・・・・どこまでいけたのかな・・・・?」
その言葉を聞いて・・泣きながらもかごめは微笑む。
「きっと・・・すごく進めたと思うよ・・・・。だって貴方・・すごい勇気があるもん・・・。
自分を変えるなんて・・・そう簡単にできることじゃないもん・・・・。」
自分を変えたい・・・・・。
それは誰でも考えること・・・・。
その思いは自分の力となる・・・・。
無理にかなえようとしないで・・・ゆっくり・・自分の力で・・・・。
前に進む・・・・・。
『おのれ・・・・・・・』
「な・・・!?!??!」
この場にふさわしくない低い声が聞こえた。
犬夜叉は急いで戦いの体制を整えようとした。
しかし根の方がさっと動き犬夜叉を地面に強くたたきつけた。
「ぐわ・・・・!!!!!!!」
犬夜叉があまりにも強い圧力でうめき声を上げる。
『我の邪魔ばかりしおって・・・・』
そう・・。魔獣木の意識が戻ったのだ。
「犬夜叉ぁ・・・!!!!!!!」
かごめは犬夜叉に近寄ろうと朱李の手からするりと離れた。
朱李はあまりの出来事の速さのせいで力が入っていなかったのだ。
朱李から離れた瞬間魔獣木の根がかごめにまで襲い掛かってくる。
それに気づいた犬夜叉は根につぶされながらも逃げろと叫ぶ。
しかしかごめはその振り下ろされる根をただ見る事しかできない。
かごめの目にはこの場面がスローモーションのように見えた。
シュッッ・・!!!
『ぐああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
魔獣木のつんざく様な叫び声がこの空間に響き渡った。
その叫び声にかごめは魔獣木の方をみた。
かごめの目だから見えたあの悲しき大きい邪気・・・・・。
まさに魔獣木の弱点である場所に何かが刺さっていた。
それは朱李がかごめの首に当てていた鋭くとがった葉・・・・。
それは見事に魔獣木の邪気の中心に当たっていた・・・・・。
「朱李さん・・・・?!!?!?」
かごめはそれを見てすぐに朱李がいるはずの場所を見た。
朱李は倒れていた・・・・。
自分の胸をぐっとつかんで・・・・・・。
「朱李さん・・・?!朱李さん・・・・!!!!!」
かごめはそう連呼して朱李の倒れている場所に向かって走り出す。
犬夜叉も魔獣木が苦しんでいる間に見事根から脱出し、朱李の方へ向かう。
「朱李・・・!!てめぇ一体・・・!!!!!!!」
犬夜叉が怒鳴って聞く。
「私が・・っ・・・。魔獣木の弱点をついたんだよ・・・っ・・・!
もうあいつの命令で動くのなんて・・っ・・嫌・・なんだ・・・!!」
朱李は犬夜叉の瞳をじっと見て言う。
犬夜叉はその瞳から感じた・・・。もう決心している・・・・・。
朱李の瞳はそう言っていた。
「でも・・!!魔獣木が死んだら・・朱李さんの姿だって・・・!!!!それに今すごく苦しそうじゃない・・!!!!」
かごめが朱李を抱き起こして言う。
朱李はゆっくりと犬夜叉から目を離しかごめを見つめた。
かごめの瞳からは大粒の涙が先ほどよりも流れ落ちている・・・・。
「何っ・・・あんた・・・っ・・。泣いてるのさ・・っ・?」
朱李には理解できない。
先ほど・・・ついさっきまで・・敵同士で・・・・・。
しかもかごめの命を奪うことだってできた・・・・。
そんな相手になぜ涙するのか・・・・?
