落し物を届けに来ました♪




H:ふぁ〜っ・・・交番勤務も退屈だなぁ〜!

  巡回にでも行って来ようかなぁ〜・・・でも、面倒臭いしなぁ〜・・・

  誰か道でも聞きに来ないかなぁ〜・・・



B:あのぉ〜・・・すいません。



H:はいはい!

  公民館だったら、そこの道をまっすぐ行って2つ目の信号を右に曲がってねぇ〜・・・!



B:いえ・・・道なんて誰も聞いてないんですけど・・・



H:あっ、そう言えばそうだね!ゴメン!ゴメン!・・・で、何の用なのかな!?



B:落し物を拾ったんですけど・・・



H:へぇ〜!で、何を拾ったの?財布!?まさか、現金1億円とか!?



B:いえ、お金じゃなくて『物』なんですけど・・・



H:なんだぁ〜!本官ったら、早とちりしちゃったなぁ〜!(笑)で・・・その物って何なの?



B:はい・・・これなんですけど・・・(コトン!)











H:あのぉ〜・・・君さぁ〜・・・これは、何処から見ても・・・



B:はい!空き缶です!!



H:だよねぇ〜・・・で、これを交番に・・・?



B:はい!拾ったので届けに来ました!!



H:いや、君ねぇ〜・・・



B:あのですねぇ〜、3丁目の交差点に落ちていたのを私が拾いましてねぇ〜・・・!



H:いやいや!この際、落ちてた所は何処でも良いからぁ〜・・・



B:じゃあ・・・なんでしょう?



H:これって・・・ゴミじゃないのかな!?



B:いえ!空き缶ですっ!!



H:だからさぁ〜、空き缶って言う事は・・・中身が無い訳だよね!?



B:・・・そうですねぇ〜!



H:って事はやっぱり・・・ゴミじゃないのかな!?



B:でも・・・ゴミ箱に入ってなかったですよ!



H:だからさぁ〜、道路にポイ捨てしちゃう人とかいるじゃない!本当はいけない事なんだけどさぁ〜・・・



B:でも、もしかしたらそう言う事じゃないかも知れないじゃないですか!



H:あのさぁ〜、空き缶だろうが空き瓶だろうが、とにかく空いてるんだからゴミだろぉ〜!



B:じゃぁ〜・・・空家もゴミですか!?



H:君も屁理屈を言うねぇ〜!!



B:いえ!小理屈です!!



H:どっちでも良いよ、そんな事はっ!とにかく、この空き缶はゴミなのっ!!



B:それは、貴方にとっての価値観でしょ!?



H:そりゃそうだけどさぁ〜・・・



B:世の中には、この空き缶が大切な人もいるかも知れないじゃないですか!



H:ハイハイ!君の言いたい事も分かるよ!例えば、空き缶で家とか作っちゃう人とかの事だろ!?

  でもねぇ〜・・・そう言った人はさぁ〜、別にこの空き缶じゃなくても良い訳じゃない!



B:いや!私が言ってるのは、そう言った空き缶アートの人じゃなくって・・・



H:じゃあ、どんな人なの!?



B:この空き缶を落として困ってる人がいるかもしれないじゃないですか!



H:いやいや!道路にゴミを落として困る人はいないでしょぉ〜!

  むしろ、落とされた側の人が困る訳だからさぁ〜・・・



B:もぉ〜!どう言ったら分かってもらえるのかなぁ〜!?



H:どっちかって言うと、それは私の台詞だけどねぇ〜・・・!?



B:じゃあ、こうしましょう!今から、私が想像する空き缶エピソードを話しますからぁ〜!



H:別に良いよぉ〜!そんなの聞きたくもないから!



B:まぁ、ちょっと聞いて下さいよ!これを聞けば納得してもらえると思いますから!



H:仕様がないなぁ〜・・・



B:では、これより私の想像する『この空き缶にまつわるエピソード』いってみよっ♪





○月×日

今日は、A男とB子の初めてのデートの日!


遊園地に行ったり、水族館に行ったり、デパートにショッピングに行ったり

2人の楽しい時間は、あっと言う間に過ぎていきました!


A男はこのデート中に恋の告白をする気でいました!

そしてその事を、B子もなんとなく感じ取っていました!


そんな二人の期待と不安とドキドキ感が交錯しながら

着々と進んでいく2人の時間・・・

A男は、なかなか肝心な話を切り出せずにいました!

一方のB子も、なかなか切っ掛けを作れずにいました!


そうこうしてる内に、B子の門限が近付いてきます!

夕方になる頃、家路に向かう2人・・・

このままでは・・・このままでは告白出来ずに終わってしまう!

焦ったA男はB子に、ある提案をしました!



