菅政治の「三密」

2020.11.29

イギリスのコリンズ英語辞典編集部は、例年その年の世相を表す「今年の言葉」を選んでいます。昨年は、環境活動家の女子高生グレタさんの活躍もあって「気候ストライキ」でした▲今年選出されたのは、新型コロナウイルスの猛威に直面した欧州各国が、相次いで実施した「ロックダウン(都市封鎖)」です。因みにベストテンの内、六つは新型コロナ関連でした▲ユーキャン「新語・流行語大賞」も、ノミネートされた30語の半数が、アベノマスク・クラスター・ソーシャルデスタンスなど新型コロナ関連です(本稿掲載時は大賞・ベスト10も発表されています)▲国民の苦難をよそに、政府のコロナ対策は全く無為無策と言っても過言ではないでしょう。GOTOの迷走ぶりに「ダメな政府はウイルスより有害」と言った方がいます。大賛成▲一人一人が、密閉・密集・密接の「三密」を避けるのも感染拡大を阻止するために確かに必要でしょうが、国民に「新たな行動様式」だけを押し付けるのでは、あまりに無責任ではありませんか▲「三密」といえば菅総理大臣は、前任の安倍さん同様に、ご自身と「密接」な関係にあるお友達だけが「密集」して「密閉」されたところで、秘密裡にことを済まそうとなさる。この「三密」も断じて許せませんぞ

人民の人民による人民の為の政治

2020.11.15

米国大統領選挙で、アメリカファーストを掲げ、自身と支持者本位の政治で、内外に差別と分断、対立を広げた現職トランプ氏が敗れ、今尚、混乱を煽っています▲今後の外交内政の行方は不明ですが、当選したバイデン氏は、結束と協調を訴え、米国史上初の女性副大統領となるハリス氏は「より良い未来を築く力を持っているのは私たち人民なのです」と呼びかけました。励まされる言葉です▲1863年11月19日。南北戦争のさなか『人民の人民による人民のための政治』を我々が固く決意することであると結ばれたリンカーン大統領の名演説が行われた日です▲この精神は日本国憲法の「国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」につながります▲菅政権のスローガンは「国民のために働く内閣」です。政府が国民のために働くのは当然の義務であるはずですが、殊更に強調しなくてはならないのは、やましさの隠れ蓑に違いありません▲就任から2か月、「自助・共助・公助」と自助努力・自己責任を押し付ける無責任さ、憲法違反の科学者会議の任命拒否、国会での木で鼻を括るが如き不誠実な答弁。「国民のため」が泣いています

食糧支援とノーベル平和賞

2020.11.2

食は、命をつなぐに必要不可欠であり、同時に、暮らしの潤いや楽しみをもたらせてくれます。誰もが美味しいもの食べたいと思い、それを食する時、喜びや幸福を感じるでしょう▲グルメは、テレビ番組(個人的には大食い番組は嫌いですが)でも、雑誌の記事にも溢れています。食は、まさに文化です▲一方で、世界中には最低限の食に事欠き、飢餓に苦しむ人口は、約6億9千万人にも及んでいるそうです▲世界で生産される食糧の3割以上が食品ロス(食べられるのに廃棄される食品)などで失われており、その量は飢餓人口の全てを充分に養える量に匹敵するとか▲今年のノーベル平和賞は「国連世界食糧計画(WFP)」に授与されました。WFPは戦地や災害被災地、貧困地域等で食糧支援を行っている国連の機関です▲飢餓人口はこの数年、地域紛争や気候変動の影響で増加傾向にあり、コロナの世界的流行が追い打ちをかけているとのこと▲飢餓を生む最大の原因は紛争です。WFPの事務局長は「飢餓は概して食糧の不足からではなく供給網の崩壊や価格の急騰から生まれる」と述べています▲ノーベル賞受賞理由に、人道支援活動と平和構築努力の一体化を主導したとあります。食べる喜びも平和であってこそを再確認させる受賞です

秋・琴棋書画

2020.10.19

古代中国では「琴棋書画」は君子の必須のたしなみでした。琴は楽器、棋は囲碁のこと。日本への伝来は古く、平安時代に書かれた「源氏物語」には光源氏が憧れた空蝉と義理の娘や姫君姉妹が碁を打つ場面が登場します▲江戸時代には庶民にも愛好され、「死活」や「一目置く」「ダメおし」等囲碁由来の常用句も少なくありません。コロナ禍、行政の迅速で手厚い経営支援の有無は中小業者の「死活問題」▲俳句は、世界一短い詩として国際的にも広がっているとか。俳句に疎くとも、誰もが松尾芭蕉・正岡子規の名や、彼らの句の一つ二つは暗唱できるでしょう。これらの著名な俳人達も碁を楽しんだようです▲「碁の工夫二日閉じたる目を開けて」は芭蕉の句。二日の長考は誇張でしょうが、碁への愛着を感じます。秋の句から、「さびしげに柿食うは碁を知らざらん」「月さすや碁を打つ人の後ろ迄」は子規▲高浜虚子は「秋の暮れ下手碁勝ちて尚さびし」を残しています。老生の碁は下手の横好きゆえ、句の理解は違っているのかもしれないけれど、この句には共感を覚えます▲「秋深し隣はなにをする人ぞ」は芭蕉の生涯最後の句とか。友人が最近、古希の手習いで俳句を始めたとの便り。秋の夜長、才が無いのは百も承知で私も挑戦してみようかな

