ママは、ママのお父さんお母さんの家に来ました。 まだ肌寒い季節でした。 あなたを出産するため、里帰りしてきたのです。 パパが新幹線に一緒に乗って、送ってくれました。 二度目にパパが来てくれたときは、桜が咲き始めていて、一緒に花を見ながらお散歩をしました。 お散歩が安産に良いというので、お腹の中のあなたに話しかけながら、毎日お散歩するようにしていたのです。 桜が散り始めると、一斉に花々が咲いていきました。 本格的な春です。 山吹の花を見かけました。 実はママはその花を知らなかったのですが、ママのお母さんが教えてくれました。 山吹色を色鉛筆などで知っていても、実際の花を知っている人は少なくなっているのかしらね、と言っていました。 花水木、藤の花、空木、木々が花をつけていきます。 街路樹で植えられているツツジも咲き始めました。その後はサツキの花です。 ママは、ツツジが咲き終わった頃に咲くサツキも、どちらもツツジだと思っていて、別のものと知りませんでした。 今回季節をのんびり観察して知りました。 公園を歩いていると、白詰草が芝生に咲いていて、子供たちがその上を駆け回って遊んでいました。 あなたも走って遊ぶようになるのかしら。そんなことを考えます。 四つ葉のクローバーを探したり、白詰草の花冠を作ったりしながら遊ぶかしら。 ママも作ったけれど、もう花冠の作り方は忘れてしまって、カラスノエンドウの笛も吹いていたけれど、それも。 一緒に遊びたいね、と話しかけながらお散歩を続けました。 バラ園にも行きました。 こんなにもたくさんの種類のバラの花があるなんて。 バラの香り、と言うけれど、それだって色々な香りがありました。 品種ごとに、それぞれ名前がついています。 誰彼に捧げられた花、と添え書きを読むと、素敵、花を捧げられるなんて、と浮き浮きします。 パパは毎年ママの誕生日にバラの花を贈ってくれます。パパも素敵でしょう? マーガレットが咲いて、山帽子が咲いて、日差しが強くなり、お散歩で汗ばむ季節になってきました。 いよいよ会えるかな?毎晩お腹をさすってお話します。 初めはコロコロ応えてくれていたあなたは、最近はぐいぐいとお腹を押してきて、元気一杯です。 あなたがお腹にいると分かったときは、残暑がまだ続いていて、あなたが動くのを初めて感じたときは秋が終わり冬が始まる頃でした。 安定期と言われる時期まで長く長く感じました。 4,5か月もあるのだから、それは長いですよね。 とにかく無事に無事にとそればかり願っていました。 でも、それは今でも同じです。 あなたが動くとき、ふれて安心します。 庭の百合が咲いて、紫陽花が色づき始めました。 紫陽花は白から青や赤、紫、さまざまな色に変化していきます。 新緑がいっそう明るくなった光を浴びて、彩り豊かに、花々がきらきらと色彩あざやかに、世界はこんなにも美しいところだと感じます。 だから、楽しみにして出てきてください。 あなたとともにたくさんのことを感じる日々を待っています。 とつき−彩−
2016/5/26
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