太極拳の姿勢08.12.17掲載)
 

松田隆智著「太極拳入門」には、太極拳の練習における姿勢の要領を、常用語で示し解説してある。そして、これらの常用語で示される姿勢についての必要性を、

<< 「気の流通」と「気の運用」を円滑、有効にするためのものである。たとえ太極拳を武術としてではなく健康法としておこなうばあいでも、必ず守らねば完全な効果はえられない >> と九つの常用語を記している。

次の説明は、上書からの引用である。

 

1.尾閭中正(びろちゅうせい)

肛門を締め上げるようにして、尾底骨を前に出して背骨の下部を一直線にする。つまりヘッピリ腰の反対の姿勢である。

 

2.虚領頂勁(きょれいちょうけい)

(れい)(首すじ)の力を抜いて(虚にして)、頭頂部は頭の上に乗せてある物を押し上げるような感じで気をおくと、頸椎(けいつい)は一直線となって下顎は自然にあとに引かれる、よく体操など行うときに、「アゴを引け」というが、ただアゴを引くだけでは頸椎が傾くため健康上に害がある。

 

3.立身(りっしん)中性(ちゅうせい)

尾閭中正(びろちゅうせい)虚領頂勁(きょれいちょうけい)によって、背骨を頭頂部から尾底骨まで一直線にし、地面から垂直にした姿勢である。この姿勢によって気は円滑に流通し、身体の軸となって強い力が発揮できる。ただし技法をおこなう上で、上体が20度くらいの角度まで傾いてもかまわない。

 

4.鬆腰(しょうよう)(注:鬆とは“ゆるい”という意味)

尻(腰)は堅くしないで柔らかくする。

尻を堅くすると気血が尻に渋滞して下肢が虚になってしまい重心が不安定になる。そのため強大な力が発揮できない。尻を柔らかくして重心を下に沈めることが重要である。

腰は人体の等一の主人であり、技法をおこなうのにもっとも重要な部分である。

 

5.沈肩墜肘(ちんけんついちゅう)

両肩を落として下に沈め、技法上、腕をのばしたときに、つねに(ひじ)が下を向くようにする。

肩が上がれば気は肩で止まってしまい手の方まで通ってこない。肘が上を向けば肩が上がる。

 

6.涵胸抜背(かんきょうばつばい)

この姿勢は胸を張らずにゆるめて凹ませ気味にして背中の方を張る姿勢である。

あまり意識しすぎると猫背になる。胸を張れば尻があとに出て脊椎(せきつい)が湾曲して、正しい腹式呼吸ができない。

この姿勢は含胸抜背(かんきょうばつばい)とか空胸緊背(くうきょうきんぱい)などといろいろな解釈をされている。本来は発勁(はつけい)の準備動作であり、姿勢を弓矢を射る寸前の弦を引いたときと同じ状態にすることである。秘伝とされているため誤った解釈をしている人が多い。

 

7.円襠(えんとう)

肛門を閉じたまま股間を円型にして気の流通を円滑にする。

 

8.全身鬆開(ぜんしんしょうかい)

太極拳をおこなうときは、全身の力を抜いてユッタリと柔らかくしておこなう。力んで体を固くすると、気の流通をさまたげる健康面からもよくない。

 

9.心気沈静(しんきちんせい)

太極拳をおこなうときは気を静め、精神を落ち着かせておこなわなければならない。呼吸によって吸収した気は下腹部丹田に沈んで落ち着くようにする。

 

参考

松田隆智著「太極拳入門」(産報社)

 
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