第2話 [ 契約 ]
「ミサトさんは、どの世界でもミサトさんだな……」
おれは、一人自分の部屋で思考する。
ミサトさん……おちゃらけてて、とても弱くて強い人。
そして、とても優しい人。
なんか、こっちのミサトさんのほうが、より子供っぽい気はしたが……。
そんなミサトさんが復讐に囚われているのは似合わないけど、生きる糧として必要だったんだろう。
それにしても、異世界ということなんだろうか?
考えてもわからん。
はっきり言って、理解できるわけがない。
それにしても急展開だ。
ここまでの急展開は、人為的でなきゃありえないと言える。
「むかつくな……」
仕方がないと言えば、そうなのかもしれないが……おれをエヴァに乗せるときのやり取りが、非常にむかつく。
おれが乗らなきゃ、大怪我してる女の子が乗る……それを、まるでおれが悪いかのように選択を迫った。
はっきりいって、殴ってやりたい。
ミサトさんも、おれが乗らなきゃ彼女が乗ることになるのよって言って説得してたらしいけど、ミサトさんの考えは他のやつらと違うのがわかる。
ミサトさんは、怪我した彼女より、おれが乗るほうが、使徒殲滅の可能性が高いと判断したからだ。
そりゃあたりまえだ。
聞くとこによると、その女の子の怪我はエヴァに乗り込んだだけでも死んでしまうほど、酷い怪我だった。
初心者を戦場にってのも無茶だが、どちらを選択するかって言えば、おれしかいない。
なら、そのおれに活力を与えるため、彼女を利用するしかない。
それが一番、おれの生き残る可能性が高くなると思ったから……。
ただ、親父は違う。
おれを追い詰めるために……怪我した女の子を道具として利用したとしか考えられない。
しかも、最初から利用しようと考えていたようだ。
逃げ道を無くすため、無理やりにでもおれをエヴァに乗せるための小細工だったとしても、やはりむかつく。
まあ、子供を乗せるためには、その小細工が一番適していたのは理解できるが……。
ある意味、その冷徹さは尊敬するよ……親父。
そうだな、今後も乗るとは約束していないんだ。拒否権がないと言ってたが、人権無視までされたくねぇ。
せめて、それなりの……金かな? 用意してもらうかな……。
これは仕事なんだからな……それなりの報酬は貰わないとね。
むかつきはおさまらねぇけど、それでも、それでもおれは、うれしいと感じている。
こんなばかげた世界だが、大好きだった人が生きているんだ。
そう、もしかしたら、アスカも……生きているのかもしれない。
「……どう探すべきかな……」
まいったね……。
おれはそのまま、ミサトさんから受け取った自分の過去が記された報告書を握り締めた。
次の日の朝
「ミサトさん、昨日もらったおれの過去……マルドゥック機関ってやつの報告書読んだが、質問良いか?」
「え? ええ、いいわよ」
ミサトさん……もう一人暮らしじゃないんだから、そんな格好はどうかと思うぞ?
ほとんど下着姿と言ってもいいぐらい……だらしない格好だった。
「はあ……まあいいや……で、おれ、苛められてたようなん だが……」
「あ、…………ええ、そうらしいわね」
「母親殺しの父親を持つ子供……そう言われていたよう だが……なぜなのかな?」
「……え? うん……お母さんは実験で亡くなったのは覚えてる?」
「いえ、さっぱり」
「…………聞いた話によると、シンジ君の両親は科学者で、お母さんは……その、お父さんが指揮する実験により、その事故で亡くなったそうよ……」
「ふむ…………それって変だよな……」
「へ? 何が?」
「なんで、そんなウワサがおれの周りで広まるんだ?」
「そりゃあ…………だれか…………知ってた人が……」
「普通隠すよな? こんな事故……」
「ええ……たしか、新聞にも載ってないはずよ。シンジ君のお母さんは脳梗塞で亡くなったって ことにされたはずだから……」
「なのに、知られてた……知られた後も、新聞に載ったりって事実無いんだろ?」
「……え、ええ……」
「なら、このウワサは、おれの周りだけだったって事じゃないか? これオカシイだろ?」
「まさか……意図的に……?」
「だろうね……理由はわからないけど」
「……そんな…………でも、どうして……」
「あと、おれに近づくものは、不幸に合うらしいね」
