時売買






今回の物語は

借金を抱えた男の元に借金取りが尋ねて来た所から始まります。





『芦辺さん、借金はいつになったら返してくれるんですか!?』



ま・・・待って下さい!必ず!必ずお返ししますから!!



『待って下さいって・・・いつまで経っても帰さないと、

  利息が利息をよんで借金はかさむ一方ですよ!』




今・・・一体、幾ら位なんですか?



『そうですねぇ〜・・・500万円位ですかねぇ〜!?』



5・・・500万!?とてもじゃないけど、今の僕には返せませんよ!!



『そうは言ってもねぇ〜・・・こちらも商売ですから!

 慈善事業をやってる訳じゃないのは、お宅さんも御存知の筈でしょう!?』




はいっ!それは重々承知しています!!でも・・・どうやって返せば・・・





ここで借金取りは、とある提案を持ちかけてきます。





『仕方が無いですねぇ〜・・・ちょっと辛い思いをして貰いましょうか!』



えっ!辛い思いって・・・保険金ですか!?そっ・・・それだけは御勘弁をっ!!



『いやいや!そんな酷い事はしませんよ!

  ただね・・・
時間を売ってもらうんですよ!!




・・・えっ?時間を!?・・・って、どう言う事です?



『あなたの数々の思い出が詰まった時間を、借金のカタに頂こうと言う訳ですよ!』



借金のカタに時間を・・・ですか・・・!?



『意味が分かってもらえましたか!?』



・・・いえ・・・今ひとつ良くは分からないんですけど・・・



『では、取り敢えずやってみた方が分かり易いですね!』



えっ!やってみるって・・・なんなんですか!?その機械は!?



『大丈夫ですよ!ハンディカメラを、それ用に改造した物だそうですし・・・

 人体に、それ程の害は無い筈ですから!』




それ程って・・・多少の害はあるんですか!?



『どうしてもねぇ〜、時間を頂く際に痛みがあるらしいんですよ!

 まぁ、我慢出来ない程では無いみたいですがね!!』




・・・本当に、大丈夫なんですか!?



『そう思いますよ!今までこれで死んだ人はいませんから!・・・ただ・・・』



・・・ただ・・・何なんですか!?



『廃人になった人はいますがね!』



ちょ・・・ちょっと!そんなの勘弁して下さいよ!!



『あのねぇ〜、貴方に文句を言う筋合いは無いんですよ!

 じゃあ、他の方法で今すぐに借金を返してくれるとでも言うんですか!?』




・・・いえ・・・それは・・・



『でしょ!?だったら素直に言う通りにしとけば良いんですよ!

 じゃあ、機械をセットしますよ!』




な・・・何なんですかこれ!?私の頭に一杯、変な物を付けて・・・!?



『はいっ!セットは完了しましたんで、今から早速、始めますよ!

 あっ!頭が痛くなると思うんで、気を失わない様に我慢して下さいね!!』




えっ!?頭が・・・はっ・・はい・・・



『始める前に一つ伺うんですが・・・』



・・・なんでしょうか?



『貴方の、一番の思い出って・・・何ですか?』



そうですねぇ〜・・・高校の時の修学旅行とか・・・



『分かりました!では、その時間を頂きましょう!』



修学旅行の思い出を・・・!?どう言う事ですか!?



『結果を見れば分かりますよ!では、いきますよ!スイッチ・・・オンッ!!』



・・・えっ!・・・うっ!!・・・痛たたたたたたたっ!!!



『我慢して下さい!もうちょっとの辛抱ですからねっ!!』



・・・痛たたたたたたたっ!!!!まだですか!?まだ終わらないんですか!?



『・・・はいっ!終わりましたよ!』



ふぅ〜っ・・・痛かったぁ〜!!



『では、今貴方から取った時間を早速再生して見てみましょう!』



時間を再生!?そんな事出来るんですか!?



『それでは、再生しますよ!スイッチ・オン!!』



・・・えっ?・・・ええっ!?・・・ど・・・どうなってるんですか、これ!?



『ほぉ〜、結構鮮明に取れてますねぇ〜!思い出深い証拠ですね!!』



うわっ!・・・な・・・なんか恥ずかしいですね、これ!



『へぇ〜、スキー場に行ったんですか・・・そこで、恋の告白を!へぇ〜・・・』



・・・あれ?・・・こんな事したかなぁ〜・・・??

って言うか・・・こんなスキー場に行ったっけかな???



