DDS VFOキットの製作
2000年8月 7L4WVU
最近仕事がQRLですが、少しでも時間があると自作トランシーバを使ってDX通信をやっています。自作機は調子はまあまあですが、故障もしないので半田ゴテを握る機会がありませんでした。今回、DDS(Direct Digital Synthesizer)基板を入手、久しぶりに自作をしましたので簡単に製作記をご紹介させて頂きます。
1.自作ミーティングにて
7月23日 埼玉県和光市で年2回実施される自作仲間とのミーティングに出席した。参加者は十数名、メンバーの固定化と参加者の減少が感じられずにはいられない。僕も最近は出張等が重なって参加できないことが多く2年ぶりの出席だ。本ミーティングは、各自の自作品を持ち寄っての自慢大会なのであるが皆さん多忙のようで手ぶらの人も多い。もちろん、僕も手ぶらだ。
ミーティングでJR1EOP岩本さんが設計したDDS VFOを紹介された。岩本さんは、昔からの自作マニアで特にオーディオにこだわっている。オーディオマニア特有のこだわりでコンデンサは1個数百円するようなxx社でないとダメとか、特性についてはIMDや位相雑音に踏み込んで言及される。日頃、リサイクルを心がけ手持ちの部品を何とか使えないかと、部品はジャンクしか使わない僕には、なかなか理解できない。
また、彼は板橋スタンダード(誰も知らないと思うが、昔、全国の自作家の間で流行した熊本スタンダードの対抗版)の開発者である。この板橋スタンダードは、我々自作グループに基板が領布され、多くの自作の腕自慢が挑戦したが、一度で動作したということを聞いたことがない。この回路は、PSN(Phase Shift Network)のメリゴ方式(昔のハムジャーナルで紹介されたメリーゴーランドからヒントを得たPSNの定番回路)、オーディオで利得の殆どを稼ぎ出すという代物で低雑音受信機ということで評判は高かった。しかし、部品の選定が難しく、デバイス、コンデンサともに定数を守るのが鉄則で、代替え品を使うと発振したり動作しなかったりした。そのためか、雑誌に紹介され基板も大量に作ったがあまり普及しなかったということである。
2.DDSについて
DDSについては今ではメーカ製のトランシーバに当たり前のように使われているものだが、ごく最近普及し始めたものだ。しかし、20年位前に自作記事がQSTに紹介されていた。当時僕は、流行の3SK22GRを使用したVFOの温度補償に熱中していて周波数ドリフトをどうやったら押さえられるか連日実験していた頃で、DDSの周波数が数kHzであったがDA(デジタル→アナログ)変換で直接キャリアを発生させる斬新なアイデアに驚いたことを覚えている。
DDSの良いところは、周波数が安定しており、位相雑音が少ない。また応答速度が速いため1Hz単位で周波数を高速でシフトでき利点が多い。PLL(Phase Lock Loop)と比較すると消費電力で劣る位しか考えられない。そんな訳で前からDDSを作ってみたいと思っていたのだが、とにかく制御するにはソフトの知識が必要で、僕にはなかなか手が出なかった。
岩本さんのDDSユニットは既に設計が完了されており基板も領布されていたので1枚分けてもらうことにした。PICやDA変換ICもおまけでついていたので、ますます作る意欲が出てきた。
3.製作
製作は、プログラム書き込み済みのPICが付属していたので、ハードの組立のみ。秋葉原で部品を購入(約2k\)して土曜日の午後から製作を開始した。最初の困難は、DA変換のICの半田付け。表面実装タイプのICの半田付けは初体験、20Wの半田ごてでつけるとICの足が4本くらい一度にブリッジしてしまった。次にPICのソケットの実装で足が40本もあるのでなかなかうまく入らず、ピンが何度も曲がってしまった。ここら辺で入れないと足が折れそうだと思った時にうまくいった。その後は順調であったが、いつものように熱中してしまい一晩徹夜して日曜の昼に完成した(写真1は完成した基板、写真2の右下のシャーシに実装)。早速、電源を入れてみると、一発で安定に発振、スイッチをいろいろ動作させてみたが予定通りの動作をしてくれているようだ。
しかし、実際に運用状態にしてみると、@時々周波数が勝手にダウンして止まらなくなる、A100Wで送信すると発振がいきなり停止してハングアップする等の不具合があった。調べてみると@は回路図にある部品が基板に取り付けるところがなく未実装、Aはパスコン1個で500Wでも誤動作しなくなり、ようやく完成となった。
(写真1 DDS基板。左がDA部)
(写真2 右下のシャーシにDDSを実装。ダイアルはバーニアを加工してロータリーエンコーダを内蔵した)
4.特性
さっそく、14MHzをワッチしてみると、これまでよりバンドが静かになったようだ。近接スプリアスが減ったおかげで15MHzの放送バンドのイメージ混信が大幅に改善されている。11MHzを発振させ、スペアナで測定した波形を写真3に示すが、2倍の高調波で-60dB以上減衰しており近接スプリアスは殆どないことが分かる。ここで56MHz、67MHz、78MHzのスプリアスは、67MHzは基準発振の通り抜けで、その上下は発振周波数と基準発振の相互変調波であり、演算で発生しない部分の漏れはなく素晴らしいの一言。
また、自作トランシーバの機能も大幅に向上した。これまで無かった周波数メモリ(VFO A/B切替えが15ch分)ができるようになった他、素早いスプリット周波数設定等改善された。これで、またまたDXが楽しめそうだ。最後に本機の仕様は以下の通り。基板は有限会社サイラボから領布予定がありますので興味のある方は小生まで連絡願います。
(写真3 本DDSの11MHz発振時の出力特性。2倍の高調波が-60dBと良好。スケールは横10MHz/div。縦10dBm/div。)
(電気特性)
・ 安定度: +/-100ppm以下
・ 位相雑音:10.24MHz +/-1kHzにて-130dB以下
・ 分解能: 1Hz
・ 周波数帯:10Hzから22MHzまで