トランプ大統領の迷惑

2017・12・10

師走。トランプ大統領が又々大迷惑をしでかしました。エルサレムをイスラエルの首都と認定するのは、国際社会の中東和平の努力をぶち壊し、争乱・戦火を激化させかねない重大事です▲エルサレムは、ユダヤ、キリスト、イスラムの三宗教の聖地。3000年を超える複雑な歴史を持つ地です。ユダヤ人の国家イスラエルの建国は1948年。その過程も複雑です▲中東紛争は、かつて、さる大国が、彼の地に共存したアラブ・ユダヤ双方に建国を約束した二股公約に始まるそうですが、米国の盟友・英国もトランプ発言を厳しく批判しています▲米国にはユダヤ人全体の4割弱が住み、政府への強い影響力を持つともいわれますが、米政府はイスラエルに偏らず、国際社会と協調して、問題の公正な解決に力を尽くすべきです▲トランプ氏、先月来日の折りには「非常に重大なのは日本が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ」とご託宣。迷惑至極▲安倍さんは忠実に従い、自衛隊装備の強化を図っています。F35Aステルス戦闘機は1機114億円、42機の配備を決めています。長距離巡航ミサイル導入の検討も始めています。敵基地攻撃能力を持つことは、憲法に抵触しかねません▲全てアメリカいいなりでは、なんとも情けなく、国際社会での名誉ある地位等、望むべきもない。

消費税でボロもうけ

2017・11・26

明治以降、日本の紙幣に登場した人物は17人、意外と少ない感じです。戦前には神功皇后や日本武尊・武内宿禰などが登場しています。聖徳太子は7種類の紙幣に顔をだします。筆者が初めて手にした千円札も1万円札も聖徳太子でした▲福沢諭吉の1万円札で、百万円の厚みは1センチ。1億円では1b。1兆円だと1万bで富士山の3倍に近い。毎日、百万円を使っても、1兆円を使いきるには、凡そ2700年程もかかります。1兆円の莫大さに改めて驚きです▲16年度、大企業の内部留保は400兆円を超えました。アベノミクスの5年間で、約70兆円を積み増しています。年間利益は2・6倍に。株式配当は7割増しです。こんな数字を挙げて、景気は上々と安倍総理は威張ってみせるけれど、我が家はもちろん、庶民の多くのくらしは青息吐息▲大企業の売り上げは、さしたる伸びはないのに、大企業・大金持ちが莫大な富を増やしたマジックは、大幅な大企業減税と、年金積立金など公金を投入しての株価の吊り上げです▲大企業が増やした利益は、人件費にまわらず、実質賃金は低下しています。加えて年金切り下げ、社会保障費の削減で、国民の消費が伸びず、日本経済を低迷させています▲この大企業減税の原資は消費税。重さ1c、直径2aの1円玉が財布を膨らませ、怒りの声をあげています。

ダークツーリズム

2017・11・5

ボランティアではあるけれど、観光に携わりながら「ダークツーリズム」という言葉を最近まで知らなかったのは汗顔の至りです▲比較的新しい概念で、20年程前に英国の学者が提唱し「戦争や災害などの悲劇をめぐる旅」と定義されているとか。歴史を「影の部分」「負の部分」からたどることで全体像を明らかにする旅ということのようです▲アウシュビッツを始め、世界文化遺産の中には人類の「負の遺産」が幾つも登録されています。しかし、日本人は、自らの栄光は語っても、負の歴史に向かい合うことが苦手(?)なようです▲過日、軍艦島に上陸したという韓国の若いグループと懇談した折に、「日本の近代化」「豊かだった島の暮らし」の説明だけで、強制労働について一言もなく残念だったとの感想がありました▲明治日本の近代化は輝かしい歴史の一側面ですが、炭鉱のそれを支えた一つは、労働者を暴力的に支配した「納屋制度」です。飯場には日韓併合で土地を奪われた朝鮮からの出稼ぎ者も少なくありませんでした。戦時の「強制労働」を含め「影の部分」です▲軍艦島の廃墟は、厳しい炭鉱労働に従事し、従事させられた、国内外の人々のことを想像できる絶好の場所です。過去を学ぶことは、よりよい未来を考える上で大切なことです。そのお手伝いもガイドの役割と心得て。