自助・共助・公助

2020.10.5

多くの識者が語り2番煎じは免れないが、新総理誕生に一言は申しあげたい▲アホノミクス・戦争法・モリカケ・桜と、安倍内閣の中枢にいた菅氏が首相になり、古色蒼然、代り映えはしないのに、支持率はなんと急上昇。「たたきあげの苦労人」等とマスメディアの忖度報道の影響によるところ大でしょう▲総理の目指す社会像は「自助・共助・公助」。いま、コロナ禍の中でも国民は自らの力で精一杯に頑張っています。収入を絶たれたアルバイト学生支援の一つみても、しっかり、共に助け合ってもいます。「自助や共助」など政府の、上から目線で言って欲しくない▲第一、この文言自体が古臭く、元々は社会保障改悪のスローガンとして登場したもの。自助は自己責任、菅氏は、共助を「地域や家族の助け合い」と巧妙に言い換えているが本来は、社会保険を指し民間への転換を促すものです▲「自助・共助」推進がもたらしたのは医療・介護の徹底的な改悪と国民負担の増大です。一方の公助は、セフティネットは名ばかり、減税や株式市場の公費介入等、専ら大企業・大富豪に向けられ、彼らの利益と資産は増大。貧困と格差を拡大してきました▲本格的な秋風と共に、新内閣の下、早くも解散風が吹いています。政治転換のチャンスを逃してはなるまい

秋の彼岸に

2020.9.21

鉢巻山(野岳)や社が丘花園公園(琴海)いっぱいに広がる彼岸花も良いけれど、黄金色の稲穂の傍らに点々と咲く赤い花に、より魅かれます。別名、曼殊沙華。何れも仏教に関わる命名です▲曼殊沙華は、天界に咲くという花。彼岸はあの世、現世は此岸(しがん)です。太陽が真東に上り、真西に沈む日に彼岸と此岸が最も近くなると考えられこの前後に墓参りをする習慣が生まれたようです▲今年の彼岸は4連休です。国民の祝日法には、秋分の日は祖先を敬い亡くなった人を偲ぶ日とあります。ちなみに春分の日は、自然をたたえ生物を慈しむ日です▲尊い仏様にも位があり、最上位はお釈迦様等の如来、次いで観音様等の菩薩、さらにお不動様等の明王、弁天様等の天部となっています▲私見ですが一番親しまれているのは地蔵菩薩ではないでしょうか。地蔵像は、国宝もあるけれど、多くは路傍の小さな祠や露天の石仏です。お地蔵さんに出会うと、なぜか昔話「笠地蔵」を思い出します▲新内閣が誕生しました。「笠地蔵」は貧しくとも心優しい老夫婦と地蔵様の話ですが、安倍政治を礼賛し忠実に継承した政権には、庶民を思いやる心の一片もないようです。地蔵様の助けも欲しい気もしますが、政治の中身を変えるのは、国民の運動です

1951年9月8日

2020.9.7

甚大な被害をもたらした七月豪雨(我が家は野菜の高値に閉口しているだけですが)一転、記録破りの八月の猛暑もどうやら健康を損ねることもなく乗り切ることができました▲本稿が掲載される9月7日は、24節気の15番目「白露」です。草花に朝露がつきはじめ白く光ってみえ、秋の気配を感じさせる頃との意からついた呼び名とか。昼の暑さは相変わらずですが、確かに早朝の散歩道に季節の変化を感じます▲終戦の月、8月のテレビは、さすがに原爆や戦争に関する見応えのある番組がありました。8月15日は、終戦記念日ですが、国際法上の終結は1951年9月8日のサンフランシスコ講和条約締結です(条約発効は翌年4月28日)▲条約締結によって、連合国(実際には米国)の占領が終わり、日本は独立を回復しましたが、小笠原諸島・奄美群島・沖縄などは、その後の本土復帰まで米軍政下におかれます(沖縄の本土復帰は1972年)▲この条約とともに日米安保条約が締結され、今日に至るアメリカ言いなりの政治、日本の対米従属が固定化されました。戦争法、核の容認、基地問題、無用な兵器の爆買い、安倍政治はその最たる典型でした▲まだまだ続くコロナ禍、健康にも留意をしつつ、商売を潰されて堪るかの頑張りを

