BSL4(バイオセーフティーレベル4)施設

2016・12・11

長崎は、かつて出島を窓口に蘭学・医学が伝えられ、全国から遊学者が集いました。シーボルトの鳴滝塾は高野長英や伊東玄朴などの優れた蘭方医を生み出しています▲幕末には医学伝習所が開設され、オランダ軍医ポンペによって近代的医学教育が始められました。日本初の近代的病院、小島養生所も開設され、ここに医学所が設けられて教育と治療がおこなわれました▲長崎大学医学部の源流です。松本良順や長与専斎など、日本医学界を担う人材を多く排出しています。佐古小学校にある養生所遺構は貴重な遺産です。埋め戻す意向が示されましたが、是非、公開保存して欲しい▲現在の長崎大学。医学部坂本キャンパスにエボラ出血熱など極めて危険度の高い病原体の研究拠点になるBSL4(バイオセーフティーレベル4)施設の設置方針が伝えられました▲BSL4の施設や、そこで行う研究を一概に否定するわけではありません。その研究成果が新たな医学の進歩をもたらし人類を救う。それは素晴らしいことです▲一方で、この研究は人命を危険に晒しかねません。万が一、病原体が施設外に漏れたらとの地域住民の疑念は当然です。住民の命と安全は最大限尊重されるべきです。沖縄の基地問題ではありませんが、何事によらず、住民の合意が得られないままの推進は決して許されません

太平洋戦争開戦の日

2016・11・27

12月8日。いまから75年前のこの日は、日米開戦の日です。筆者の父親は1938年に招集され、陸軍歩兵として中国各地を転戦し、対米開戦時にはフィリピンのルソン島に上陸しています。これら従軍のあらましは、軍人勅諭が掲載された「軍隊手帳」に記されていました。戦争体験を聴く機会は、殆どありませんでしたが、晩年、次のように語ってくれました▲命令で、柱に縛りつけた中国人俘虜を銃剣で突き殺した。その夜の歩哨に立っていると、暗闇に突き刺した俘虜の姿が浮かんでは消え、体中が震えたと。新兵に度胸をつけさせるためだったとのこと。21才の青年兵士の体験です▲その後、この青年兵士は幾多の戦闘を重ねて、殺すことになれ、散乱した屍の始末にも慣れてくる。戦場は、普通の人間が「狂気を狂気とは思わなくなる所」だと▲長崎民商創立と、その草創期に大きな役割を果たされた大井健太郎さん(故人)は、憲兵として中国で行った自らの体験を語り、反戦平和の活動の先頭に立っておられました。大井さんの言葉にも「戦争は人間を鬼にする」がありました▲11月、安全保障関連法(戦争法)のもとで「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」の任務を帯びた自衛隊が南スーダンに派遣されました。殺し、殺される危険をともなう派遣です。歴史を繰り返させるわけにはいきません。

国際寛容デー

2016・11・13

毎日が何らかの記念日や「○○の日」と定められているようです。さて今日は何の日でしょう▲今月は「文化の日」「勤労感謝の日」の他、11日はイレブンが二つでサッカーの日、22日はいい夫婦の日などの語呂合わせでできた日もあります。勿論、由緒正しき日も。4日がユネスコ憲章記念日、11日が世界平和記念日(第1次大戦終結記念日で米国や欧州各国では祝日)です▲16日は国際寛容デーです。1995年のユネスコ総会が「寛容原則宣言」を採択、翌年国連総会で制定された国際デーの一つです。自分とは異なる宗教や民族への理解を深め、異なる文化間の多様性を尊重し、対話と協調を強めることの大切さを考える日とされています▲米国大統領選挙は、予想を覆して、共和党のトランプ氏が勝利しました。予備選での民主党サンダース氏の善戦を見ても、貧富の格差拡大や生活不安、従来型の政治、支配階層への強い怒りと変革の要求が根底にあるようです▲トランプ氏は移民やイスラム教徒、女性を侮辱する暴言を平然と口にし、そこに「多様性が米国をダメにした。白人中心の偉大な米国を取り戻そう」の主張を重ねました。過激な発言でそれを煽ったやり口は、元大阪維新の橋下氏の手法に似てなくもありません。大統領就任前に、一度、確りと寛容の意味を考えて欲しいものです。

