第一章
第1話 [ 覚悟 ]
「えっと……ミサトさんなんでしょうか?」
「いや、どこをどうみても私でしょ?」
「……いやいや! だって……えー? これ……ミサトさん?」
「これって……シンちゃん……どうかしちゃったの?」
「だって、若いままだし!」
「ま! 若いだなんて! そうよねー、私だってまだまだいけるわよねー」
「いや、そうじゃなくて、十八年だぜ? 年とってないじゃん? つか、なんで生きてんだ?」
「ん? 今日のシンちゃん、なんかしゃべり方変よ? 言ってること意味不明だし」
「今日って……え? これどういうこと?」
「…………もしかして、昨日のショックで変になっちゃったのかしら?」
「……あのー……ちなみに、ちなみにですよ? 昨日とは、なにがあったんでしょうかね?」
「マジ言ってる?」
「え……まあ……」
なんだ? 目の前にいるミサトさんモドキ? が青ざめていくぞ。
「シンちゃん! あなた、昨日の記憶ないの?」
「はえ? いや……あるといえばあるんだけど……」
「言ってみて」
「あー……俺は死んだと思うんですよ……」
「何言ってるの?」
うわ! なんかアホの子を見るような目で見られてる。
「えっと、ここって死後の世界かなんかでしょうか?」
「…………マジで言ってる?」
「え……はい」
「シンちゃんは死んでないし、ここは私の家! 昨日から住むことになったでしょ?」
「……えっと……話についていけないんですが」
「ちょ、ちょーっと待って」
そう言って何やらうんうん唸りだした。
というか、本当にミサトさんなんだろうか?
いや、雰囲気は間違いない……自分でもよくわかんないけど、彼女がミサトさんだと確信している気がする。
しかし……現状がまったく把握できない。
ちょっと聞いてみるか……。
「あのー……ミサトさん? 質問いいですか?」
「え……? ああ、どうぞどうぞ」
「えっとですね、先ほども聞いたんですが、昨日ってなにがありました?」
「…………」
「……ミサトさん……?」
「ふー、昨日シンジ君はエヴァンゲリオン初号機に乗って、使徒を倒すも意識不明となって病院に搬送。その後目を覚まし、私の家に同居人として来ることになった。ここまでで分からないことあったら言って」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………シンジ君?」
「全部わかりませんが?」
「…………」
「…………」
「…………マジかぁあああ!!」
「うおっ!」
どうやら、おれは記憶喪失らしい。
いやいや! それは無い!
記憶あるし! つかお前が変だ! ここどこ? あんた誰!? てか意味わかんねーよ!!
まあ、記憶障害は昔経験したけどね……。
まずは思い出してみよう。
そうそう……まずアリスと…………。
いや……アリスって誰さ?
…………不思議の国?
おお! ここは不思議の国なのか!
………………なんか疲れるな……。
とりあえず おれの部屋? の机をあさってみる。
ふむ、綺麗に整頓されているというか、何も無いな。
……ん?
一番下の大きな引き出しの中に、よくわからん箱が入ってた。
意外と大きい……引き出しの中に隙間がほぼ無いほど大きかった。
引き出しを引いてわかったが、結構重そうだ。
なんか、温かいな……放熱してるんか?
何か文字が書かれていたので読んでみる。
――アリス
そう書かれていた。
「わたしアリス! いまあなたの後ろにいるの」
突然そんな声が聞こえた気がして、 つい後ろを見た。
当たり前だが、誰もいなかった。
………………。
………………。
怖っ!!
「よし、見なかった事にしよう」
その後、とりあえず頭がおかしくなりそうだったので、顔でも洗いにいったんだよね……。
いやー驚いたなー。
どうりで、なんか変だなーとか思ってたんだよねー。
なんちゅうの? 目線が違うというか……ミサトさんでかいなーっていうか……。
おれ小さいじゃん……みたいな?
「なんじゃこりゃぁああああ!!」
叫んだよ……大いに叫んだよ。
つか、こんな叫び声、初だよ!
よくわからんが、おれは若返ってしまったようだ。
あれだ! よく漫画とかであるパラレルワールドって言うのか?
ふむ……間違いない。
これ夢だな……。
と思ったのが三日前だ。
夢ってさ、時間の流れおかしいものだよね?
