「イムジン河」と6月の出来事

2020・6・21

キム・ヨンジャさんが哀切を込めて歌う「イムジン河」。南へ向い悠々と川を超えていく鳥に「私はなぜ南の故郷に帰れないのか、誰が民族を分断したのか」と、問いかけます▲70年前の6月25日は朝鮮戦争開戦の日です。この戦争の前線基地・出撃基地にされたのは佐世保港です。今、北朝鮮の挑発行為で緊張を高めていますが、分断には、日本の植民地支配が少なからず関わっています▲この年の6月28日には、軍港から平和産業港湾都市への転換を目指す「旧軍港市転換法」が成立したのに、出発点から踏みにじられ、佐世保は今なお、米軍基地として固定化されています▲1945年の6月28日深夜、米空軍第73航空団所属の145機から投下された1200屯の焼夷弾の火の雨が市街地を襲います。「佐世保大空襲」です▲全焼家屋1万2千戸余。死者は1242人と記録されています。同市中央公園の一角に鎮魂慰霊平和祈願の塔があります。爆撃は一般市民を無差別標的にしたもので、軍事施設は無傷で残されました▲沖縄戦終結の日は6月23日でした。60年前の6月23日は現行の日米安保条約発効の日です。日米安保体制のもと、佐世保や沖縄の基地は一体で強化されてきました。「みくる世はやぐら」(今は平和でしょうか)

疑惑・罪と恥の文化

2020・6・7

「瓜田(かでん)に履(くつ)を入れず」「李下にて冠を正さず」は、君子(人々の模範となるべき人)は、疑惑を招く事をしてはいけないとの戒めの言葉です▲総理大臣はじめ閣僚・政府高官はすべて、君子であって欲しいと願うのは「無い物ねだり」なのでしょうか。「モリカケ」「桜をみる会」「買収選挙」「検察幹部の定年延長」等あまりにも疑惑だらけです▲麻生財務相はコロナ禍の対応を聞かれ「お宅とうちでは国民の民度のレベルが違うと」威張ったとか。世界で差別撤廃の世論が拡がっているのに、何様のつもりでしょうか。大臣のレベルが低すぎます▲比較人類学者ベネクトは著書「菊と刀」で日本人の国民性を、西欧人の自己の内心を重視する「罪の文化」に比して、世間体や外聞重視の「恥の文化」と表現しています▲見方によっては、コロナ禍の対応で、国民が行政の要請を守るのは、他人の目を気にする「恥の文化」の為とも言われかねません。「恥の文化」には、悪行も発覚すれば恥かしさを感じるが、バレなければ知らぬ顔というのもあります▲総理大臣は責任を口にしても無責任。河井元法相や妻、案里参院議員は、バレバレなのに何も語らずに居座っています。安倍さんと、そのお友達仲間には罪や恥の観念はないのでしょうね

カタカナ語と日本語

2020・5・24

パンデミック、クラスター、オーバーシュート、ロックダウン、ソーシャルディスタンス等々。「新型コロナ」で使用されたカタカナ語のなんと多いことか。世界的大流行ゆえ国際語で、ということなのでしょうか▲外来語・借用語を決して毛嫌いしている訳ではありません。今や、多くのカタカナ語が日常会話に欠かせませんし、ましてや長崎は、かつて国際都市として外来語を最初に受け入れ全国に広げた地です▲世界遺産の「そろばんドック」はいかにも長崎的なネーミングです。そろばんや銅八銭は中国から、オランダからは、ドッグ・お転婆・ガラス・コップ等、ポルトガルからは、カステラ・金平糖・合羽・襦袢・トタン等が伝わっています▲国際化が言われて久しく、小学生から英語を教えます。一方で高校生の現代国語(必須)から小説・詩歌等の文学が除外され、法律や契約書等の実用語に絞るとか。思考力・表現力が失われかねません▲真の国際人とは、外の世界を知るだけでなく、自国の文化にも精通している人ということではないでしょうか▲漢字の読み違いは自らにも覚えあることだけど、日本国の首相が云々をデンデン、背後をセイゴでは悲しすぎます。長い歴史の中で育まれた文化・母国語を、もっと大切にして欲しいものです