ICAN(核兵器廃絶キャンぺーン)がノーベル平和賞

2017・10・22

平和事業推進の為に長崎に研修にこられた各地自治体の若手職員の方に、原爆遺跡のガイドをしました。この折りに、僭越かとも思ったけれど、核兵器をめぐる動きについても少しばかり触れました▲今年、核兵器をめぐって様々な出来事がありましが、なによりの喜びは核兵器を違法とする「核兵器禁止条約」が国連総会で採択されたことです。併せて、この為に奮闘してきた国際的なNGOの連合体であるICAN(核兵器廃絶キャンぺーン)がノーベル平和賞を受賞しました▲「被爆者が勇気を持ってつらい経験を生身の声で伝え核廃絶運動を切り開いた」(ICAN国際運営委員・川崎哲氏談)に同感です。12月の授賞式には被爆者が招待され発言の機会が与えられるとも報じられました▲逆流も生まれています。北朝鮮の核実験や米朝の緊張の高まりもその一つです。こうした状況の中で、北朝鮮の脅威を口実に、被爆国政府でありながら安倍政権が、益々、米国に迎合し、核廃絶から後退している事に怒りを禁じ得ません。国際社会からも批判の声が強まっています▲案内した職員の方々は、それぞれの遺構の前でも熱心にメモをとり、話を聞いて下さいました。「建物疎開」の言葉を知らなかった方が多数で、世代の違いを感じましたが、研修の成果が、行政に生かされることを願っています。

政治は変えられるに確信を持って

2017・10・9

「丁寧に説明する」と言い、ついに語らず。国政私物化の「モリ・カケ疑惑隠し」で保身と党利・党略解散をした安倍政権は退場願いたい▲小池劇場を演出、登場した「希望の党」は、その顔ぶれ、選挙公約、いずれも「自・公」を補い希望を託せない▲この党が課した「安保法制容認」を唯々諾々と受け入れ、「市民と野党の共闘」を裏切った民進党の多くの面々。益々、政治不信を募らせた人もいるでしょう▲前回選挙の投票率は53%弱でした。30代では42%、20代では3人に2人が棄権しています。投票率低下は、90年代に始まる政党の離合集散とも関連しているようです。政権党に不満はあるが、常にぶれている野党にも信頼が置けない。「誰がやっても同じ」という諦めもあるのでしょう▲でも、よく見直してみませんか。自公政治に正面から対決してぶれない党。安保法制ノー・消費税増税ノーを貫き、誠実に市民と野党の共同を追求している党。中小業者の願いに寄り添う党の存在を▲「投票しても何も変わらない」と思っている人に問いかけたい。「何もしないのは、9条改憲に、消費税増税に手を貸すことにならないでしょうか」と▲核兵器廃絶、高校生1万人署名の合い言葉「一人ひとりは微力でも決して無力ではない」に学びたい。あなたの一票が、政治を動かすことに確信を持って。

平和の波

2017・9・24

谷口稜嘩さんが亡くなりました。1985年、県連学習会で、谷口さんが語った被爆体験と熱い訴えが、その年に提唱された「ヒロシマ・ナガサキアピール署名」推進の大きな力になったことを忘れません。昨年は「ヒバクシャ国際署名」を呼びかけ「世界的規模の大きな運動をすすめ核廃絶条約を作らせよう」と訴えられました▲この願いと運動は、今年、ついに、核兵器を違法とする国際条約に実りました。9月20日から、条約参加署名が国連始まり、呼応して「平和の波」が取り組まれました▲核兵器廃絶への展望を切り開いてきた被爆者の願いを踏みにじる北朝鮮の挑発的な核実験やミサイル発射に、はらわたが煮えくりかえる思いです。同時に、米・朝の激しい応酬も危険で見過ごせません▲世界が対話を願い「平和の波」行動が世界を回っている中で、安倍総理は国連でトランプ大統領の尻馬に乗り「必要なのは対話ではなく圧力だ」と強調しました。圧力だけでは事態を一層悪化させるだけです▲政府・財界は、北朝鮮問題を軍事力強化・防衛産業振興憲法改悪への千載一遇の機会と捉えているようです。アメリカに追随し、核兵器禁止条約に背を向ける安倍政権には、問題の真の解決努力の意志も能力もなく、内政でも行き詰まっています。国政を私物化する政権にレッドカードを