「…………ええ……わたしはただの偶然だと思ったけど……」
「普通はそう思うね。たまたまおれと親しくなった人が不幸にあい、嫌われていたせいもあって、おれに近づくと不幸になるってウワサも一気に広まった…………でも、母親殺しの父親を持つ子供ってウワサを流したのがネルフなら、偶然とは言えなくなる」
「まさか……それも? ……だって、死んでる人もいるわ」
「ああ、一人…………事故って書いてるけど、殺されたんだろうね。あとは骨折やら、火事やら、いろいろあるけど、もとから苛められてたおれだから、不幸にされた人数は少ない。だから偶然にも感じられる。そして、ソレがきっかけで、おれを同情するものもいなくなった。天涯孤独ってやつだな」
「…………」
「おれを、精神的に追い詰めて、壊したかったって事かな?」
「そんな! 理由が無いわ! だって……」
「ガキの頃からおれを監視し、追い詰めてた……」
「…………最初から、適格者だってわかってて、そう仕組んだって事?」
「ああ、それが一番しっくり来る。やはり、この考えで間違いないようだな」
「そんな……それがネルフのやることだって言うの……」
「なぜ、そんなふうに仕向けたのかは理由がさっぱりではあるが、いずれ分かるだろ」
「…………」
「だから、ミサトさん……昨日も言ったが、ネルフを信用するなよ」
「ええ……そうね……」
「なんだかんだ言って、使徒を何とかするにはエヴァが必要。なら、今はネルフを利用するって考えでいいさ」
「…………割り切るの……難しいね……」
「ああ……だが、大丈夫! おれが何とかするから」
「本当にシンジ君は十四歳なの? 普通ならありえないんだけど、その言葉……信じられるって思えちゃった」
「それも昨日言ったろ? おれは三十六歳って」
「あははっ……そっか」
少しだけ青ざめた顔で笑うミサトさん。
ミサトさんに確認することで、ネルフの事実に近づけたと思う。
ただ、そのかわりミサトさんには精神的に苦痛を与えてしまった。
ネルフへの不信感……これは絶対にミサトさんに与えなければいけない。
だから仕方が無い……でも、苦痛を与えてしまうのは、やっぱりキツイね。
おれもまだまだ甘い……って事だな。
「あー、初めまして……じゃないんですよね? リツコさんでよかったですか?」
次の日、おれはネルフに出向いた。
シンクロテストのため……というよりリツコさんという女性と話すために。
「……ええ。それにしても、記憶を失うなんて、驚いたわ」
「いやー、自分自身はべつにそこらへんどうでも良いんですけどね」
「……えっと……」
「ああ、気にしないでください」
「……随分と性格が変わっちゃったわね」
「まあ前の自分がどうだったか知らないし……」
「それにしたって……」
「あやしい……ですか?」
「……っ! そ、そうね、別人のような性格変化……しかも、大人っぽくなってるわ……ありえないわね」
「ありえないねぇ……ま、実際こうなっちゃったんだから、あまり深く考えないほうが良いですよ。シワ増えますよ」
「なっ……! ちょ、ちょっとどういうことよ!」
「いや、あまり悪巧みするなってことです」
「…………あなた、なにを知ってるの?」
まいったな……この分かりやすい反応。
やっぱり裏があるね……しかもリツコさんは深く関わっている。
「いや、何も……。ただ、誰から見ても、ネルフって怪しいでしょ?」
「…………」
「だから、ちょっと警戒してるだけ……あ、そうそうおれの待遇について聞きたいんですが……」
「…………なにかしら?」
まずは、待遇の件でリツコさんを探るかな……。
親父と会ったら、殴っちゃいそうだし、リツコさんにある程度の権限があれば、利用価値もある。
ネルフ本部技術開発部技術一課のE計画の責任者であるわけだから、問題ないと思うけどね。
そして、この性格も、引き込むには丁度いい人物と言える。
「まず、おれって階級は何になるんですかね?」
「……特務三尉よ。ただし、権限は無いから」
「へえ、まあパイロットですから……妥当ですね、でも、権限なしですか? で給料は?」
「給料も三尉と同じよ。もちろん危険手当もあるから中学生としては大金よ。」
「……で? おれになにをしてほしいんです?」