新型コロナと政治の責任

2020・5・18

人類とウイルスとの闘いの歴史は長い。5月14日は「種痘記念日」です。紀元前からあったという天然痘の予防に、ジェンナーが初めて種痘を行ったのは1796年のことです。根絶されたのは最初の種痘からおよそ180年後の1980年でした▲コレラは、幕末に米国ペリー艦隊所属のミシシッピー号乗員が中国から長崎に持ち込み、明治にかけて全国的に大流行しました。致死率が高く「コロリ」と呼ばれました▲スペイン風邪は第1次世界大戦中のことで、5億人が感染。死亡者は戦死1600万人を上回って5000万人に達したとも。戦争が疫病の被害を拡大した典型です▲新型コロナは、安全より効率・利益を最優先させる経済と政治が、医療や介護等、社会の必須の基盤を脆弱にし、被害を拡大させています▲医療・介護・生活・経営・雇用等の支援は喫緊の課題です。日本の軍事費は5兆円を超えています。辺野古埋め立てや超高額戦闘機の爆買いなど論外です。急を要しているのは、兵器よりスピードあるコロナ対策です▲新型コロナの対応では、一部の極めて身勝手な心無い言動が報道されていますが、多くは、困難を抱えながらも、お互いを支え合う人間の優しさと、連帯を改めて実感させています。この支援こそ政治の役割でしょう

世界終末時計、あと100秒

2020・4・20

「世界終末時計」はアメリカの権威ある科学誌が、1947年に、核戦争の脅威を警告するために作りました。人類の絶滅を零時に定め、7分前から始められました▲時計の針は、世界情勢の変化で進んだり戻ったりします。過去の最短は2分前、1953年、旧ソ連が水爆保有を発表。核軍拡競争が激しさを加速させる懸念からです。東西冷戦のおわりに大きく戻りましたが一昨年、再び2分前に。今年さらに20秒進んで残り100秒、過去最短の更新です▲米国のイラン核合意離脱、米ロの中距離核全廃条約の失効、北朝鮮非核化交渉の行き詰まり等が理由です。核問題の危機に加え、気候変動の環境破壊、広がる不寛容等も理由にあげられました▲一方で針を戻す大きな希望も。国連で可決された「核兵器禁止条約」に32カ国が批准をすませました。50カ国で国際条約として発効します。原水爆禁止世界大会ニューヨークは新型コロナで中止されましたが、核兵器廃絶の世論をさらに強め、核固執勢力を追い詰めたい▲新型コロナウイルスの感染拡大は、事態を日々、深刻化させています。1日も早い終息を願わずにはいられません。今はなにより、感染予防と合わせ、商売を潰されてたまるかの知恵と力を合わせる時です。政治の責任は重い

弱者に優しい社会

2020・4・6

「桜を見る会」が中止なのは、安倍総理の私物化・公選法違反疑惑が原因で、新型コロナの為ではありません。忘れないでください▲新型コロナで自粛の要請がされ、ご自身が関与の森友疑惑の改ざん文書で、自殺した職員の手記が公表され問題になっているのに、昭恵夫人は芸能人と「花見」。総理は「公園でなく問題ない」と。国民は健康と生活の危機に直面しているのに▲過日、亡くなった「ねむの木学園」の創始者、宮城まりこさんが、生前、インタビュウーで「政治をやる人は弱い人のことを忘れないで」と語っていましたが、この国の政治が「弱者に優しい」とは真逆にあることは論を俟ちません▲残念ながら、一般の社会生活の中にも、弱者への偏見や差別が残されており、いじめや虐待などで痛ましい事件が起きています▲中学生の頃、最初に覚えた憲法条文は24条の「婚姻は両性の合意にのみ基づく」の部分です。当時、男女同権の理解さえ希薄でしたが、最近この条に唯一「個人の尊厳」が明記されていることを学びました▲13条は「すべて国民は個人として尊重される」です。金子みすずの詩の如く「みんな違ってみんないい」。どの社会単位であろうと「個人の尊厳を守る」は「弱者に優しい社会」を作る確かな力ではないでしょうか

