森という名の力 前編
森という名の力 前編
神楽
夜の大きな山の森の中・・そこから人の気配がある。
人間は少なくとも四人はいるだろう。そして人間とはちがう気配も朱李は
感じていた。
2つは小さいが妖怪の気配であろう。そしてもう一つは・・・。
人間でも妖怪でもない気配だった。
ーーーこれが半妖の気配か・・・・---
朱李はそう直感的に思った。朱李は半妖に会ったことは一度もない。
「まさかこの森に入り込んでくるとはね・・・・」
朱李はその者たちのことが気に入らないようだ。最後にふんと鼻で笑った。
「私の森に迷い込むのが最後よ・・・」
そして強い風の音がしたかと思うと朱李の姿は消えていた。
「にしても困ってね・・・・」
かごめが大きなため息をつきながら言った。
そこには焚き火を囲んで弥勒、珊瑚、七宝、雲母そして隅には
犬夜叉がイライラした表情でいた。
犬夜叉達は昼ごろからこの森を抜けようとしていたが何故だか抜けることはできなかった。
それどころか同じところをぐるぐると回っているようだった。
「この森・・・気に入らない・・・」
退治屋の服を身にまとってる少女が回りを警戒しながら言った。
森は普通の森と同じように静かだが珊瑚の体は何かを感じるように体を丸めた。
それはほかの皆とて例外ではない。この森は普通ではいない。
そのせいか皆無口になって神経をとがらせていた。
「どおせ奈落のやろうが俺たちをはめたんじゃねえのか?」
犬夜叉が鋭い目で言った。犬夜叉もこの森にいい感じを感じないのだろう。
さっきから犬夜叉の目はいろんなところを向いていた。
「しかし奈落の邪気を感じない・・。そしてこれといった妖気も感じない・・。
一体どうしたものか・・・・・」
とか真面目な顔しながら弥勒の手は隣にいる珊瑚の尻へ・・。
ギュウウ~~・・・・
珊瑚の手が弥勒の手を捕らえてつまんだ。まさに予知していたかのようだ。
「法師様・・今真面目な話してるんだからもうちょっとその手を封印しててくれないかな・・」
珊瑚の鋭い目が弥勒の全神経を貫いた。弥勒の額から汗がにじみ出ている・・。
「とりあえず・・もう遅いしまた明日の朝に考えようよ・・??今動くと危ないでしょ??」
かごめが周りの雰囲気を変えようと声をかける。これがかごめの優しさだろう。
「そうじゃ!かごめのいう通りじゃ!おらはこんな時間までこんな相談につき合わされてる
かごめや可愛いおらがかわいそうじゃ!!」
七宝がかごめの膝からみんなに言い放した。
「んだと!!?このガキが!!一人生意気なこと言ってんじゃねえぞ!!!だいたい誰が可愛いんだよ!」
犬夜叉が七宝に食って掛かる。いつものことだが今のぴりぴりした状態をとくにはちょうどよかった。
「これ犬夜叉。七宝をいたぶるのは止めなさい。確かに七宝の言う通りだ。こんな話ばかりでは
埒が開かん。ここはおとなしく寝て明日に備えましょう」
「・・・・・・・・・けっ!!」
弥勒が犬夜叉を落ちつかせた。流石は弁解の達人。犬夜叉は言い返せぬままだ。
「じゃあとりあえず今日はこれで終わりにしてまた明日考えよ。じゃあお休み~♪」
かごめはそれだけ言うといつもの寝袋を取り出してさっさと寝てしまった。
七宝もかごめと一緒にすぐ寝てしまった。この2人には緊張はないのかと3人は思うほどだった。
「ではさっさと寝ますか・・。何か起きたら起こしてくださいよ?犬夜叉」
弥勒はそれだけ言うとそのあたりの木に寄りかかりに行った。
「私もそろそろ休ましてもらうよ。犬夜叉。あんたも少しは寝なよ」
珊瑚はかごめの横あたりに行って寝転んだ。
とうとう起きているのは犬夜叉ただ一人となった。
(けっ!こいつら何でこんなところで寝れるんだよ!!)
心の中では悪態をついていたがやはり一人でいるのは寂しい。
犬夜叉はふと空を見上げた。空は星一つない月も見えない。何もない暗闇があった。
まるで犬夜叉は今たった一人かと思わせるように・・・。
「ふん・・・。俺らしくもねぇ・・・」
犬夜叉の声が小さくなっていく・・。とうとう浅い眠りに入った。
いつもは寝ていない少年が寝た。いつもなら起きているのに・・。
それもこの不思議な森のせい・・??