なんか、そこらへんすごくリアルなんですよね。
頬つねったら痛いしさ……なにより、意識して行動できるんだ……これって夢じゃ無理じゃね?
眠くなるし、お腹すくし、ご飯美味いし、夏の暑さも全部感じるんだぜ。
よくわからんが、おそらく現実なんだろう。
納得はしてないけど、現実だ……それは間違いない。
じゃあ、なぜ? って話になってくるんだが、そんなの分かるわけないし、頭が痛くなるだけだ。
そう……そうだよ。
亡くなった……大好きだったミサトさんが生きてる……。
なんかそれだけで、とりあえず納得しちまった。
いつ元の世界というのか? おれが三十六歳だった世界に戻るかしらんが、いまはこの現実を受け入れて楽しもうと思う。
なんちゅうか、おれがガキだったころだと、絶対ウジウジしてただろうな……。
おれも随分変わっちまったな。
「ということで、かんぱーい!!」
おれはミサトさんと飲むことにした。ビール美味いなー。
「かんぱーい!! ……んぐんぐんぐ……プハーっ!」
なつかしいな……この飲みっぷり。
「いやーまさかシンちゃんもビールを飲むなんて知らなかったわー」
「いやいや! なんていうか、ミサトさんに会えて嬉しくって飲みたくなっちゃったんですよ」
「うれしいこと言ってくれちゃってー」
「本当のことだから」
「ふっふっふ、だってギュって抱きしめてくるぐらいだもんねー」
「うっ……。それは……忘れてください」
そう、不覚にも、現実と認めた瞬間、たまらずミサトさんを抱きしめてしまい、泣いてしまった。
「ちょっち驚いちゃったけど、シンちゃん可愛かったなー」
「ぐぐぐ……」
あれから、この世界のことを聞いた。
まぁとりあえずは記憶喪失ってことにしといて、話あわせてみたんだが。
なんというか……。
非現実的な世界でした。
「あ、そうそう、明後日にシンクロテストあるから忘れないでねー」
「あ、はい……大丈夫なんですかね?」
「大丈夫大丈夫!」
「……ま、いいか」
「それより、1つ気になったんだけど、死んでるって記憶……あるの?」
「え? あー……」
どうすっかな……。
「えっとですね……死んだような気がしたというか、自分でもよくわかんないんですよ」
「そっかー、やっぱショックからなのかしら?」
「そんなにショック受けるものなんですか?」
「そりゃあ……そうね……ごめん、ごめんなさい」
「…………」
急にまじめな目になっておれを見るミサトさん。
「シンジ君は、サードチルドレンとしてネルフに所属することになったわ」
「…………」
「拒否権もないのよ……私たち大人が、シンジ君に無理やり人類を預けちゃったってわけ」
「……人類」
「ええ……謝ってもどうしようもないのはわかってる。ショックで記憶を失ったシンジ君に、またエヴァに乗れって言ってるんだもん」
「でも、おれしか乗れない?」
「そうよ……」
「それじゃ、しょうがないじゃん」
「シンジ君は、それでいいの?」
「いいもなにも、おれが乗らなきゃ人類滅ぶんでしょ? そんなのおれがミサトさんの立場でも、無理やり乗せるね」
「でも……だからって……子供にそんな……」
「子供に頼っちゃうのが情けない? でも乗らせなきゃ滅ぶ。 だったらその子供が死なないようにフォローすればいい。それしか道がないんだろ? だったら、覚悟を決めろ」
「…………覚悟」
「そう、ミサトさんが何でネルフに所属してるかなんて理由は知らない。まさか、世界を救うためみたいな青臭いこと考えてるわけでもないんだろ? 目的ってのがあるはずだ」
「…………」
「だったら、その目的を達成させるために出来ることは全部やれ! それで他人が死のうが、ミサトさんの決めたことなら、最後まで責任を持て! 出来ないなら、ネルフをやめろ」
「…………まいったな…………シンちゃんにそんなこと言われちゃうなんてね……」
「優しいってのは美徳だよ。でも、優しさしかもてない人は、この世界ではただのクソガキだよ」
「きっついね……」
「うん……でも、仕方がないことなんだよ」
「…………はあー」
ミサトさんは大きくため息を吐いた。
「わたしね……使徒が憎いの……憎くて……憎すぎて……だから戦うの。シンジ君はどう思う?」
「いや、別に良いんじゃね?」
「へ?」
「なんだ? 意外だったか?」