「だって・・・!!朱李さん・・このままだと・・・・!!!!!」
(あぁ・・・・。これが人間ってやつなのか・・・・)
朱李は心の底でそうつぶやいた。
今まで来た人間は・・・闇にのまれ、簡単に魔獣木の餌食となった。
一緒に来た人間はすぐにその場から逃げ出した・・・・。
しかし・・今回の者達はまた違った。
仲間を救うために自分が草木と戦ったり・・・・・・。
仲間を救うためにこの空間にきたり・・・・。
仲間を救うためにここまでして・・・・。
敵のことを心配してる・・・・・・。
「人間・・・っ・・・。ってのは・・・変な生き物だね・・っ・・・」
朱李はふっと笑って言う。
「敵のことを・・心配したり・・っ・・・。そんな・・涙流したり・・・っ・・。
今まで来た人間達とは・・っ・・違うよ・・・あんたら・・・・。
私の求めてたの・・きっとこれだったんだ・・・っ・・・」
信頼できる仲間・・・・。
裏切る事のない仲間・・・・。
いつだって助け合い、傍にいる仲間・・・・。
この闇の森で生まれた自分・・・。偶然にも・・この森で生まれ、育った自分・・・。
それ以外の植物はどれも・・・静かで・・他の植物のことなんて気にしていなかった・・・。
だから・・寂しかったんだ・・・・・。孤独感に苛まれて・・・・・。
誰かと一緒に笑ったり・・・泣いたりしたかったんだ・・・・・。
朱李の目からも涙が止まらない・・・・・。
「っ・・・・。本当・・っ・・。私ってば馬鹿だよね・・・っ・・・。
今になってこの事気づくなんて・・・っ・・・・・。
世界一の馬鹿だよ・・・・っ・・・・。」
ふわり・・・・。
暖かい手が朱李の手を包み込む。
「朱李さんは馬鹿なんかじゃない・・・っ・・・。今気がついたのだってすごい進歩だよ・・っ・・・。
気がついたのならもっと・・もっと前進すればいい・・・・・。
もっと・・未来を見ていけば・・・いいよ・・・・・・。」
かごめが泣きながらも優しく微笑む・・・・。
「・・・へっ・・・。かごめ・・あんた・・っ・・ただモンじゃぁ・・ないね・・っ・・・・」
朱李はそう言って・・・もう・・・何もしゃべることはなかった・・・・・・・。
「朱李・・・さん・・・?朱李・・さん!?」
朱李が瞳を閉じ、もう永久に目を覚まさないだろう・・・・・。
フワン
光が犬夜叉やかごめを包み込んだ。
あまりのまぶしさに犬夜叉とかごめは目を閉じた・・・・。
そして目を開ければ・・その場は急変していた。
そこは何もなかった・・・。そんな雰囲気だ。
いや・・・・・ただの草原だ。草原がとてつもなく広くあった・・・。
黄緑色の草が風でさらさらと黄昏ている。
先ほどのような暗い森なんて・・どこにもない・・・。
「もしかして・・・あの森は幻・・・・・?」
かごめがそっと口を開く。
「らしいな・・・。っけ・・。俺達は幻に遊ばれてたのかよ・・・」
犬夜叉はむかつくとつけたしながら言う。
「遊ばれていた・・・。ううん・・。違うと思うな・・・・」
「あ・・・?」
「きっと・・あの森は人間の闇を消すためにできたんじゃないのかな・・・・。
だけど・・・・そんなことできるはずがない・・・・。
魔獣木は人間の闇を吸い取るうちに・・・人間を疑って・・・・。
そんな人間の存在を消して闇をこの世から葬ろうとしたんじゃないのかな・・。」
かごめが切なげにその草原を見渡す。風がふわりと舞っていた。
「だから・・魔獣木も被害者だったんじゃないかな・・・。
あんなふうに心が変わったのは・・・人の闇を見て・・人の闇を取り込んで・・・・・。
それで・・・・あんな・・・奈落みたいになってしまった・・・・・・。」
「へっ・・。奈落と同じ闇の化け物ってことか・・・・・」
かごめはその言葉に答えなかった。
闇の化け物・・・・。しかしそうではなかったのかもしれない。
魔獣木だって・・心があるならばわかっていたのかもしれない。
人間の光と闇・・・。それがあってこそ心があるのだということを・・・・・。
「あ・・・・・・・・・・」
かごめがふと見た場所で声をあげた。
そしてしゃがみこんで何かを見ていた・・・・。
「どうした?」
犬夜叉がかごめの見ているものを見ると目を丸くした。
かごめは微笑んでいた・・・・・。
そこに在ったのは小さき・・可愛らしい花・・・・・・・。
赤く綺麗に咲き誇り・・・何枚もの花びらを持つ花・・・・・。
その赤は朱李の瞳を思い出させる。
「朱李さん・・・。ううん・・・。『ラナンキュラス』」
その花の名前は『ラナンキュラス』朱李の本来あるべき姿・・・・。
「なんでぇ・・。こっちの方が綺麗に咲いてるじゃねぇか」
犬夜叉も笑って言う。
「そうだね。」
かごめもニッコリと言う。そしてまた花を見つめる・・・・。