花見の宴

2020・3・23

新型ウイルスの流行が深刻な影響を及ぼしています。総理には独断専行のパフォーマンスより、実情に沿った具体的できめ細かい緊急な対策こそを求めたい▲桜の見頃は間もなくです。花見の歴史は古く、奈良時代に貴族社会で梅花の宴が始まり、平安時代には桜に移ったのだとか。花見は、詩歌を詠み競う場でもあったようです▲一方、農民層は、春先にその年の豊作を願う行事の一つとして山に入り、神々に祈り、供えた酒や馳走を食す風習がありました。貴族の風習は武家にも広がり、有名なのは、豊臣秀吉の「醍醐の花見」でしょう。朝鮮出兵のさなか、権力を誇示して見せましたが程なく没しています▲貴族層・農民層二つの社会に起源を持つ花見が現代のような姿で広まったのは江戸時代、将軍吉宗が江戸の各所に花見の名所を作って以降のことらしい。桜の下で、飲食を楽しむ風習は世界中でも、とても珍しい事のようです▲安倍総理は、公的行事の「桜を見る会」を自身の勢力拡大のために私物化した上、追及されると、相も変わらず「知らぬ・存ぜぬ」の逃げの一手です。秀吉ではないが、政権末期の症状に違いありません▲この時期、花見の飲食自粛に一理あれども、夜桜を眺め、缶ビールを傾け、そぞろ歩くのは至福の時なのだけど

3・1節に思う

2020・3・2

3月1日の出来事。3・1ビキニデー。66年前、米国がビキニ環礁で水爆実験を行い、近海で操業中の日本のマグロ漁船団が死の灰を浴びました。第5福竜丸の久保山愛吉さんが犠牲になり、原水爆禁止運動の原点になった事件です▲隣国の韓国では、3・1節。101年前、日本からの独立運動が起こった、小学生でも知っている記念日です。日本では、この韓国の歴史教育が反日感情を煽っているとの論評も少なくありませんが、的外れでしょう。現在の日韓関係悪化は、むしろ安倍内閣の態度、心無いヘイト等の影響によるものです▲3・1独立運動の聖地、タブコル公園には、独立運動の英雄、17歳で獄死した少女、柳寛順(ユグアンスン)等のレリーフが並んでいます。この公園で出会った若者が、屈託なく日本語で話しかけてくれたのを思い出します▲歴史教育は、元々、自国の優越を誇る為でも、他国への敵視を醸成する為でもありません。歴史の真実を学ぶのは、自らの立ち位置、生き方を考える事と言った方がいます。それは、より良い今と未来を作ることでもあるのでしょう▲100年前の柳寛順も、現在の環境活動家グレタさんも10代の少女。若者への期待も大だけど、世直し運動、吾身老いたからと負けてはいられません

麒麟をよぶ力

2020・2・17

桜を見る会。「募っているが、募集ではない」首相の珍答弁に只々呆れるばかり。中国の故事曰く、善政が続く時「麒麟」が舞い降りるという。国民が安心して暮らせる、そんな政治は、とうてい自公政権に望むべくもなし▲大河ドラマ「麒麟がくる」が好調な出だしです。ふと、あの時代の長崎を思い、今回は郷土の戦国史の一端を▲肥前・佐嘉を本拠地とした竜造寺隆信は、明智光秀と、生・没年がほぼ同じ戦国大名です。島津・有馬連合軍との「沖田畷の合戦」で討ち死にしましたが、一時は北九州迄勢力を伸ばし、島津氏や大友氏と九州の覇権を争った猛将です▲島原の有馬、伊佐早の西郷、県央の大村、平戸の松浦などの各氏が、この竜造寺氏と合従連衡しながら、鎬を削っていました。西郷氏は秀吉の時代に滅亡します▲平戸にポルトガル船が初めて入港したのは1550年。斎藤道三が亡くなる6年前です。南蛮貿易は、その後、横瀬・福田・加津佐を経て1571年、大村純忠が新しく拓いた長崎へ移ります▲光秀が本能寺で信長を討ち、山崎の合戦で自らも滅びた1582年は、遣欧少年使節がローマに向けて旅立っています▲古の事はさておき、格差が広がる現代の悪政を糺し、「麒麟」をよぶのは、安倍政治ノーを掲げる国民共同の力です

