天安門

2019・6・16

6月の忌まわしい記憶に、30年前の中国「天安門事件」があります。民主化を求める市民や学生に、軍隊を出動、多数の死傷者をだした事件です▲東京都議選の最中で直後に参議院選挙が控えていました。4月には消費税が導入され、国民の怒りは、一貫して導入反対の先頭にたってきた政党への大きな期待として広がっていました▲ところがこの事件を境に、その期待は、潮が引くように一気に失われていきました。中国と日本共産党は同根という、当時の根深い誤解と偏見が底流にあってのことでした▲偏見は誰にも最初からあるわけではありません。様々な差別等も、社会生活の中で作られていくものです。とりわけ権力者の側がその力を保持する為の、嘘を並べ立てての執拗な煽りや、応援団を軽視することはできません▲映画「空母いぶき」は日本に侵攻してきた某国に自衛隊や日本政府がどう対処するかを描きます。仮想の敵をつくり、恐怖を煽り、自衛隊を憲法に書き込もうとする安倍内閣の意図に完全に沿ったものでした▲映画を見終えて「空母化」する護衛艦「かが」にトランプ大統領を乗船させ、媚びを売っていた安倍総理の姿を思い出しました▲参議院選挙本番「嘘や忖度政治、消費税増税も憲法改悪も許さないぞ」の審判を。

末永敏事がこと

2019・5・16

図書館の郷土資料で、末永敏事を知りました。資料によれば、彼は、南高来郡北有馬村今福(現南島原市)に生まれ長崎医学専門学校を卒業、渡米し結核の研究で幾つもの論文を発表。帰国後に京大で博士号を取得。地元紙(大島原新聞)が村の誇りと紹介したほどの医師でした▲彼は、1938年、国民総動員令に基づく「医療従事者職業能力申告令」への回答に医術を戦争に使わないとの信念で「拙者が反戦主義者なること及び軍務を拒絶する旨通告申し上げます」と記述。逮捕・投獄され、晩年や亡くなった地などの詳細は不明です▲違憲の戦争法(安保法制)が施行されて3年、米軍「防護」活動が急増し、いつ「平時が戦時に」変ってもおかしくない程、日米の軍事一体化が加速していますが、核心である自衛隊を米軍主導の先制攻撃戦争に参加させる事には、憲法9条の厚い壁があります▲安倍総理が来る参議院選挙で「改憲の是非を問う」と語り、改憲に執念を燃やすのは、まさにこの制約を断ち切り、自衛隊の無制限な武力行使を可能にさせるために他なりません▲かつて戦争反対を口にするのは命をかけての事でした。あの時代を生きた末永敏事の気骨と覚悟を思い、自由に意思を表明出来る今、力一杯の声で改憲ノーを訴えたい。

元号と天皇

2019・4・14

新しい元号は「令和」。典拠が万葉集の「梅花の歌三十二首」の序文ということから、太宰府天満宮を訪れる観光客が急増しているとのこと。梅花の歌三十二首は太宰府の大伴旅人の館で開催された「梅花の宴」で詠まれたそうです▲元号は皇帝が権威を示す為に中国で始まり、朝鮮王朝や日本皇室も漢字文化圏の盟主国を真似るようになりましたが、今日まで使用しているのは唯一日本だけです▲元号を伝統文化の一つと捉える見方もあるでしょう。それ故、元号フィーバーに目くじらを立てる心算はないけれど、それが天皇制と不可分であることは忘れてはならないことです▲少し前の毎日新聞世論調査では象徴天皇としての役割を「十分」「ある程度」果たしているとの回答が87%ありました。マスコミの影響もあって天皇一家は国民に好意的に受け止められているようです▲個人的には特定の家系が尊く別格な存在ということに同意できませんが、天皇制を支持する方も憲法上の天皇の地位と権能が厳格に守られる必要があることに異論はないでしょう▲気を付けなければいけないのは、昨今、天皇の政治的発言を助長する動きがあることです。暫くは天皇の「代替わり」に関わる儀式や行事が続きます。皇室行事のあり方も含め主権者の立場からしっかり見ていきたいものです。