「非難する・・・・。」
ふとかごめの口からそんな言葉がもれた。
犬夜叉がその言葉の意味を聞こうと口を開けたがかごめがそのあとさらに続ける。
「この花ね・・。別の名前で花金鳳花っていうんだって・・・。
花言葉は・・・『非難する』・・・・・・・・・。」
かごめの表情が少し曇った。
「きっと・・・朱李さんは・・・私達人間のこと非難したかったんだろうね・・・・。
少しでも自分の方がいいと自分自身に思い込ませるために・・・・・」
かごめはそう言いながらラナンキュラスを根からゆっくりと掘り起こしている。
「だけど・・・もう一つ・・・。この花には花言葉があるんだよ・・・・。」
「・・・・・なんだよ?」
犬夜叉はそう言ってさらにかごめの言葉を聞く。
朱李の気持ちが痛いほど分かっている犬夜叉・・・・。
小さい頃から・・『半妖』ということで自由を感じられなかった・・・・。
だからこそ・・・・かごめの言う事が・・自分の力になると確信してる・・・。
かごめはそう聞く犬夜叉の方を振り向いて笑顔で言う。
「『あなたは魅力に満ちている』だよ」
そう・・・・。朱李は非難ばかりがしたかったのではない。
人間や妖怪・・・半妖の魅力が羨ましかったのだ。
自分とは違って動ける・・。それがどれだけ魅力的か・・・。
人間にとっては馬鹿らしいことだろうが・・・朱李にとってはそれが夢だった。
「・・へっ・・。人間も妖怪も半妖もいいことばっかりじゃねぇのにな」
犬夜叉は妙にすがすがしい気分だった。
魅力・・・人の心をひきつける・・・・・。
そんなものが少しでも・・・自分にあるのかと思えたから・・・・。
「うん・・。でもやっぱり朱李さんにはそう見えたんだよ」
かごめは根から掘り起こしたラナンキュラスをゆっくりと持ち上げた。
「かごめちゃーーーーーん!!!!!!!」
「犬夜叉ぁーーーーー!!!!!!!」
遠くから声が聞こえた。
犬夜叉とかごめは声のする方を見た。
もちろん2人とも声の主が誰なのかは分かっている。
そこには仲間達が走ってきていた。
「かごめ。さっさとあいつらと合流するぞ」
犬夜叉がホラ乗れと背中を向ける。
「うん!」
かごめはその手にラナンキュラスの花を持ったまま犬夜叉の背中にのった。
「そういえばよ〜・・・・・」
犬夜叉が仲間の元へ行く途中、ふと口を開く。
「お前を探してる時にあった湖で光につつまれた気がしたんだけど・・・
なんかしらねぇか・・・・?」
そっと聞く犬夜叉。そんな犬夜叉をみて最初はキョトンとしていたかごめだが
すぐに特有の笑顔を見せる。
「私知ってる・・・。知ってるけど教えない!」
「はぁ!?!?なんだよ!?一体!??!?」
「だめ!絶対に教えないもん。」
いたずらっ子のように笑うかごめ。
あの時・・・・魔獣木に捕らわれている時・・・・・
一瞬だけだけど・・・湖の中・・・一生懸命泳いで・・一生懸命自分の名前を呼んでくれてる犬夜叉を見た。
その時・・・・これも一瞬だけど・・・犬夜叉にきてほしかった・・・・。
そう思った・・・・。心のそこから・・・・。きてほしかった・・・・。
かごめは犬夜叉との会話を流して自分の手元にあるラナンキュラスを見た。
朱李さん安心してね・・・・・。
ここよりももっと人目につくところに・・・・・。
人のいいところも悪いところも分かるようなそんな場所に・・・・・。
貴方を植えてあげるから・・・・・・。
太陽の光をいっぱいあびて・・・もっと・・もっと魅力的になってね・・。
私も・・・少しでも・・犬夜叉の傍にいれるようにがんばるから・・・・。
お互いにがんばろうね・・・・。
あの闇の森は・・・・・かごめの言うように・・・闇を消そうと出来た森かもしれない。
ただの森でも貴方は何かを感じる事はありませんか・・・・?
それこそが・・その森という名の力だということを覚えておいてください。
====あとがきのようなもの(ォィ====
森という名の力終わりましたぁ(>▼<)(パカパカッパパーン(ぇ
すいません^^;前後のつもりが前中後になってしまって^^;
ですがやぁっと終わりましたvなにやらすがすがしい気分にv(ぇ
でも中身はやはりダメですね^^;どぉも・・・^^;小説っていうのは奥が深いです^^
犬かご・・・が薄れてます^^;;(爆×333
これからももっと修行していきます^^
それでは^^最後までお付き合いしていただきありがとうございました(__)
神楽さん、長編本当に本当にお疲れさまでした!!(涙)
長編というのは本当に気力を労します。
前中後と書いてくださった神楽さんの強い心に乾杯です!!
犬かご薄めとありますが、二人のほのぼのぶりがとても
素直に感じられましたよvv
本当に、本当にありがとうございましたm(__)m