雨宿り
雨が降ってきた。 傘は持っていない。 「天気予報で言ってたじゃん。持ってこなかったの?」 後ろで声がした。 「予報、見なかったから」 「俺も見てなかったんだけど、お袋が持ってけってさぁ」 彼は折り畳みの傘を取り出した。 「駅まで一緒じゃん。入ってく?」 「えっ…い、いいよ。図書館寄ってから帰る」 「そ? んじゃ、明日な」 彼の背を見ながら、自分の顔が真っ赤になっていることがわかった。 「折角のチャンスだったのに!」 友人がここにいたらきっとそう言っただろう。 しかし、話しかけられただけで顔が赤くなるのに、並んで歩けるわけがない。 雨でひんやりとした空気が火照った頬に触れた。 |