週末(22日)は二十四節気の一年の終わり「冬至」です。この日、世界の各地で、春を呼ぶ祭りが行われます。クリスマスも、昔に、この祭りと結びついたのだとか▲「出島」に復元された商館のクリスマス料理の説明に、禁教下に、公然とキリスト教の祝いはできないので、阿蘭陀冬至と呼んで祝ったとあるのも納得です▲洋の東西を問わず、冬至を祝うのは、一年で最も日照時間が短く、翌日からは毎日長くなることに謂れがあります。西欧では、太陽が生まれ変わる日と考えられたようです▲中国や日本では、太陽の力が最も衰えた日で、この日を境に、再び力をよみがえらせる。陰が陽に転ずる「一陽来復」と呼び、運気が上向く縁起の良い日とされました▲上昇の運気にあやかり、「ん」のつく食べ物(人参・大根・蓮根・カボチャ等)を食べる風習があります。カボチャは漢字で南瓜(なんきん)です▲柚子湯に入る風習もあります。元々は禊(みそぎ)だったようですが、柚子は実るまでは長期間かかるので、長年の苦労が実るようにとの願いからとか。これらは、寒い冬を越す為の知恵でもあったのでしょう▲来る年は、まさに闘いの年です。断固勝ち抜く為に、先人の知恵に学んで南瓜を食し、柚子湯につかって英気を養っておこうかな。
1941年12月8日は、日本軍が真珠湾を奇襲、原爆投下に繋がる対米英戦争開始の日です。この時に使用された魚雷は、三菱兵器長崎工場で製作されました▲第四次安倍内閣の柴山文科相が教育勅語を活用する教育を検討に値すると発言。過去にも安倍首相側近の閣僚から同様の発言が相次いでいます▲教育勅語の現代語訳の中には、意図的に「勅語いいじゃない」と思わせるものが少なくありません。読み難いけれど、漢字とカナで300余字です。ぜひ原文を読んで欲しい▲「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」つまり国家の為、天皇の為、命を投げ出せ。ここに中心があります。改憲に執着する面々の頭の中は、共通して戦前回帰の思いで一杯の様です▲12月8日はジョンレノンの命日に重なります。ビートルズを知らない世代でも、12月には流れていたレノンの名曲「ハッピークリスマス」や「イマジン」を一度や二度は聞いたことがあるではないでしょうか▲うろ覚えだけれど、イマジン(想像してごらん)で始まる歌詞は、何かの為に人を殺す理由なんかない。皆が平和を生きること。皆が世界を分ちあうこと等、差別・偏見、憎悪、戦争とは真逆のものでした▲今月もまた平和を考えるに相応しい月です。
トリップアドバイザーが「旅好きが選ぶ日本の美術館・博物館ランキング2018」を発表、博物館の部で、第1位に長崎原爆資料館が選ばれました▲口コミに「日本人として1度は行くべき」「世界の人に見て欲しい」等と共に「平和案内人のガイドが良かった」の書き込みもあった由。案内人の一人として嬉しい限り▲2位は広島平和資料館。核兵器廃絶の世論の高まりが背景にあるのでしょう。一方で安倍政権は、国連での核兵器禁止条約の批准呼びかけ決議に、またもや反対票を投じました。一体どこの国の政府なのか▲美術館の部の1位は豊島美術館(香川)でした。美術館が日本一多いのは(実数・人口比共)長野県、人口比で二位以下は、山梨・石川・島根と比較的小さな県が続きます。因みに長崎は32番目▲かつて山梨県立美術館で、ミレーの「種まく人」や「落穂ひろい」に感動し、島根の足立美術館では素晴らしい庭園の美を堪能したのを思い出しました▲長野のお薦めは、安曇野ちひろ美術館と、とりわけ、戦争で志半ばに命を奪われた画学生達の絵画が展示されている無言館(上田市)▲きっと生きて帰り絵を描きたいと思い続けたであろう彼らが残した命の証に向き合い、戦争と平和、命の重みを考えさせてくれた美術館です。
毎年11月に「税を考える週間」があります。国税庁が、国民に税制や税務行政への理解を求め、納税道義の高揚を図る為に(余計なお世話だけれど)設けています▲日本の税に関する最古の記録は、中国の史書・魏志倭人伝に記述されています。卑弥呼が支配する邪馬台国で税が納められていると▲飛鳥・奈良時代は、租(収穫物の3%)庸(都での労働10日)調(諸国の特産物貢納)。その後、様々な税が設けられましたが、江戸時代まで年貢が主税となります▲明治の地租改正。大正から昭和初期には膨らむ戦費調達の税が次々に。敗戦後の大増税とジープ徴税。ついでシャープ税制が基盤となり、平成元年、天下の悪税・消費税が導入されました▲税は、人類が共同生活を営み、その共同体の安全や運営の為に労務や収穫物を提供しあったのが起源です。やがて、王等の支配者が生まれると、その権力と機構を維持するために、民に、一方的に課税(収奪)するようになります▲民主主義の発展とともに、税の徴収と分配(使途)は、主権者の代表たる議会にその権限が委ねられることになりました▲民主的税制や税務行政のあるべき姿を、この機会に改めて考えてみませんか。全商連の「納税者の権利宣言(五次案)」をテキストにして。
