玄関
「あ」 玄関の前で眠っている奴には見覚えがあった。 「おい、人んちの前でグースカ寝てんじゃねーよ!」 と、蹴飛ばす。古い友人なので遠慮がない。 「ふあ?」 間抜けな声を出して俺を見上げる。 「遅いじゃねーか…」 「お前と違って仕事で忙しいの!」 「俺だって仕事明けなのに…」 「お前は趣味だろ?」 鍵を開けて部屋に入った。 「腹減った」 「彼女でも作れよ」 「ほとんど日本にいないのに?」 「帰国してすぐ俺の部屋に来るの止めろ」 「メシ〜!」 「うるせえ少し待て。今度はどこで撮ってきたんだ?」 「いろいろ」 「現像したら見せろよ」 「明日出版社に行かないと…」 「髭ぐらい剃ってけよな」 「……」 寝てる。 「しょうがねえなあ」 世界のどこを見てきたんだろう? 俺は二人分の食事を作りながら考えた。 |