明治礼賛一辺倒の危惧

2017・9・10

「資本論」が刊行されたのは150年前の9月です。日本では江戸幕府崩壊寸前の頃。坂本龍馬が暗殺され、一方、近代文学に多大な影響を及ぼした夏目漱石や正岡子規が誕生した年でもあります。そして、来年は明治元年から150年です▲政府はその記念施策を「明治以降の歩みを次世代に遺す」「明治の精神を学び更に飛躍する国へ」の二つの方針に沿ってすすめるとしています。出版物やテレビ番組などでも、今後、明治礼賛ものが広がる予感がします▲明治は、日本が非西欧社会の地域で最初に産業革命に挑み、急速に近代化を遂げ、国際社会に躍り出た時代です。各分野の開拓者・偉人も多く輩出しました▲同時に、近代化は、やがて破局を迎えることになった、富国強兵・国民弾圧、海外膨張への道と一体でした。明治礼賛一辺倒で、この陰の部分を覆い隠すことにならねば良いのですが▲欧州列強が植民地を争っていた時代とはいえ、「学問のすすめ」を著し、「天は人の上に人を作らず」と述べた文化人、福沢諭吉でさえ、脱亜入欧の立場から日清戦争の旗振り役を務めました▲この明治以来のアジア蔑視の思想は、いまだに隠然と存在しています。明治・近代化の過度な礼賛や明治回帰思考は、改憲勢力の動きと連動しかねません▲来年の事を言えば鬼が笑うと言うけれど。老婆心ながら。

○○ファーストと差別

2017・8・27

アメリカ・ファーストを掲げたトランプ大統領は、数々の暴言で物議を起こしていますが、今度は白人至上主義団体などの人種差別主義者を擁護する発言で内外から猛抗議を受けています▲悲しい事ですが、狂信的差別主義者は日本国内にもいます。とりわけ、在日朝鮮人に対するいわれなき中傷と差別的攻撃は、ネット上にも溢れています▲「生まれた時から、肌の色や育ち宗教で他人を憎む人などいない。人は憎むことを学ぶのだ。憎しみを学べるなら、愛を教えることもできる。愛は憎しみに比べ、より自然に人間にとどく」はアパルトヘイトと闘ったネルソン・マンデラ氏の言葉です▲都民ファーストが都議選で躍進のあと、全国に○○ファーストを名乗る政治団体が増えているそうです。国政では、小池都知事に連なる議員によって「日本ファースト」なる新党を立ち上げるとか。この議員の主催する政治塾の第1回目の講師は小池知事とのこと▲市民・県民・国民ファーストなら、民が主人公ですが、民を省くと、行政・権力が主役になります。都民ファ―ストが都ファ―ストに成りかねない危惧を抱くのは筆者ばかりでしょうか▲民ではなく国ファーストの大先輩がトランプ氏です。その政策の柱に排外主義があります。差別は多様性の尊重を否定することで、助長されることを知るべきでしょう。

