飼い人
芦辺ペットショップへ、ようこそおいで下さいました。 当店で扱っているペットは人間でございます。 各人種を取り揃えて、皆様のお越しをお待ちしております。 おや!?今日もお客様がいらした様ですよ・・・ |
ギイィィィィッ・・・
店主:これはこれは社長様、いらっしゃいませ!
社長:今日はな、息子の誕生日プレゼントを買いに来たんだ!
店主:そうですか!で、どの人種をお求めですか?
社長:息子がなぁ〜、白人が飼いたいと言って聞かんのだよ!
店主:白人でしたら、各種取り揃えてますが。
社長:ほぅ、どんなのがお薦めかね?
店主:そうですねぇ〜・・・ポピュラーなのでしたらアメ○カ人種ですけど・・・
社長:アメ○カ種は・・・私の友人も飼っているから、ちょっとなぁ・・・
店主:それでしたら、フ○ンス人種などはいかがでしょう?
社長:ほぅ!それは珍しいな!
店主:しかも、由緒ある血統書付ですよ。
社長:よしっ、気に入った!それを買おうじゃないか!
店主:有難うございます。
こうして、とあるフ○ンス人は某社長の家へと買われていったのです。 |
ガチャッ・・・
社長:ただいまぁ〜!
息子:あっ、パパ!お帰りなさいっ♪
社長:今日はお前の誕生日だったなぁ〜!?
息子:うんっ!
社長:良い子にして待ってたか?
息子:うんっ!!
社長:そうかそうか!じゃあ、お前に素敵なプレゼントを上げよう!
息子:えっ?本当!?
社長:玄関を開けて、見てみなさい。
ガチャッ・・・
息子:ワア〜ッ!白人だぁ〜っ!!
社長:凄いだろう!?フ○ンス人って言う種類なんだよ。
息子:へぇ〜、凄い凄いっ!鼻が高くて、格好良いやぁ〜っ!!
社長:ハッハッハッ、すっかり気に入った様だな!?
息子:うんっ!パパ、ありがとぉ〜っ!!
社長:ちゃんと世話をするんだぞ!お母さんが困るからな!
息子:うんっ!分かってるよ!!
こうして、フ○ンス人は社長の息子に飼われる事になったのです。 |
息子:そうだ、名前を決めないと!う〜ん・・・どうしようかなぁ〜・・・ジョセフ!ジョセフにしよう!
ジョセフ:ジョセフ・・・私がですか!?
息子:そうだよ!今日からお前はジョセフだよ!!
ジョセフ:良い名前を・・・有り難き幸せです。
ジョセフは日々息子の優しさに触れ、次第に心を開いてゆきました。 |
息子:ジョセフ、お手っ!
ジョセフ:はい、お坊ちゃま!
息子:ジョセフ、お替わりっ!
ジョセフ:はいっ、お坊ちゃま!
息子:凄い凄いっ!バッチリだよっ!!偉いなぁ〜ジョセフは!!
ジョセフ:有難うございます、お坊ちゃま。
ジョセフも息子になついてゆき 主人とペットの仲は徐々に深まっていったのです。 |
息子:良いかい?ジョセフ!これから僕がボールを投げるから、走って取って来るんだよ!
ジョセフ:かしこまりました、お坊ちゃま!
息子:いくよぉ〜っ!それっ!!
ジョセフ:タタタッ・・・お坊ちゃま!取りましたよ!!
息子:良ぉ〜しっ!すぐに帰っておいでぇ〜っ!!
ジョセフ:タタタッ・・・はい、お坊ちゃま!このボールですね!?
息子:凄ぉ〜いっ!凄いよぉ〜、ジョセフゥ〜ッ!!
ジョセフ:ああっ!お坊ちゃま、そんなに激しく頬擦りをしては
・・・くすぐったいですよ、お坊ちゃま!ハハハハッ・・・
こんな幸せな日々が いつまでも続くものだと息子もジョセフも信じて疑いませんでした。 しかし・・・別れは、ある日突然訪れました。 |
社長:なにっ?我が社の株価が暴落!?