アッシイたちの街>

2019・3・31

思い切って断捨離の実行をと始めてはみたものの、ガラクタのように詰め込んでいたバッチ一つにも思い出が甦り、なかなかに捨て難いものです▲そんな作業の中で、山本薩夫監督最晩年の作品「アッシイたちの街」の制作協力券を見つけました。脚本は山内久。出演者は古谷一行・江藤潤・奥田瑛二・三国蓮太郎・乙羽信子・浅茅陽子・友里千賀子等、錚々たるメンバーです。全商連史に出てくる、税金滞納で腕にはめた時計を差し押さえられているシーンもありました▲アッシイ(機械部品のこと)の下請けをする町工場の若い経営者を主人公に、中小業者の仕事・くらし・思いを描き、部品一つ一つバラバラでは役立たなくとも「集まることで大きな力に」のメッセージがありました▲この映画は1981年、全商連創立30周年の記念事業の一環で、制作協力券の普及と上映運動が取り組まれました。県下の上映は、当時、共同映画の学校上映等を行っていた佐世保民商の木下久仁信(故人)さんに力添えをいただきました▲木下さんは20代の頃には青年運動のリーダーでした。長商連共済会理事長も務められ、自らの体験から共済会の素晴らしさを手記に残してくださいました。改めて民商運動が、様々な方たちの集まりで、その力を発揮してきたことを思いおこしています。

統計改ざん

2019・3・17

本欄で日本の統計学の祖、本県出身の杉亨二を紹介し、政治家、とりわけ安倍首相に、統計を正しく読み取る力量を求めたのは、昨年の「統計月間」(10月)でした▲その折、月間標語の入選作「次世代へ未来を託す確かな統計」や「統計で知る小さな兆候、大きな展望」もあわせて触れ、統計の大切さと共に結果の恣意的な選択を許さないとも述べたのですが▲今国会は、あろうことか、政策の根幹にかかわるこの統計そのものの改ざん、インチキが問題になりました。「毎月勤労統計」の不正・偽装は雇用保険や労災保険給付額を減らすなど、国民に実質被害を与えました▲安倍政権は2012年末から経済の拡大が続き戦後最長を記録と宣伝していますが(庶民には実感できないけれど)統計不正は「好景気」「給料が上がった」とのイメージを作り出す安倍政権への忖度さえ疑われています▲その反映でしょうか、今年の標語募集には「不景気も統計一つで好景気」「統計は答えを先に決めてから」「統計は今や出世の一里塚」「」お上から鶴の一声好景気」等の皮肉が寄せられているそうです▲国民の信頼がすっかり薄れた政府経済統計でも、景気動向指数はマイナスです。予算案の根本的見直しが必要です。いよいよ選挙本番。「消費税増税ノー」の声を地方から示そうではありませんか。

血税運動記念碑

2019・3・3

「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する、天草の崎津集落へ行ってきました。趣ある小さな集落の中に建つ教会は、かつては庄屋の役宅で祭壇は絵踏みが行われた所とのこと▲神社は、潜伏キリシタンが氏子を装い拝礼した場所。「天草崩れ」の舞台でもあり、異仏取り調べの為に信心具を境内設置の箱に捨てさせたと伝わっています▲境内で「血税運動記念碑」を見つけました。碑文には「この境内から生活と人権を守る血税運動を起こした人々の名誉を回復し、平和と安定を望むその歴史を後世に正しく伝えんがため」(要約)とありました▲血税は「血の滲むような苦労をして納めた税。または、過酷な税」のこと。安倍首相の米国製兵器爆買いに「血税の無駄使いの最たるもの」等とも使います▲血税の元の意味は兵役です。血税運動は、明治6年の「徴兵令」に反対して起きた農民一揆。布告に血税の文字があり、本当に生き血を抜かれると誤解したといわれていますが、一揆は新政府が次々に打ち出す新たな農民の負担、貢租に対する不満の爆発です▲安倍首相は憲法9条改定理由に、自衛隊募集に自治体の協力拒否を挙げました。自治体を従わせ新たな徴兵に道を拓こうというのでしょうか▲徴兵制であれ、酷税(消費税増税)であれ、血税は許しません。

遣欧少年使節

2019・2・17

2月の出来事。今回は遠い昔を選びました。天正遣欧少年使節がローマに向け長崎を船出したのは、1582年2月20日のことです▲使節は有馬(南島原市)のセミナリヨ第1期生から選ばれた、伊東マンショ(宮崎県西都市出身)、千々石ミゲル(雲仙市)原マルチノ(波佐見町)中浦ジュリアン(西海市)です▲彼らは訪問した各地で大歓迎を受け、ローマ教皇にも謁見を果たします。しかし帰国後は、切支丹禁令下で棘の道を歩みます。1597年2月5日には、秀吉の政権下、宣教師や信徒26人が長崎の西坂で処刑されています▲時移り、初めて教皇(ヨハネ・パウロ2世)が来日したのは1981年のことです。長崎でのミサは、やはり2月の雪降る極寒の日でした。教皇は「原爆投下は神の試練ではない、人間の仕業」であると述べられたと記憶しています▲フランシスコ現教皇が今年中の訪日と、その折、広島・長崎訪問を希望していると伝えられました。教皇は「焼き場に立つ少年」の写真をカードにして配布するなど、核兵器廃絶に大きな関心と意欲を示している方です▲信徒ならずとも、世界遺産に登録された潜伏キリシタン関連遺産を有し、カトリックと深い関わりを持つ長崎の地から、ぜひ核兵器廃絶の熱いメッセージを発して欲しいと強く願うものです。