「だって、普通は復讐って理由じゃ……ねえ?」
「憎しみがある……全然良いんじゃん。それを活力にがんばれる。復讐が終わったとき、おまけで世界が救われる」
「おまけって……あははっ」
「ただ、そうだな、どんなに憎くても使徒に振り回されないように」
「え? どういうこと?」
「熱くなりすぎたりで冷静な判断ができなくなったりってこと。それって使徒に振り回されてるじゃん? 復讐したいのに、振り回されちゃあねぇ」
「ええ……そうよね」
「そそ、冷静に、どうすれば使徒を効率よく殺せるか、やっぱ完全勝利しないとさ、復讐にもしこりが出来ちまう。そうなっちゃ、意味がないだろ?」
「…………ふふ……あはは……まいったな……」
「まぁ、どのみち使徒によって振り回されてる部分はあるけどな」
「……どういうこと?」
「いや、もし復讐なんて考えてなかったら、ネルフなんて組織と関わらなかったかもしれないだろ?」
「そりゃ……そうかもしれないけど……」
「憎い使徒のせいで、自分の人生が決まってしまう。それってさ、想い人とかわんないよね? 過激な片想いってやつ?」
「そんな言い方! ……シンジ君は……復讐でも良いって、そう言ったわよね?」
「ああ……」
「なら……なんで……」
「単純に、使徒を想うがあまりに不幸になることだけは嫌なだけ。本来は、無関心でいてほしいぐらいだ。でも憎むって選択したんであれば、自分が幸せになれるように復讐してくれ……じゃなきゃ、すぐに死んじまうぞ」
「…………なんか、すっごい台詞ね……」
「そう? まあ、おれは我侭だから覚悟してくれ。とにかく、簡単に死を選ぶなよ」
「……ええ……わたしは、簡単に死ねない。わたしは、幸せを願っちゃいけない。わたしは、地獄を望まなきゃいけない……」
それが、ミサトさんの覚悟かよ……まいったね。
「…………おれの前で不幸になったら、許さない……覚悟とは進んで自分を不幸にする事じゃないぞ」
「…………それも、すっごい台詞ね……」
「そっか?」
「ふふふ……ていうかさー、シンちゃん性格変わりすぎ! もしかして今の性格が元なの?」
「ん? いや、どうなんだろ? そんなに変わったかな?」
「うんうん。まず、前は自分のことを『僕』って言ってたし、まじめになったら喋り方が更に変わっちゃったし」
「……あー……すいません……」
そういえば、昔は僕だったな……。
「ふふ……別にいいのよ。なにより、話しててビックリなのが、全然十四歳に見えません。私のほうが子供に見えちゃうぐらい」
そういや、今のミサトさんはおれより年下なんだっけか……。
でも、さすがにミサトさんには敬語使わなきゃ……な。
「ちなみに、その復讐の理由って聞いても良いですか?」
「……あ……」
「いや、無理には聞きません」
「ううん。ちょっちびっくりしただけ。シンちゃんなら話しても良いかな……」
ミサトさんは一呼吸置いて語りだした。
「わたしの父は家族を省みず研究に没頭し、いつも母さんを泣かせてた。そんな父が私を助ける為に犠牲になったの……南極で起こったセカンドインパクト……あの時、生き残ったのはわたしだけ……。だからわたしは家族を人一倍欲している……そして、ソレと同時に、それを奪った使徒が許せないの……」
「セカンドインパクト……確か隕石衝突と言われているが、実際は南極で使徒……人型の物体の研究による原因不明の爆発……でしたっけ?」
「ええ……それにしても記憶喪失で、セカンドインパクトの存在も忘れてたってのもすごいわよね」
だって、そんなもんおれの世界では無かったしね。
セカンドインパクトの説明を受けたときはびっくりしたよ。
そして、「なにそれ?」と聞いたおれの発言は、かなりショッキングだったようで、その時のミサトさんの驚いた顔は少し笑えた。
「わたしは、そのセカンドインパクトをこの目で見たの。……巨大な……使徒の姿を……不気味で……恐ろしい……」
セカンドインパクトを最も近くで目撃した人間か……。
「お父さんが……大好きだったんですね……」
「…………わからない……」
「え?」
「いえ……きっと、大好きだったんだわ……」
ミサトさん……。
まいったな……結構きっつい過去だったな……。
とりあえず、別の話をふるかな……。
