今週のコラム

セルフ雑記帳 2007112日付 油業報知新聞掲載予定

vol.140『質』

セルフスタンドコーディネーター 和 田 信 治

「量から質への回帰」─年頭の石油連盟会長のお言葉である。確か、昨年の初めには「今年は量から質への総仕上げを」とおっしゃっていたように記憶しているが、今年は「回帰」すると言う。辞書を引くと、回帰とは「ひとまわりしてもとの所へ戻ること」とあった。つまり、昨年、「総仕上げ」をした(?)ので、またスタート地点に戻る、ということなのだろう。石油業界において、「量から質」とは、ネバー・エンディングなテーマなのである。実際、一昨年も、その前の年も、そのまた前の年も、さらにその前の年も、わたしたちの業界では「量から質」という言葉が叫ばれていた。まだ2007年が始まったばかりだが、2008年の新年会においても、「量から質」という言葉が必ず聞かれだろうと予言しておきたい。

結局、石油連盟が唱える量から質への転換は、いつまで経っても実現しない幻想ではないだろうか。今後、省エネと少子高齢化によって、日本の自動車燃料の需要は確実に減少してゆく。つまり、否が応でも「量」は減ってゆくのだから、「質」である利益の確保に努めなければならないというのだが、本当にそうなるだろうか。

私は、この業界が、毎年毎年利益を吐き出し、販売競争に明け暮れるのをうんざりするほど見てきたので、むしろ、パイが減ってゆくこれからは、ますます「量」を求めての激しい分捕り合戦が展開されるのではないかと思っている。地球上のほとんどの生き物は、食物が十分に得られる環境では争わず、それが乏しくなった時に争うようになる。それと同じ理屈ではないだろうか。

そもそも、元売直轄の販社が次々と大型セルフスタンドを建設し、一般系列店の仕入れ価格以下の値段でガソリンを販売して量販志向を鮮明にしているのに、どうして量から質へ転換できるというのだろうか。国連安保理の常任理事国である五ヶ国がすべて核保有国であるいまの世界で、いくら核廃絶を叫んだところでだれも実現できるなどとは信じていない。それと同じ状況ではないだろうか。

そういうわけで、2007年のガソリンスタンド業界は、ますます苛烈な量販競争が繰り広げられると予想している。様々な統計の分析に基づいて述べているのではない。自然の法則や人間の習性にかんがみて、そう予測しているだけのことである。私には、元売から販売店までを含めたこの世界の人々が、そんなに急に理性的で、利他的な人間になるとはとても信じられないのだ。

しかし、毎度おなじみの「量から質」だが、近年元売は、「質」を“しつ”ではなく“しち”と解釈しているのではないだろうか。つまり、たくさん売ってくれるだけでは不十分で、商品代をちゃんと払ってもらわなければダメということだ。商品代担保を越えてガソリンを売られるのはかえって迷惑、たくさん売りたいのなら現金で先払いしてくれというわけだ。また、元売各社は自社のクレジットカードを普及させるのに躍起だが、これとて、系列店に、取りっぱぐれのないよう質草を入れさせているようなものだ。つまり、これからは、ただ量販するだけでは元売からは認めてもらえず、それに見合う“(しち)”つまり、保障や担保を差し出さなければ相手にされないという意味で、「量から質」へ転換せよということなのかもしれない。

元売がそのような基準で販売店を選別しはじめた以上、ガソリンスタンド経営者は、財務体質を強化するために、利益なき量販と決別して適正な利益を確保するだけでなく、運営コストや販管コストを徹底的に見直し、節減させることに骨折らねばなるまい。とりわけ、セルフスタンド経営者は、量販にばかり血道をあげていると、気が付いたときには、自分の店を元売や銀行によって“(しち)に転換”させられてしまうかもしれない。おとそ気分をブッ飛ばす不吉な話題で今年もスタート。本年もどうぞよろしく。

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