島の想い出

2020・2・3

商工新聞連載「日本の島に魅せられて」の終回を惜しんで、今回は島の雑学の一端を▲長崎県は島の数、日本一。971の島々があります。壱岐・対馬・平戸・五島等は、朝鮮半島や中国大陸と日本を結ぶ直近の位置にあり、古代から深い関わりを持ってきました。平和な交流だけでなく、厳しい対立の場にされたことも▲これらの島を抜きに日本の古代史・国際交流史を語ることはできません。万葉の時代、福江島の三井楽は、当時「みみらく」と呼ばれ、この世と、あの世がつながっている場所と信じられていたようです▲隣接する岐宿は遣唐使の日本での最後の寄港地。ここから二度と帰れないかもしれない航海が始まる、都からは最果ての地と考えられていた事と無縁ではないでしょう▲五島の名物といえば、「かんころもち」「五島うどん」でしょうか。うどんは、今や讃岐や稲庭と並び称される程。ルーツは中国の索麺で五島を寄港地とした遣唐使が製法を持ち帰ったとか。この為、五島は日本のうどん発祥地の説もあるようです▲五島に民商の旗をと商工新聞とスライドを持って訪ねた頃のことが思いおこされます。初対面にも拘らず意気投合し、泊めて戴いた家で馳走になった、「きびなご」の味と、温かい島人の人情は今も忘れません。改めて深謝

今年はよい事あるごとし

2020・1・20

『なんとなく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風なし』は、石川啄木が1911年に詠んだものです。この前年には『地図の上、朝鮮国にくろぐろと、墨をぬりつつ、秋風を聴く』と詠んだ「朝鮮の植民地強行」等の暗い出来事があり、ひときわ新しい年に明るい願いを込めたのでしょう▲年が改まり今更との思いもあるけれど、昨年の世相を表す漢字1字は「令」でした。改元は本欄でも幾度か触れたので頷けなくもありませんが、私的には「税」「気」「桜」「怒」あたりから選んで欲しかった▲「税」は勿論、消費税率引き上げに係る諸問題。財界は、社会保障切り捨ての一方で、はや「10%は更なる引き上げの一里塚」と言い放っています▲「気」は台風や豪雨等の気象災害、これをもたらす温暖化。温暖化対策を訴えるグレタさんたち若者の頑張りに喝采だけど、COP25での大臣発言と「化石賞」連続受賞の不名誉な日本政府の対応▲「桜」は、言わずと知れた、安倍政権の権力・税金の私物化、嘘に嘘を重ねるやり口、証拠隠滅。権力への忖度。これらに対する津々浦々から起こっている国民の「怒」です▲こんな政治は御免です。「今年はよい事あるごとし」の予感を、現実にするのは団結の力。春の運動はその第一歩です

ワンチーム

2020・新年号

謹賀新年▲功罪様々にあるオリンピックだけれど、夏季大会が今年56年ぶりに東京で開催されます。一流アスリートたちの熱戦に今から期待が膨らみます▲昨年の流行語大賞は「ONE TEAM(ワンチーム)」でした。ラクビーW杯で、6カ国出身者で構成された日本チームがワンチームを合言葉に、史上初のベスト8に躍進。コメントに「世界に広がりつつある排外的な空気に対する明確なカウンターメッセージ」と。全く同感です▲元々、ワンチームの言葉が注目されたのは1995年の南アフリカ大会でした。アパルトヘイト撤廃後、白人と黒人の融和を図る新たな国造りの中でラクビーW杯を制覇した南アチームの「ワンチームワンカントリー」のスローガンが脚光を浴びました▲「ワンチーム」は響きも、使い勝手も良い言葉ですが、用い方によっては、押し付けがましく、説教臭かったりもして、個人や個性を排斥しかねません▲かつて、戦争に反対したり、体制を批判した人々を「国賊」や「アカ」と呼び「一億一心」と国民を駆り立てた歴史を持つ国です。気をつけたい▲堀江翔太選手は「どういうワンチームにするかが大事で中身をしっかり考えて使ってほしい」とコメント。共感の一言です▲今年も、宜しくお付き合いの程を