「今後、使徒を倒すためにエヴァの乗ってくれればいいわ。あとはシンクロテスト等の協力ね。所属は戦術作戦部作戦局第一課で、ミサトが上司になるわ」
「なるほど……それは肯定できかねますね」
「……なっ! …………逃げ出したいってわけ?」
「いやいや、おれは別に乗ってもいいんですよ。ただねー、お飾りの特務三尉って何? って感じです。お金は更に問題外です。契約金を別途用意していただきたい」
「契約金って……」
「おれは、しっかり契約金を払ってくだされば、契約している仕事は必ず成し遂げると約束しましょう」
「……で、いくら欲しいの? あなたの望んでる金額は?」
「……そうですね…………百億でかまいません」
「……っつ! ちょっと、それはあまりにも!」
「高いですか? 百億で世界に三人しかいない貴重なパイロットが一人手に入るんですよ? しかも、人類の未来を左右するほどの存在だ。高くは無いでしょう? むしろ安いと思いますが?」
「わたしの一存では決められないわ……」
「ああ、そうそう、あと階級の件ですが、お飾り特務三尉は納得できないので、権限も同時に、……正式な三尉として契約してください」
「あなたは、子供なのよ?」
「その子供を戦場……しかも前線に送り出してるのは誰ですか?」
「……わかったわ……そこはわたしが何とかするわ……」
へえ……何とかする……ね。
子供に三尉の権限をあたえるって、普通ありえない。
子供のわがままが通用してしまうわけだ。
子供に、大勢の大人の部下が出来るって事だ。
この世界では、命令は絶対。
最悪混乱を招き、それなりの損害も可能性として出てくる。
そう、なのに、なんとかするってことは、そうしてでもエヴァに乗ってほしい。
乗ってくれなきゃ世界が滅ぶから? だったらこんなにすぐにOKしない。
乗ってさえくれれば、あとは多少の混乱も厭わない、……最終的にはどうとでもなるって事だ。
怪しいじゃなく、間違いなくヤバイ何かをするって事。
そう、ガキを三尉として迎える非常識を、小さいことと思えるほど大きな事をするって事。
しかも、近い将来に……。
リツコさんか……狙ってみますか…………。
「あ、そうそう。ネルフって、おれがここに来る前も、ずっと監視してましたよね?」
「……なに……急に……」
「いえ、監視されてたの知ってたんですよ。それで気になってまして」
「……! あなた、記憶は無いんじゃないの?」
「ええ、そうですよ。ただ、全部忘れてしまったわけじゃないですよ。」
「……そう……あなたのお父さんがネルフの最高責任者だったから、何かあってはいけないと言う理由で護衛をつけていたのよ」
ほほー、そういう理由でくるか……なかなか頭の回転速いな。
「なるほど。納得です。ただ1つ、おれの部屋の中まで監視はしてないでしょ? さすがにプライベートですから気になってね」
「ええ、そこまではしていないわ」
よし、ウソは言ってないな……。
「本当に? では、おれを監視していたレポートなどを拝見したいのですか?」
「…………それは出来ないわ……」
「いや、ただ単純に、期間と、何時から何時まで、どこら辺を監視していたのか、それが知りたいだけです」
「そんなのを知ってどうするの?」
「だって、自分のことですよ? 気になるじゃないですか。すぐ閲覧できるんでしょ?」
「…………少し待ちなさい」
眉間にシワが寄ってるな……。
「これよ……」
そう言って、パソコンのモニターを見せる。
「ほうほう……」
期間は、おれが捨てられた日からこちらに来るまで、時間は学校へ行く時間から夜8時まで、火・木・土・日の週4日ね……なるほどなるほど。
リツコさんは結構顔に出るタイプだ。ウソは結構バレバレ。
意外な発言などを聞いて驚いたときは眉毛が少しピクッっと動く。
ウソを吐くときは、言葉がのトーンが微妙に振るえ、少し早口になる。
しかも、黒目は少し大きくなる。
緊張しやすいタイプ……そしてそれを悟らせないようにしている。
悪者になりきれない……頭脳的に見えて、実は感情に流されやすい人だな。
とりあえず、リツコさんを見る限り、この情報は本物だ……ふう、さすがに毎日監視するとは思ってなかったし、おそらくそれ以外の日はおれを引き取ったオジサンとやらが監視、報告していたんだろう。
護衛のためではなく、おれという人物像を知るため……いや、操作するために……か?