周りには犬夜叉達以外誰もいない。
あの者以外は・・・。
「ふふ・・。あの半妖も寝てしまったか・・。全く無用心なこと・・・」
暗闇から声がした。あの犬夜叉達を見ていた朱李の声だ。
「この森の恐怖を最初に目の当たりにするのは誰かしらね・・・」
朱李はくくっと笑い暗闇の濃い方へ消えた。
朱李が消えたと同時に犬夜叉達の中で目を覚ます者がいた。
「ん・・・?今・・何かいた・・??」
自分の寝袋からそっとつぶやいたのはかごめだった。
かごめはかすかな気配を感じて目を覚ましたのだ。
しかしかごめが見たときには何もなかった。ただただ仲間達の寝息が聞こえるばかり・・。
「気のせい・・だったのかな・・・」
しかしかごめはそれで目が冴えてしまい、ゆっくりと寝袋から七宝を起こさないように出た。
そして行く場所は愛する人の元・・。
「・・犬夜叉・・・・?寝てるの・・?」
かごめが静かに犬夜叉に向かって聞いた。しかし返事がない代わりに正しい寝息が聞こえた。
その寝息を聞いてかごめはホッとした。この少年が休まる時があってよかったと心から思った。
「近頃ゆっくりしてるヒマなかったもんね・・。それに・・・・私知ってるんだよ・・?
あの時・・あの人と会ってたんでしょ・・・・?」
かごめの脳天に一人の気高い美しい巫女の姿が過ぎった。
あの時・・・かごめはテスト勉強で現代に帰っていた。しかし忘れ物に気がつきすぐに戻ってきた時、
あの光景を見てしまった・・・・。
そこには夥しい死魂と死魂虫・・。その中心に抱き合う犬夜叉と桔梗の姿があった。
それはまるで美を見ているようだった。誰が見てもこの光景は美しかった。
かごめはそれも悲しかった。心で桔梗のことを憧れ、そして憎んでるなんて・・。
犬夜叉はかごめといるときは素直にならなずいつも喧嘩ばかり・・・。
しかし桔梗といる時はいつも大人びた優しさを持っていた。
決してかごめには見せた事のない犬夜叉のもう一つの顔・・・。
「私は・・『2番目』だから仕方ないよね・・・」
かごめはふうっとため息をついて犬夜叉の傍から離れた。そしてみんなの傍からも・・。
あの光景を見てからかごめは一人になりたかった。
しかしあの後すぐに犬夜叉は戻ってきて・・。すぐに旅に向かって・・。
かごめは一人になる時間さえなかった。
我慢していた。がこの奇妙な森の雰囲気のせいでその我慢も消えていた。
少しだけ・・一人にさせて・・。少しだけ・・・。
かごめは森の奥へと進んでいった。それを見ていた者がいるとも気づかずに・・。
「最初にこの森の餌食になるのはどうやらあの小娘みたいね・・・」
朱李は音も立てずにかごめのあとを追った。
かごめは森の奥に進むたびに心が騒いだ。
この森の危険を知らせるかのように・・。しかし今かごめは犬夜叉と桔梗のことで頭が一杯。
その知らせもただの心のざわめきにしか感じなかった。
辺りは無であるかのように静かで暗かった。それはかごめを落ち着かせるようだった。
そしてかごめの行く先にあったのは・・・・。
大きな湖・・・。暗闇に光る湖・・・。暗黒に染まっている湖・・・。
まるでかごめの心を再現されてるような漆黒・・・闇・・・そして・・悪夢・・・。
まるで悩み苦しむかごめをあざ笑うかのよう・・・。
「・・っ・・!!やめてよぉ!!!!」
ガサガサッ!!!!