『所で貴方は今、修学旅行の時の事を思い出せますか!?』



えっ?・・・あれ!?・・・あれあれ??

・・・なんでだろう・・・???全然、思い出せない!!??



『これが、貴方の時間を頂くと言う事ですよ!!』



じゃ・・・じゃあ、僕が修学旅行に言った時の事は・・・!!



『そうです!全てこのテープの中に入ったと言う訳です!』



でも・・・そんなもの欲しい人って・・・いるんですか!?



『世の中にはね、沢山の物好きな金持ちがいるんですよ!』



はぁ・・・そうなんですか・・・



『ちなみにこれだと、そうですねぇ〜・・・かなり質が良いので・・・20万位で売れるでしょう!』



えっ!これが・・・20万もするんですか!?



『ええ!かなり鮮明ですからね!』



じゃあ、他の時間を沢山売れば・・・!!



『貴方の多額の借金を返済する事も・・・可能ですよ!』



売ります!ジャンジャン売りますから!!

ドンドン取って下さい!!500万円分の時間を取ってやって下さいっ!!!



『500万円分の時間となると、かなりの時間を貴方は失う事になりますが・・・宜しいんですか!?』



構いませんっ!!それで借金が返せるなら・・・喜んでっ!!





借金持ちの男は

痛みに耐えながらもなんとか500万円分の時間を取ってもらったのです。






『・・・ふぅ〜!さぁ、これで500万円分の時間を回収しましたよ!』




・・・ん?・・・あれ?・・・あれあれ??



『ん?どうしたんですか!?』



なんだか、頭がボ〜ッとして・・・



『おそらく大量の時間を一度に取ったからでしょうね!』



大量の時間って・・・どう言う事ですか!?



『おやおや!つい先程の時間さえも、貴方の中には無い様ですね!』



良く分からないんですけど・・・何かされたんですか!?



『貴方の時間を私が買って、貴方は無事借金から開放されたんですよ!』



借金・・・僕が!?



『おやおや!その時間も無いんですか!・・・困りましたねぇ〜!!』



時間が・・・お金になるんですか!?



『そうですよ!ただ・・・貴方の中には、もう余り残ってないでしょうけど・・・』



もっと・・・もっと買ってもらえますか!?



『・・・それは、幾ら位の時間でしょうか?』



・・・100・・・100万位!・・・無理でしょうか!?



『・・・良いんですか!?そんなに取ったら、

 貴方の中にある時間はほとんど無くなってしまいますよ!!』




構いません!まとまった・・・まとまったお金が欲しいんです!!



『まとまったお金ねぇ〜・・・何に使うんですか!?』



・・・良く分からないですけど・・・とにかく!とにかく欲しいんですっ!!



『やれやれ・・・どうやら残り少ない時間が、混濁している様ですねぇ〜・・・』



どっちなんですか!?取ってくれるんですか!?無理なんですか!?



『分かりました!貴方自身のご希望とあれば仕方がないですから!!』



や・・・やってくれるんですか!?



『ただ・・・後悔はしても知りませんよ!!』



はいっ!有難うございますっ!!





こうして男は、また100万円分の時間を吸い取られました。





『・・・はいっ!さぁ、これで100万円分の時間を回収しましたよ!』




・・・・・・・・・・・・・・・・・・??



『では、これがお約束の100万円です!どうぞ、お受け取り下さい。』



・・・・・・・・・なんですかこれ?



『貴方が時間を売って得たお金ですよ!』



時間を?・・・時間って・・・なんですか!?



『おやおや!もうほとんど時間が残ってらっしゃらないと見られる!』



・・・大体、貴方は誰なんですか!?



『おやおや!私の事も分からないんですか!?』



・・・私は・・・私は誰なんですか!?



『これはこれは!もう自分自身の事さえ頭には残ってないんですね!』



ここは何処なんですか!?私は・・・貴方は・・・ここで一体、何をしてたんですか!?



『ここは貴方の家ですよ!そして私は・・・貴方の時間を、ほぼ全て取ったんですよ!!』



どうして・・・どうしてそんな事を!?



『これは貴方が望んだ事なんですよ!』



返して下さい!私の・・・私の時間をっ!!



『それは・・・出来ない相談ですねぇ〜!!』



どうしてなんですか!?元はと言えば私の時間なんでしょう!?



『良いですか!?失った時間は、二度と戻って来ないんですよ!!

  
そう・・・二度とねっ!!!




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