オール自作装置での開局
府中アマチュア無線クラブ会報から
7L4WVU (1997年8月)
今年3月に新しいコールサインで自作装置のみで200W局を開局した。僕は20年以上運用している3エリアのコールサインも持っているので2万円近く払って開局する必要もなかったのだが、次のような理由があった。まず、上京以来、府中市、多摩市、新座市と14年間アパマンハムであったが、昨年ようやく狭いながらも清瀬市に一戸建てを購入したことで固定局でハイパワー合法運用がしたくなった。どうせやるなら、自作装置のみで全市、全郡、そして全カントリ交信を目標にしようと考えた。昔JA1AEAやJA1BRSが「アワードは自作装置で完成してこそ意義がある。」なんてCQ誌に書いていたことも心の隅にあったようだ。
装置の構成
僕の装置の自慢は、大型であること。何しろ現在市販されている高級HF機よりかなり大きいシャーシを使用している。このシャーシが4台もある。つまり、それぞれ50MHz送信機、受信機、外部VFO、そしてトランスバータを構成している。これで1.9MHzから430MHzの12バンド(WARCバンド含む)トランシーバとなる。外観は、アルミパネルにバーニアダイアルという戦前、戦後のOTさんが見れば涙がでるのではないかというレトロ装置だが、反則をして周波数はデジタル表示だ。しかし、そのアンバランスさが何とも言えず、いい味をだしている。これまで何台も作ってきたが、このデザインは気に入っている。
受信部は、基本性能とアクセサリに重点を置いて設計した。構成は、単純なスーパヘテロダインであるが、フロントエンドはJRCの業務用受信機と同じ回路を、フィルタにはコリンズ製のメカフィル、水晶フィルタを主として計15個も実装されておりバンド幅は6kHz、4.2kHz、2.4kHz、500Hz、250Hzを選択できる。当然、IFシフト、パスバンドチューンも自作した。また、その他にもOPアンプでピーク、ノッチフィルタ(自動追従型)も内蔵したのでDSPには負けるかも知れないが混信除去としては満足している。受信部は2回路内蔵し最近流行のデュアルワッチも可能であり、普通の運用では、左耳で14MHzCWを右耳で14SSBや21、50MHzを同時ワッチしている。
ノイズについては、当地のようにJR線、高速道路のすぐ近くで高圧電源ノイズ等、特殊なノイズ成分が氾濫している場所では、メーカ製品のようにルーフィングフィルタ後でノイズ成分を検出する方式ではノイズ波形がなまってしまうので全く効果がない。したがってミキサ出力のワイドバンド部にて検出している。同時に混変調の問題が発生するが、第2受信アンテナによる位相反転方式のノイズレデューサ回路を組み込んだ。これにより近接ローカル局のみ受信レベルを落とし混変調から逃げることができる。
送信は、4.4kHz幅のCB用の水晶フィルタを使用した。これは帯域が広い分音よい。しかし、このままSSBで使用すると問題があるので7段のオーディオフィルタで3kHz以上をカットしている。したがって、交信しているとよくFBな音と言われ気をよくしている。しかし、交信相手でこのカラクリを指摘した局が今まで1局いた(JRCの受信機でフィルタを何度も切替えて分析したという)のでアマチュア界も恐ろしい人がいるものだ。
50MHzエキサイターの電力増幅部は全てMOS-FETを使用、ドレイン電圧はスイッチング電源で安定化されたDC80V(メーカ製品はせいぜい24V)を供給しているので低歪みである。 HF、および50MHzの終段は、ジェット戦闘機の通信機に使用されていた4X150D(ヒータ電圧26V)を並列運転して200Wを得る設計となっている。この真空管は、名前の通り1本あたりのプレート損失が150Wであるのだが、後期モデルは基部がガラスからセラミックに変更されており、1本で250W損失となっている。しかし、そんなことはJARDや電監は知っている訳がないので、だまって申請したところ指摘事項なしで免許が下りてしまった(通常プレート損失250W真空管の並列500W構成では200Wの認定は受けられないはず)。なお、このアンプはGK動作でエキサイタからのわずか1Wのドライブで最大700Wの出力(もちろん通常運用は200W)が得られ、業務機仕様のローパスフィルタと組み合わせて使用しスプリアスレベル(30MHz以上)は実測で-80dB確保されておりインターフェアも発生していない。
製作期間、費用
製作期間は約5年間。といっても1年の約1/4は出張で日本にいなかったし、この間、結婚や子供が生まれたりといろんなことがあって多忙だったのでいいペースだったのかも知れない。自作仲間からみれば、驚異のペースと言うが、職業がら回路図は全て頭の中に入っているのと、プリントパターンを作らずに全てを空中配線で組み立てたので時間が節約できた。実際、毎日深夜帰宅後に1時間、日曜日に子供の相手をしながら半田ゴテを握った程度である。回路はもっぱら通勤電車の中で考えた。費用については、部品の大半をジャンク活用したが、高級な部品も結構購入した。また、工具や測定器(スペアナ、トラジェネ、オシロ、カウンタ他)を入手したことと、自作に費やした時間を計算すれば、BMWの1台位は買えたのではなかろうか。しかし、製作を通して、多くの自作友達ができ、特許となるアイデアも何件か考えついたので損をしたとは思っていない。
おわりに
アンテナはHF3エレ、50MHzが6エレで、開局3ヶ月で早くも1000局と交信した。JCC300市、DXCC100カントリと交信し、メーカ製品を使用している方々と大差なく運用できている。DX交信では、まだ自作友達はできないが、14MHzSSBでサウジの皇太子とアラビア語で交信できたり、ニュースでも報道された領有問題のスカボロリーフ、スプラトリー、または旧政権が滅びたザイールなんかとも交信でき感激した。自作装置での交信は感激をさらに増幅してくれる。皆さんも忙しい毎日を過ごされていると思いますが、時間を作って自作されることをお奨めする。最近は、DXとの交信が楽しくて半田ゴテを握ってないが、DSPのデモ用ユニットをテキサス社から購入したのでフィルタ、P S Nの実験も行う予定だ。また、4CX1000Aも机の下にころがってるので、今年中に自作して1kW免許申請したいと思っている。