我が家のベランダは西向きゆえ、この時期、月は夜半でないと部屋から見ることはできませんが、心待ちしつつ一杯やるのも楽しみです。今月は栗名月。十三夜の月(21日です)▲暮らしと深く関わってきた月。「満ち欠け」を繰り返す月に、人々は、どんな思いを寄せたのでしょう。一説には、満ち欠けの繰り返すさまに、死んでも生まれ変わる強い生命力を見ていたのではないかと▲月のウサギが杵でついているのはお餅にあらず、不老不死の仙薬です。ウサギは多産の動物。月を観賞するのも「命」への祈りを込めてきたのでしょう▲命に繋がる今年のノーベル医学・生理学賞は、本庶佑さんが選ばれました。会見では、「応用だけでは大きな問題が生じる。基礎研究にもっと資金を出すべき」と▲一昨年に同賞を受賞した大隅良典さんも基礎研究の大切さに触れ、研究を「役に立つかどうか」だけで判断する安倍内閣の政策に強い警鐘を鳴らしていました▲大企業は、アベノミクスの強力な後押しを受け内部留保を増やし続け、経済発展の基礎となる新たな投資(設備投資や賃金引上げ、人材育成等)に背を向け、その結果、技術力や品質の低下が問題になっています▲基礎への投資こそ、学問分野ばかりでなく経済・産業活動にも求められています。
日本の近代化の先達となった長崎人は少なくありません。杉亨二もその一人で、長崎公園の隅に胸像があります。10月18日は「統計の日」。杉亨二は日本の統計・統計学の祖と称されています▲10才で孤児となり上野俊之丞(写真の祖・上野彦馬の父)の店に住込奉公にあがり、その後、蘭学を学び上京、勝海舟の私塾の塾長も務めています▲蘭書翻訳を通して統計学を志し、明治新政府に出仕、我国、最初の総合統計書「日本政表」を作成。官を辞した後も、統計学研究や普及に尽力しました▲今年の統計標語入選作に「次世代へ未来を託す確かな統計」や「統計で知る小さな兆候、大きな展望」等がありました。政治には、一際、統計を正しく読み取る力が要るように思います▲都合の良い統計のみを強調し、不都合な統計には全く触れないのも、政治家としての資質を疑わせます。ましてや一国の総理ならなおのこと▲有効求人倍率の上昇をアベノミクスの成果と手放しの賛美ですが、賃金の安い非正規労働者の比率を増加させただけ。株価は上り大企業・大資産家はもうけを増やしているけれど、国民の家計の実質可処分所得は下がり続けです▲国会論戦では政策の基礎になるデータ改ざんまでありました。こんな誤魔化し政治は御免蒙りたい。
>今月は「印刷月間」。長崎は近代印刷の魁の地です。活版印刷は火薬・羅針盤と共にルネサンス3大発明の一つ。このグーテンベルグ印刷機とその技術は、16世紀末、遣欧少年使節に従いローマに行ったコンスタンチノ・ドラード(諫早市出身・日本名は不明)が持ち帰りました▲印刷機は加津佐を経て天草へ渡り、およそ9年間にキリスト教の教材や辞書、平家物語等を印刷した後、禁教令によって、印刷機も技術者もマカオに追放されました▲明治3年、本木昌造が、金属活字の鋳造に成功。活版伝習所開設など近代活版印刷の基礎を築きます。元々はオランダ通詞。海軍伝習所で学び、日本初の鉄の橋を長崎・中島川に架橋する指揮もしています▲民商草創の頃のニュースはガリ版刷りでした。ロウ引き原紙に鉄筆で文字を書き、謄写版とローラで、一枚一枚、手刷りしたものです。今やパソコンからそのまま印刷機の時代です▲初期の民商には、労働運動での機関紙作りを生かして開業された方など、家族経営の小さな印刷屋さんが沢山いました。時代の流れとはいえ、機械の革新が、熟練の技を不要にし、小規模業者を随分、廃業に追い込みました▲神業のような職人技を見せてくれ、共に活動に汗を流した会員さんの姿を懐かしく想いおこしています。