なんか、ネルフって知れば知るだけ怪しくなってくるな。
おそらくは、ひ弱で引きこもりな人物を育てたかった……としか考えられない。
ミサトさんから無理に教えてもらったおれの過去……苛めが酷かった。
護衛であれば、なにか動きがあったはず。ひ弱な人物を人類を賭けた戦いになぜ呼ぶ必要がある?
普通なら、強くなるように鍛えるはずだ。
しかし、そうとはせず、放置……いや、苛められるように操作した。
なぜ? そこが分からない……。
とにかく、いずれ、わかることだろう……。
さぁ、ここまでは思惑通り……。
今度は、おれと言う人物を植えつけるか……好きなだけ怪しんでくれよ。
「……なるほど、本当っぽいですね。うん、予想通りでした」
「それは、どういうことかしら?」
「いや、大体は把握してたんですよ。監視というか、護衛でしたっけ? バレバレというか、無能ですね」
「…………」
ダンマリですか?
「あまりにもザルすぎて、逆に不安だったもので……まあ、おれってなぜか昔から直感力が優れてまして、そのせいかもしれませんが……」
「直感力?」
「ええ、あまり覚えていないので、例をあげるのも難しいのですが、人が怖かったんでしょうか? 危険を察知する能力が高まったと思われます」
「……なるほど……」
「あ、そうそう。あとは料理の腕にも自信あるんですよ! 良かったら今度ご馳走しましょうか?」
「え? ……ええ……そうね」
そう、これは予想だが、おそらく自炊していたと思われる。
ほとんどおれは家に一人きりだったと聞いている。おそらく監視されている日は、オジサンは家にほぼ帰ってきていなかったんだろう。
もしかしたら、家にいても無視され、ご飯も用意されていなかったかもしれない。
少ない小遣いだけを渡して、あとは放置……。
むかつくな……。
「あ、そうだ、護衛の話で気づいたんですが、銃の所持許可証……あとは、運転免許証もほしいですね……」
「……なぜかしら?」
「おれをガードしてる人がいるのは知っていますが、もしもってあると思うんですよ。その時のために銃は必要かと……あと、免許証に関してですが、バイクや車を緊急時に自分が運転しなくてはいけないことって、無いとは言えないですよね? その時のために、特別にネルフの権限で作ってください」
「扱ったことの無い銃に、免許? ……運転したこと無いでしょう?」
「ははっ。それは、ヒミツですよ」
「…………」
「随分険しい顔されますね? わかりました」
おれはそう言って、リツコさんに近づき、そして耳元で囁いた。
「リツコさんが、心開けば、全部教えるよ」
「……なっ!」
顔を真っ赤にして囁いた耳を手で押さえてる。
「どういう……意味かしら?」
「別に、そのままの意味ですよ」
「銃や、運転……経験がある……ということなのかしら? 報告に無いわね……」
「だってねぇ……無能ザルでしたから……視線を感じなかった日は、好きなように行動してたし」
「…………いくら無能でも……」
「気にしないでください。それよりも、今はリツコさんがおれの待遇についてどうするか? だとおもいますが?」
下手なことを言って、バレるよりは、何も言わないほうが良い。
そして、そのほうが、よりおれという人物を意識する。
「でも……さすがに中学生に……問題よ」
「はは、そういうと思いました。でも、これもおれをエヴァに乗せるために用意しなきゃいけない待遇の1つなんですよ?」
「…………なるほど……ね」
「以上ですね。とりあえず、契約金以外はOKで良いですね?」
「…………ええ……わかったわ」
うわー、疑惑の目が拡大してってるな……。
「では、おれはこれで帰ります。契約書作っておいてくださいね」
「ちょっと待ちなさい! これからシンクロテストがあるのよ!」
「え? だって、まだ契約していないでしょう? ならそれもする必要ないですよね?」
「…………ちょっと待ってなさい……今指令に聞いてくるわ」
「はい。では待ってます」
現在、おれの協力者はミサトさんだけ……いや、協力者とはちょっと違うかな?
