彼女は何度も何度も僕を愛していると云ったのだ。
僕の首に腕を回し僕と繋がりながら其の赤い唇で。
しかしどうだ、全て嘘だった。全ては泥に塗れて居た。
余所の男に同じ科白を吐き、吐いた唇を差出し舌を絡ませ、其の白い脚を巻付けて居たのだ。僕は泣いた。当然だ。酷く酷く僕は傷付けられた。罵り言葉は止まる事を知らず又僕は止める術を知らなかった。暴力を、そうだ僕は手を持ち上げて、そして彼女の非難する目を見た。
最低な事だ。判っている。若し仮に激情に駆られて僕が腕を振り下ろすならば僕は犯罪者として社会から罰せられるであろう。
彼女の罪は赦されるというのに。
僕を僕という人間を内から切裂き抉り殺した事は如何なる罪にも問われない。頬の痛み程にも及ばないという。胃は握り潰された。気管は捻れ呼吸も儘ならない。しかし其れを齎した彼女は何も罪が無いという。
電気信号細胞反応器官収縮
2005/01/16 改稿 2005/01/22
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