今のかごめの声で近くの木で眠っていた鳥達が逃げ出した。
分かってるけど・・分かってるけど止まらないの・・・
分かってる・・私があの時ココに残ると決めた・・・
貴方が私の事を愛してくれなくても・・傍にいると決めたのは・・私・・
でもそれは自分に言い訳していただけ・・・・
犬夜叉の傍にいれば・・いつか・・私の事を見てくれるんじゃないかっていう・・
本心を隠すだけの・・嘘・・・・。
「ちがうっ・・!!私は・・ただ・・傍にいれば・・・」
でも心の奥では・・・貴方のことばかり・・・
世界で一番好きな貴方が・・・・
私のこと見てくれるように・・少しでも素敵な自分を見せたい・・・・。
「私は・・あの2人の邪魔は・・・できな・・っ・・!!!!」
自問自答の繰り返し・・・悔やみ悲しむかごめの気持ち・・・。
その様子をまさにあざ笑って見ていた朱李。
「あの小娘・・思ったとおり森の力に絡め取られてるよ」
この森の最大の力・・・それが闇・・・。
誰でも持ってる闇を引き出し、その者を闇へと誘う。
あの小娘も・・そのうち闇に飲み込まれるね・・・
「・・・・・・・・・!?」
逸早く周りの異変に気がついた者がいた。
その者は周りを見渡した。仲間はいる・・・。ぐっすりと寝ている・・。しかし・・・。
「かごめが・・・いねえ・・・」
その者・・犬夜叉はかごめの匂いが消えた事に反応して目を覚ましたのだ。
しかも辺りにはもうかごめの匂いが少しもしない・・・。ただするのは嫌な森の匂いだけ・・。
「くそ・・!!一体どうなってるんだ・・・!!!!」
「どうしたんです?犬夜叉・・・」
弥勒がゆっくりと目を開けた。弥勒もいつものように起きてはいなかった。本当に寝ていたのだ。
「かごめが・・かごめがいねえんだ・・!!匂いも全然しねえ・・!!!」
「何!?犬夜叉・・お前おきていなかったのか!?いつも起きているのに・・!」
「何・・?どうしたの・・・?」
2人の怒鳴り声に珊瑚と七宝も起きだした。
「珊瑚・・!かごめ様がいなくなった・・!!我々は探してくる・・!この森はどうもおかしい・・!」
「ぇ・・・?待ってよ!じゃあ私だっていくよ!!!」
「おらもじゃ!!」
珊瑚と七宝が反抗した。かごめがいなくなったとしたら皆にとって大問題だ。
「かごめ様が帰って来たときの場合に備えてそこにいなさい・・!帰ってきたら七宝はどんぐりで知らせてください!」
弥勒がテキパキと2人に告げた。それで2人とも納得した。
しかし心配そうな目で犬夜叉達を見ていた。
「じゃあ・・・犬夜叉・・法師様・・かごめちゃんをお願いね・・」
「ああ!任せろ!!」
犬夜叉がそう言って走りだした。
「あ!待て!!ったく・・!かごめ様のことになると何も考えねえんだから・・!!!」
弥勒も犬夜叉を追いかけて走り出した。
「・・・気をつけて・・・・・」
珊瑚がひっそりと言ったのを弥勒は聞けなかった。
かごめは森の奥で気を失っていた。そして大きな木の上でまるで寝ているようだ。
しかしその木の様子がおかしい。少しずつではあるがかごめを木が包み込んでいるようだ。
・・・いや。確かに包み込んでいっている。
木の軋む音がしてもかごめは目を覚ます気配はない。
まるで怪物が今まで獲物を待ち構えていたかのように木を着々とかごめを包んでいる。
闇を持つ人間を養分とする・・・・この怪物が・・・。
その時かごめは夢を見ていた。いや見せられていた。
かごめにとっての闇、悪夢・・そして絶望・・・・。
犬夜叉と桔梗の抱き合う姿・・。口付けをかわしている・・・。
イヤ・・・!!!!!こんなの・・私に見せつけないで・・!!!!!
犬夜叉と桔梗が少しずつ地面に吸い込まれていく・・・あの世へといこうと・・・・・
待って・・・!!!!行かないで・・・!!!!置いていかないで・・・!!!
しかしかごめの体は動かない・・。まるで何かに縛り付けられているかのように・・。
2人は地面のそこへと消えていった・・・・。
嘘・・・嘘よ・・・・!!!どうして!?やっぱり『2番目』じゃダメなの・・・・・!?!?!?
・・・・・・・・犬夜叉ぁ・・・・・・・・
「!?」
犬夜叉は森の奥の暗闇の方を見た。確かに聞こえた・・・。少女の声・・・。
「どうした?犬夜叉・・」
弥勒が犬夜叉の見ている方をつられて見た。しかしただただ闇が広がっているばかり・・。
しかし犬夜叉は何かを感じとったような驚きの表情でその方向を見ていた。
「さっき・・・かごめの声が・・。俺の名前を呼んでた・・」
「しかし・・私には聞こえませんでしたよ・・?」
たとえ犬夜叉の耳がいいからといって気配も匂いもないこの状況で声だけが聞こえるなんて不自然だ。
「でも確かに聞こえたんだよ!!かごめが俺を呼んでるんだ・・!!!!」
犬夜叉はその方向に走り出そうとした。
その時その様子見ていた者が動き出した。
そして犬夜叉達に向かって鋭いものを投げつけた。
ザクッ!!!!
