LOVELY、LOVELY、HAPPY ! - autumn wind -
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竜くんに再会して、
竜くんに近づきたい、振り向いてほしい、そんなことばかり。
どうしたら、とそれだけを考えて、
思いもしなかった。
竜くんから心を受け取ったら、本当は、それが、
始まりなんだということ。
LOVELY、 LOVELY、 HAPPY ! 〜 秋風 編 〜
「真琴ー!!」
ドカン、と友人の理佳が飛びついてくる。
「聞いたよ!!」
と興奮の声を上げるので、噂って本当に早いなと驚いてしまう。
昨日の今日で、登校したとたん、コレなんだもの。
私の浮かない顔は、抱きついている理佳にはきっとまだ見えていない。
だから私の幸福を祝う声で、
「竜センパイの、『 俺は真琴のモノ 』宣言!!!」
良かったねー!!と言った。
「って、アレ?」
私の様子に気がついた理佳が抱きついたまま、私の顔をみる。
「・・・のわりには元気ないね〜」
理佳の後ろからのんびりと歩いてきた眞乃がよしよし、と私の頭を撫でた。
「りかー!まのぉ〜〜!」
弱っていた私は、二人の友人に抱きついて、朝一番から、愚痴を聞いてもらうことになった。
自分の不注意で竜くんに怪我をさせてしまったというのに、竜くんは「俺が悪いから」と言って、まったく謝罪を受け入れてくれない。
それどころか、私が謝るそぶりでもしようものなら、急降下で機嫌が悪くなる。
『 俺が悪いんだから、謝るな 』
と言って、本当に怒った顔をする。
なんで竜くんが悪いの?
と言えない。
急に話し掛けて、びっくりした竜くんに振り払われた。
その拒絶に、身体が硬直してしまった。
竜くんに拒否されると、以前のことが思い出されて、どうしても怯えてしまう。
身体がこわばって、どうしようもなくなる。
あんなの、落ちるほどのことではなかったのに。
竜くんの嫌悪した顔が、本当に怖くて。
私の顔をみて、ハッとした竜くんは、夢から覚めたような目になって、それからすぐに私の腕を取った。
私を見る真剣な表情。私を守ろうとしてくれるのが、わかった。
力強く抱きしめてくれた。
でも、竜くん、わからないよ。
どうして、あんなことを言うの?
確かに私は竜くんが欲しいと言った。
そして、竜くんは、くれると応えてくれた。
でも、竜くんは私を好き?
どうしてくれるなんて言うの?
竜くんをくれたって、竜くんの態度は変わらない。
やさしいけど、それは桐香ちゃん相手と一緒で、他の友達と一緒で、私が特別じゃないよね?
竜くんは私にキスしたいと思ったりする?
私が竜くんを好きだと胸が苦しくなるときがあるみたいに、竜くんは私を想うことがある?
・・・そんなことがあるなんて思えない。
何故こんなに欲張りになったんだろう。
ずっと、傍にいられるだけで幸せだったのに。
片思いのときは竜くんを好きだという気持ちで十分だったのに。
付き合うとなったら、私の気持ちだけでなくて竜くんの気持ちが必要で、 でも、それがあるなんて自信がない。
だから、本当は、一度だって恋人だなんて思えたことはない。