9月は「長月」ですが、今の季節、陰暦では「葉月」(8月)。木々の「葉が落ちる月」からとも、初雁が来る「初来月」転じて「葉月」とも。稲の穂が張るから「穂張り月」「張り月」「葉月」との説も▲長崎には、大航海時代に南蛮医学が伝わり、江戸時代には出島でオランダ医学を学んだ蘭方医が活躍、西洋医学の道を切り開きました。幕末には医学伝習所や養生所が開設され、近代医学教育の礎が築かれました。長崎大学医学部の源流です▲本欄で、この長崎大学坂本キャンパスに、危険性が最高度に高い病原体の研究拠点施設・BSL4(バイオセーフティレベル4)の設置方針に疑問を呈したのは2年近くも前のことです▲現在国内では唯一、国立感染病研究所がBSL4の稼働施設ですが、感染の疑いのある患者の検査のみで細菌の研究はされていません。長崎大学は文字どおり国内初の研究施設を目指します▲歴史にふさわしく医学の最先端を担うことは大いに結構だけれど、問題は、その設置場所が人口密集地の中にあることです。万が一、病原体が施設外に漏れたらとの地域住民の疑念は当然です▲大学側は「限りなくリスク零を目指すので安全」と繰り返すばかりですが、かの原発と同じように虚構の「安全神話」ほど怖い物はありません。
オール沖縄の先頭にたっていた翁長知事の訃報が伝えられました。深い敬意と哀悼の意を表します▲その後に開催された沖縄県民大会には7万人が参加。翁長氏の志を継ぎ、辺野古新基地建設を断念させようの新たな決意を固めあいました。「命にかかわる」の形容詞がついた猛暑の夏に、猛暑に負けぬ熱き思いで頑張っている人々に心からのエールを送ります▲長崎原爆の日、平和式典に国連事務総長が初めて参加しました。市長・事務総長・被爆者代表が揃って「核兵器禁止条約」への賛同を求める中、唯一被爆国の総理だけが空疎な挨拶で、この条約に背を向ける姿は醜悪そのものでした▲同年・同月の生まれだからというわけではないけれど、筆者は生粋のサユリスト。その吉永小百合さんは、1986年以来、32年間、原爆詩の朗読を続け、平和と核兵器廃絶を訴えています▲最近のトークでは「日本政府の偉い方たちは、アメリカの傘の下にいるのが安全だとおっしゃって条約に参加しようとなさらない。それはとても悲しいことで、被爆者がどんなにつらい思いをしていらっしゃるか」と▲蛙の面に○○ならぬ安倍晋三の面に○○ではあっても、総理にあえて伝えたい。この声を聴け。そして、驕る平家は久しからずと。
商工新聞連載の「地名のルーツを追って」が楽しみです。ゆかりのある地名に出会うと、一層、嬉しくなります。長崎に来た友人が「女の都」(めのと)の地名を珍しいというので、筆者なりにルーツを探ってみました▲団地造成の折に生まれた町名で、川平郷・女の都平から取ったとのこと。江戸中期には「乳母」と表記されています。「老婆の懐」とよんだ地形に因むとありましたが、つながりが判然としません。「おんなのみやこ」とも読め、敗れた平家の女官が落のびて住み着いたことからという落人伝説も▲西彼半島の外海には「子捨川」と呼ばれている所があります。キリスト教禁令時代、この地では、藩命により長男以外は間引きされ、親が児を投げ捨てた場所とか。悲惨な歴史を今に伝えています▲近くの浜は、潜伏切支丹が五島へと船出した場所です。この外海の2地区を含む「潜伏キリシタン関連遺産」が県内2例目の世界文化遺産に登録されました▲これらに含まれる教会は、どれも外国の絢爛さも豪華さもありませんが、命、信教の自由、人権、お互いを認め合う寛容さ、平和等を改めて考えさせる場所のように思えます▲観光資源の役割も担うことになります。信仰との兼ね合いも必要でしょう。ともあれ、世界遺産登録にまず祝意を。
サッカーワールドカップ・ロシア大会。日本は決勝Tで強豪ベルギー相手に好試合を見せました。大健闘を称えたい。それだけに、1次リーグ最終戦が口惜しい▲決勝T進出の手段と肯定する向きもあるけれど、あのパス回しは、全力を尽くすスポーツ本来の精神・フェアプレーの精神を明らかに欠いていいると思うけど▲開催国・ロシアの首都がペテルブルグからモスクワへ移ったのは100年前、レーニン率いるロシア革命の翌年のことです▲ソ連時代のモスクワ・レニングラード(現サントペテルブルグ)、キエフ(現ウクライナ首都)の3都市を旅したのはもう40年程前のことですが、その印象は今も鮮やかです▲ゴーリキーやトルストイの世界を感じ、ロシアの伝統的な文化・芸術に触れた感動。断然に充実した社会保障への羨望。革命の号砲を放ったオーロラ号乗船の感激等々▲スターリン以降の指導者の犯罪的な過ちでソ連は崩壊したけれど、ロシア革命が、今に至る世界の社会保障制度や労働者の権利擁護、民族の自決権等に与えた影響は図り知れません▲W杯を深夜に観戦し終え、テレビの隣に飾ってある、あの折、土産に求めたマトリョーシカ(入れ子人形)を眺めて思う。真に国民主人公の社会をと。まずは安倍内閣にレッドカードから。