「初心者に送る100m走講座」
<考えて走れば速くなる>
皆さんは、ただ漠然と100mを走ったりはしていませんか?
100m走には、大きく分けると二つの走り方があります。それは、足の回転数を上げて走る「ピッチ走法」と歩幅で距離をかせぐ「ストライド走法」の二通りに分類できると言って良いでしょう。そしてさらに、スタートに全勢力を注ぎ、ロケットスタートをしてそのまま逃げ切る「先行逃げ切り型」タイプと、あくまでスタートは100m走の中の一部、後半に力を温存して走る「追い込み型」の二つのタイプに分けることができます。つまり100m走は、この二つの走り方と二つのタイプの組み合わせと一般的には言われています。
まず100m走を分かりやすくするために、走り方などにより、「スタートダッシュ」「加速」「中間疾走」「失速」の四つのパートに分類します。この四つのパートについて説明していきます。
1 「スタートダッシュ」(スタートから10M付近まで)
事前にスターターの癖やタイミングを計っておき、<バーンッ!>という号砲と共にスタートする。この反応時間を練習 により短縮していかなければならない。また、低い前傾を保ったままスタートする際に、キック力を有効にスターティング ブロックに伝えることが大切。すべって蹴り損ねたり蹴りが不十分で十分な反動を得られなかったりすることのないよう 注意すること。反応時間の短縮と確実にブロックを蹴り十分な反動を得てスタートすることがポイントとなる。低い前傾
前勢(約45度前後)で直線的に飛び出すこと。このとき腰の位置は上下しないよう初めから走り出す腰の高さを保って
無駄な上下動をなくすこと。腰を動かすことなく状態を45度に起こしながら飛び出すことが重要。上級者は表現は難し いがなるべく無駄な力を使わずにスタートし、加速していくことがポイントであり、最初の数歩が非常に大切になる。
2 「加速」(10M〜30M付近)
低い姿勢飛び出した後、前傾を保ったまま30M付近まで我慢する。トップスピードに達するまで 前傾姿勢を保てるよ う腹筋・背筋を身につけておかないと状態が早く浮いてしまいトップスピードに乗りきれなくなるか、状態が浮いている ため風の抵抗を受けるのでもっと長く加速することとなり、後半失速が早く訪れてしまうだろう。短い時間でトップスピー ドまで加速できればエネルギーのロスを抑えることができ、後半の失速を少なくすることが可能となる。このスタートか ら30M位までは筋肉の速筋をおもに使用する。速筋は鍛えても増やすことは出来ず遺伝により体に占める割合が決 められているというのが一般的である。加速に乗ったあと使用する筋肉は中間筋に切替わり、スピードの維持に入る。
3 「中間疾走」(30M〜80M付近)
<リラックス、リラックス>にそれぞれ相当しておりますので、そちらを参照ください)
それでは、最後のパートである「失速」について見ていくことにしましょう。
100m走の最後の章。「失速」です。この残り20mをうまく走ることができれば、100m走のタイムは縮み、他の選手にも勝てるのです。なぜこのたった残り20mの走りで力の差が出てしまうかというと、それは、どんな一流選手でも最後はエネルギーを使い果たし、バテてきているからなのです。つまり、バテてきているということは、それだけスピードも落ちてきているということなのです。周りがバテてきて、スピードが落ちてきている時に、いかにスピードの失速を抑えることができるか。これが勝負に勝つ鍵なのです。そのためには、それまでの走り、「スタートダッシュ」「加速」「中間疾走」といった走りをいかに走ってきたかということが、大いに関わってくるのです。
それでは、「失速」について見ていく前に、分かりやすくするために、予備知識として、運動生理学にもふれておきましょう。
人間は普通、生理学的には全力で力を出し続けることができる時間は、およそ「6秒間」と言われています。つまりここでいう全力というのは、「中間疾走」のことなのです。
例えば、100mを10秒で走ったとします。そうすると、単純に計算すると、1秒あたり10mということになります。この考えで考えたなら、全力を出せるのは6秒間なので、全力疾走の「中間疾走」で走れる距離は60mということになります。つまり、スタート直後にこの中間疾走になってしまった場合、中間疾走に入ったところから6秒間しかもたないので、全力を出し切ったとしても、60m付近までしか走れていないのです。これでは40mも足らないことになり、この40m間は失速し続けることになってしまいます。これでは、いくらいいスタートをしたとしても、なんにもなりません。
そこで「スタートダッシュ」「加速」の時に低い姿勢のまま上体を押さえて中間疾走に入るのを後ろへずらす、という初めに述べた”100mはTotalで考える”という考え方が生まれてきたのです。それは、どこの部分でこの6秒間を使うか、ということです。つまり、この6秒間をどの地点から使うか、何mぐらいから中間疾走に入るかということなのです。
上体を押さえて30m〜40m付近まで走るということは、つまり、ゴール前での失速を最小限に抑えるためだったのです。
これらの四つのパートを滑らかに繋ぐことにより、100m走は完成するのです。100m走には、「スタートダッシュ」「加速」「中間疾走」「失速」というように、あの短い時間の中に、ナント、起承転結というストーリー、ドラマがあったのです。だからこそ、100m走は、奥深く、多くの人を引きつけてやまないのです。
区間 応用走技術
0〜30m スタートダッシュ 初速0クラウチングからの加速
30m地点でできるだけトップスピードを得られるような意識で
「えー、そんなことしたら最後までもたないよ」と思うかもしれないが、だらだらと加速しつづける走りの方が熟練を要する。
初心者はパッと加速して「次」の局面につないだ方が成功する
30〜70m スプリント 30m地点で得たスピードを40m区間維持する
ギアを切り替える感じ=省力走行
スタートダッシュの思い切りが悪いと、ここで「もっと加速しなきゃ」と余計な力を使って70mで終わってしまう。
スタートダッシュで思い切りよく加速できれば、この局面で精神的にも余裕が持てる
仮に、周りに抜かれたり離されたりしても焦らない。「次」の局面で逆転するために省力走行しているんだから‥。
70〜95m ギャザー 残る力を集中させて再加速
「できたら苦労しないよ」と思うかもしれないが、70mまでを上記のように走れて、これからの練習を積めば大丈夫
だらだらと70mまで加速して余計な筋力使っちゃった選手は、ここから面白いように落ちていくから全員抜きましょう。
95〜100m フィニッシュ ゴールより5m先まで走るという意識を持ちながら、前傾を深める、というイメージ。
突っ込んではいけない
あくまでも怪我をしないようなフィニッシュを心がけたい