prologue  [ 始原 ]

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ……? ここどこだ……?」

 

見たことない天井だな……。

 

…………。

 

……。

 

あれ……?

 

この天井……知ってる……?

 

なんだ? 意味わかんねぇ……。

 

冷静になれ! おれの名前は…………シンジだよな。

 

……うん。間違いない。

 

で、……なんで名前確認してるんだ? む……そうそう……なんか記憶があいまいなんだ。

 

でだ……おれは……。

 

「……っ! ――なんでここに居るんだ!」

 

おれは周りを見渡して、確信した。

 

 

 

 

 

――ここは、ミサトさんの家だ。

 

 

 

 

 

「……ふむ。なぜおれはここにいるのか……だな」

 

ミサトさん……中学生のころおれの担任の教師だった人。

 

とてもよくしてくれて、何度かアスカと一緒に家にお邪魔したこともあった。

 

まぁ、おれの両親と……というか母さんと仲がよかったから、大変世話になった。

 

でも、本当に世話になったのはその後だ。

 

おれの両親が亡くなった。

 

お隣の幼馴染だったアスカは中学卒業後海外へ行ってしまい、親たちは親戚と縁を切っていたため、ミサトさんが当たり前のようにおれを引き取ってくれた。

 

んで、いまおれが目を覚ましたこの部屋が、当時のおれの部屋なわけだ。

 

ただ、高校卒業したころに、おれはこの家を出たんだ。

 

ミサトさんも亡くなったからだ。

 

とても悲しかったのを覚えている。

 

胸が張り裂ける思いだった。

 

ミサトさんが婚約し、幸せになるって直後だったのに、事故で亡くなった。

 

そう、それからもう二十年近く経ってる。

 

認めたくはないが、おじさんと呼ばれても……いや! それは断固して拒否しよう。

 

見た目はまだまだ二十代だ! 薄暗い場所では、二十台前半でも誤魔化せれる! うん……悲しくなってきたな。

 

実際は三十六っちゅうわけ……しかも、未婚だ。

 

アスカとは結婚の約束はしたんだが、殺されちまった。

 

ぶっちゃけると、おれの親……裏関係に命をねらわれてた。

 

で、アスカはその犠牲者になっちまったってわけ。

 

しかも、おれの目の前だったからなー……。

 

あとでわかったことだが、俺の両親も殺されたっぽい。

 

実際、そんなの知らずにアスカを巻き込んで、守れなくて、おれ以上に不幸なやついないんじゃね? とか考えてた時期もあった。

 

おれも命狙われてたからな……。

 

アスカに見合う男になりたいって理由から、身体鍛えに鍛えてたおかげで、おれは生きのびることが出来たと思う。

 

だからこそ、守れなかったことを悔やんだ。あれでおれ壊れたんだよな。

 

記憶がほとんど無くなったんだよな。

 

まあ、今は少しだけ思い出したけど……。

 

ただ、あの時、アスカを失った時の憎しみは消えることは無かった。

 

おれは、その原因である両親を最初に憎んだんだ。

 

両親の裏側……それは簡単に言うと殺し屋だ。

 

特に母さんは碇家……まあ金持ち一家の一人娘で、裏社会のドン的存在。

 

何でも屋といえば聞こえはいいが、主に殺しメインの仕事を引き受ける組織だった。

 

ちなみに母さんは跡継ぎだった。

 

だが、両親はそこから逃げたんだ。

 

理由までは知らん。もう殺しをしたくなかったのか、それとも結婚反対されて駆け落ちしたのか。

 

そんなわけで、裏切り者の息子であるおれまで命を狙われてるってわけだ。

 

つか、普通逃げただけで、ここまでされるものなのか?

 

両親が殺され、そして、なぜアスカまで……。

 

おれは、逃げながらも復讐を考えたんだ。

 

その後は、人をたくさん殺した……。

 

ちなみに、銃の扱い方や殺し方は、すべて加持さんに学んだ。

 

加持さんってのは、ミサトさんの婚約者だった人ね。

 

昔両親が組織にいたころに知り合った、傭兵さんらしい。そのせいもあって両親とミサトさんも仲良くなったわけ。

 

うむ。振り返ってみると、なんだか、すっごく疲れた人生だった。

 

というわけで、おれは…………。

 

 

 

「……殺されたとおもったんだがな」

 

 

 

そうだ、殺された記憶がある。

 

最後はあっけなかった。

 

まさか、あんな小さな女の子が組織に所属していた殺し屋だと思わなかったからさ。

 

簡単に殺されたよ。

 

銃で腹と頭をズドンだ。

 

なのに、おれは生きている?

 

 

「あ! 夢?」

 

 

いやいや、こんな現実感たっぷりな夢なんて考えられない。

 

 

「あ! 天国?」

 

 

いやいや、絶対地獄行きだって!

 

 

「…………」

 

 

ということは……

 

 

「……どういうことさ……」

 

 

 

 

 

まあ、とりあえず起きるか……。

 

部屋を出た。

 

 

…………。

 

 

…………。

 

 

……あれ?

 

 

 

「あ、シンちゃんおはよー。随分ぐっすりだったようね」

 

「…………」

 

「……ん? どったの?」

 

「…………」

 

「おーい、シンちゃーん」

 

 

 

「……お前は誰だぁー!!」

 

 

「うわあっ!」

 

 

 

 

部屋を出たら、それは……忘れもしない、懐かしいあの人……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミサトさんがいた……。