朝鮮通信使

2019・2・3

ユネスコの3大遺産事業の一つに、「世界の記憶」があります。ベートーヴェン直筆の交響曲九番の楽譜やフランス人権宣言原本、アンネの日記等が登録されています▲日本からは、山本作兵衛の炭鉱記録画と文章やシベリヤ抑留者の引き揚げの記録など七件が登録されています▲「17世紀から19世紀の日韓の平和構築と文化交流の歴史」として、江戸時代に12回、日本に訪れた朝鮮王朝の外交使節団、朝鮮通信使に関する記録も一つです▲この記録は日韓両国に残る333点の資料からなっています。登録申請は両国が共同であたりました。登録は「人類の平和的な共存と交流を追求するもの」として、その普遍的価値が認定されてことです▲通信使には秀吉の朝鮮出兵(朝鮮側では、壬辰・丁酉倭乱と言います)後の憎悪を解き両国の平和を構築してきた歴史的経験と知恵が込められています▲昨今、慰安婦問題や徴用工訴訟問題、レーザー照射等を巡って日韓関係の悪化が取り沙汰されています。ネット上には、韓国側を口汚く罵倒する記事が溢れています。事の是非を置いて、そこには相手を理解しようとする片鱗すらありません▲朝鮮通信使を通して築いた、対等な関係で相手を尊重する「誠信交隣」の立場で、共存・平和・有好・協力の精神を学んで欲しいものです。

消費税とともに始まった平成は

2019・1・8

年末から新年にかけて「平成最後の○○」のフレーズが飛び交っています。平成の30年間は、読者の皆さんにとってどんな時代だったのでしょうか▲私的にはポケベルが携帯電話やスマホに、手書き原稿からワープロ、パソコンに、インターネット。ITやSNSについていくのに悪戦苦闘というのもその一つです▲前号では「貧困と格差の拡大」を特徴にあげましたが、平成と共に始まった消費税が、営業とくらしに大きな影響と変化をもたらした時代とも言っても過言ではないでしょう▲政党の離合集散(どんな党が存在したか記憶出来ないほど)が繰り返され、政治を劣化させてきたのも特徴です。最大の要因は小選挙区制と政党助成金の導入です▲「濡れ手に粟」で政党助成金を受け取り、解散した党は32にのぼります。共産党以外の党が受け取り、一方で企業・団体献金が温存され、政治家と金の問題は後を絶ちません▲小選挙区は、政権交代が可能な二大政党制を目指すと導入されましたが、多様な民意を切り捨て、曲折はありましたが結局、安倍1強の暴走政治を作り出しました▲その暴走政治が行き詰まっています。様々な分野の粘り強い運動が追い詰めつつあります。今こそ転換の時、市民と野党の大同団結でさらなる追撃を。

年のはじめに

2019・正月

謹賀新年。今年が良い年でありますように。昨年の世相を表す一字が「災」であっただけに、なおのこと▲その上で、「めでたさも中くらいなりおらが春」(一茶)や「正月や冥途の旅の一里塚、めでたくもあり、めでたくもなし」(一休)に共感を覚えるのは年齢のせいでしょうか▲5月には天皇譲位で改元があります。元号は「王・君主が空間と共に時間をも支配する」という考えから、中国前漢の時代に始まりました。現在、元号を使用する国は日本だけです▲1945年、国民主権の立場から明治以来の旧法を廃止、昭和は、慣習的使用になりましたが、1979年に元号法が成立。法的根拠を復活させました▲元号で時代を区切るつもりはないけれど、平成30年間の特徴は「貧困と格差の拡大」のように思えます。今年を、平成の特徴からの転換を図る初年度にしたいものです。改憲、消費税増税、社会保障破壊に突き進む安倍自公政治を終焉させるのはその第1歩でしょう▲春の運動は、その第1ラウンドです。続いて4月の統一地方選挙、夏の参議院選挙と連打のチャンスが控えています▲昨年の新語・流行語大賞の言葉を借りて、「ボーっと生きてんじゃねーよ」なんて言わせない、「半端ないって」の頑張りで消費税増税を絶対にやめさせるぞ。大いに「そだねー」