ノーベル賞と叙勲

2016・10・30

今年のノーベル医学生理学賞に大隅良典・東工大栄誉教授が選ばれました。会見で、研究を「役に立つかどうか」に傾斜させる現内閣の政策に危惧を示していたのが印象的です▲文学賞には、ボブ・デュラン氏が選出されました。彼の歌を毎日のように聴いたのは60年代の半ばで、ベトナム戦争の真最中のこと、青春時代を思い起こさせてくれました▲平和賞は、核兵器廃絶の先頭にたち、ノミネートされていた日本被団協の受賞はなりませんでした。ヒバクシャ国際署名の推進が次回の受賞の後押しになればと思います▲ただ、平和賞には問題もあります。例えば、かつて佐藤栄作首相(当時)が受賞しています。非核三原則の提唱や沖縄の核抜き本土並み返還が理由でしたが、全くの二枚舌。沖縄への核持ち込みを密約した当事者です。平和賞が歴史の検証に耐えうるものであって欲しいものです▲佐藤内閣は、航空自衛隊の発展に寄与を理由に、日本の叙勲制度では、最高位の勲一等旭日章をカーチス・ルメイに授与しました。ルメイは、東京大空襲や広島・長崎への原爆投下を指揮した人物です▲現在の安倍内閣も核に固執する米政府の国防関係高官に最高位章を叙勲しており、この面でも日米一体化と従属の姿勢が露わです▲国連は、核兵器禁止条約の締結交渉の決議案を採択しましたが、日本政府は米国に同調してこの決議に反対しました。こんな政府、許せないでしょう。

赤秋(せきしゅう)の時

2016・10・10

読書の秋。スポーツの秋。芸術の秋。祭りの秋。多彩な秋です▲俳優・仲代達矢さんは83歳の今を「赤秋(せきしゅう)の時」と呼んでいるそうです。人生の春が「青春」なら「赤秋」は晩年の燃える秋を意味する新造語とか。残された時間を精いっぱいに生きるの意味だと、インタビュー記事で知りました。素晴らしい生き様ですね▲「青春」と対になる元々の言葉は「白秋」です。中国の五行思想が源で、方位の東・南・西・北に順に、青・赤(朱)白・黒(玄)の色と、季節が与えられ、東に青春、南に朱夏、西を白秋、北は玄冬です▲秋の七草は、萩、尾花(薄)、桔梗、撫子、女郎花、葛、藤袴ですが、ギリシャ語が和名になっている秋桜(コスモス)もいい。諫早の白木峰は秋桜の名所。20万本といわれる丘一面に広がるコスモスは壮観です▲その先には、諫早湾が有明海に繋がり、普賢岳や熊本までも望む絶景が広がっていますが、そこには、干拓地の諫潮受け堤防と水門、水の色が濁った調整池もはっきりと見えます▲豊穣の海、ムツゴロウが生きた諫早湾を水門が閉じたのは1997年です。大型開発事業、最大級の愚行です。自然を破壊し漁業に大打撃を与えている事業に、国と長崎県は今もって固執していますが、有明海再生のために開門せよの長い闘いは粘り強く続いています。

