ダイオキシンによるマウス精巣細胞のテストステロン産生に及ぼす影響
このテーマは東京理科大学薬学部教授の武田健先生および吉田成一博士のご指導のもとで行なったものです。
1. 概要
2. 初代培養細胞
3. 方法と結果
4. 用いた実験手法
5. 関連文献
1. 概要
ダイオキシンは内分泌撹乱化学物質(=環境ホルモン)の一つであると考えられており、男性の生殖器系に様々な影響を及ぼすことが知られています。その原因の一つが男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度の低下と関係があるという報告があります。そこで、本研究ではテストステロンを産生・分泌する器官である精巣細胞を摘出し、その初代培養細胞をダイオキシンに暴露し、テストステロンの分泌量に変化があるかどうかを測定しました。最大10nMのダイオキシンに48時間暴露しましたが、その後のテストステロン産生量に有意な変化は見られませんでした。
2. 初代培養細胞
初代培養細胞は生体の器官や組織から分離した細胞であるため、無限増殖能を獲得した株化細胞よりも生体内における分化形質をそのまま維持していると考えられ、生体内で高度に分化した細胞の持つ特性に関する研究などで広く用いられます。
テストステロンはライディヒ細胞で合成され、脳下垂体前葉から放出される黄体形成ホルモン(LH)の刺激を受けて分泌されます。
本研究では精巣を摘出し、酵素処理して細胞を分散させただけであり、ライディヒ細胞やセルトリ細胞、そして精子細胞など様々な精巣中の細胞を含んだ混合状態を用いました。ライディヒ細胞は精巣中の数が少なく、単体で分離するには困難を伴うこと、また他のセルトリ細胞や精子細胞などはテストステロンの産生には関与しないこと、仮に分離するとなると煩雑な操作に伴う長時間の生体外環境で細胞自体が失活する恐れがあることなどからライディヒ細胞の単離操作は行ないませんでした。
3. 方法と結果
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| 図1 テストステロンの分泌量 |
65日齢のICR系のマウス(オス)を頚椎脱臼法により安楽死させ、ただちに精巣を摘出しました。細胞をコラゲナーゼで振盪分散させた後,培地で適当な細胞濃度に調整し、コラーゲンでコートされたプレート中で一晩培養し、プレートに細胞を固定しました。10-2pMから10nMまで10倍ごとの2,3,7,8-TCDDの希釈系列を作り、3、24、48時間暴露しました。規定時間経過後,LHと同様の作用を持つヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを加えて6時間後、分泌されたテストステロンの濃度をラジオイムノアッセイ法を用いて測定しました。
株化細胞を用いたときと同様のダイオキシン濃度においても細胞の生存率に顕著な変化は見られませんでした(グラフは発表論文に掲載)。ダイオキシン非存在下では図1のように3時間から24時間までテストステロンの産生量が維持され、その後徐々に産生量が低下しました。ダイオキシン暴露下においても同程度の分泌量が測定され、ダイオキシンによるテストステロン分泌量に対する有意な減少は観察されませんでした(グラフは発表論文に掲載)。
ウィスコンシン大学のTheobaldらはICRマウスはラットやハムスターよりもダイオキシンに対する感受性が低いことを報告しており、本結果は彼らの報告を支持するものとなりました。ダイオキシンは精巣に対する様々な作用をもたらしますが、本結果からテストステロンの産生に対しては直接は関与していないと考えられます。
4.用いた実験手法
5. 関連文献
- Uchida, T., Yoshida, S.,Inui, Y., and Takeda, K.
(2002) Effect of 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin
on testosterone production in isolated murine testicular cells. Journal of
Health Science 48(3), 292-295 (PDF)
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