「八月の歌」

2017・8・6

8月15日は終戦記念日です。あれから72年、あのいまわしい戦争の記憶が風化しつつあるように思えます▲日本は、どの国と戦争し、降伏したのかを大学の新入生に問うアンケートで、中国を挙げた生徒は数パーセントしかなかったという記事がありました▲やがて戦争の悲しい体験を語れる人がいなくなる時がきます。その時、私たちは、知らなかったこととすましていいでしょうか▲そんな思いの時、今年9回目を迎えるという平和への思いを詠んだ短歌コンクール「八月の歌」(朝日新聞社主催)に出会いました。一般・中高生の部、合わせて2千首をこえる応募があったそうです。優秀賞10首と奨励賞が紹介されていました▲今年の選者はフランス在住の平和運動家、歌人の美帆シボさんとのこと。彼女は欧州を旅行した時に現地でお世話になり、来日の折には全商連の事務所を訪ねてくださった筆者の旧知の方です▲入選歌の中から。「黒い雨を焼けつく喉で飲みし絵に動かぬ教え子瞳そらさず」「今日もまた戦後の日となれ風薫る海の向こうの爆撃の音」「唇がへの字に震える語り部に甦る八月のあるヒロシマ」「南海の潮の間の駆動音島の悲鳴と私は思う」▲長崎の高校生の歌もありました「ナガサキとヒロシマの地のレガシー三つ目の地をつくるべからず」▲今日の聞き手が明日は語り部を願って。

被爆者の願い・核兵器も憲法改悪も許さない

2017・7・23

七二年目の夏。初めて核兵器を違法とする国際条約が採択されました。大きな喜び、双手をあげての歓迎です▲一方で安倍内閣が、この国際条約には完全に背を向け、同時に、憲法改悪へ突き進んでいることには「怒り心頭に発す」です▲彼らが核抑止に固執し、戦争する国へと画策を続ける以上、我らもまた、繰り返し、しつこく伝えたい▲あの地獄の体験をした被爆者・永井隆博士は述べています。「私たち日本国民は、憲法において戦争をしないことを決めた・・・これこそ、戦争の惨禍に目覚めたほんとうの日本人の声なのだよ」と▲同時に「理屈はなんとでもつき・・・日本人の中から、憲法を改めて戦争放棄の条項を削れ、と叫ぶ者がでないともかぎらない」と喝破しています▲そして「そのときこそ、誠一よ、カヤノよ、たとい最後の二人になっても・・・きっぱりと「戦争絶対反対」を叫び、叫び通しておくれ」とわが子によびかけます(著書・「いとし子よ」)▲共謀罪を成立させ、改憲発議が現実味をおびる今、まさにその時です。誠一さんもカヤノさんも、既に鬼籍にあるけれど、多くの国民がその意志を継ぎ、声をあげています▲核兵器廃絶と憲法改悪を許さないは、被爆者・被爆地長崎の分かちがたい共通の願いです。画期的状況の中で迎える原水爆禁止世界大会。大きく成功させたい。

私はダニエル・ブレイク

2017・7・2

映画「私はダニエル・ブレイク」は英国で起きた事実が基になっています。社会保障に大鉈を振るい「骨太政策」と嘯く安倍政権の面々にぜひ見せてやりたい▲主人公ダニエルはベテランの大工。長年まじめに働いてきたことに誇りをもつ一般市民です。心臓発作で医者から仕事を止められ失業します。福祉事務所では、複雑な手続きと官僚主義の係官に阻まれ、手当を受ける就労不可の認可がおりません▲認可を得る為の彼の悪戦苦闘ぶりが、ユーモラスでさえあるのですが、映画は、社会保障が大きく削られ、現場の職員が余裕を失い、行政が自立の努力をする実直な人間を打ち砕くさまを描きだします。市の担当職員が「生活保護なめんな」のメッセージジャンバーを着て市民を訪問した日本の現状を写しだしたかのようです。▲ダニエルは、自分に助けが必要なのに、困難を抱えるシングルマザーに手をさしのべます。感動の場面ですが、映画は、助け合いの素晴らしさとともに互助に限界があることも明示します▲彼は認可交渉を前に発作で命を失います。葬儀で読み上げられた彼の陳述原稿。「俺は番号ではない、一人の人間だ」映画を締めくくるダニエルの自らの権利の確固たる信念の吐露に思わず拍手し、涙しました▲社会保障制度は、施しではない。国民の権利、国の義務を再確認したい。