ヒバクシャ国際署名

2016・9・26

9月26日、「ヒバクシャ国際署名をすすめる長崎県民の会」が結成されました。この日は核兵器廃絶国際デーでもありました。夕刻に署名を持ってご近所を訪問しました。北朝鮮の核実験や、オバマ大統領の「折り鶴」も話題になり、12人の署名が集まりました▲オバマ氏は今年5月に広島を訪問した折り、原爆投下の反省や謝罪の言葉がなく不満も残りましたが、それでも、核保有国の大統領の被爆地訪問は、歴史を進める一歩になったことは、まちがいないでしょう▲大統領は、千代紙で折った自作の鶴を4羽持参しました。この内の1羽が「核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」のメッセージとともに、現在、長崎原爆資料館に展示(11月までの予定)されています▲同大統領は、アメリカの「核兵器先制不使用宣言」の意向を示していましたが、核抑止力の低下に繋がるとの反対意見の前に、この宣言を断念したと報じられました。この不使用宣言に反対の立場を伝えた一人に、被爆国の安倍首相がいます▲首相は国連総会で北朝鮮の核実験を激しく非難し強力な制裁を主張しましたが、「核抑止力」を信奉し、戦争法を成立させて武力を頼む姿勢は北朝鮮の立場と同じではありませんか▲核廃絶は世界の流れです。「ヒバクシャ国際署名」の推進がこの流れをいっそう強めるでしょう。

介護の拡充は喫緊の課題

2016・9・11

9月19日は「敬老の日」。落語の寿限無ではないけれど、長命は昔から人々が願ってきたことです。誰もが心から長寿を祝い高齢者が安心して暮らせる社会をと願わずにはいられません▲定年後を夫婦2人で暮らしていたAさん。妻が病で歩行が困難になり、生活が一変。やがて妻は寝たきりに。「死にたい」を繰反す妻を励まし介護を続けたAさんが、ついに妻を殺める。NHKが取材・報道した実話です▲番組では、介護に疲れて家族の命を奪う悲劇が、この6年間で138件、実に2週間に1度おきていると報じていました。介護が必要なのは圧倒的に高齢者です。様々な問題を含んでいますが、介護が個人の責任にされ、社会全体での支援体制が不十分なこともその一因でしょう▲介護の拡充は喫緊の課題なのに、政府は介護保険の連続改悪を進めています。その中に要介護2以下のデイサービス利用料を1割負担から2割にすることが含まれています▲私事ではあるけれど、実施なら我が家は介護破産か極端な我慢生活を強いられます。日本共産党の小池晃議員は国会でサービス外しを国家的詐欺だと問い詰めました。全く同感です▲後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げも企まれています。高齢者を目の敵にするが如き政治は許せません。消費税は高齢化社会のためといってきたのは誰でしたっけ。

パラリンピック

2016・8・28

リオ五輪。アナウンサーやゲストの絶叫調、思い入れたっぷりの報道や解説ぶりにはいささか違和感を持ったけれど、選手たちの活躍は、スポーツの素晴らしさとともに豊かな多様性の持つ魅力を再確認させてくれ、感動一杯でした。その上で柔道選手の「銅で謝罪」に一言。謝る必要なんて何もない。選手が謝るような空気を周りが持っているなら是非払拭して欲しい▲「銀」や「銅」で悔し涙の選手もいれば、歓喜の涙の選手もいます。悔しさを隠して参加できたことの感謝を一杯に表現した選手もいます。みんな違ってみんないい。謝罪は当然と発言した芸能人がいたけれど「誰に対して」。「あなたは何様のつもり」ですかといいたい▲7日からは、パラリンピックが開催されます。報道によれば、資金難で、一部には運営に支障がでかねないとか。なんとしても、五輪のように、大きな成功をおさめて欲しいものです▲相模原の障害者施設の殺傷事件から1ヶ月余が過ぎました。許せない非人道的事件ですが、容疑者の「障害者は不幸しか作らない」の発言に共感する声が少なからずネット上に寄せられているだけに、いっそう、その思いを強くします▲優性思想と障害者差別がナチスの蛮行となった歴史の教訓があります。障害者と健常者が等しく共生できてこそ、真に平和で文化的社会といえるのではないでしょうか