「あ、気になった単語あったんですが、サードチルドレン? それなに?」
「え? ああ、そうね。なんて言えばいいかしら……エヴァのパイロット……適格者とも呼ばれてるんだけどね、それをチルドレンと呼ぶの。シンちゃんは三人目なのよ」
「もしかして、全員子供なんですか?」
「そうよ」
「つかチャイルドじゃなくてチルドレンなんだ……まあそれはいいや、で他のパイロットは?」
「ファーストは現在入院中。セカンドはドイツよ。だからきたばかりのシンジ君に任せるしかなかったの」
「…………」
「ふふ、安心して。すっごく二人とも可愛い子よー。シンちゃんと同い年だし……って言ってもシンちゃん大人びてるからどうかしら?」
「……あの、おれがここに来てからの話を覚えてる限りでいいから全部教えてくれませんか?」
「へ? ……ま、別にいいけど」
…………。
……………………。
「……と、いうわけよ……本当にごめんなさい」
「……ん? なにがですか?」
「だって、わたしはシンジ君を、結局むりやりエヴァに乗せたのよ……」
「なるほどね……」
「ええ……最初はあなたを庇ったのに、なのに……リツコに諭されて、わたしはシンジ君を……」
「さっきも言ったでしょ? 仕方ないことだって……」
「でも……それでも……」
「覚悟……おれを乗せるって道しかないから、覚悟を決めたんでしょ? しかし、説得に親父からも自分からも逃げる事になるって発言、ミサトさんらしいというか……」
「…………」
「ミサトさんは本当に優しいです。ただ、優しすぎるだけ……です」
「…………」
「免罪符が欲しかった……違うでしょ? リツコさんに言われて、自分に覚悟がなかったと気づいたんでしょ? 親父と自分から逃げちゃだめって言葉、おれにやる気を出して欲しかったからだ……乗せるしか道が無いのであれば、死なないように、使徒と戦うという怖さを少しでも和らげるため、だからその言葉を使った。な のに、そうとは言わず、おれに自分を責めるように謝罪する」
「…………」
「そんなんじゃ、いつか疲れちゃいますよ? 優しすぎる人は、いつか壊れちゃいます」
「……わ、わたしは……」
「ミサトさんに、ガキだと言ったこと謝ります」
「な、なにを……」
「ミサトさんは、覚悟を持っていた……本当は弱い人なのに、強くあろうとしている」
「……シンジ君……」
「弱いから弱音を吐く、迷う、でも人間なら当たり前だ。覚悟が揺れてしまうこともあるさ……
だけど、ミサトさんは、最後にはきっちり覚悟を決めて行動している」
「……グス…………シ、シンちゃーん……グスン……」
「…………って、なんで泣いてるの!!」
「だって……わたしのこと…………そんなふうに……グス……わかってくれる人なんていなかったんだもん」
やばいな……ちょっと可愛いと感じてしまった……。
「……グス……あ、ありがとう…………うれしいよう…………」
「……いや、とりあえず、泣き止んでくれ……」
「うん…………ごめんね…………」
「いや、……気にしないでくれ……いや、ください……」
「えへへ……まいったな……」
「…………」
「…………」
なんか、この空気……気まずいな……。
つか、あんた本当に二十九歳ですか? ……おれの知ってるミサトさんより弱くて強い……そんな感じだな。
「あー、えーと……ごめんね。しんみりしちゃったかな?」
「いや……。あ、質問があるんですが」
「なに?」
「ミサトさんってネルフに呼ばれたの、最近だって言ってましたよね?」
「ええ、そうだけど」
「面談……みたいなのってありました?」
「そりゃ……あったわ」
「…………復讐…………について、聞かれました?」
「……っつ! え、ええ……聞かれたわ」
「そうですか……」
「え? どういうこと?」
「いや、なんでも無いですよ」
ミサトさんのような若い人が作戦部長ってのが気になっていた。
おそらくは、それなりの能力を持っているとは思う。
だが、違和感がある。
どんなに努力したところで、全人類をかけた戦いだぜ?
特に、優しすぎるという欠点がある。
なのに、ミサトさんが作戦部長……。
きっと、それはセカンドインパクトを最も近くで目撃した人間であり、それによる憎悪、復讐心が魅力的だった……。
使徒に対する復讐心が利用しやすかったって事か?
