チャングムの誓い二次創作 海辺にて 〜見守ってくれる人〜 絶望してしまった。 人生の師を もう一人の母を失って 体だけが動いている けれど心は死んでいる 私は何をすれば 何を希望とすればいいのか・・・。 ※ 奴婢となり、何度も逃げようとしたチャングム。 頭にあることはハン尚宮を師に至らしめた者たちへの復讐だ。 だが、逃げてはつかまり逃げてはつかまり・・・。 現実感がなくなって、チャングムの中にあきらめも芽生え始めた頃、 ・・・チャングムを諭し、医女という希望への導いてくれたのは・・・ チョンホだった。 (チョンホさまに何かお礼をしなければ・・・) チャングムはチャドクの厳しい教えを学びつつ チョンホへの礼を何かしたいとずっと考えていた。 (・・・今の私に出来ることと言えば・・・やはり・・・) 思いつくのは料理だった。 医学を学ぶ自分に出来ることといえば 料理しかない。 以前、お弁当を差し入れたことがあったが・・・。 (おいしいと思ってくださっているかしら・・・) とちょっと不安になる。 チャングムは薬房で医学書を読みながら、チョンホへの弁当の中身を 頭の片隅で考えていたのだった・・・。 「チョンホ様はいらっしゃいますか?」 水軍の軍陣へチャングムは手料理を布でくるみ持って尋ねた。 チャングムの声にすぐ気づいたチョンホ。 (チャングムさん・・・) 部下達の指導を一旦、止め、チャングムにかけよってきた。 「突然伺ってすみません」 「いえいつでも来て下さい。ソレより何か・・・」 「いえあの・・・」 チャングムは少し照れくさそうに 竹筒の弁当をチョンホに差し出した。 「・・・よかったら・・・。部下の方々と一緒に食べてください・・・。 味は自信がないけれど・・・」 チャングムの申し出にチョンホは思い切り首を横に振った。 「ありがとうございます。でも部下達にチャングムさんの料理を 食べさせるなんて・・・勿体無い」 「そ、そんな・・・ことは」 「・・・私が全部食べます。いえ、食べさせてください!」 満面の笑みでチョンホは言った。 照れくさそうに少し視線を逸らすチャングム。 「じゃ、じゃあのこれで・・・」 「あ、待ってください。よかったら・・・。一緒に 昼食にしませんか?」 「え?」 「もしお時間があれば・・・。浜辺で一緒に昼食をとりたいのですが・・・」 「え、よろしいのですか?」 「ええ。チャングムさんと一緒に昼食だなんて きっとおいしいお弁当がさらにおいしくなるはずです」 「・・・。そ、そんな・・・」 チャングムとチョンホは二人、静かに浜辺に向かう・・・。 潮の風がおだやかで 二人は流木に並んですわり、 弁当を空けた。 笹寿司だ。 「忙しくて・・・簡単なものになってしまいましたが・・・」 「いえ・・・。私は酢がすきなので嬉しいです。ではいただきます」 チョンホはかぶっとひとほうばり。 「・・・相変わらずチャングムさんの料理には・・・ おもいやりの心が感じられますね」 「そんな・・・。今はまだ料理しかできなくて・・・」 「医学も料理も根本は同じ・・・。相手の身になって施す・・・。 チャングムさんの心根そのものですよ」 (・・・) 褒めまくられ どう反応していいかわからず、少し頬を染めてうつむくチャングム。 「・・・チャドクさんの・・・指導は厳しいですか?」 「はい・・・。でも厳しいほど良いのです。学び甲斐があるから・・・」 「・・・。すごいな。チャングムさんにとっては 厳しさも糧になるのですね・・・」 「私が貴方に会いたくて会いたくて追ったのです・・・。 貴方が誤ることはない・・・」 熱いまなざしを 送るチョンホ・・・。 熱い想いを 全身で感じる・・・。 「チョンホさま・・・」 「私は貴方のそばにいます。10年後も20年後も・・・」 「でも・・・。私のいく道にチョンホ様があわせることは・・・」 「・・・合わせるのではなくて・・・。ただ私が貴方を追いかけたいだけ・・・。 つまりはただの淋しがりやな男なのです。ふふ・・・」 「チョンホ様・・・」 全て受け入れ、ありのままで見守っていてくれる・・・ そんなチョンホの愛にチャングムはただただ・・・ 「ありがとうございます・・・ありがとうございます・・・」 とつぶやくことしかできない・・・。 チャングムの気持ちを 受け止めるように チョンホはチャングムの手をそっと包んだ。 「・・・チャングムさん。少し・・・もう少し海を見ていきませんか・・・」 「・・・はい・・・」 手を取り合ったまま・・・。 二人は打ち上げられる波を 静かに 静かに 眺める・・・。 穏やかに流れる波・・・ 二人の行く道は 荒波だろう。 だが・・・今だけは・・・。 軽く触れ合う手の温もりは 何よりも 何よりも 心を癒す・・・。 (ずっと・・・あなたのそばにいます・・・。ずっと・・・) 潮の風に微笑むチャングムの横顔を見つめながら・・・ チョンホは改めてそう誓ったのだった・・・。