なんだろう。普通は逆じゃねえのとテツは首を傾げてさらさらの黒髪を指に絡めた。花はすっかりくつろいだ様子でテツの膝に頭を乗せている。この固い腿が心地よいなんてことは絶対にありえないのに花は至ってご機嫌で、ぐりぐりとテツの腹に額を擦り付けてくる。
(…猫みたい)
付き合い始めたときはこんなふうに甘えてはくれなかったので、テツは気紛れな猫を手懐けたような気分になる。寝転んだままテツを見上げてちょいちょいと手招きされ、少し顔を下げると首に腕を回して口付けてきた。
目が合うとふにゃんと笑う。
…どうして。
この人は可愛らしかったり綺麗だったり格好良かったり。
テツはぐらぐらとする思考を正す。
いいようにあしらわれているのは自覚している。確かに向こうが年上だが、それだって一年にも満たない。きっと同じ歳だったとしても結果は変わらなかっただろう。
むしろ年下だという逃げ道を用意されたことを喜ぶべきか。
敵う日が来るのかなと微睡み始めた目蓋にキスを落とす。猫みたいだと揶揄えば指に噛み付かれた。
ああどうしようコノヒト。
胸の奥から愛しさばかりが迫り上がってきて、
こうして気紛れな愛猫に今日もテツは翻弄されるのだった。