それとも、ほかに何か理由があるのだろうか?
まあいい、この件はとりあえず保留だな。
「あ、そうそう、それよりも気になった点いくつかわかりましたよ……親父がなにを考えてるのかさっぱりですが、なにか企んでるってのはわかりました」
「え? どういうこと?」
「あー、例えば、なんでおれが急に呼び出されたんでしょうね?」
「それは、最近シンジ君がチルドレンだとわかったからで……」
「はい、それ矛盾点です」
「へ?」
「だってさ、なんで今頃なのかな? 親父がネルフのトップなんですよね? 赤の他人ならともかく、なぜつい最近までわからなかったんですか?」
「あ、……そういえば、そうよね」
「……普通気づくだろうけど、気づく暇もなかったんだろうね」
「うぅ……」
「で、いきなりエヴァに乗せるってさ、素人をいきなり戦場に……あきらかに変でしょ? 暴走……だっけ? おそらく暴走させたかったってことでしょ?」
「……そうね……そうとしか考えられないわね」
「暴走によって、なにが得られたのか……さっぱりだな」
「エヴァって、一体なんなのかしら……」
「はぁ、得体の知れないモノを、よく疑問も持たずに……」
おれは呆れた顔でミサトさんを見つめた。
「うぐ……で、でもね、ここまで得体の知れないモノだとは……」
「まあいいや、んで、チルドレンだけど、みんな十四歳なんですよね?」
「ええ、そう……あれ?」
「気づきました?」
「……そうね……でも、子供しか乗れないって聞いてたし……でも、それにしたって全員が同い年ってのは……」
「出来すぎです。しかも子供しか乗れないものを作るって……」
「…………」
「どうやって適格者だと判断してるんでしょう? なぜ、そんな世界に三人しか乗れないようなエヴァを作ろうとしたんでしょう? なぜ、適格者全員が十四歳なんでしょう? そして、十四年前、いや出産から逆算したら十五年前かな? さあ十五年前にはなにがあったんでしょう?」
「え!? ……セカンド……インパクト……」
「そう、おそらくそれが原因でエヴァが生まれ、適格者も生まれた……もしくは、適格者を作ったのか……」
「作るって!」
「実際はどうなのかわかんないんですけどね。とりあえず、ネルフって組織をあまり信用しないほうがいいだろうね」
「…………」
「あとは、使徒ってのが現れる時期を予測していたようですね」
「! ……そんなことって……でも、そうね、だからシンジ君をギリギリになって呼んだ……うぅ、なにが真実なのかわからない」
「ははっ……まあ、あまり考えすぎると疲れますから、ちょっと警戒する程度で、あとは適当でいいんじゃないですか?」
「て、適当って……」
「使徒ってのをなんとかしないといけないってのは本当でしょ? ならとりあえずは、使徒をなんとかしようって事」
「そ、そうね」
「なにかあってからでは遅いというけど、何もなければわからないし、起きてから考えるってことで良いと思いますよ」
そう、とりあえずおれが探ってみて判断してみるからさ。
「そうね……」
「あ、一つ……お願いが出来ました」
「なに?」
「おれのガキの頃の情報……おれの人物像が記されたものってありますよね?」
「……え……ええ、あるわ」
「まずは、それを見せて欲しい」
「……本当はダメなんだけどね……いいわよ」
「ありがとう。ミサトさん。……あ、ミサトさんに1つ伝えたいことあるんですが、いいですか?」
「……なに?」
「ミサトさんは守るから……ネルフが悪巧みしていたとして、それによってミサトさんが利用されていたとしたら、おれは本気でネルフを敵に回していい。だから、安心して」
「…………シン……ちゃん…………」
「家族……なんでしょ?」
「……ええ……そうね……ふふっ、本当に十四歳なのかしら。すごく嬉しいわ。ありがとう」
「本当は三十六歳かもしれないですよ?」
「ふふっ、一気に年上ね。ああそうそう、私には話しやすい言葉使いでいいわよ。一緒に住む家族なんだからね」
「は、ははっ……わかったよ」
ネルフ、これはマジで調べたほうがいい。危険な匂いがする。
話に聞くと、指令や副指令はもちろんだが。リツコさんという人物も……もしかしたら深く関わってる気がする。
まずは、話してみてから……かな?