『ちょっと・・・そこの公園で休んでいかない!?』



B子は軽くうなずきながら言いました。



『そうね・・・ちょっと歩き疲れたし♪』



公園のベンチに腰掛ける2人。

今だ!今ここで告白するんだ!!

しかしA男には、その勇気が振り絞れずにいました!



『あの・・・B子ちゃん!』



『えっ!(ドキッ!)・・・な・・・何かしら!?』



期待に胸を膨らませるB子!

遂に・・・遂に、この時が来たのかしら!?

緊張感は一気に高まります!

しかし、次の瞬間A男から出た言葉は・・・



『・・・のど渇いてない!?』



ガッカリするB子!

でも・・・彼も緊張で、のどが渇いているのかも知れない!

そう思ったB子は



『う・・・うん、そう言えばちょっと・・・』



と、複雑な心境の中で返事をしました。



『じゃあ、僕が走って買いに行って来るからちょっと待ってて!』



ジュースを買いに走っていくA男を

淋しそうな顔をしながら見つめるB子・・・


と、そこへ!

1人の男がB子の元に近寄って来ます!!



『ねぇねぇ、お姉さん一人ぼっちで何してるの♪』



ナンパです!こともあろうに、このちょっと1人きりになった瞬間に

B子は、知らない男にナンパされそうになっています!



『あの・・・私1人じゃないですから!』



ナンパ男の誘いを断ろうとするB子!



『えぇ〜っ!?どう見たって1人しかいないじゃない!

ねぇ〜、俺と良い事して遊ぼうよぉ〜♪』




しつこく誘い続けるナンパ男!



『もうすぐ彼が帰って来るんですから、邪魔しないで下さい!』



懸命に断るB子!!



『うるせぇ〜なぁ〜!とにかく付いて来いよ!!』



遂に力尽くで連れて行こうとするナンパ男!!



『キャァ〜!助けてA男君っ!!』



激しく抵抗し、A男に助けを呼ぶB子!!


と、そこに!

ジュースを買いに行っていたA男が帰って来ました!!



『B・・・B子ちゃん!大丈夫かいっ!!』



『A・・・A男さん!この人が、私を・・・!!』



『てめぇ〜、この子の何なんだよ!!』



ナンパ男にこう言われて、咄嗟に言葉に詰まるA男!

しかし、勇気を振り絞ってこう答えます!!



『B子ちゃんは僕の彼女だ!!なんか文句でもあるのか!!』



『A・・・A男さん・・・(ポッ!)



『けっ・・・今度、会ったら覚えてろよ!』



捨て台詞を吐いて去っていくナンパ男。

ほっ・・・と、しながら見詰め合う2人!



『なんだか・・・しまらない恋の告白になっちゃって・・・(苦笑)



『そんな事ないわ!A男さん、とっても素敵だった♪』



『B子ちゃん・・・』



『A男さん・・・』



そっと寄り添い、抱き合う2人・・・

そんな2人を、夕日が祝福していましたとさ♪






B:とまぁ、こんな素敵なラブストーリーが

  この空き缶には詰まってましてぇ〜!!



H:ふざけんなっ!!



B:ふざけてなんかないですよ!真剣に考えた結果ですねぇ〜!!



H:真剣に考えた者が、こんな長ったらしい妄想ラブストーリー作るかいっ!!



B:なんですか!?一体、この話の何処が気に入らないんですか!?



H:全部じゃ!全部っ!!



B:じゃあ良いですよ!また別のエピソードを考えますから!!



H:アホかっ!お前の妄想話は、如何でも良いんだよ!!



B:じゃあ、こうしましょう!

  彼が蹴った空き缶が、

  たまたま彼女に当たってそこから出会いが始まってぇ〜!!



H:だからぁ〜!お前の妄想話は、もう沢山なんだってぇ〜のっ!!



B:とにかくっ!そう言う訳ですから!!



H:どう言う訳だか分かんねぇ〜よっ!!



B:この空き缶は、交番で預かって下さいよっ!じゃ、宜しくっ!!(シュタッ!)



H:あっ!逃げやがった、この野郎!!

  もぉ〜・・・なんだったんだよ、あのバカはよぉ〜!!

  こんなゴミ持って来たって、誰も要る訳ねぇ〜じゃねぇ〜かよぉ〜・・・!!





『あのぉ〜・・・すいません!』





H:ん?どうしたの!?本官に何の用かね!?





『ここに、落し物は届いてないでしょうか!?』





H:落し物ねぇ〜・・・で、何を落としたの?財布とか!?





『あのぉ〜・・・思い出の空き缶なんですけど・・・』





H:嘘ぉ〜ん!!!




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