銀行からの借り入れは!?なにぃ〜っ!ことごとく、断られただとぉ〜っ!?
・・・駄目か・・・我が社は・・・もう、終わりなのか・・・!?
社長の会社は倒産寸前に追い込まれ 全ての財産を手放さなければならなくなったのです。 |
社長:息子よ・・・
息子:どうしたの、パパ?
社長:今から大事な話をするから、良く聞いてくれ・・・
息子:何?大事な話って!?
社長:実は・・・父さんの会社が倒産して全てを手放さなければならなくなったんだ・・・
息子:ええっ・・・全てって・・・
社長:すまない!私が不甲斐無いばっかりに、息子のお前にまで苦労を掛けて・・・
息子:・・・大丈夫だよ!
パパがいてママがいて僕がいてジョセフがいて・・・皆一緒なら何とかなるよ!!
社長:・・・それが・・・ジョセフは、もう・・・一緒に居られないんだ・・・
息子:ええっ!?どうして?どうして駄目なの!?
社長:家にはもうペットを飼う余裕は無いんだ・・・分かってくれ!
息子:嫌だよ!そんなの嫌だよ!!
社長:お前の気持ちは痛いほど分かるが・・・仕方ないんだ。
息子:嫌だっ!ジョセフと離れるのなんて、絶対に嫌だっ!!パパのバカァ〜ッ!!
社長:あっ・・・
息子は泣きながらジョセフの元へと走り出していきました。 |
息子:ジョ・・・ジョセフッ・・・
ジョセフ:どうしたんです、お坊ちゃま!そんなに泣きじゃくって・・・
息子:聞いてよジョセフ!パパが・・・パパが酷いんだ!
息子は、パパが言った事の一部始終をジョセフに話しました。 |
息子:嫌だよ!僕とジョセフは、ずっと一緒だからね!そうだろう、ジョセフ!?
ジョセフ:・・・お坊ちゃま・・・仕様が無いですよ・・・
息子:何?ジョセフまで、何を言い出すんだよ!?
ジョセフ:所詮、お坊ちゃまと私とは・・・
主人とペットの間柄です。本当の意味での家族には成り得ないのですから・・・
息子:そんな事無いっ!そんな事無いよっ!!
ジョセフ:・・・お別れです・・・お坊ちゃま・・・
息子:駄目だよ!行っちゃ駄目だよ!ジョセフッ!!
ジョセフ:・・・頑張って、お父様・お母様を支えてあげて下さい・・・
息子:嫌だっ!ジョセフと離れ離れなんて絶対に嫌だっ!!
ジョセフ:・・・さようなら・・・お坊ちゃま・・・
息子:待って!待ってよ!!
駄目だよ!行っちゃ嫌だよ!!ジョセフッ!!ジョセ〜フッ!!
こうして主人とペットは、離れ離れになってしまったのです。 しかし、この物語は実はこれで終わりではないのです。 ここは、それから20年後の芦辺ペットショップ・・・ おや?お客様がいらした様ですよ・・・ |
ギイィィィィッ・・・
店主:これはこれは!ジョセフ伯爵、いらっしゃいませ。
ジョセフ:注文の品は・・・届いているかね?
店主:はいっ!つい先日、やっと入手する事が出来ました。
ジョセフ:そうかね!?それはそれは、ご苦労様だったね。
店主:いえいえ、これが私の仕事ですから。
ジョセフ:で、何処に居るんだね?
店主:こちらの檻の中でございます。
息子:出せよっ!早くここから出せってばっ!!
ジョセフ:・・・お坊ちゃまっ!!
息子:・・・ジョセフ?ジョセフなのかい!?
ジョセフ:そうです!貴方に幼い頃飼われていたジョセフですよ!!
息子:ど・・・どうしてここにっ!?
ジョセフ:お坊ちゃまを、私が買ったのですよ!!
息子:そうなの?って事は・・・!!
ジョセフ:そうですよ!また一緒に暮らせるんですよ!!
息子:ジョ・・・ジョセフッ!!
ジョセフ:今度は、私が貴方を・・・飼う側ですがね・・・
フッフッフッフッ・・・
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