病める地球の処方箋

2020.8.17

宏大な宇宙の星々の中で、生命を宿し育んでいる地球は稀有の存在でしょう▲地球の年齢は46億年程、マグマの大噴出、地殻の大変動、大陸の誕生と分裂、巨大隕石の衝突等々、想像を絶する変化を遂げた地球に、現生人類が誕生したのは約20万年前だそうです▲今、森林消失や海洋汚染をはじめ、かけがえのないこの地球が病んでいます。世界各地で、毎年のように記録を更新する酷暑や干ばつ、豪雨等の発生も、症状の現れでしょう▲それらの原因は、紛れもなく人類が作り出したもの。しかも、悠久の人類史の中で、18世紀半ばの産業革命以来の精々250年程の営みです。とりわけ近年の「利潤こそ至上」の新自由主義が拍車をかけています▲温暖化に今、手を打たなければ「2100年未来の天気予報(環境省)」が、超巨大・強力な台風の到来や、日本中で夏、最高温度が40度を超すと予測しています。乱開発と温暖化は生物分布も変化させ動物由来のウイルス感染が拡がるとの研究発表もあります▲コロナ後の新しい日常を、敵対から協調、なにより人命と暮らしを守ることを最優先の政治、経済成長一辺倒でない価値観、地球温暖化や核の脅威の排除の中で営なめるようにすることこそ病める地球の確かな処方箋ではないでしょうか

核兵器と人類は共存できぬ

2020.8.02

史上初の核実験から75年目の7月16日、トランプ米大統領は原爆開発を「第2次世界大戦の終結、世界の安定、科学の刷新、経済繁栄に寄与した偉業」と称賛の声明を発表▲この実験と同型の原爆、ファットマンの長崎投下は、初実験から僅か24日目のことです。原爆被害の実相は、核兵器が人類とは共存できないことを如実に示しています。大統領声明は、被爆者を踏みつけ、世界の世論と流れに挑戦するもので断じて容認できません▲今年は、第1回原水爆禁止世界大会や「ラッセル・アインシュタイン宣言」から65年目にあたります。「宣言」は、湯川秀樹博士等、世界の著名な科学者11名が連名で署名。人間性の立場から核兵器廃絶と科学技術の平和利用を訴えました▲「宣言」を受け継いだバグウオッシュ会議は1995年にノーベル平和賞を受賞し、メダルのレプリカが長崎原爆資料館に常設展示されています。▲オンラインで開催中の今年の世界大会は、核兵器禁止条約の発効に向けた流れを加速させる大きな意義を持っています。条約は既に40カ国が批准、発効まであと10カ国です▲核廃絶の世論は核の固執者を追い詰めつつありますが、被爆者に残された時間は多くありません。一刻も早い核の廃絶を願わずにはいられません

長崎県下の市制・地方自治を考える2

2020.7.14

1899年(明治22年)に市制が布告され、東京・大阪・京都の3特別市を筆頭に36の市が生まれました▲制定時、市にも序列があり、長崎市は特別市に次ぐ地位に置かれ、発足時の人口は約5万5千人でした。この同じ年に、海軍鎮守府が開庁した佐世保村は軍港として急速な発展を遂げ、1902年(明治35年)に町を飛び越して県下2番目の市になります▲1940年(昭和15年)に、近隣の町村を合併して、島原市と諫早市が。その2年後、東洋最大といわれた航空工廠の設置で人口が膨らんだ大村市が誕生しました。1954年(昭和29年)に福江市。翌年には、炭鉱最盛期の松浦市と、平戸市が誕生しています▲その後は、平成大合併で、04年から06年にかけ、五島市(旧福江市)・壱岐市・対馬市・西海市・雲仙市・南島原市が誕生、現在の県下自治体は、13市と、東彼杵・川棚・波佐見・佐々・小値賀・新上五島・時津・長与の8町です▲自治体は、住民の暮らしを守る砦であり、住民の意思を反映させ、住民の公益を満たすのが本来の役割です。皆さんの市や町はそうなっているでしょうか▲市や町に、様々な要求することは住民自らが自治権を強める力になります。時には、議会の傍聴にでかけてみるのも、その一つでしょう

廃藩置県と長崎県・地方自治を考える1

2020・7・05

1871年(明治4年)7月14日。旧薩摩・長州両藩を中心とした明治新政府は、富国強兵の近代化を急ぎ、文字通り中央集権確立の為に、廃藩置県を断行▲3府(東京・京都・大坂)と302県が誕生しました。県知事は、中央政府から派遣され、この体制は戦後の1947年、日本国憲法と地方自治法の成立まで続きます▲戦前の自治体には自治権がありませんでした。日本国憲法の3原則、国民主権・基本的人権・平和主義はよく知られるところですが、地方自治も欠くことのできない民主的大原則の一つです▲現在の長崎県域は、302県時代は平戸・福江・大村・島原・長崎・厳原の6県体制で、後に、佐賀県域を含めて長崎県になり、1883年(明治16年)に再分割、彼杵・高来・松浦郡の一部・壱岐・対馬が長崎県となり今に至ります▲各々の県域と境界は多少の変更もありますが、千五百年もの昔、律令時代に定められた旧国を基本にしています。長崎と佐賀は肥前国、熊本は肥後国。肥前・肥後両国は、それ以前「肥(火)の国」と呼ばれていたそうです。阿蘇や雲仙等、火山に由来するようです▲地名は文化の一つですが、平成の町村大合併で、高来郡の名が消えました。合併による広域行政は地方自治を発展させたでしょうか