BEAUTIFUL DREAMER
Beautiful DreamerHOME
 FAVORITE DESSERT




 好きなものの満腹と似ている。

 「花さん」
「んーーもうちょっと」
素肌がしっとりと温め合って触れる。花はこの時間がとても好きだ。 暇をしている唇で顔を埋める首筋にちゅぅと口付けをしているとテツが抗議の声を上げた。
「花さん…寝ないと、明日」
「うん眠い…」
身体は疲れて、もうできないけれど足りなくて満足しているからこそもっと欲しい。 まるで好きなものを食べているときみたいだと花は思う。満腹でお腹はもう入らないといっているのに、舌はまだ味わいたいと未練がましく欲しがる。
「なら大人しく…。おやすみ…」
耳に優しく唇が触れた。子供をあやすように寝かしつけようとする、涙が出そうなくらい優しいテツの仕草。睡魔の誘惑に反抗して花はぎゅっと更に肌を密着させた。睡眠という人類最大の快楽よりも、ただ抱き合って肌の弾力と温かさを感じる方が惜しい。この心地よさをもっと味わっていたい。
「朝早いのは花さんのほうなのに…」
花の心などまるで知らないテツは呆れて、うとうとしながらも抵抗する花を不思議そうにしつつ、髪を撫でた。頬に残る、先ほどまで流していた涙の跡を追って、唇でやさしく慰撫する。
 幸福というものはまさしく、きっとこの瞬間なのに。
 そこから離れさせる、眠りに誘う、憎らしい手のひら。

 …やさしい手。
 それだって大好きで逆らえない、と花は導かれるまま目を閉じた。


END.
memo 2006/05/07
改稿 2008/02/17

Beautiful Dreamer
HOME


一言  ⇒メールフォーム