おれは、リツコさんには協力者になってほしいと考えている。この胡散臭いネルフの秘密を知るために。
おそらく、ネルフをこのまま無視すれば大事なミサトさんも、なにかしらの不幸が訪れる。そう確信している。
だからこそ、どうにかしたい。
知りたい……知りたいんだ…………リツコさんを味方……どうするべきか……。
おそらく、いや間違いなくネルフの裏に絡んでいるからこそ、引き込みたい。
それにしても、こうも悪役に徹することが出来ない人物だったとはね……。
博士……ねぇ。
意外と考えが顔に出やすいことから、精神的に弱いと読み取れる。
そして、プライドは高いくせに、ネガティブで自分が嫌い。
なにか精神的な傷を負っているんだろうか?
ああいう人間は2種類いる。
1つは、自分に依存するタイプ。
もう1つは、他人に依存するタイプ。
あれは、後者だな。
そう、扱いやすい駒だ。
力でねじ伏せ、たまにやさしく接すれば、簡単にそいつに依存する。
そういう人間は、本気で相手すると疲れるんだよなー。
うざいというか……なんというか……。
利用されている立場……。
やはり、力でねじ伏せてって方法も、考慮しつつ、どう味方に引き込むか……かな?
「可哀そうな人……だな」
とりあえずは……おれを無視できなくさせてやる。
ちなみに、提示した各待遇に関しては、まず銃は、身を守るために必要だ。
腕は悪くない。というか、そこら辺の傭兵にも負けない自信がある。
そのカモフラージュで過去にエアガンで練習していたことがある……とでも言っておけば良いだろう。
ま、そうだとしても、違和感たっぷりだけど。
免許証は、移動手段の確保。
とくに必要ないと思うだろうが、場合によっては重要になる可能性もある。
最悪ネルフから逃げるための……。
こんな大きな組織を敵に回したら、いくらおれでも無理がある。
監視を振り切るのは簡単だが、交通機関を使えばすぐに場所はばれるだろう。
だが、バイクをこっそり隠しておくとどうだろう?
車だと小回りが効かない、ミサトさんはバイクは運転できない。
となると、おれしかいない。
免許は無くてもなんとかなるだろうが、おれは見た目がガキだ。
速攻捕まる。
免許があり、それを提示すれば、その場はなんとか逃げれる。
おそらく、すぐに足はつくだろうが、時間稼ぎができる。
ただ、免許を見せてもその場で拘束されてしまう可能性もある。
ネルフの手が回ってしまっている場合だ。
その場合は、銃が役に立つ。
脅して逃げればいい。
あまり人通りの少ない地域を走るつもりだが、絶対とは言い切れないからな……。
まあ、このパターンは無いとは思うけどね。
念には念をってやつだ。
ぶっちゃけると、おれを意識させるための材料として言っただけなんだけどね。
あとは、ただ単純に運転したかった。実際にはバイクや車運転できるほうが楽だってこと……。
うん。それってけっこう大事だ!
ネルフや学校行くのに、結構役立つ。
というか、ドライブがおれの唯一の楽しみだったから…………。
ほら、ガス抜きも必要だろ?
とりあえず、免許はあったら嬉しいな程度で考えていたから、上手くいったようでラッキーだな。
カモフラージュできそうなものは無い。
はっきり言って。みんなに突っ込まれるだろう。
まあ、昔ちょっと……みたいな感じで、あとは誤魔化そう。
うん。おれってそこら辺、かなり適当だな……。
ちなみに、階級の件は、お飾り三尉ってのが単に気に食わなかっただけ。
だから、ああもあっさり了承してくれたのは驚いた。
結果的に、ネルフという組織が更に理解できたな。
その後、契約金は百億受け取ることが成功。
親父はおれが金を要求したもんだから、逆にガキと判断したのだろう。
そして、大金を渡せば、利用しやすくなると考えたはずだ。
しかし、そんなのおれには関係ない。
罪悪感? そんなの知らねーし。金をもらってそのままとんずら、全然心が痛むことも無い。
まあ、少しは……というか間違いなく金額を渋ると思って、最初は多めに金額を設定したんだが、さすがにこうもアッサリ払うとは思わなかった。
こんな中学生に百億……堕落の一途を辿ること間違いない。
なのに、こうも簡単に……やはり……怪しいね……。
ということで、今日からおれは、ネルフ所属の碇シンジ三尉ってわけだ。
ちなみに、その後シンクロテストは無事終わった。
どうやら、シンクロ率は前より低かったそうだ。
といっても、その前ってやつをおれは知らないけど。
それにしても、アスカを探すヒマなくなっちまったな……。