負
他人に、自分の『陰』の部分を見せないよね、と。 そうだね。 そうかもしれない。 誰にも見られたくない。 ずるいってさ。 平気な顔してて。 でも、悩みなんかないでしょ、って言われるとムカッとしてさ。 そう見せたいんでしょ? 悩みなんてないって。 そう思いたいんでしょ、自分で。 そう、そうかもしれない。 だから、笑顔も上手くなった。 どんなときでも笑える。 でも、それは卑怯だって。 逃げだって。 ……たまに、人のそんな部分に踏み込んでしまうことがある。 他人に踏み込まれたくない場所。 ふいに。 赦されているわけではないのに。 その線を越えてもいいよ、っていわれたわけでもなく。 そして、立ち往生。 土足で。 逃げる。 さらに足で自分の足跡をぬぐって、ひきのばして。 見ない振りをして。 誤魔化して。 消せればいい、なんて思ってる。 自分の日記を破いて捨てるみたいに。 その、日々が消えると。 ……自分が、踏み込ませないから。 人にも、踏み込めない。 踏み込み方がわからない。 自分だけ踏み込ませないで、ひとに踏み込もうとするからだ。 電話を切って、電源もOFFにして。携帯を壁に投げつけた。 2002/10/25
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