ぽけもん騒動

2016・8・7

歩きスマホが社会問題になったのは、つい先頃のように思えるけれど、いまやスマホの保持率は中学生でも8割を超えているそうです▲アプリ「ポケモンGO」の配信が始まったとたん、いっそうスマホに目を落としながら歩く人々が増えて、接触や転落事故も起きたとか。ポケモンが出現する場所に違法駐車が激増して大渋滞も起こったなどの事例も報告されています▲少し肌寒さを覚えたのは、権力者や悪意の団体が、一方的な情報を一気に拡散したり、人気ゲーム感覚での意図的なアプリを配信すれば、集団催眠のように、多くの人々を同じ行動に誘導・統制できるのでは。そんな想像が頭をかすめたからです▲1945年8月10日付長崎新聞は、前日の原爆について「新型爆弾による被害は比較的僅少で市民は焼け跡から直ちに工場へかけつけまさに怒髪天を衝く怒りを込めて機械と、とりくんでいる」と報じています。被害が不明だったのではなく、明らかな虚偽報道です▲まさか政府は、戦前のような露骨な言論統制はしないでしょうが、マスコミを抱き込み、情報管理の姿勢を強めています。ご用心。ご用心。▲SNSは賢く使えば、商売に役立ち、社会を進歩させ、平和や暮らしを守る大きな武器になります。かなりアナログ人間の筆者ですが、それでもホームページを立ち上げ、フェイスブックも活用しています。

オリンピック

2016・7・24

リオ五輪が、いよいよ5日から始まります。早朝や深夜の放送もあり寝不足が心配です▲第一回近代五輪は古代オリンピック終焉から15世紀を隔てて1896年アテネで開催されました▲古代オリンピックはギリシャ文化圏での神に捧げる行事でした。当時、都市国家間の争いが絶えませんでしたが、この行事の間は「聖なる休戦」が行われていました▲この休戦の故事に因み、毎月9日には長崎原爆資料館階段下にある「誓いの火」の塔にアテネで採火した火種で炎が点されます▲近代五輪は、世界平和を究極の目的としたスポーツ祭典ですが、第一次大戦でベルリン、日中戦争で東京、第二次大戦でロンドンの各大会が開催されませんでした。まさにスポーツも「平和でこそ」です▲次回東京五輪・パラリンピックの森組織委員長(元首相)はリオ五輪日本代表団の壮行会で「国家を歌えない選手は日本代表ではない」と発言しましたが、五輪へのナショナリズムの弊害は計り知れません。五輪はその憲章にも「競技者間の競争であり、国家間の競争ではない」と明記されています▲多くのアスリートたちにとってオリンピックは夢の舞台です。選手たちこそ主役です。日本選手の活躍に期待しますがメダルを取るかどうかより、全力を尽くし感動や元気を与えてくれる、世界から参加する全ての選手に応援をおくりたい。

漫画の日

2016・7・11

7月17日は「漫画の日」です。1841年、英国で絵入りの風刺週刊誌、通称「パンチ」が発刊された日を記念していますが、いまや日本の漫画は、世界に冠たる地位を占めています▲漫画は、娯楽性とともに高い文化力で多くのメッセージを発します。手塚治虫・ちばてつや・赤塚不二夫・水木しげる・藤子F不二雄等の著名な漫画家たちの作品を収めた「漫画家たちの戦争」という選集もそのひとつでしょう▲原爆、東京大空襲、銃後のくらし、学童疎開、軍隊、戦場、特攻、様々なテーマが取り上げられており、一つひとつの作品に、その背景や出来事の全体像が理解できるよう読者の手引きもついています▲戦争が、平和であれば得られたであろう楽しみや歓び・夢を、若者やこどもからどんなに無残に奪ったのか。「こどもたちに二度と戦争の悲しみを繰り返させない」「戦争の現実を伝えたい」の思いが、ひしひしと伝わってきます▲戦闘服の自衛隊員が、戦地さながら、顔を迷彩色に塗り、銃を持って繁華街を行進しています。佐世保の駐屯地で「水陸機動団」編成準備が進んでいます。憲法がないがしろにされ、戦争が遠い昔の話ではなくなりつつあるように思えます▲漫画家たちが描いた戦争は、こどもたちだけでなく、誰にも戦争と平和について考えさせるでしょう。そして今、真剣に考える時です。