―― 004 Halkeginia mythology

― ルイズの夢魔とアンの夢想 

 

 

 

クラウドを召喚したメイジ……ルイズはイライラしていた。

 

 

「う〜……私の使い魔は一体どこなのよ〜〜!!!!」

 

 

あれから4日も経ってる。

最初はただの平民と思ってた使い魔。

でも剣を抜いた瞬間、本当に平民なのかわからなくなっていた。

よく見たら、マントっぽいものをつけていたし、なにより服の色が紫なのだ。

そして、名前。

たしか、クラウド・ストライフ……。

家名があるということは、地位の高い者と思われる。

旅人のような剣士のようなどっちつかずの格好だったけど、やっぱり貴族だったのかな?

もしくは、剥奪された元貴族……。

とにかく、それはいい。

会って聞けばいいだけ。

しかし、勝手に去ってしまった。

もう一度サモンサーバントをやらせてほしいと学園にお願いしたけど、それは認めてもえらえなかった。

だから、探すしかない。

でも、全くもってどこに居るのか見当がつかない。

学園にも頼んで探してもらってはいるけど、いい情報は入ってこなかった。

「やっぱり、もう一度サモンサーバントするしかないわよね……」

そう言って、もう一度使い魔のことを思い浮かべる。

「…………綺麗な目をしてたな……」

気づいたら、そう発していた。

 

「……!! って何言ってるのよ!!」

 

まいったわね……疲れてるのかしら……。

そうよね、だって、普通居なくなる? なんでこうなるってのよ!

ほんと………………なんでなのかな……。

なんで……こうなっちゃうんだろうな……。

わたし……やっぱり……。

「……はあ」

ドキドキしてたんだけどな……。

どんな使い魔なのか……すごく楽しみにしていた……。

それなのに、平民みたいな人間で、しかも逃げられるなんて。

 

 

 

わたしはずっといなくなった使い魔のことを考えていた。

それが原因だったのだろうか。

わたしは、その使い魔の夢を見るようになった。

それはとても不思議な世界で、悲しい世界。

さまざまな絶望が詰まっていた世界。

その夢は、日に日に鮮明となり、よりいっそう使い間のことを考えるようになっていった。

 

燃えさかる村。

奪われた家族。

失ってしまった大切な人。

見たことも無い化け物と死闘を繰り返す日々。

降り注ぐ大きな隕石。

終わる世界。

泣き叫ぶクラウド。

戦い続けるクラウド。

 

「……クラウド……」

わたしは、いつの間にか使い魔をクラウドと呼んでいた。

まだきちんと挨拶もしていない自分の使い魔。

使い魔を探すというより、クラウドという人物に会いたい。

そしてわたしは、毎晩夢を見続けた。

「どこにいったのよ……クラウド……」

そして今日も、私は枕を濡らす。

 

 

―― ◇

 

 

初めての二日酔いで頭を抑えながらアン王女は目を覚ます。

 

「ぐぅ……あたま……いたぁい……」

途中から記憶が無いけど、楽しかった事は覚えてる。

「ふふふっ……楽しかったな……」

 

そういえば、お兄様……なんて言っちゃったんだっけ?

酔いに任せて……恥ずかしいことを……。

でも、悪い気はしない。

もしお兄様だったらって……本気で思っている自分がいるわ……。

それにしても、不思議な人だった。

あんな人は初めてだった。

すごく存在感があって、暖かくて、優しくて、少しぶっきらぼうで、時々悲しい目をして……。

わたくしは感じてしまった。

彼はこのトリステインにおいて、とても特別な人物になるって事を。

理由はわからないけど……。

貴族らしいとは思えない態度であったりするんだけど、そんなの全て消し飛ぶような、あの存在感は、どんな人よりも他者を導く才能を持っていると確信させる。

わたくしなどでは敵わないほどに、光り輝いている。

一人の人間として、おそらく全ての人間をひきつける存在。

彼が国を治めたら、どうなるのかしら……。

それはとても魅力的で、ついわたくしも力を貸して差し上げたくなる。

本当に魅力的な夢……。

いつまでも平和が続く……素敵な夢。

こんなことを考えてしまうわたくしは、王女失格かしら?

うふふっ……さぁ、クラウドさんは今何してらっしゃるのかしら。

さすがにもう起きなきゃまずいわね。

…………そのまえに、お水飲もう……。