今週のコラム

セルフ雑記帳 2007119日付 油業報知新聞掲載予定

vol.141『日本人って…』

セルフスタンドコーディネーター 和 田 信 治

お気に入りのブラック・ジョークをご披露しよう。タイタニック号が北大西洋で遭難し、その巨大な船体が傾き始めた時、人々は救命ボートに先を争って乗り込んだ。ところが、すべての乗客・乗員が乗れるだけの数のボートがない。そこで、女子供を優先させ、男の乗客たちには、凍てつく海に飛び込んでもらうことにした。乗員たちはどのようにして男たちを説得するか思案した。

アメリカ人の男性には、「海に飛び込めば、あなたはヒーローになれます」と説得した。すると彼は、「オーケー!」と言って飛び込んだ。イギリス人の男性には、「紳士ならば海に飛び込むべきです」と説得した。すると彼は、「イエス」と答えて飛び込んだ。ドイツ人の男性には、こう言って説得した。「規則ですから飛び込んでください」。すると彼は、「ヤヴォール!」といって飛び込んでくれた。次は日本人の番である。そして、彼も飛び込んでくれた。次のように言われたからだ。「みなさんそうしておられますよ」─。

“和を持って尊しとなす”と言えば聞こえは良いが、とかく日本人は集団性を良しとするが故に、画一的で個性に乏しいと言われる。ガソリンスタンド業界にあっても、その傾向は顕著に見られる。とりわけ、元売の系列店ともなれば、独自性を出すことは許されず、支給されたPOPで店を飾り付け、元売の販売マニュアルに従って行動することが求められる。POSシステムも、元売が指定するシステムを用いることが義務付けられている。そして、多くの系列販売店は、それに何の疑問も感じることなく従っている。「みなさんそうしている」からだ。

そもそも、元売の直営店が、自分の店への卸価格よりも安くガソリンを販売しているというのに、相変わらずせっせとその元売から高い油を買っていること自体、私には不思議でならない。「わしは、この20年間○△(元売の社名)以外の油を一滴たりとも買ったことはない!」と誇らしげに語るスタンド経営者に、私は「それって一体どんな得があるんですか?」と尋ねたことがある。同じ元売の油槽所から出ている業転ガソリンは、その店の仕入れ価格より78円以上安いにもかかわらず、である。論理的な理由などあるはずがない。結局、皆と違うことをする勇気がないだけのことなのだ。

セルフ化を拒む経営者の多くも、いろいろともっともらしい理由を述べてはみるものの、要は“皆と違ったことをしたくない”という心理がその根底にあると私は思う。「厳しい経営環境の中で皆と同じことをやっていては生き残れない」と言ってはみるものの、いざ、掛売り客を整理し、従業員を減らし、元売のシステムを(場合によってはマークさえ)取っ払ってセルフ化するなどということができるかと言えば、大抵は二の足を踏んでしまう。

一方、セルフ化を進める経営者はと言えば、元売の言うがままに設備投資を行ない、場合によっては隣地の買い増しまでして、コストのかかる大型店舗を建設する人が少なくない。なぜ、単なる給油所に、そこまでの設備投資をするのか。何が彼にそれほどのリスクを背負わせるのか。きっと、元売の担当者にこう言われたからに違いない。「みなさんそうしておられますよ」─。

日本人は、個を殺し、組織を優先させることによって、目是ましい経済発展を成し遂げてきたと評価されており、それは間違いないところである。しかし、ガソリンスタンド業界に限って言えば、その集団性が元売によって巧みに利用され、スタンド経営者の多くは独立性を“去勢”され、疑うことすらせず冷たい海に飛び込まされているように思えてならない。どうせ飛び込むのなら、「みんながやっていないからやってみよう」と言って飛び込むほうがカッコ良い。セルフ化も同じだと思う。

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