「な・・!?!?」
鋭いものは犬夜叉のすぐ目の前を通り、木に当たった。犬夜叉達に目掛けて飛んできたのは葉・・。
犬夜叉と弥勒は急いで葉が飛んできた方を見た。しかしそこには誰もいない。
「一体どこを見てるんだい?」
犬夜叉達の見てる方向とは全く正反対の場所から声がした。
2人はパッと後ろを見たらそこには確かに人がいた。いや少女だ。
髪は草木と同じ濃い緑色でさらりと長い。服装といえば草やつるなどで作ってある。
目はとても鋭く、何もかもを見通せそうな朱色をしていた。
「てめえ一体なにもんだ!??!?」
犬夜叉がその少女に向かって怒鳴った。かごめの手がかりの邪魔をするなら犬夜叉は誰であろうと容赦しない。
「そう怒鳴らないでよ。私は朱李。この森の番人ってとこだね」
朱李がふふんと鼻で笑いながら言った。
(気にイラねえな・・・この女・・・)
犬夜叉は朱李を鋭い眼差しで睨んでいた。
犬夜叉はこの少女から発する匂いが人間ではないと分かっていた。
しかし妖怪の匂いさえもしない。簡単に言えば匂いを感じないのだ。
だからこの少女が自分達の後をつけてきたのが分からなかった。
「朱李とやら・・・私達に何か用か・・?」
弥勒が冷静に朱李に聞いた。少なくともこの少女は何か知っている・・。そう感じたからだ。
「そー。そー。あんた達が魔獣木(まじゅうぼく)の方に行こうとしたから止めたのさ」
朱李はそう言いながら遠くを見ていた。明らかに面倒くさそうな態度だ。
「魔獣木とは何なのですか?」
「闇を持つ人間を食らう木さ。まあ闇を持たない人間なんてあんまいないけど・・。
だから大きい闇を持つ人間を好んで食らうのさ。
魔獣木はどこを探してもこの世に一本しかない珍しい木さ。」
朱李はゆっくりと犬夜叉と弥勒を嘗め回すように見た。
「あんた達にだって闇ぐらいあるだろ・・?この森では闇の大きさで生きれるか死ぬか決まるのさ。
さっき来た女だって闇が大きかったらそのうち魔獣木に食われてるさ」
ギュン!!!!
犬夜叉の鉄砕牙が朱李の首元で止まった。
朱李はたいした事ではないと言うような表情で犬夜叉を見た。
「さっき来た女ってのはかごめなんじゃねえのか・・!?答えろ・・・!!!」
犬夜叉の目つきは今までに増してきつく獣のように琥珀色の目が光っていた。
「そーだったっけ?確かそういう名前だったね・・。んであんたは犬夜叉でこっちは弥勒。
あんた達がこの森に入ってきた時からずっと見てたから名前は知ってるさ」
朱李のとぼけた言い方は犬夜叉のカンにいちいち触った。そうでなくてもかごめのことで気が立ってるのだから。
「てめーこれ以上俺たちが先に進むのを邪魔するようだったら女だからってただじゃいかねえぞ・・!!」
「私だってあんた達をあのかごめって子のところには行かせられないんだよ。
・・・・・・野獣木の決めた事は誰も逆らっちゃいけない」
朱李の言葉に弥勒は違和感を覚えた。しかしあの犬夜叉がそんなこと気にする事もない。
「じゃあ仕方ねえな・・!てめえをぶっ倒して先に進んでやるぜ・・・!!!」
犬夜叉は鉄砕牙を構え、朱李に向かって走り出した。
少女は面倒くさそうにふうっとため息をついた。
「それはこっちの台詞だよ・・。メンドクサイな~・・・」
ブンッ!!!!!
犬夜叉の鉄砕牙が朱李に向かって斬りつけられた。
しかしそこには朱李の姿はなく、ただ草木があるだけ・・・・。
バッ・・!!!!
「な・・・!??!」
周りの木々や草木がいきなり犬夜叉と弥勒に絡みつき、2人の動きを封じた。
「ふふふ・・・・・・」
空から朱李の声が聞こえる・・・・。
「私はこの森の木々や草花・・。植物を操る事ができるのさ・・。
野獣木以外なら私の手にかなわない植物はないさ!!」
「ちっ・・・・・」
・・・・犬夜叉ぁ・・・待って・・・お願い・・・・・
かごめは暗闇の中を一人でうずくまっていた。
考えることはただ一つ。愛する者の帰り・・・・。
しかしその者は帰ってこない。どれだけかごめが泣こうと喚こうと・・・。
闇がかごめの声を吸収してるかのように声は大きく聞こえない。
それが今この少女が見せられている悪夢だ・・。
かごめには時間がない。もう少しすればかごめの体は完全に木に・・いや野獣木に飲み込まれるだろう。
かごめは額に汗をかき表情は強張っていた。
・・これが野獣木の好物・・。人の悲しみにつけこみ、その闇を最大にしてそのものを食らう。
まるで奈落のように・・・・・
続く
あとがき
ははははは^^;(壊れた
何日もかかって作ってみましたが結果はこんなへぼ小説になってしまいました^^;
結構がんばってみたんですがなかなかですね^^;
どおしてもこういう系が作りたくなるんです;;
ほのぼのよりもスリル系っつーんですかね。。?(まて
こんな小説ですがどうぞ暖かく見守ってやってくださいm(_ _)m
それでは失礼しました